MIXIがプロデュースするライブエンターテインメントショー「XFLAG PARK」は、2016年から2022年まで毎年開催していたイベントで、私は2020年からwebディレクターとして制作に携わっています。

最初はWebディレクターとしてのWebサイトを作るためのアサインから始まったこの案件ですが、色んな状況が重なり、少しずつWebディレクターの領域を越境していく、そんな体験を綴ったものをお伝えできればと思います。

XFLAG PARKは、モンスターストライク (以下モンスト ) が10周年を迎える2023年より「DREAMDAZE」としてブランドを刷新して開催しています。
2020年からディレクターとして、XFLAG PARKにおける制作の進行管理や、コンセプト設計、クリエイティブの監修などに携わっています。

XFLAG PARKは、MIXIがプロデュースするモンスターストライクをはじめとしたゲームの世界を拡張した、未体験ライブエンターテインメントショーです。

2016年から2022年まで毎年開催しており、2日間で数万人が訪れるような大規模イベントとなっていました。 これほど規模も大きくなってくると、開催にあたって、「特設サイト」「会場内のステージ」「グッズ」などオンライン・オフライン問わず多様なクリエイティブを制作しますし、スケジュールも、関わるメンバーの数も当然多くなります。

XFLAG PARKにおいて制作されるクリエイティブ例。

そのなかで、ディレクターとしてはクリエイティブ制作が滞りなく進み、結果としてイベントが成功することを役割として担います。

プロデューサーや、キービジュアルの制作を担うデザイナー、各種アイテム制作を担うパートナーなど、様々なステークホルダーと関わり、進行管理はもちろん、コンセプトの設定やクリエイティブ監修など、状況を俯瞰しながらその時々で必要なことに取り組みます。

XFLAG PARKのクリエイティブ制作に関わるステークホルダーと、ディレクターの位置づけ。

ここからは、XFLAG PARKでのディレクターとしての動き方をまとめることで、多くの部署、多くの職能、多くの人が携わる場面で、関わる人を適切に巻き込みながらうまく進めるための1つの事例として参考になれば幸いです。

XFLAG PARKは毎年7月初旬に開催していたイベントで、開催終了と同時に次回に向けた準備に取り掛かります。

まずはクリエイティブにおける「拠り所となるコンセプト」を探り当てるために、次のようなことに取り組みます。

コンセプトは主にプロデューサーと対話しながら設定するため、自分軸でも「何を成すべきか」を固めておくことが重要です。

ユーザーにとって、XFLAG PARKにとって、モンストにとって、社会にとって、様々な視点から成すべき理由の論拠を探り当てます。


マインドマップを用いながらキーワード、面白いと思ったアイディア、過去のイベントの振り返りを基に入れた方が良さそうなものを抽出します。

資料には、全体の方向性の提案や、成し遂げたいこと、クリエイティブテーマ、タグラインを盛り込みます。


XFLAG PARK 2022に向けて作成した提案資料の一部。

準備したものをプロデューサーに提案し、対話しながらコンセプトを定めていきます。 ここでの目的は、2つあります。

  1. プロデューサーと対話をして、今回のイベントへの考え方を自分の中に取り込む

  2. 対話の中で、考え方を言語化して、より多くの人に考え方をシェアできる状態にする

「あれ?自分が考えたアイディアを通すんじゃないの?」と思ったかもしれませんが、対話する相手はイベントのプロです。そのため、答えみたいなものは相手側が持っています。

それを対話の中で練磨して、言語化する。これにより「クリエイティブ制作が滞りなく進む」ために、必要なことをできる状態になることがディレクターに求められます。

対話をもとに、全体の方向性の提案や、成し遂げたいこと、クリエイティブテーマ、タグラインを正式なものにして資料をまとめたら、このフェーズは終了です。

XFLAG PARK 2022でのクリエイティブテーマや、コンテンツを作る方向性の言語化資料。

このような動きが客観的に見て役立つものであったか、プロデューサーからコメントをもらったものがこちらです。(以降、各フェーズでコメントをもらっているので、客観的な視点として参考になれば幸いです)

XFLAG PARK プロデューサーからのコメント。

その年の顔となるメインのビジュアル(以降KV)を制作していきます。
 まずは、前のフェーズで固まったコンセプトやクリエイティブテーマを担当のデザイナーさんに理解してもらうために、プロセスを含め説明します。

クリエイティブテーマをもとに、ビジュアルの方向性を4象限でまとめた例。

上図のような4象限とキーワードを元に一緒に画像を集め、プロットしながらKVで表したい方向性を視覚的にすり合わせていきます。

XFLAG PARK 2021のキービジュアル制作に向けて用意したイメージボード。

次に、4象限やプロットした画像を元に、デザイナーさんにラフを出してもらいます。 ラフの出し方やその後の進め方はその年のデザイナーさんが一番やりやすいやり方にディレクターの方が合わせていきます。ラフを全部出し切るやり方や、手書きラフで進めるやり方や、MTGで話している時にラフを仕上げていくやり方など、様々なやり方に対応していきます。

KVでは、オブジェクトや数字など細かな要素に至るまで意味を持たせていきます。

例えば2021年のKVでは、仮想空間のステージの大きさから得られるワクワク感を伝えられるよう、大きさの比較となるように気球というオブジェクトを取り入れています。

XFLAG PARK 2021のキービジュアルの一部。

2022年のKVでは、コロナ禍が収束に向かい、オフラインイベントとして復活する年でもあったため、看板というオブジェクトに、距離や速度など細かな点でも気付いてくれた時になるほどと思えるものを仕込んでいたりします。

XFLAG PARK 2022のキービジュアルの一部。
XFLAG PARK プロデューサーからのコメント。

4月頃には、クリエイティブ進行も本格化してきます。
 多くの人がクリエイティブに着手するタイミングとなるので、コンセプトやクリエイティブテーマ、KVの使い方やカラー設定を載せたスタイルガイドをデザイナーさんに作ってもらい、配布をしていきます。

この際に、KVの変更があった時に全ての人がその変更を取り入れられるように、KVが必要な人は申告をしてもらい、ディレクターがそれを受け取った上で配布作業をしています。


XFLAG PARKでのスタイルガイドの例。

この時期になるとイベントのチケット販売も絡んでくるので、Webでの初出にも気を使い始めます。自分がWebもやっている時には、KVの制作進行具合とWebの初出日でKVを使うか、違うもので進行するかをコントロールしていました。

XFLAG PARK 2022の特設webサイト。
https://event-info.xflag.com/park/2022/

内製で作るクリエイティブ全体の進捗コントロールもこの時期になると入ってきます。 この際に、スケジュールがビハインドしているものがあれば、その原因を突き止めて解決をする動きをしたり、要件が不十分なものがあれば充足できるように依頼者とデザイナーさんの間に入って整理をしたりします。


イベントでは、どうしても突発的な制作が発生するので、常に依頼者側とデザイナーさんの状況を把握する必要があります。なので、依頼側の全体MTGに入って情報を収集したり、デザイナーさんの全体のMTGを開催して状況を把握し、依頼側に共有したりと色んな職能の領域で動くことが求められます。


また、2021年のようにオンラインイベントがメインの場合は、システム側とも要件を整理したり、実現したいことの目線合わせをしたりします。

XFLAG PARK 2021にて、システム要件の整理や、クリエイティブ監修に携わったXFLAG CONNECT (オンライン参加用のイベントシステム)

クリエイティブ制作も中盤以降になると、クリエイティブ監修というタスクが生まれます。

KVの使い方がスタイルガイド通りであれば監修の必要はないのですが、発展した使い方をするようであれば、一度ディレクターとKVを作ってくれたデザイナーさんの目を通してもらうようにしています。


ディレクターとしては、依頼した方の意思を尊重しつつ、

  • 世界観が壊れないか

  • 方向性が良いのか

  • KVが正しく無い使われ方をしてないか、もしくは何かレイヤーが抜けてないか

  • 拡大縮小してオブジェクトの比率が変になってないか

などをチェックします。
みなさん真剣に考えてチェックに回してくれているものですから、ここはかなり慎重に全体のバランスと相談しながらジャッジしています。

XFLAG PARK プロデューサーからのコメント。

XFLAG PARKの開催にあたっては、前日から現地入りして、リハーサルや準備を行います。 現地でもクリエイティブの修正が発生したり、必要なクリエイティブが急遽発生したりするので、その場で要件整理とデッドの調整をしたりします。

XFLAG PARK 2022開催時の様子。大いに盛り上がる裏側では、スタッフが各自の役割を元に動いています。

また、XFLAG PARKの最後には、モンストの最新情報が発表される「モンストニュース」という一大イベントがあります。

XFLAG PARK 最後に、モンストの最新情報を発表する「モンストニュース」

ニュースのリハーサルでは、使用するスライドに修正が必要になったり、表現をもっとこうした方が良いという案が出たりするので、その対応を着実にこなしていきます。
事実ベースかつ曖昧性を排除するコミュニケーションが必要になるので、プロデューサーとの会話もロボットのような感じになります。

この現場の雰囲気、各部署のプロが集まって、このイベントを進めるんだという意思が感じられて、自分的にはすごく好きです。
イベント最後のニュースの発表中は、専用のチャンネルで状況を見守りつつ、ニュース発表後何か対応すべきクリエイティブは発生するかをチェックします。


ニュースが終わり、ユーザーの皆様が退場されたら、現地メンバーが集まってプロデューサーの講評を聞いてXFLAG PARKが終了します。

XFLAG PARK プロデューサーからのコメント。

XFLAG PARK終了後は、ユーザーの方々に混じって帰るのですが、ノベルティを持っているのでイベントに参加してくれたことが分かり、楽しそうに話している姿を見ると一番安堵する瞬間です。 その帰り道には「来年はどんなイベントだと良いかなぁ」といつも考え始めます。 改めて、全体を通したディレクターという立ち回りについてプロデューサーからコメントをいただいたものがこちらです。

XFLAG PARK プロデューサーからのコメント。

XFLAG PARKは多くの部署、多くの職能、多くの人が携わって成り立っています。みんなこのイベントを成功させようと動いています。

その中でディレクターは「クリエイティブ制作が滞りなく進むために」この一点を完遂するために、持っているスキル・経験・アイディア・時間を全てを投入します。時には職能を越境して発言したり、経験は無いが必要であればその場で習得して実行したりします。


すべては、イベント開催日に見れるファンの楽しそうな表情のために。

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