TISのXD Studioは、DX企画ユニット DXクリエイティブデザイン部に所属する、UXデザイン専門のチームの名称です。ディレクターやUXデザイナーなど計16名が在籍し、主に、外部企業に対してクライアントワーク型の支援を行っています。
そんなXD Studioでは、クライアントワークの品質の統一を目指して、クライアントワークに最適化したデザインシステムの構築に着手しています。
一般的には、「デザインシステム」というと「表層部分の再現性と生産性を高めるしくみ」が連想されると思います。その上で、XDStudioとしてはより広く「一貫した体験を、生活者や顧客に届けるための仕組み」と位置付けています。
その第一歩として、まずはクライアントワークを行う上での“XD Studioの品質“とそれを担保するためのプロセスや思考の観点を明確にすることから始めています。
そのため、XD Studioのデザインシステムでは
XD Studioのデザイナーとしての役割
デザイン提案プロセス
思考のポイント (ex. ヒアリングの観点, アウトプットの具体例)
など、1つの事業だけでなく、複数のクライアントと関わる中でも一定以上のクオリティを担保したアウトプットを出せるよう、進め方や観点・考え方を明確にしています。
デザインシステムの一つの考え方として参考にしていただければと思い、XD Studioが解決したいものや具体的な中身についてまとめていきます。
XDS DESIGN SYSTEMで解決したかった課題は、大きく2つあります。
クライアントワークは、事業会社と違い、複数の事業に複数のメンバーが関わることになります。
取り組む人によってプロジェクトの進め方やアウトプットの品質がバラバラになってしまうと、TIS、XD Studioらしいデザインという認識をお客さまに持ってもらうことができません。
そのため、誰がプロジェクトを進めても、属人的にならずに、常にTISらしい “ちょうどいいデザイン” ができるようにしていこうとしました。
もう一つの理由はメンバーのデザイン経験の少なさです。
XD Studioは、社内公募を通して、半数以上がデザイン経験が少ないメンバーで構成されています。
経験豊富なメンバーばかりではない状況で、経験によらず一定以上の品質のアウトプットが出せるように、成長の仕組みを用意する必要がありました。
そこで開発したのが、クライアントワークのためのデザインシステム「XDS DESIGN SYSTEM」です。
目的は、クライアントワークにおける属人性をなくし、かつ経験の少ないメンバーでも高品質なアウトプットを出せるよう成長を後押しすることです。
そのため、一般的な事業会社のように単一の事業に対してつくられるデザインシステムのような項目とは大きく異なります。XD Studioに所属するデザイナーやデザインプロセスに対しての基準をつくるための項目を、XDS DESIGN SYSTEMでは取り入れています。
例えば以下のような項目をまとめています。
XD Studioのデザイナーとしての役割
デザイン提案プロセス
思考のポイント (ex. ヒアリングの観点, アウトプットの具体例)
マネージャー、ディレクター、デザイナーの3つの役割に対して、必要な動き方や、それぞれの関係性を図解しています。
XD Studioでは、プロジェクトによってデザイナーやディレクターなどの役割を入れ替えることがあります。初めて取り組む役割でも、動き方のイメージがつくよう、各役割や関係性を細かく定義しています。
デザインを提案する際のステップとプロセスを分解し、それぞれどのようなことを行うとプロジェクトがうまく進行するのかをまとめています。
例えば、事業設計をするステップにおける、要件定義の段階では、以下のようにプロセスをまとめています。
顧客の要望・要求の理解
要求に対して問いを立てる
理想と現状のギャップを洗い出し
クライアントの打ち手の評価
XDSが考えるあるべき姿 (To Be)を提案する
クライアントが想定していない思考を巡らす
提案の妥当性を検証
デザイン観点のベネフィットの提案
ここで工夫しているのは、手法は限定せず、観点のみ明示することです。クライアントワークでは毎回状況が違うため、具体的な手法は各ディレクター/デザイナーが自分で決めるようにしています。
観点があるので迷わず進めることができ、かつ毎回自分で最適な手法は考えるため、成長も促すことができるようになっています。
もう一つの工夫は、レビュータイミングを明示していることです。自由に進めた結果、人によって品質にブレが生まれることを避けるため、一定のタイミングでマネージャーからのレビューを必ずもらうように促すことで、品質を担保するようにしています。
ステップとプロセスの中で、手法にも迷ってしまいそうな部分については、思考のポイントもまとめています。あくまで、そのまま埋めるのではなく、思考の補助材料として使うものと位置付けています。
例えば、ヒアリングの観点は、ヒアリングシートとしてまとめています。
また、各段階でどのようなアウトプットを出すべきか基準を揃えるため、アウトプットのイメージもまとめています。
他にも、提案や見積もりなどのコミュニケーションの観点も項目としてまとめています。
XD Studioでは、このような仕組みを通して、TISらしいデザインを誰でも実現できるようにしようとしています。
前述したように、XD Studioは、TISらしいデザインを、「ちょうどいいデザイン」と定義しています。
ちょうどいいデザインとは、[納得感] と [サプライズ] の両方がピッタリと表現されている状態を指します。クライアントのビジネスを前に進め、成果につなげ、納得感のある提案でありつつ、XD Stduioだからこそ生み出せる高い品質とユニークな視点で驚きを生めるような、そんな提案を理想としています。
このように理想とする品質を定義したとしても、クライアントワークは無形のサービスなので、品質の担保が非常に難しいです。だからこそプロセスをデザインシステムにまとめることで、誰もがXD Studioらしさを体現できるようにしようとしています。
デザインシステムは、さらに更新していく予定です。今回プロセスを細かく切り分けたので、次はそれらのプロセスのどこを強めていくのか?をメンバーが考えられるような、キャリア設計のしくみに発展させていこうと思っています。今後もより良いデザインに取り組める組織づくりを進めていきます。