「効率よりも効果を」「単なる接点づくり以上に、価値を届けることを重視したい」。そうした想いから、TISのUXデザイン専門チーム XD Studioは「無料オーダーメイド型デザイン講座」を実施しました。

まだ知名度が十分ではない私たちにとって、本講座は新たなお客様との接点を生みだすための取り組みでした。そのなかでも、講座を実施するにあたって何より大切にしたのは、お客様が抱えている課題に真正面から向き合い、「実務で役立つ支援をお届けする」ということです。

本記事では、デザイン講座の企画背景から設計の工夫、そして実施を通じて得られた効果についてご紹介します。

XD Studioは、2022年に発足したTISのUXデザイン専門チームです。「意味や価値を創造するデザインスタジオ」を標榜し、社内外問わず、これまでさまざまなプロジェクトに寄り添い、伴走支援を続けてきました。

XD Studioが携わったプロジェクト事例 ( 詳細はこちら https://cocoda.design/teams/tis

実績を着実に積み重ねてきた一方で、立ち上げから間もないということもあり、「TISのことは知っているけれど、デザイン部門があることは知らなかった」という声をいただくことも少なくありませんでした。

そうした状況のなかで、私たちの存在をより多くの方に知っていただき、お客様の課題に直接向き合う機会をどう広げるかと考え始めたことが、今回の取り組みの出発点でした。

こうした背景のもと、今回取り組むことにしたのが「無料のオーダーメイド型デザイン講座」でした。

前述の通り、当時は実績は有るものの、新しい組織で認知があったわけではなかったため、泥臭くても、一歩ずつ自分たちの手でお客様との接点を作っていく必要があると感じていました。

そして、最初の接点からお客様の役に立ち、その中で私たちの価値を知っていただくことを目指しました。

そして、「効率よりも効果を重視する」姿勢を大切にしてきました。たとえ効率が高くなくとも、受講いただいた方にとって本当に意味のある学びの体験を提供できれば、深く信頼していただけるお客様が一人ずつでも増えていくはず。そんな思いから、「お客様の課題に寄り添い、オーダーメイドで講座を提供するのがよいのではないか」と考えました。

ここからは、本講座がどのように設計・実施されたのか、そのプロセスをご紹介します。

まず、ターゲットと講座内容の骨子を固めたうえで、メルマガによる周知を行いました。

そのメルマガをご覧になった、日本システム技術株式会社様(以下JAST)から「これは絶対に受けたほうがいいと思った」とご連絡をいただいたことが、今回のご縁のきっかけです。

送付していたメルマガの一部

講座の設計にあたっては、事前にヒアリングを実施し、以下のようなありたい姿や課題感を共有いただきました。

これまで、主にエンジニアとして開発業務を担ってきたチームの皆さんが、UI/UXデザインにも主体的に取り組み、自社の強みとして確立しようと努めてこられました。ただし、実践方法においてはまだ手探りの部分も多く、課題を感じておられました。

私たちXD Studioも、SIerであるTISにおいてデザイン部門を立ち上げてきた経験があり、JASTの皆さんが抱える課題には強く共感できる部分が多くありました。だからこそ、これまで私たちが培ってきた知見を活かして、少しでも力になりたいという想いを持って講座を設計しました。

講座を設計するにあたっては、JASTの皆さまが抱える課題を解消することを念頭に、以下のポイントを意識しました。

  • 実践形式を重視 : 座学ではなく、手を動かして考えるワークを中心に構成することで、学びがその場で定着しやすくする。

  • 実業務に沿ったテーマ選定 : JASTの皆さまが実際に取り組んでいるプロジェクトを題材にすることで、より具体的にイメージしやすい構成にする。

  • 双方向の対話 :限られた時間内でも十分に疑問が解消できるように、参加者との対話を重視する構成にする。

講座は90分構成で、オリエンテーションにはじまり、人間中心設計に基づくUXデザイン、 UIデザインへの展開、そして質疑応答という流れで進行しました。約90ページにわたるスライドを用意し、必要な情報をしっかり届けられるように設計しました。

プログラム概要・タイムテーブル

当日は、JASTから6名の方にご参加いただき、オンライン形式のワークショップとして講座を開始しました。

講座冒頭では、自己紹介や講座の概要に加え、人間中心設計の背景や歴史についてもご紹介しました。

本講座のゴールは「架空の事業企画をテーマに、ユーザーゴールから逆算して体験をつくるための考え方や流れを掴むこと」とし、下図の架空の事業企画を題材に講座を進行しました。

前半のパートでは、「人間中心設計によるUXデザイン」をテーマに、「調査・分析・設計・評価」の4つのプロセスに沿ってワークを実施しました。

人間中心設計によるUXデザイン : ワークの概要

「調査・分析・設計・評価」の4つのプロセスについて具体的に解説すると共に、架空の事業企画をテーマとしたミニワークもあわせて実施しました。JASTの皆さまが抱えていた「知識をいかに業務に活用するか」という課題に対して、具体的な解決のヒントとなるよう意識して構成しました。

人間中心設計によるUXデザイン : 講座資料の一部

その後の「UXデザイン〜UIデザインへの繋ぎ方」のパートでは、UXデザインのプロセスを通じて定めたプロダクトコンセプトを、いかにUIに反映させていくかという視点で、考え方やアプローチを共有しました。

UIデザイン〜UXデザインへの繋ぎ方 : 講座資料の一部

そして、最後に質疑応答による疑問解消を行い、講座をしめくくりました。

デザイン講座の実施後に行ったアンケートでは、5点満点中4.6点という高評価をいただきました。さらに、実際に参加された方々からは、以下のようにコメントが寄せられました。

事前のヒアリングをもとに、「本当に意味のある講座だった」と感じていただけるよう丁寧に準備を進めてきたので、このような反応をいただけたことを大変うれしく思っています。

さらに講座終了後には、継続的な勉強会のご相談や、実案件での伴走支援依頼もいただき、受注につながる成果も生まれ、次の取り組みへと広がっています。

私たちがこれまで現場で培ってきた学びや視点をより多くの方に届けることで、「より良い体験づくりや課題解決の力を、共に育む機会をつくれないか」と考えたことが、今回の取り組みの出発点です。

初めての試みとなった本講座では、受講者の方々に「本当に良かった」「意味があった」と感じていただけるような体験の提供に真摯に向き合ってきました。その結果、受講者の方々に満足いただき、継続的な取り組みにもつながっていることは、非常にうれしいことです。

効率よりも効果を。量よりも深さを。広く浅い関係よりも、熱量のある共感を―。XD Studioが日頃から大切にしている、お客様と向き合う姿勢を継承し、入口から中身まで一貫して体現できたことが、今回の結果につながったのではないかと思います。

私たちXD Studioが目指すのは、サービスやプロダクトに意味と価値を吹き込むことで、社会や人々に愛される体験を生み出すこと

こうした体験は、私たちだけでは実現できるものではなく、パートナーであるお客様との共創によって、はじめて実現できると考えています。

サービスやプロダクトの開発、デザイン組織の立ち上げなどでお困りのことがあれば、ぜひ一度ご相談ください。具体的な支援ができるかどうかに関わらず、これまで培ってきた知見や経験をもとに、少しでも皆さまのお役に立てればと考えています。

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