エイチームライフデザインが運営する、結婚式場情報サービス「ハナユメ」では、TVCM、SNS、Webサイト、接客、ノベルティなど、幅広いコミュニケーションのデザインに取り組んでいます。
それら一つひとつのタッチポイントで、一貫してハナユメらしさを感じられるように、サービスのミッションをもとに、ブランドとして持ってもらいたい印象やイメージをまとめ、コミュニケーション全体に浸透しています。
ハナユメがブランドに注力する理由や、ブランドを幅広いコミュニケーションに一貫性を持って落とし込むための工夫についてまとめます。
結婚式場情報サービス「ハナユメ」でブランドづくりに注力するに至ったのは、事業戦略的な変遷がきっかけでした。
ハナユメの前身となる「すぐ婚navi」では、「半年以内に、お値打ちに挙式ができる」という機能的な価値を訴求していました。
しかし、「半年以内がお値打ち」という訴求は一定の層には満足していただけていたものの、ターゲット範囲が狭く、事業拡大の足かせになっている側面も見えてきました。
そこで「そもそもお客さまが何を求めているのか?」というサービスとしてのあり方から見直すこととなります。
当時からお客さまには毎回アンケートを取っていたので、その回答を整理し、さらに追加でサービスに対しての印象を調査しました。
調査に参加していない方にもリアルなお客さまの声が伝わるように、調査会社に依頼して、街頭調査を行ってもらいました。結果として、当時のサービスに対して良い印象が持たれていないことがわかりました。
逆に、結婚式や式場探しに求めることも調査しました。結果として「センスが良い」「雰囲気が良い」「安心できる」など、これまでの結婚式とは違う、自由な結婚式が求められていることがわかりました。
つまり、「安さ」「速さ」のような機能的な価値の訴求ではなく、安心して自由に理想の結婚式を挙げられる、情緒的な価値の訴求が必要だと捉え直し、それらをコミュニケーションとして伝えられるようなブランドづくりに注力しました。
はじめに、ハナユメとしてお客さまに約束する、ブランドとしての印象やイメージを定義していきました。
まず、ハナユメのミッションである「一組でも多くのカップルに“理想の結婚式”のきっかけを」というところから、そのためにはどのような要素が必要なのかを議論していきました。
社内でブレストをした上で、理想の結婚式場探しには、3つの要素が必要だと整理しています。
情報の探しやすさ
相談のしやすさ
信頼感
その中でも、もともとハナユメの強みであるにも関わらず、お客さまからイメージを持たれていなかった「相談のしやすさ」や「信頼感」という印象を強めることに決めました。
さらに、その要素を強めるために、お客さまに持って欲しい印象をキーワードでまとめていきました。
ブランドとして持たれたい印象やイメージを定義したものの、前述したように、ハナユメが扱うコミュニケーションはかなり幅広く、すべての媒体で一貫した世界観を表現するためには工夫が必要でした。
実際、広告や店舗設計、SNSなどブランディングをしていくBXデザイナーと、WebサイトをつくるUIデザイナーは部署が違っていたため、連携の取りづらさや認識のズレがありました。
そこで、ブランドプロミスをすべてのコミュニケーションに落とし込むために、「ハナユメらしさを守る11つのルール」と「VIガイドライン」を用意しました。
ハナユメのデザインにおける、11の原則をルールブックのような形式でまとめています。
11のルールごとに、実際の制作物をみながら、Good / Bad が視覚的にもわかるようにまとめています。
ちなみに、デザイン要件の11のルールができる前は、社内外向けにビジュアルトーンの資料を作成しトンマナをできるだけ統一できるようにしていました。
しかし、制作物が多くなってくると、網羅的にトンマナをしていくことが難しくなり、ビジュアルトーン資料では機能しづらくなってきました。そのため、あえてより抽象的な、原則としてまとめる方が良いと考えて、11のルールという形でまとめ直しました。
11のルールはデザインにおいて意識していく、いわばハナユメらしさを表すための指針のようなものですが、それに加えて、制作において絶対に守らないといけないことをまとめたガイドラインも整備しています。
例えば、以下のようなガイドラインを用意しています。
ロゴの使い方をまとめたロゴマニュアル
KVのイラストの使い方をまとめたイラストマニュアル
ブランドメッセージをまとめたブランドブック
ルールとガイドラインで、ハナユメらしい制作物の指針や決まりをつくった上で、さらに日常的にハナユメらしさの認識を揃えるための取り組みとして、「ハナユメらしいデザインを決める会」を定期的に開催しています。
ハナユメでつくられているクリエイティブを一箇所に蓄積しておき、みんなで推しクリエイティブを投票することで「ハナユメらしいクリエイティブとは何か?」という共通認識が育っていくようにしています。
ここまでにまとめたブランドとしての印象や、11のルール、ガイドラインを活用して、日常的に幅広いタッチポイントでのクリエイティブの制作に取り組んでいます。
ハナユメらしいポイントは、Web上のグラフィックだけでなく、TVCMやOOHなどの大規模広告、店舗の設計などリアルな体験づくりや、接客などの無形のコミュニケーションまで扱っていることです。
例えば、いくつか例をあげてみます。
ブランドをクリエイティブに落とし込む上で重視しているのは、TVCMや駅内広告など多くの人に接する主要認知広告です。
例えば、各クリエイティブに反映するための、大元のクリエイティブとして、TVCMは位置付けています。
TVCMの設計も、すべて社内でディレクションに入っています。
ハナユメでは、Webだけでなく、実際に店舗を持って接客を行うため、そこまで体験を設計する必要があります。
店舗内の内装や、そこでお渡しするノベルティ、接客時の体験などもブランドとして持たれたい印象を意識して、ほとんどが内製でつくられています。
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一つひとつの制作物単位ではなく、ブランド全体で持たれたいイメージである「センスがある」「相談できる」「安心できる」「信頼できる」などの要素を、クリエイティブ全体を通して感じてもらえるか?という観点でつくっています。
ハナユメで、情緒的な価値を高めるために取り組んでいることをまとめました。
ただ、これらの基準を超え続けるためには、制作に関わるチーム全体にブランドが浸透していることが前提です。なので、チーム内で常に「ハナユメらしさとは何か?」を確認し続けることを意識しています。
また、お客さまに対しても、本当にこのブランドプロミスは嬉しいものなのか?理想的な見られ方をしているのか?を常に確かめることを心がけています。
例えばハナユメでは、以下のような取り組みを行っています。
UIデザイナーとBXデザイナーで一緒にレビューをし合うペアデザイン
「ハナユメらしさ」を半期に1回、チーム全体で話す
定期的なユーザーインタビュー
年4回ブランド調査を行い、ユーザーのブランドへの反応を効果測定
結果として、ハナユメに関わるデザイナーの中では、「ハナユメらしさ」への意識が統一されてきています。
制作に関わる人やユーザーと繰り返し対話をしながら、今後もハナユメらしさを大切にして、一貫した世界観を表現していきます。