エイチームコマーステックが運営するドッグフードブランド「OBREMO」のブランドリニューアルを、2023年7月に発表しました。

サービス開始から2年後にブランドリニューアルをしました。私は、デザイナーとしてブランドリニューアルに関わり、VI、タグライン、ブランドムービー、パッケージ、など幅広いクリエイティブを刷新しました。

ブランドリニューアルしたOBREMOの、VI、タグライン、ブランドムービー、パッケージ

今回のブランドリニューアルでは、外部パートナーも一部巻き込みつつ、すべてのプロセスをエイチームコマーステック内部のメンバーでディレクションしていきました。

内製で進めたからこそできた、ブランドのあり方から見直す過程を中心に、ブランドリニューアルの裏側を残していきます。

OBREMOは、2021年8月に誕生したドッグフードブランドです。累計200万食※を突破し、多くの飼い主さまとワンちゃんにご愛用いただいています。

※ 2021/8/30~2023/7/24の累計販売量(1日3食換算)

サービス開始から1年後にはブランドリニューアルの検討を開始。議論や制作に約1年を費やして、今回のブランドリニューアルに至りました。

このタイミングでリニューアルを行ったのは、リリース当初はそこまで考えきれていなかった、というのもありますが、1年間サービスを運用してみたからこそブランドへの注力が必要だと改めて認識できたことが影響しています。

具体的には、ブランド投資を判断したポイントとして、以下の2つがありました。

OBREMOがサービスを提供するドッグフード市場では、とにかく競合ブランドが多く、お客さまとしてもどのブランドを選んだらいいか分からない状態になっています。

その中で、歴史のあるブランドも多く、新興ブランドであるOBREMOは、簡単にはお客さまに届けられません。

1年間サービスを運用する中で、そのような市場の理解が進み、だからこそOBREMOというブランドを強く「識別」してもらうことが最も大事な課題なのだと気づきました。

ペットフードブランドにはたくさん競合がいる中で、どう「識別」されるかが最も大事な課題だった
(*画像内では、当時のロゴ・ブランドであった「Obremo」と表記しています)

そこで、識別されるブランドづくりに投資することが経営として判断されました。

当時の経営会議のドキュメント
「ブランドというアプローチで資産をつくるため、ブランドづくりに投資する」ということが意思決定された
  • ドッグフードの販売、特にインターネットで選ばれるということは難しい
  • それでも無闇に広告費をかけるのではなく、識別されるブランドに生まれ変わるよう投資を行う
  • そうすることでブランド資産が積み上がり、売上にも繋がるのではないか

そのような経営判断が行われ、今回のリニューアルプロジェクトが始まりました。

OBREMOで、ブランドリニューアルに取り組むと決まった後は、以下のような流れで進めていきました。

今回のブランドリニューアルの全体像

約1年間にわたって、アイデンティティの定義から、VIやタグラインの更新、ブランドムービーの制作など幅広く取り組んだ

最初のラフ案の制作まではうまく進んでいたのですが、経営会議にラフ案の提案を持っていったところ、大きくつまづくことになりました。

発散したクリエイティブ案を5つ経営会議に持っていったのですが、そこで「この5案に絞るまでにどのぐらいアイディアを発散したのか?」と聞かれた時に、明確に答えることができませんでした。

経営会議に持っていったクリエイティブの案の例

5案を持っていったが、アイディアの発散が足りないのでは?コピーは本当にこれで良いのか?などのフィードバックをもらうことに

経営会議でもらったフィードバックの声
もうこれ以上良いものは出ない、と言えるくらいまでブラッシュアップして、そこからクリエイティブに落とし込んでいくべきではという指摘を受けて、大きく進め方を見直すことに

もちろん、それぞれのクリエイティブに意図はあり、ユーザーへの調査も高い頻度で行っていたのですが、イメージを制作する前のアイディアの発散がまだまだ足りておらず、チームとしても意図を固め切れていない状態だったことに気づきました。

そこで、可能な限りパターンを考慮した上で、そこから絞り込んでOBREMOのブレない魅力を定義しようと考えて、改めてタグラインからパターン出しをすることにしました。

ここでも、いきなりタグラインを出すのではなく、まずはブランドのあり方について認識を揃えることから進めました。

タグラインからいきなり発散するのではなく、ブランドとしてのあり方から整理をしていきました。

例えば、ブランドと商品の関係性について、今のOBREMOがどういう状態かを整理しています。

今のOBREMO (当時はObremo) において、商品とブランドがどのような関係性になっているのかを整理
商品=ブランド、という形になっているため、ブランドよりも先に商品を認知していることを表した

また、今後のOBREMOとして目指すブランドのかたちについても整理しました。

OBREMOが、今後はどういうかたちになるのかを整理

ブランドという円の中に、商品やサービスが存在し、「ペット全般の商品やサービスを扱うブランド = OBREMO」となっていくことを示した

余談ですが、今回のブランドリニューアル全体で、私はデザイナーとして、このような曖昧になりやすい議論をした直後に、チーム内の認識がうやむやにならないように毎回資料に整理していました。(これを、認識を揃える活動と呼んでいます。)

抽象的な議論にならないように、必ず議論を整理して図解してメンバーに共有する「認識を揃える活動」

このように、そもそものつくりたいブランド定義やあり方から、丁寧に認識を揃えていくことで、ブレない軸が見えてきました。

そもそものOBREMOというサービスやブランドの位置づけを整理した上で、タグラインを発散していきます。

ちなみに、タグラインをつくる前にも、どのようなものをアウトプットすれば良いかを図解して、チーム内の認識を揃えています。

タグラインという言葉の意味や、アウトプットイメージが揃うように、認識を揃える活動の一環として資料にまとめた

その上で、外部のコピーライターの方も巻き込んで、1人100案ずつ、全員で500案のタグラインを発散していきました。

タグライン発散の様子
外部コピーライターの方もこのタイミングでお呼びして、1人あたり100案、全員で約500案のタグラインを発散した

このようなプロセスを経て、最終的に、「愛犬と食卓を囲もう」というタグラインに決定しました。

OBREMOの新しいタグラインが「愛犬と食卓を囲もう」に決定

かけがえのない大切な存在である愛犬はペットではなく家族であり、愛犬が食べているフードは「餌」ではなく「食事」です。

愛犬の健康を願い、品質を妥協しないことは愛情表現のひとつだと私たちは捉えています。

食材の調達から加工、生産環境に至るまで気を配り、"人と同じ食卓に並べられる品質のフード"をお届けする。OBREMOと飼い主の皆さま、そして愛犬との約束をこのメッセージに込めました。

タグラインも含め、OBREMOというブランドのコンセプトや理念を表す要素は以下の3つだと整理しています。

  • 愛犬は家族である

  • 家族の食事の品質に差があってはいけない

  • OBREMOは人と同じ食卓に並べることができる品質の高いごはんである

タグラインがブレないものになっていたので、そこからクリエイティブへの落とし込みは、いかにその定義の中で、魅力をブラさず最大限に表現できるか、というところがポイントでした。

今回のリニューアルで伝えたかったのは"品質の良さ"でした。これがブレることのないOBREMOの魅力です。

そして"品質の良さ"を3つのポイントで分解して考えていました。

  • OBREMOの品質の良さを表す3つのポイント

    • 悩みに対応

    • 上質な食材

    • 保存料不使用

表現においては、その3つのポイントを欲張って全部伝えるのではなく、1ポイントに絞って表現することを意識していました。

提案時の資料の一部

タグラインをもとにビジュアル表現に落とし込む時に、要素を絞って表現することを意識していた

すべてを絵に表現すると、伝えたいイメージが弱くなってしまうと考えていたからです。

このような考え方で、3案のVIを作成し、提案しました。

新しいVIの提案の様子

3案を作成し、タグラインとの繋がりや、品質を感じてもらえる要素をもとに意思決定した

最終的に、新しくロゴは以下のようにアップデートされました。

VIのビフォー、アフター

OBREMOはリアルの梱包パッケージも制作しているので、パッケージもリニューアルを行っています。

パッケージも、提案時から細かいブラッシュアップをしていきました。

提案当初は少し強い色みだったのですが、ターゲットが女性であることや、親しみやすさがあっても良いのでは?との意見をチーム内で発散し、検証していきました。

パッケージデザインの制作の様子
細かな色味や、角丸の有無など、クリエイティブの詳細な調整を行っていった

制作が必要なクリエイティブは幅広く、制作部分はすべて私が1人で担当していたので、期間としては1〜2ヶ月ほどかけています。ただ、そもそもの設計が固まっていたため、方向性に迷うことはなく、しっかり品質を高めて出すことができました。

結果として、2023年7月にブランドリニューアルが行われました。

社内のメンバーからも、リニューアルに対してポジティブな感想をもらっており、一安心しています。

社内のメンバーからの反応のまとめ
リニューアル直後から、「国産ブランドというイメージがついた」など意図通りの印象を感想としてもらっている

今回の1年間に及ぶリニューアルの中で、手探りな中で出したアウトプットがひっくり返ることになった時、正直かなり心が折れかけました。笑

ただ、プロジェクトとして成功したのは以下のような要素があったからだと思います。

  • 目的はあくまで事業成長、目標は業績、という目線をブラさずにプロジェクトを進められていたこと

  • そして常にプロジェクトメンバーの認識を揃え続けるように動いていたこと

  • モノよりも、そもそものあり方から見直す粘り強い進め方ができたこと

ブランドへの投資は、検証的に、これからも続けていきます。引き続きOBREMOやエイチームコマーステックの活動を発信していきますのでお楽しみに。

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