ウエディングパークは、フォトウエディング・前撮りのクチコミ情報サイト『Photorait』を運営しています。Photoraitは、カップルのこだわりに合わせた理想のフォトスタジオを見つけることができるサービスです。

Photorait

もともとPhotoraitのデザイナーとして活動していた私は、2025年10月から役割を広げて、「事業のトップラインを伸ばす広告商品開発」の企画から売上達成までをミッションとして担い始めました。

私がプロジェクトの進め方として意識したのは「インサイトから売れる商品をつくる」ということです。

これまでのPhotoraitでは、せっかく新しく広告商品を立ち上げてもあまり使ってもらえないということも時たま起こっていました。

なので今回は、これまでの商品がどう使われているかの分析や、フォトスタジオの方へのヒアリングを通して、「本当にフォトスタジオの方が求めているものは何なのか」という深堀りを丁寧に行い、そこで得られたインサイトから「確実に売れる商品を速くつくる」アプローチを取り入れました。

結果として、3ヶ月で新商品をリリースすることができ、売上目標も大幅に達成できています。このインサイト駆動で進めた新商品開発フローについてまとめます。

Photoraitは2015年に生まれた、フォトウエディング会場探しに特化したプラットフォームです。

フォトウエディングとは結婚式の前撮りや後撮り、婚約フォト、マタニティフォトなど結婚に関する写真撮影の総称で、結婚式を挙げる方もそうでない方も広く利用している思い出を残す選択肢です。

Photoraitには、フォトウエディングをサービスとして提供する500軒以上のフォトスタジオと4万件以上のクチコミが掲載されており、カップルはクチコミなどをもとに自分に合うフォトスタジオを見つけることができます。

Photoraitの体験

事業的に見ると、Photoraitは「カップル」「フォトスタジオ」の2者に価値提供をしています。今回の新商品開発は、フォトスタジオ向けの価値を強める目的で始まったものでした。

国内ではフォトウエディングを挙げるための選択肢も増えています。(ex. セルフフォト、知人のフォトグラファーにお願いする…) そのため、フォトスタジオとしては「自分たちのサービスの魅力をもっと知ってもらって、カップルの方に選んでもらえるように」という課題感をお持ちです。

Photoraitでは、このようなフォトスタジオの課題を解決するべく新商品開発を続けてきました。より集客を行いやすくする機能や、どんな人が検索しているのかを分析できる機能など、さまざまな機能を提供しています。

Photoraitではフォトスタジオ向けの新商品開発をこれまでも続けてきた

私が新商品開発企画にアサインされる前から、Photoraitの商品開発には2つの課題がありました。

一つは、商品開発の負荷が高く、企画に時間がかかってしまっていたことです。Photoraitではより多くの広告商品をつくっていくために、「めにゅつく」という名前の新商品コンペのような仕組みを取り入れて、セールス・開発の全職種が商品案をつくるフローを取り入れていました。

しかし、業務と並行しながらの商品企画となってしまうので、売れる理由や根拠を集める時間も取りづらく、確度の高い企画案が生まれづらい状態になってしまっていました。

商品企画に時間がかかってしまう

この一つ目の課題も影響して、「新商品をつくっても売れない」という課題も顕在化していました。

せっかく商品をつくるところまでいったとしても、リリース前にフォトスタジオの方にヒアリングをしてみると「あまり魅力的に思えない」と共感されなかったり、リリースしたものの「売れない・使われない」という状況が起ることもありました。

新商品をつくっても売れない・使われないことも

このような状況が続いていったことで、事業としての伸び悩みが生まれてしまい、新商品開発に関わるメンバーもどこか疲弊しているような状態になっていました。

私はこのような現状を踏まえて、今のPhotoraitでは「商品をつくる」ということではなく、「売れるようにする」ことを課題にすべきだと考えました。

このまま売れるかどうか分からない状態で商品企画を続けていったとしても、おそらくリリースしても使ってもらえないことは変わらず、メンバーが疲弊した状態も変わらないはずでした。

結局、「狙って売れるものをつくれるようになる」ことが一番の課題解決になるだろうと思い、そのためにデザイナーとして何ができるのかを考えていきました。

フォーカスする課題を「つくる」ではなく「売れる」に置いた

ここで最も重視していたのが「良し悪しは、常にクライアントの体験 (インサイト) で判断する」ということです。

売れる商品をつくるためには、フォトスタジオの方が何に価値を感じていて、どういう課題を持っているのかを常に意思決定の基準にしていくことが重要だからです。

私が主導してそのようなインサイトを集めながら、チームで納得感を持って意思決定を進めていけるように、以下のようなプロセスで新商品開発をリードしていきました。

インサイト駆動で進めた新商品開発フローの全体像

まずは、確度の高い商品企画案をつくるところから始めました。

今回は3ヶ月で新しい広告商品の売上をつくるところまでがゴールだったので、できるだけ企画をつくるまでのスピードを速くする必要がありました。

もっと言うと、チームメンバーが「これなら売れそう」と納得している企画をつくることも重要だと考えていました。これまでなかなかヒットする商品がつくれていなかったので、「みんなで売れる商品を企画できた」という成功体験をつくることが必要だろうと思っていたためです。

商品企画の課題

そこで、チーム全員で1日で商品企画を終わらせる「1日型めにゅつく」というワークショップを設計しました。(めにゅつく…「メニューをつくる」の略)

1日型めにゅつくは、セールス・開発の全メンバーが集まって、チームに分かれて1日で新商品のアイデアやプロトタイプをつくり、マネージャーによる審査までを完結させるというものです。

「1日型めにゅつく」の全体像

この場の設計ポイントは、商品企画に必要な情報はすべて事前にまとめておいたことでした。

あらかじめメンバーには「事前準備ゼロで来てください」と伝え、負担をかけずに参加してもらうようにしておきます。その裏側で、会の当日までにフォトスタジオ側、ユーザー側のインサイトを整理しておきました。

例えば、フォトスタジオ側のインサイトについては、セールスメンバーそれぞれから「フォトスタジオの課題感」「受注理由」「失注理由」を回収させてもらい、スプレッドシートにまとめています。

また、ユーザー側のインサイトについても、毎年Photoraitが実施している「フォトウエディング動向」をみんなが参照しやすいようまとめておきました。

セールスから情報を回収して、フォトスタジオの課題や、受注/失注要因を整理
市場動向調査をもとに、ユーザーのインサイトも整理

さらに、これまでの商品が実際どのように使われているのかを確認できるように、各商品の実データをまとめたり、それぞれの商品はユーザーのジャーニーのどこに対応しているのかも可視化しました。

ユーザージャーニーに対応させて今の商品ラインナップを可視化

当日は、これらのインサイトを確認しながら、事前に用意していた企画開発のステップをなぞりつつ、各チームでアウトプットを出してもらいました。

1日型めにゅつくの当日の進行イメージ

結果として、5つの案が生まれました。これをすぐに商品化していけるように、その場でマネージャーに審査してもらうところまで行います。

この審査観点についても事前にマネージャーとすり合わせて、商品化に必要な観点から審査シートをつくっておきました。

1日で5つのアイデアが生まれ、審査まで行い、企画を進めていくことを意思決定

最終的に、審査をもとに1〜5位の案が決定できたので、ここからは私の方で実際に商品化していくための検証を進めていきます。

このまま1位の案をすぐに商品開発したくなるところですが、ここで立ち止まって実際のフォトスタジオのインサイトを確認しにいくステップを挟んでいます。

今回の目的は「売れる商品をつくる」ことだったので、アイデア主導で進めるのではなく、企画が本当に価値になるのかをインサイトで確かめておきたかったからです。

商品開発の意思決定は、インサイトで行う

検証の前に、「1日型めにゅつく」で生まれた5案を私の方でブラッシュアップしておきます。この段階ではまだどの案も可能性があるはずなので、5位の案でもうまく要素として取り入れられるものがあれば活用したいと思っていたからです。

マネージャーともすり合わせて、結局、1位の案と2位の案をベースにした2つの企画を検証することが決まりました。

「1日型めにゅつく」の案をブラッシュアップして、検証する企画案を2つに絞る

ここから、Photoraitをすでに利用いただいているいくつかのフォトスタジオへの検証を始めます。

検証は、セールスメンバーのアポに同席して直接商品案を見せてインタビューを行うことと、より広く課題感を検証するために全クライアントにアンケートを行う2つの方法で進めました。

一部クライアントへのインタビューと、全クライアントへのアンケートで検証

すでに「1日型めにゅつく」の時点でこのような検証をすることを想定していたので、各チームにはコンセプトやプロトタイプを資料にまとめてもらっていました。検証の場ではこの資料を私の方で少しだけ手直ししたものを見せてヒアリングしています。

「1日型めにゅつく」でメンバーにつくってもらった資料を活用して検証

結論として、このヒアリングによって開発の優先度を入れ替える意思決定をすることができました。

ここでヒアリングしていたのは「1位の案: フォトスタジオの業務効率化」「2位の案: クチコミを使ってさらに魅力を伝える」という2つの方向性の企画です。

検証していた2つの企画案。「業務効率化」と「価値や魅力をより深く伝える」という別々の方向性

事業的にはどちらも価値につながりそうだと予想していたのですが、実際にヒアリングを進める中で、2位の「魅力を伝える」企画の方が抜本的な価値につながりそうなことが分かってきました。

具体的には、それぞれの案に対して以下のような反応をもらっています。1位案については「もちろん嬉しいのだけど、それよりもPhotoraitでしかできないことをお願いしたい」という声が多く挙がりました。

1位案、2位案を見せた時のフォトスタジオの方の反応

逆に2位案の反応からは、フォトウエディング業界には「それぞれのスタジオの差別化要素や魅力がユーザー目線では分かりづらい」という問題があり、フォトスタジオは「本当はサービスの中身や価値を見てほしいのに、価格や雰囲気のような部分で比べられてしまう」という強い課題感を持っていることが読み取れました。

つまり、Photoraitが本当に満たすべきインサイトは「業務を楽にできる」というよりも、「もっと各スタジオの魅力が伝わる」ということなのだと捉え直します。

Photoraitとして注力すべきインサイトを整理

このインサイトを踏まえて、「業務効率化」の商品ではなく、お客さまの課題感により深く刺さった「クチコミで魅力を訴求する」方向の企画を採用することを意思決定しました。

インサイトを踏まえて商品開発の優先度を意思決定

開発前にインサイトを検証しなければ、おそらくそのまま1位の商品開発が進んでいて、リリース後に使われないことが起こっていたかもしれません。

事業目線ではなく、最終意思決定はお客さまのインサイトで行う姿勢を徹底できたことで良い判断を行えたと思います。

満たすべきインサイトや企画案が固まったので、ここからはスピード勝負です。

ここでは検証を進めてきたことで深くインサイトを理解できている私自身が、企画から仕様策定、デザインや開発に至るまですべてのプロセスをリードするような体制を取りました。

インサイトを押さえた人が高速で開発を進める

Photoraitでは通常、プロジェクトオーナーが企画書までを作り、仕様策定はディレクターが行い、そこからデザイナーとエンジニアが実装を進めていく分業体制が取られていました。

しかし今回は「とにかく速く売れる商品をリリースして、売上をつくる」という目的があったので、検証を主導してきた私が企画から仕様策定までを担当する方がスピードを出せると考えて、一気に仕様まで固めていきました。

スピードを考えて、インサイトに一番詳しい人がすべてのプロセスをリードする体制を取った

このようなやり方だと納得感が生まれづらい場合もあるかもしれませんが、「1日型めにゅつく」ですでにチーム全員が方向性に合意できていて、検証を経てフォトスタジオのインサイトも回収できていたので、結果としては全く問題なくチームの合意をつくることができました。

このようなプロセスで、企画開始から約4週間で新商品の企画・検証・仕様決定を終えて、開発に動き出すことができています。

商品の企画から仕様までスムーズに意思決定できて、開発に向けて動き出せた

結果として企画開始から約2ヶ月でリリースの目処が立ち、新商品の販売を開始することができました。現在はすでに企画ページも正式リリースされています。

3月31日に正式リリースされた「クチコミPR」

フォトスタジオのインサイトを押さえた商品開発ができていたことで、テスト販売の結果は大幅に目標を上回りました。

まずはテスト的に地域を絞って限られたお客さまに新商品のご案内をしたのですが、テスト販売開始後すぐに想定していた枠数が完売し、増枠をすることになりました。

導入を決めていただいたお客さまからも多くの期待をいただいており、これまでのPhotoraitの新商品では満たせていなかった価値提供につながっていく見込みが立っています。

テスト販売開始後に大きな反響、当初の販売枠は即完売し、増枠に

また、この販売結果をもって、私がミッションとしていた「事業のトップラインを伸ばす新商品開発」による売上達成も無事にクリアすることができました。

個人的にも、初めてデザイナーとして商品企画から売上達成までリードしていく役割を担ったので、とても学びが大きかったプロジェクトになりました。

プロジェクトにアサインされた時から「デザイナーのバックグラウンドがある自分だからこそできるアプローチをしよう」と考えていました。ユーザー視点を強めて、本当に価値になるものをつくることにフォーカスしようとしたことが、結果的にPhotoraitの商品開発に新しい視点を持ち込むことにつながったのではないかと思います。

「つくる」だけではなくて「売れる商品をつくる」という課題意識を持って、常にインサイトを意思決定の基準にできたことで、これまでのPhotoraitにはない価値をつくることに合意できました。そして何より、フォトスタジオのみなさまにも期待いただける商品をリリースすることができたのが嬉しいです。

今後も、事業目標があって速くつくりたい時こそ「本当にこれはお客さまに使われるものなのか」ということを必ず問いかけて、お客さまのインサイトで常に意思決定をしているようなチームにしていきたいです。

これから今回の商品開発フローをアップデートさせつつ、さらにPhotoraitの価値を強めていければと思います。

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