Gaudiyが運営する「Gaudiy Fanlink」は、世界的なIPを持つクライアントさまと一緒に、ファンの熱量を最大化するファンコミュニティを開発するプラットフォームです。
「Gaudiy Fanlink」のプロダクト開発では、多様なエンタメIPを持つクライアントさまのIP事業を理解すること、各IP自体の状況、ファンやその周辺文化圏を理解することが必要です。そして、ファンの日常と非日常をデザインすることで熱量の高いファンコミュニティを実現し、ファンの心を掴むことが求められます。
「Gaudiy Fanlink」はIPホルダーであるエンタメ企業が直接ファンコミュニティを運営し、IP独自の経済圏を構築していくファンコミュニティプラットフォームです。
ファンクラブ(1:N)や掲示板(N:N)とは異なり、公式の場としてコンテンツ供給がありながら、ファンがコンテンツ創作をする双方向型(1:N:N)のため、多様なIPに対し適応させるプロダクトデザインにおける難易度もかなり高く、だからこそ面白いなと思っています。
一つのケーススタディとして「Gaudiy Fanlink」のプロダクトデザインにおける具体的な機能検証の流れをまとめてみます。
「Gaudiy Fanlink」の価値は、熱狂的なファンが集まるコミュニティを作り、ファンコミュニティのケイパビリティ(能力や才能)を拡張することです。
IPホルダーであるエンタメ企業と協業し、公式コミュニティならではのコンテンツ提供を通じて、ファン同士の繋がりやファン活動を強化する仕組みや機能を提供しています。
現在Fanlinkは日本を代表するIPを持つクライアントのみなさまと一緒に、ファンコミュニティをつくっています。クローズド運用中のコミュニティや公開予定も多数控えており、コミュニティ数やIP規模を拡大しています。
クライアントのみなさまとしても、IPとファンとの新しいコミュニケーションの形を模索しています。
例えば、以下のような要望をいただいてプロジェクトが始まることが多いです。
コンテンツをダイレクトに届けられる独自の「場」を持ちたい
IPの新しい活用方法を検証したい
熱量の高いファンに運営方針を後押ししてほしい
メインコンテンツ更新までに、"日常的"にファンがIPに触れる接点を作りたい
貢献度が高いファンに還元したい
これらの要望を叶えるために、クライアントのみなさまも前例のない座組や技術を用いて “ファンコミュニティ” の立ち上げに挑戦してくれています。
IPのファンの方々も、そのIPが好きであるという共通点を持つ人が集う新しい交流の場として、「Gaudiy Fanlink」によってつくられるファンコミュニティに強く期待を持ってくれています。
「Gaudiy Fanlink」としては、その期待に応え、一緒にIPの未来をつくっていくことが求められています。
具体的なサービス構造としては、Gaudiy は Fanlink というファンコミュニティプラットフォームを開発し、各クライアントさまに対し Community Appとして各コミュニティを提供する形になっています。
各コミュニティはIP独自のWebサービスとしてリリースされるため、ファンは提供元がGaudiyであることを意識せず、あくまで『公式アプリ』として利用できます。
開発プロセスとしては、以下のようなフローで動いています。
プロダクトデザイナーは、汎用的なプラットフォームの機能開発を中心に、チームやプロジェクトによって特定コミュニティに特化した機能開発を行っています。
IPに特化したチームもFanlinkの機能として抽象化する前提で機能開発をすることが8割ですが、クライアントの方とのロードマップ策定や企画調整、ユーザー調査を元に開発優先順位を決定します。
Gaudiy Fanlinkのプロダクト特性上、スケールするに連れて扱うIPの数だけでなくジャンルの幅も広がります。
デザイナーはプロダクト開発者として不確実性の中で、アジリティを持ちながら拡張性を設計し、ファンが欲しいものを越えて心を掴むことが求められます。
プロダクトデザインにおいて、職能の専門性の一つである「具体化」というスキルを用いて、事業とクライアント・ファンの想いを接続する役割を担う上で、IPの世界観を届ける責任を理解して取り組むことは非常に重要になります。
ここからは、具体的にどのような体制の中でデザイナーがプロセスに関与し、「心を掴む」ことを実現しようとしているのかをまとめてみます。
新規コミュニティの立ち上げ企画段階からデザイナーが関与します。
コミュニティ立ち上げの企画初期段階では、クライアントの方も機能の詳細や「どのようなファンコミュニティをつくっていくのか」という所の解像度が粗いため、提案した企画コンセプトをより具体化し、一緒に未来の絵を描く所から始まります。
具体的には、コミュニティプロデューサーの提案・ヒアリングをもとに、プロジェクト初期に「開設初期のイメージ」「コア機能提案」「半年〜1年後のプロトタイプ」を見せるようにしています。
リリース後の反応によって変更される前提で、一定期間の登り方を共通認識として具現化することで、よりリアルなイメージを持って意見を出しやすくなり、議論を活発化させることができます。
このプロセスでは特にクライアントの方ならではの観点をインプットしていただくことが重要です。IPに対する思い入れやビジョン、関連サービスやドメインとの競合回避の視点等をより詳細に共有・フィードバックいただくことで、機能や企画・コンテンツの設計方針を擦り合わせていきます。
また、コミュニティという施策自体がファンにとって期待外れのものにならないように、ドメインを理解するフェーズでもあります。
熱量ゆえの摩擦を起こし、場合によっては愛着を失うきっかけを作りかねないため、Gaudiyのプロダクトデザイナーは、プロジェクト初期段階からクライアントのみなさまの想いやファンの文化圏を理解し、期待をすり合わせた上でコミュニティを具体化する必要があります。
この時に、該当のコミュニティだけでなく「Gaudiy Fanlink」としてのあるべき姿や、他コミュニティの計画や影響までも思考を広げるのもGaudiyのプロダクトデザインの特徴です。
プラットフォームの共通機能を提供するため、提案段階においても一定のプロダクト観点(機能の汎用性や再現性担保など)を考慮しながらビジネスサイドとコミュニケーションを進めます。
ここで提案ベースのラピッドプロトタイピングをすることで、他のコミュニティに展開可能な機能アイデアの素案を生み出すことにもつながります。
多くの開発チームは Fanlilnk の特定領域に責任を持ち、プラットフォーム共通機能の開発を行います。
一部のチームでは共通機能に加えて、一部特定コミュニティに特化した機能開発を行いますが、いずれの場合も「各コミュニティの課題」と「プラットフォームの提供価値拡大」を行き来してプロダクト開発を行う必要があります。
プラットフォームとしてのメジャーアップデートには、ユーザーだけでなく、実際の運用を行うコミュニティマネージャー、クライアントなど、多数のステークホルダーが存在するため、影響範囲が大きい場合は特定コミュニティでの検証を経て汎用化します。
具体的な機能開発を例に、説明していきます。
前述のように特定コミュニティへの導入を起点にプラットフォームの共通機能に昇華した例として、ガンダムのコミュニティから機能開発をはじめた「トレンド機能」はその一つです。
プロダクトデザイナーはPdMと要求を整理した後、
事業 / プラットフォーム全体として、どのような課題をどうやって解決するか
ガンダムのコミュニティにおいて、どのような課題をどうやって解決するか
という観点で要件をまとめます。
今回例に挙げる「トレンドタブ」という機能は全コミュニティに新設タブとして導入する前提で設計した機能だったため、
ファンの投稿(UGC)がスポットライトされる場を作り、賞賛と能動的な探索を増やすこと
運営がプッシュしたいコンテンツの優先度を柔軟に扱えること(=コミュニティの性質によってカスタマイズ可能である)
を要件としていました。要件定義の解像度を高めるのと並行してアイデアを発散させ、プロトタイプまで落とし込みます。
特定コミュニティでのリリースを先行して目指す場合、対象クライアントの方に早い段階から随時レビューをもらいます。
それによってIPやドメインへの解像度が高いからこその観点でのフィードバックを獲得でき、早期に双方向での解決案を出しながら懸念点解消や関係者調整を進めることができます。
このような流れを大体0.5〜2ヶ月のサイクルで行います。
また、デザイン過程では汎用性の考慮を並行して行います。
他コミュニティでも「狙った課題解決ができそうか」「妥当なコンテンツが用意できるか?」「どのカラーでも配色の問題がないか」などを簡易的にプロトタイプします。
例えばユーザーの投稿をコンテンツとして扱う場合、「投稿が画像中心 / テキスト中心の場合は?」「投稿数が担保でいない場合は?」などコミュニティ特性による影響を考慮する必要があります。
今回のように変更が大きい場合は、早い段階からエッジケースを持つコミュニティや、導入時に障壁があるコミュニティを優先してコミュニティマネージャーに相談し、スコープ定義やクライアントさまとの合意形成に向けた障害を取り除き、スムーズに持ち込めるようにしています。
このようにGaudiyのプロダクトデザイナーは、プラットフォーム全体の視点と各コミュニティの個別視点を行き来して、バランスを取るような思考が求められます。
また、各コミュニティでの要望やデータをもとにしたVoCの仕組みなども用意されているので、回収したそれらの声をもとに、機能改善に繋げています。汎用機能を提供できるようにしたうえで、最終的に特定コミュニティに採用するかどうかは、それぞれのコミュニティで判断しています。
このような動きを支えるための具体的な開発体制として、事業検証推進(攻め)と基盤開発(守り)のラインを持っています。それらに加えて、特定IPとの協業型プロジェクトが存在するという開発組織体制です。
デザイナーはプロジェクトの特性に合わせてチームにアサインされますが、得意不得意だけでなく、デザイナー自身が好きなドメインかというスキドリブンなアサインも行います。
他にも、Gaudiy Fanlinkとしての生産性と品質を支えながら、IPの世界観を表現するためのカスタマイズを可能にするデザインシステムも整備しています。
例えば、Fanlink自体のブランドカラーを持たない、マルチブランドに対応できる柔軟性を持ったカラーシステムを用意しています。
詳細な設計については、こちらの記事をご覧ください。
運用しているファンコミュニティには、実際にファンの方々から非常に熱狂的な声をいただいています。
もちろんプロダクトデザイナーだけでなく、同じようにIPの魅力を最大限表現し届けようとするGaudiyというチーム全体でこれらの声を生むことができています。
前述したように、Gaudiyが預かる国内有数のIPには、それぞれに長い歴史があり、ファンの方々やクライアントの方々に強い想いがあります。
それを守りながら、よりファンの熱狂が生まれる新しいコミュニケーションの場をつくることが「Gaudiy Fanlink」の価値です。
まだ世の中で実現されていないこのような壮大な思想を推し進める上で課題は山積みですが、自分たちが「人は誰しも、イノベイティブである」ことを信じ、ファンやクライアントの方々の創造性や夢中を解放するモノを生み出すよう努めるのがGaudiyプロダクトデザイナーの役割です。
そのためにも、ファンの熱量を生み出す機能検証に取り組みながら、さらに事業貢献に向けて動いていきます。
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