GaudiyでデザイナーをしているTorajiroです。
今回は、世界最大級のアイドルフェス「TOKYO IDOL FESTIVAL」でブロックチェーンを活用したコミュニティサービスを提供した事例をもとに、大規模プロジェクトを円滑に進めるデザイナーの情報整理の工夫やワークフローについてまとめていきたいと思います。
ステークホルダーが多いプロジェクトや、新規のプロジェクトでの共通認識づくりにお悩みのデザイナーの方々の力になれると幸いです。
Gaudiyのデザインチームが取り組むプロジェクトは、コミュニティサービスとしての新機能や、ブロックチェーンの仕組みを活用した新しいエンタメ体験を0→1で開発することが多くあります。
そのような大規模プロジェクトでは、クライアントが密に関わったり、事業としてもユーザー体験としても新しいことが多く、不確実性が高くなりやすい問題があります。
不確実な中でサービス開発を続けると、メンバー間で意思疎通が取りづらくなってしまい、手戻りが生まれるなどリスクが増えてしまいます。
そこでGaudiyデザインチームでは、プロジェクトのキックオフからチームの認識が揃いやすいように情報や前提を可視化し、日常で使えるコミュニケーションツールを作ることでチームが円滑に進められるようなワークフローを試行錯誤しています。
こちらのFigmaリンクから全体のワークフローを見ることができるので、ぜひ見ながら読んでいただければ嬉しいです。
今回は、ワークフローの中でのポイントをまとめていきます。
1つ目のポイントは、プロジェクト開始前からビジネスサイドのメンバーと一緒にユーザー行動をリサーチするプロセスです。
今回の「TOKYO IDOL FESTIVAL」では、プロジェクトが始まる3週間前から、ビジネスサイドと一緒にクライアント要件を整理しながら、実際のサービスの対象となるアイドルファンの方へのリサーチを進めていました。
この段階のリサーチでは、大きくユーザーとしての分類を作るのではなく、できるだけユーザーとする人を個人の単位で生々しく理解し、実際の行動やそれに影響を及ぼす周辺環境まで含めて整理をしようとしています。
例えば、今回のリサーチの一つとして、実際に地下アイドルのイベントに参加し、そこで出会った方にヒアリングを行っていました。アイドルファンの中でもどのような応援の仕方があるのか、など普通に想像するだけでは掴めない情報をプロジェクト開始前にひたすら集めていきます。
このような形で具体的なユーザー像を人ベースで形成し、「文化モデル」という名前で結果をmiroで取りまとめて整理することで、その後のプロジェクトでも度々引用される共通言語になるよう工夫しています。
プロジェクトが始まる前からリサーチを行い「ユーザーがどのようなことを考えているか」「何を求めているのか」を実態として掴みに行くことで、クライアントへのソリューション提案や施策のターゲットの解像度を高められ、プロジェクト開始時点からチームの目線を揃えられます。
UXリサーチについては、こちらのブログでも詳しく説明しているのでよろしければご覧ください。
2つ目のポイントは、プロジェクトが開始した直後にチーム全員でのデザインスプリントを行うことです。
デザインスプリント自体はプロジェクトの性質によって実施しない場合もありますが、今回はプロジェクトの「手段」を検討する必要があったので、プロジェクトに関わる全員(PO, ビジネス, エンジニア, デザイナー, コミュニティチーム)が集まり、デザインスプリントを行いました。
デザインスプリントの御作法では5日間の日程ですが、アイデアの収束までを2日間で行えるようにアレンジしています。
はじめに、(デザインスプリントの有無に限らず)プロジェクトの前提や目的を『インセプションデッキ』に整理します。今回のプロジェクトで各視点の目的は何なのか、実現したい体験価値は何なのか、具体でつくるものは何なのか?を一つ一つ、半日~1日かけて整理していきます。
次に、インセプションデッキと事前リサーチ、専門家(クライアントがいる場合はビジネスサイド)インタビューをもとにアイデアの発散を行います。
僕らがここで大事にしていることは「クライアントの要望を解釈し、ユーザーが楽しめるカタチに落とし込むこと」です。事業の性質上、ブロックチェーンを使った新しいエンタメ体験を提供しようとすることが多いのですが、クライアントの要望を満たす新しいだけのものを作っても意味がありません。
なのでアイデアの発散〜収束では参加しているメンバーが、提案する場ではクライアントがワクワクする状態を目指してアイデアをプロトタイピングで具体化していきます。
発散したアイデアの中からいくつかのアイデアに絞り込み、類似サービスの調査をしながら具体的なストーリーにまとめていきます。
デザインチームは類似サービスの体験調査と体験設計への落とし込み、プロトタイピングでの具体化を担い、これらのプロセスを経て、クライアントとアイデアの方向性をすり合わせていきます。
このプロセスに時間をかけて密に取り組むことで、キックオフからプロジェクトメンバー全員ががつくるもの対して共通イメージを持ってデザイン・開発に入ることができます。
3つ目のポイントは、デザインと開発を同時並行で進めるためにストーリーマッピングとDDD(ドメイン駆動設計)です。
プロジェクトで「作るもの」が決まった段階で、開発チームはドメインエキスパートを巻き込んでドメインモデリングを行います。
それと並行して、POやPM、デザイナーはストーリーマッピングを用いて、作りたい体験を具体化し解像度をあげながら、初期フォーカスするスコープを切り分けていきます。
DDDではユースケースを洗い出す必要があるため、分担したチーム間で連携することがとても大事です。双方のコミュニケーションによって高速でブラッシュアップしながら解像度を高めることができています。
DDDへの取り組みについては詳しくはこちらをご覧ください。
そしてここから実際に着手するストーリーをチケット化していきますが、その際に「ATDD(受け入れテスト駆動開発)」を取り入れています。
「ATDD(受け入れテスト駆動開発)」とは、ユーザーストーリーの受け入れ基準をベースとしたTDD(テスト駆動開発)になります。
UIがFIXする前段階でもどういう状態が満たされているとユーザーにとって価値ある状態なのかという「受け入れ基準」を明記することで、デザインを詰めている間に開発チームが並行してロジックやラフUIの開発を進められるようになります。
4つ目のポイントは、実際にプロダクトを触ってもらってレビューをもらう機会を頻繁に設置し、できるだけ多くの人に参加してもらうようにしていることです。
機能が開発されていく中で、触れるようになった箇所から出来るだけ早く、出来るだけ多く、社内メンバーに触ってもらいレビューをもらう機会を用意しています。
具体的には、週一回のスプリントレビューという形でSlackのハドル機能でみんなに集まってもらい、レビューとチケット化を行いやすいように、Notionに声を上げてもらう形で実施しています。
このタイミングでは出来る限りプロジェクトに関わっていない「初見の感想が言えるメンバー」を多く誘うようにしています。実際にコーポレートやバックオフィスのメンバーが参加し、事情を知りすぎている人からは出てこないフィードバックがたくさん得られます。
最後に、リリース後の振り返りについてです。
プロジェクト期間の出来事を「個人」「チーム」「プロジェクト」の視点で振り返ります。
プロジェクト自体の振り返りでは、ポストモーテムという手法で期間内の出来事を時系列で整理し、その中にあったKPTや障害などの出来事の背景やチームの動き方を深掘ります。
デザインチームでは、施策に対するユーザーからの反応やどう使われているかを収集し、意図とのズレやユーザー理解のズレを把握し次のアクションに落とし込みます。
このように、繰り返しユーザーの情報や環境を整理していくことで、プロジェクトを行うたびにユーザーについての解像度が上がっていき、チームの開発速度や施策の精度が高まるようにしようとしています。
大規模プロジェクトでは、全員が共通のユーザー情報や仮説を持ち続け、同時並行的に進めていくために、情報や基準の可視化に取り組み続けることが大切です。
ブロックチェーンの領域で大規模で新しいプロジェクトが立ち上がり続けるGaudiyでは、引き続き自律分散的に動けるチームを目指してワークフローを磨き続けていきたいと思います。
今後も大規模プロジェクトの中でのデザイナーの立ち振る舞い方について触れていきます、お楽しみに。