こんにちは、デザイナーの章(@xiolkee)です。

今年の5月からエイチームの子会社であるエイチームコマーステックに異動して、ペット領域の新規事業に携わっています (エイチーム歴はかれこれ4年目になります)。

2021年5月に異動してから3ヶ月で新規事業をリリースし、怒涛の毎日を送っていたのですが、やっと落ち着いてきました!

今回は、新規事業立ち上げの中でのデザイナーの動き方について、振り返りも兼ねてまとめてみました。

私が携わっている新規事業が、Obremo(オブレモ)というペットフードブランドです。

https://obremo.jp/

Obremoは”絆”を意味する造語です。

ペットを家族のように大切に思う人々に対して個々に寄り添った商品と情報の提供を通じて、家族の絆を深める、健やかで楽しい時間を提供するブランドになることを願って名付けられました。

Obremoは、エイチームコマーステック社長である望月と、取締役である船越が自身の愛犬・愛猫に安心して与えられるフードを作りたいという想いから始まったペットフードEC事業です。

ペットフードを売って終わりではなく、飼い主とペットの関係に寄り添い、その時々に適した商品や情報の提案を行う、コンシェルジュのような存在を目指したいと考え立ち上がりました。

第一歩としてペットフードの販売を開始しながら、開発においては将来的な構想も踏まえてサービスの体験やUIの設計を行う必要がありました。

今回サービスローンチに向けて関わったプロジェクトメンバーはこちらです。

  • 事業責任者:1名 (コマーステック代表)
  • マーケター:1~2名
  • 営業:1名
  • デザイナー:1~2名
  • エンジニア:4~5名

※コマーステックは職能制組織で複数事業運営しているため、メンバーは一部流動的です。

そして、デザイナが制作に携わったものは以下の通りです。

  • ブランドロゴ
  • 商品パッケージ
  • 商品購入用Webサイト
  • 購入者向けアプリ
  • 配送用段ボール
  • 配送同梱物(ブランドブック・手紙・納品書)
  • 上記に一貫性を持たせるためのデザインガイドライン
パッケージ・段ボール・ブランドブック
Webサイト(スマホで見るシーンに特化して作成)
スマホアプリ(購入者向けに特化して作成)

作るものがたくさんある中、少数精鋭で行ったため正直かなり大変でしたが、なんとか走り切りました(笑)。

ちなみに、緊急事態宣言が発令されたこともあり、プロジェクト期間のほとんどはリモート環境下で進行していました。

今回はその中でも、Webサイト・アプリのデザイン・開発にフォーカスしてまとめてみました。

ローンチに向けたプロジェクトは2021年3月から発足しており、まずは商品(ペットフード)の仕様決めや、エンジニアによる技術選定などを行っていました。

私がプロジェクトにジョインしたのは5月のタイミングで、8月にサービスローンチを予定していました。

サービスの一連の体験を提供する上でWebサイトやアプリを作ることが決まっており、開発はスクラムで進めていました。

プロジェクトチームでは週一でスプリントの振り返りを実施しており、ローンチ目標日を3ヶ月後に控える中、メンバーからプロトタイプがなかなかできていなくてスクラムが機能していないという課題感が……。

当時の振り返り資料。スクラム開発チームは週一でKPTによるスプリントの振り返りを実施。

プロジェクトを良い方向に導くためにはMVPのプロトタイプを作るところから着手すべきだと考え、ジョインして早々、作るべき画面一覧や機能の洗い出しに励みました。

すごく簡易に全体のフローを可視化

兎にも角にも、開発メンバー含めチームが全体像に確信が持てる状態にするために、サービス全体で「何をつくるべきか」(何をつくらないべきか) を決めていきました。

行ったことは次の通りです。

  • 制作予定物 (webサイト・アプリなど) それぞれの役割をマーケターとすり合わせ
  • 類似サービスのリサーチ
  • webサイトからアプリへの行動フローの決定
  • 行動フローに基づいた画面遷移を作成

これらの、いわゆる「何をつくるのか決める」ことに、参画当初は多く時間を使うことになりました。

それでも、サービスのブレない「コア」があれば、開発陣の優秀さもあり、間違いなく良いものがリリースできるだろうと踏んだためです。

それでも、当初からwebサイトとアプリを両方ともつくる意思決定があったため、多くの量の画面をデザインする必要があることは明白でした。

そのため、「デザイナー自身が綺麗なデザインファイルをつくる」ことは諦めました。

綺麗なデザインファイルよりも、一貫した行動フロー、なめらかな体験にフォーカスして、開発陣に一定のビジュアルクオリティは背中を預けることに。

プロトタイプとしてある程度全体像ができてからビジュアルのクオリティを上げていく方針を取りました。

画面遷移なども最初はこれぐらいラフに共有していました

エンジニアメンバーに対しては、参考サイト、サービスなどを一緒に渡すことで、なるべく認識を揃えて、お互いに自走できるようにしていました。

一方でアプリの特定の機能においては、「本当に想定している行動が起こるのか分からない」という、そもそもの話が上がる部分もありました。

具体的には、「事業としてはユーザーに対して適切な提案を行うためのデータとして、ペットのコンディションの変化を飼い主にこまめに記録してほしいが、ユーザーは本当にそんな行動を起こすのか?」というものです。

そこで、「生活の中で、想定している行動が起きるのか」を社内のペットを飼っている方々にインタビューすることに。

調査の目的整理
インタビューの流れの想定

具体的な制作に入る前に、10人ほどにインタビューを行いました。

このような形で、質問に対してのメモを取っていきました

インタビューを実施する上で参考にした書籍はこちらです。

『ユーザーの「心の声」を聴く技術 ~ユーザー調査に潜む50の落とし穴とその対策』

結果、当初想定していたような「頻繁にペットの記録をとる」ような行動は起こらないことがわかり、体験設計において考慮すべきポイントが洗い出されました。

インタビュー実施後の振り返りをドキュメント化。

リモート下においては非同期的なコミュニケーションが重視されるため、ここを見ればわかる状態にするためのドキュメント化はとても意識したところです。

▼参考

全社員フルリモートで1兆2000億円で上場したGitLabに学ぶリモートワークの心得

その後、インタビューを踏まえて、アプリの行動フローを再設計していきました。

そしてまた画面遷移の設計へ。

またしてもすごくラフなものですが...

常に意識していたことは「外さないために、大きな部分から検証をしていく」ことでした。

そもそも行動が起こらなければ、画面をつくっても使われないから、行動を検証する、など大きな部分を外さないように動いていきました。

こうして開発がどんどん進むようになり、今度はクリエイティブの制作に入っていきます。

▼Obremoアプリ開発についてはエンジニアの奥田さんが当時を振り返った記事をまとめてくれています。

こうして開発期間の前半ではサービスのコアを決めていくことに時間を費やしたのですが、振り返ってみてもよかったなと感じます。

具体的な制作編は次にお話しようと思いますが、制作物を多く仕上げないといけないときにもコアの認識が取れていたおかげで、開発チームにwebサイトやアプリはほとんど任せられました。

チーム全体としても意思決定がしやすくなり、スピード感が生まれたように思います。

新規事業においては早く作ってフィードバックをもらい改善に繋げる、仮説検証サイクルのスピードが重要です。

デザインプロセスにおいてもフェーズに応じてビジュアルのクオリティにこだわるべきものとそうでないものを区別することが大切だと思ってます。

続編の「怒涛のクリエイティブ制作編」もお楽しみに (近日公開予定)。

2021/11/29追記:続編を公開しました!

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