2024年4月、元クラウドサイン事業責任者の橘さんが創業した、エンプロイーサクセス領域のコンパウンドスタートアップ『PeopleX』。
実はrootでは、創業の前段階から、初期の事業スコープの決定や、最初のプロダクトである『PeopleWork』の体験設計、プロダクト開発、その後のプロダクト構想などを含む、デザイン組織立ち上げを伴走してきました。
PeopleXの最大の特徴は、事業開始時点から、エンプロイーサクセス領域に複数のプロダクトをつくっていく “コンパウンドスタートアップ” を目指していることです。
このような壮大な構想を掲げるスタートアップの立ち上げフェーズにデザイナーとして関わるにあたって、どのように構想を現実に落とし込んでいったのかをまとめていきます。
PeopleXは、2024年4月に創業したエンプロイーサクセス領域のスタートアップです。
元々クラウドサインで事業責任者をしていた橘さんが、独立して始めた会社で、昨年から創業準備を行い、この4月に大きくリリースを行い、その存在が公開されました。
エンプロイーサクセスプラットフォーム「PeopleWork」を開発する株式会社PeopleXのコーポレートサイトです。
https://peoplex.jp/
特徴としては、創業時点から、HR領域に複数のプロダクトをつくっていく “コンパウンドスタートアップ” の構想を掲げていることです。
初めから1つのプロダクトではなく、複数のプロダクトをつくることを前提としたプロダクト開発・組織づくりを行っています。創業の経緯や、つくっているものなどはこちらの記事にもまとめられています。
rootは、創業の前段階に、当時橘さんがデザインを相談していたアドバイザーの方から声をかけてもらい、プロジェクトに参画しました。
DPM (Design Program Manager) としてroot代表の西村さん、リードデザイナーとして辻が、プロダクトデザイナーとしてもう1名がジョインし、rootからは3名が関わり始めます。
リードデザイナーである私は、これまでにもクックパッドなど様々な企業で新規事業開発に関わってきた経験がありました。ただ、PeopleXのように1つ目のプロダクトを立ち上げる前から、複数の事業群をつくっていくことを意図して動き始めるのは、あまりない経験でした。
事業立ち上げ時に初期段階から関わるデザイナーとして、創業者が掲げる壮大な構想を具体化しつつ、現実的にどこから始めていくと次の事業にも繋がっていく資産をつくることができるか?を意識して、事業全体の推進を行っていきました。
まず、rootとして関わり始めてから、1ヶ月以上の期間をかけて初期の事業構想をまとめていくことをリードしました。
はじめに行ったのは、PeopleXが目指すエンプロイーサクセス領域の構想に近い、海外のコンパウンドスタートアップの先行事例を集め、分析していくことでした。
「コア価値や体験として重要なポイント」「日本展開する上で大事になってくること」「コンパウンド展開するときのヒント」などを探るために、以下のような項目を整理しています。
ターゲットユーザーごとのユースケース
コア価値
プロダクトの体験概略図
オブジェクト図
画面ごとの情報設計・UI
立ち上げ時点からこれまでのLP変遷 (訴求がどのように変わっていったか)
毎週3プロダクトくらいのリサーチ結果を持ち寄り、成功している事例のポイントや、今後の展開に向けてのヒントを全員で議論していくことで、将来の解像度を高めていきました。
この作業を行った結果、以下のように、コンパウンドスタートアップの初期プロダクトの成長の流れやポイントも掴むことができました。
最初のプロダクトは、とにかく早く出せることが重要
モリモリの機能のプロダクトじゃなくて、ミニマムな機能の方が市場に入りやすい
最初の機能が資産となり、後々アドオンしていくことで、最終的に大きなプロダクトになっていく
なので、カスタマイズも効くし、市場にも入りやすいカテゴリーの選定が大事
リサーチを経て、かなり目指す先の解像度が高まってきて、やりたいことや展開も具体的に見えてきた段階で、実際にどのようなスコープから事業を開始するのか?を絞り込むための議論の場を置きました。
実はここまで直接全員が集まるタイミングはなかったのですが、直接顔を合わせて話す場として半日mtgを設置しました。構想が大きい分、話も散らばりやすいので、全体の目線を揃えていくことを意識して、進め方もアジェンダも私から提示します。
すべての構想をいきなりリリースするのでなく、今後の展開も意識した上で、ミニマムにどこからリリースしていくべきか?という初期スコープの議論を中心に、すり合わせていきました。
ここで、最初はエンプロイーサクセスプラットフォーム『PeopleWork』で市場を取りにいくことや、体験として初期はどこまで用意すべきなのか、ということが決まります。(この段階ではまだざっくりと概要がまとまっているような状態です。)
次に、最初につくることとなったエンプロイーサクセスプラットフォーム『PeopleWork』の初期体験を整理していきます。
次に、実際にプロダクトの形に落とし込んでいくための整理をはじめていきます。
まずはたたきとして、PeopleWorkのステークホルダーごとに、ペルソナをまとめ、それぞれの初期体験を仮説で整理しました。
そこから初期体験の検証を行なっていきます。
チームで仮説を立て、その仮説をもとに「夢モック」と呼ばれる今後2年くらいの世界観を想定したデザインモックアップをつくります。
それを橘さん筆頭に、現場の人事の方に対してヒアリングしたり営業を通してフィードバックをもらってきてもらい、精度を高めていきました。
まだプロダクトがない時から営業を行い、どのような体験であればお金を払いたいと思えるのか (must haveなのか) を検証してくることを橘さんが進めてくれたので、その学習を受けデザイナー側でどんどん体験を磨き込みます。
(具体的な検証の流れは、橘さんがXで投稿されていたポストの流れが分かりやすいと思うので、こちらに貼っておきます。)
初期体験の整理ができてきて、以降はリサーチとプロトタイピングを繰り返していきます。
この段階でユニークな部分としては、あらかじめ「2〜3プロダクトになってきた時にこうなるよね」というイメージまでつけておくことでした。
例えば、コンポーネントは出来るだけシンプルな形で止める。具体的には、Atomsくらいの単位でつくっておいて、必要になったらつくるという最小限な運用にしています。
また、データ構造的にも、将来的なところを見据えて設計する必要があります。PeopleXの場合、今後出てくるプロダクトもすべて「従業員」というデータがコアになるため、そのデータを中心にした設計をするようにしています。
このように先を見据えたプロダクト設計ができるのは、海外サービスの先行事例を画面単位までリサーチしていたり、次やその次につくるプロダクト仮説まですでに議論していたことが大きな要因だったと思います。
また、このタイミングでも、追加で海外のコンパウンドスタートアップが提供するサービスや、PeopleWorkの競合になるような国内プロダクトの画面単位のリサーチを行っています。
ここまでで、最初のプロダクトである『PeopleWork』の形は整ってきました。正式な公開に向けて開発を進めつつ、それと同時に次の展開に向けた準備もすでに行いはじめています。
例えば、もうすでに2つ目のプロダクト構想の議論をはじめました。今回まとめた流れと同じようなステップで、スコープの決定や、初期体験の検証を進めています。
また、今後のプロダクト群の開発に対応できるように、rootとしてデザイン組織化の支援もはじめています。
プロダクトデザイナーはすでに1名増えており、PeopleWorkのリードデザインを私から移譲し、私は新たなプロダクトのリードデザインを担当する体制となりました。
さらに、コーポレートブランドの開発にも着手していく予定で、ブランド側のデザイナーも1名追加されています。
今後も、プロダクトはどんどん立ち上がっていくので、デザイン組織も同じように拡大していく予定です。(rootからだけでなく、PeopleXの社員としてのデザイナーポジションも募集開始しています。)
プロダクト開発に並行して、先日、2024年4月1日にPeopleXの創業がリリースされました。
創業リリースの前もいくつかの企業でPeopleWorkの導入が決まっていましたが、4月1日のリリース後もプロダクトを正式公開する前にもかかわらず、すでに導入が決まり続けています。
ここまで見ていただいた方には伝わっていると思いますが、PeopleXでのプロダクト開発は、ものすごいスピード感で進んでいきます。構想も壮大ですし、つくり始めてから間もないプロダクトがすでに何社も導入が決まっていて、さらに2つ目、3つ目のプロダクトも検証が始まっています。
rootでは、このようなコンパウンドスタートアップに関わるデザイナーとして、PeopleXが掲げる壮大な夢を現実にするために、海外の先行事例のリサーチから実現性を高めていき、コンパウンド化を意識した上での初期スコープ決定や、コンポーネント設計、データ設計まで推進していきました。
今回rootが加入したことで、初期段階の事業立ち上げがどのように変わっていったか、橘さんよりコメントをいただいたのでご紹介します。
PeopleXが日本や世界を代表するスタートアップとなるように、rootではこれからもデザイン組織化を進めていきます。また、rootとしても、今回のようなスタートアップや事業立ち上げフェーズでの支援をさらに増やしていきます。