エンタメコンテンツ領域を中心にブロックチェーンを活用して「これまでにないエンタメ体験」の創出に注力しているGaudiyのりょうすけです。
今回は先日リリースした、デジタル声優アイドルグループの公式コミュニティ内の「スコア診断機能」のコンセプトづくりについてまとめたいと思います!
新しい体験をコンセプトに落とし込む中で、ファンに受け入れてもらえるようどのように工夫したかをまとめました。参考になれば嬉しいです!
Gaudiyは「ファンと共に、時代を進める」というミッションを掲げており、ブロックチェーンをはじめとした先進的なテクノロジーを駆使して、誰もが創作や貢献のできる「ファン国家」をつくっています。
*参考:https://note.com/gaudiy_inc/n/n65492595100f
新しい技術を使いながら新しい体験をファンに届けていくためには、従来であれば抵抗があるような概念や新しいものに対しても、ファンがワクワクするような体験に変えていくことが求められます。
今回はファンの活動度合いを可視化するような「ファンスコア」という機能を、あらゆる活動データを分散型ID(ブロックチェーン技術を活用したID)に蓄積し、AIでスコアを算出できるという仕組みで実現しようとしました。
*分散型IDシステム(ブロックチェーン技術を応用したID)で、ファンの活動を可視化する
「ファンのスコア」というのは、受け取り方によってはセンシティブなものとして捉えられかねない概念なので、どうファンが楽しめる体験としてうまく届けるか?ということがポイントになりました。
今回は自分が担当していた、UXリサーチからプロダクトのコンセプト設計、そこからコンセプトをマーケ企画に落とし込むまでの「一貫したファン体験づくり」について事例を出せればと思います。
まず、「ファン活動を評価・診断できる」というコンセプトを深めるために、現在ファンがどのような行動や考えを持っているのか調べるところから始めました。
既存の体験の中でファンにとって馴染みがあるコンセプトとして解釈されているのか、もしくは全く馴染みのないものなのかを理解した上で、ファンの状態に合わせてプロダクトの要件を調整していく必要があるためです。
具体的には、Twitter上で「スコア」「ランク」といった関連ワードや、類似サービス、関連するコンセプトを検索して、ファンの反応を見ていきました。
*類似するサービスのスコア設計やユーザー反応をリサーチ
今回の場合は、ゲームやライブ配信のランク制度、決済系サービスの実際に還元が受けられる信用スコアなど、関連するモチーフに対するサービス設計やユーザー反応を見ていき、Gaudiyが提供したい体験はファンクラブのランク制度に近いものだとわかりました。
ファンクラブのランク制度は、決済サービスのように還元が起こるなどでなく、ファンクラブ内の継続的な活動によってランクが上がっていきます。一方で、ファンクラブにおいても「課金額などのひとつの評価軸だけでファンの優劣をつけられたくない」といった反応も同時に見えてきました。
こうしたリサーチを踏まえて、大切にしたのは「ファン同士の比較ではなく、個人軸で楽しめる体験」の設計です。例えば、ゲームのプレイ回数や保有アイテムなどの統計情報を取得して診断の際に閲覧できるようにしました。
UXリサーチから、コンセプトとプロダクトの仕様の方向性が決まったので、それをファンに向けてどのように打ち出していくかを設計していきました。
ここでLPをいきなりつくり始めるのではなく、まずは発信における一貫したコンセプトを作るために、今回の新機能に類似するサービスが、ユーザーに向けてどのような発信をしているかをリサーチしました。
例えば、サンリオのアンバサダープログラムや球団のポイントキャンペーン、H&Mのロイヤリティプログラムなど、サービスLPやTwitterから文章を拾った上で、ワードや表現を抽出していきました。
*近い体験のLPやTwitterをリサーチし、ワードや表現を抽出
それらを組み合わせて、約15のコンセプト文を作成しました。その中から、筋の良さそうな3パターンに絞った上で、LPとツイート文章を作成していきました。
*抽出したワードを組み合わせて、コンセプト文を発散
ここで大切なのは、ファンがTwitterからLPに流入し、新機能の体験した後まで、一貫したストーリーで考えることです。最初にどのようなツイートから認知して、どういう期待値を持ってLPに流入し、新機能を体験した後のファンの感情を踏まえて、発信する文章を考えています。
このような進め方をすることで、ファンにとって自然な体験をつくることができ、受け入れられやすくなります。
*各コンセプトごとに、ツイート文章とLPを作成していく
こうしてできた3つのコンセプトのうち、どれが最もストーリーとして成立するかを検討するため、Figmaからモバイルに移して、触りながら違和感がないかを確かめていきました。
例えば「ファンバサダープログラム」をコンセプトとして作成したLPは、Twitterから流入してきたファンからすると気軽に参加しづらい感覚がありました。
その体験を受けて、「おもしろそう」「やってみたい」という感情でスコア作成まで完了してもらうことが大事だと感じたため、診断キャンペーンに寄せる方向性が固まりました。
診断キャンペーンの方向性に絞った上で、LP内の画像やテキスト表現の細かいニュアンスをコンセプトに沿って修正していきました。
例えば、プロダクトのコンセプトである「個人軸で楽しめる体験」をユーザーに想起してもらうために、比較や評価を連想する表現は避けて 「日々の活動ももっと楽しむ」「日々の"活動"によってスコアが貯まる」など、従来のファン活動にプラスαの価値が付加されるような表現にテキストを調整しました。
また、ゲームのプレイ回数や活動日数などの統計情報の部分を画像付きで目立たせたり、IP公式の一連の企画という文脈の中で違和感がないようにLPのトップバナー画像にIPのキャラクター画像など入れるなどの工夫をしました。
*コンセプトに沿ってLPの要素やテキストを調整
また、コミュニティ内での「事前告知」を活用して、ファンにどう受け入れられるかの反応を見た上で、コンセプトを再調整していきました。
例えば、「より楽しめる」などのプラスα感のあるワードや「横断的に楽しめる」などのワードは多くのファンが自然と引用し、ポジティブな反応をしてくれたので、最終的なLPや発信メッセージではこういったコンセプトを強く盛り込むようにしました。
最終的にこのようなLPに落とし込みました。
*実際に作成したLP
リリースして終わりではなく、そこからUXリサーチを通じてプロダクト改善につなげています。
リリース後の様々なユーザー反応から、実際に今回のスコアがどう使われていたのかをリサーチしました。
*リリース後のユーザー反応をリサーチ
リリース前は、コミュニティを日常利用してくれているコアなファンがスコア診断をしてくれることを想定していましたが、それ以外にもコミュニティ活動が活発でないゲームのファンが、スコアをきっかけとして会話していることがわかりました。
この事実から、スコア診断が、単発のキャンペーンでしかコミュニティを利用していなかったファンが、日常的にコミュニティを楽しみ始める強力な起点になるのではという仮説が立ちました。
また、スコアを上げる具体的な基準を明示していなかったことに対して、「基準となるミッションをもう少し明確に出してほしい」という要望もあったことから、スコアを上げること自体を楽しみたいというインサイトを得られました。
*リリース後の反応から、ユーザーのメンタルモデルを把握し仮説につなげる
インサイトを踏まえイベントを企画した結果、スコアを上げることがキャンペーン参加へのモチベーションにもつながり、より多くのユーザーの参加を促すことができました。
また、従来行えていなかった「Twitterでのイベント認知→コミュニティ内のイベント参加→スコアを上げる」という一連のフローを確立することができました。
Gaudiyがつくっているものはブロックチェーンを活用した新しい体験です。
その新しい体験をリリースするだけではなく、ファンの方々に抵抗なく使ってもらえるかまでが重要だと考えています。
今回の事例でも、炎上しがちな信用スコアを、新しいエンタメ体験として昇華できたのではないかと思います。「ファンと共に、時代を進める」上で、こうしたUXリサーチに基づいた体験設計は欠かせないものだと思います。
Gaudiyでは職種に関係なく、全員が新しい体験をプロダクトに落とし込み、それを世の中に届け切るまで動いています。
今回のように新しい体験をファンに受け入れられる形にするためにどのように工夫をしているか、UXリサーチ・プロダクト設計・発信コンセプト設計の観点からまた事例を出せればと思いますので、よろしくお願いします!
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Gaudiyのデザインチームにご関心を持っていただいた方はチームページから別のケースもぜひご活用ください!
今回のプロジェクトで取り組んだ「スコア診断機能」はこちらのサイトから見ることができます。