インクルーシブデザインスタジオ「CULUMU」は、化粧品ブランド「N organic(エヌオーガニック)」など多数のブランドを開発する株式会社シロク (以下 シロク) のインハウスデザイン組織のパートナーとして、2022年から約3年ほど支援を行ってきました。
CULUMUがこれまでに関わってきたプロジェクトは幅広く、例えば、「シロクオンラインショップ」のサービスサイト立ち上げ、同サイト内の「定期便」機能の改善、「N organic」のサイトリニューアル、内部のCS担当者のための社内ツール開発、お客様向けのパンフレット作成、など多岐に渡ります。
CULUMUが、内部でもデザイン組織を持ち、商品開発やブランディングを進めるシロクのパートナーとして求められている理由は、一貫して「ユーザーインなサービス開発」を支援してきたからです。
CULUMUが掲げる「ユーザーイン」とは何か、どのように顧客理解を進める体制を構築してきたか、についてまとめてみます。
シロクは、サイバーエージェントのグループ企業として2011年に設立、現在はN organicやFASなどのブランドを開発し自社のオンラインストアやリアル店舗などで提供しています。
前述の通り、シロクには、CULUMUが支援を開始する前から、独自性のあるインハウスのデザイン組織が存在しています。商品開発時のユーザーリサーチや、パッケージデザインなども内製で行われており、全社的にもユーザー中心なサービスづくりが重視されている企業です。
参照: https://corp.sirok.jp/recruit/designer
CULUMUが支援を開始したのは、2022年。同年のCULUMU立ち上げと同時に、シロクのCDOを務める石山さんからお声がけをいただきました。
最初は「横断的なシロク商品を購入できるプラットフォーム (= 現在のオンラインストア) を立ち上げたい」という依頼から始まり、その後延長線上でさまざまな依頼につながっていきました。
なぜ、自社でもデザイン組織を持つシロクが、CULUMUのような外部パートナーを巻き込んでいるのか。その理由は「顧客視点を取り入れたサービス開発をより強くスピーディーにしていきたい」という課題感があったためです。
短い期間でいくつものブランド開発を進めていくシロクでは、当初からユーザーのインサイトを捉えることが経営的に重要だとされていました。例えば、CULUMUの支援前から (もちろん現在も) 商品開発時にはN1インタビューを何度も行うような文化が根付いていました。
一方で「すでに会員になっているお客様の体験向上」や「購入に迷うポイントの改善」など、重要だと分かっていても工数が足りず、リサーチを活用した改善に取り組めていない領域もありました。
新たにブランドを開発するだけでなく、自社で販路を持ち、継続的な購入体験をつくっていくシロクにとって、ユーザーリサーチの結果を商品開発プロセスだけでなく、広く活用していくことは必要なはずです。
そこで、オンラインストア開設をはじめとして、CULUMUでは制作だけでなくサービス開発における「ユーザーリサーチの基盤づくり」まで支援していくこととしました。
ここからは、約3年の間にCULUMUが行ってきた、ユーザーリサーチ基盤の構築プロセスを順を追ってまとめます。大きくは、以下のような流れで取り組んできました。
1. 立ち上げ: 調査の「型」をつくる
2. 体制整備: 依頼フローの整備から、バックログ管理まで
3. 実績を出す: これまで改善できていなかった体験を一つ一つ改善
まず、立ち上げ段階のプロジェクトでは「オンラインストア立ち上げ」「定期便の改善」に取り組んでいきました。
この時点で、今後もシロクにおいて「型」となるような調査プロセスをつくることを狙っていきます。
CULUMUが外部パートナーとして関わるからには、これまで以上に高い解像度でユーザーを理解できるようにしていかなければ、価値がありません。
プロダクトの課題仮説や顧客課題仮説を洗い出すために、インタビュー前にヒューリスティック調査や、顧客体験の整理を行います。闇雲にユーザーインタビューを行うのではなく、事前に当たりをつけていくことで、インタビューの効果も最大化していくことができます。
整理した結果をもとに、インタビューの準備をします。
ここまでに仮説が立ってきたペインや、ゲインについて掘り下げていけるように、検証項目や質問を設計します。
プロトタイプを持ってインタビューを実施し、調査結果をもとに改善を繰り返していきます。
このような調査を重ねながら、オンラインストアと、定期便の改善を進めていきました。
ここまでインタビュー前に体系的な準備をしているのはシロクでもなかったことだったようで「リサーチプロセスを資料としてまとめて、社内に共有して欲しい」と言ってもらうことができました。
この辺りから、少しずつ社内で顧客理解を高めきれていないプロジェクトがあれば、CULUMUに依頼をしてもらえるようになっていきます。
調査の型ができ、信頼もつかみ始めていったところで、より全社規模で調査プロジェクトを引き出していけるように、体制の整備に取り組んでいきました。
具体的には、まずは依頼フローの整備から取り組んでいます。
さらに、顧客体験の改善が必要な領域を、CULUMU側でバックログとして管理し始めました。一つ一つチケットを切って、どんどん調査を進めていきます。
これらのプロジェクトごとに、体制が変わっていくようなイメージで支援を継続していきます。特定のチームだけでなく、全社の方と関わっています。
リサーチプロセスを磨きながら、実績を出していきます。
依頼をもらったものの中で、優先度を切って、一つひとつこれまで改善できていなかった体験を改善していきました。
定期便の中で、商品の変更をしたい場合、定期便に追加する場合、などお客様の要望に合わせて改善を行なっていきます。
まず、お客さまごとの成長段階を踏まえ、顧客体験を整理しました。
このような体験の仮説を持って、インタビュースクリプトを作成し、インタビューによって体験の改善点を洗い出していきます。
一つの中間アウトプットとして、改善点を明確にしていくために、購入回数ごとにお客さまのセグメントを分け、複数回インタビューを実施し、ペルソナの形に落とし込みました。
このように顧客理解を進めるなかで、いくつもアウトプットを出しながら検証を進めていきます。
例えば、定期便の同梱物として、2〜3ページのパンフレットを作成しました。定期便が届いた際の満足度を高めつつ、さらに継続購入を促しています。
その他にも約3年の支援の中で、本当にたくさんのプロジェクトに携わらせていただきました。
結果として、シロクの中で、商品開発だけでなく、継続的な購入体験向上のための施策でも、ユーザー情報を活用した改善が行えるようになってきています。
もともとシロクでは、ユーザー中心・N1中心なサービス開発を重んじる文化はありましたが、これをさらに強めるための体制やプロセスをCULUMUが固めていくことができたのではないかと思っています。
実際に結果も出ています。CULUMUでは最近「N organic」のサイトリニューアルも担当しました。
対応画面範囲やページごとのリニューアル内容・優先度/工数・対応状況などの整理をしつつ、他社調査を通して最適なコンバージョン導線の設計、デザイン、ガイドラインの整備などを総合的に実施しています。
リニューアルについては美容業界で著名な方々や、メディア様から非常に良い反響をいただいています。サイト全体のCVRも120%改善されており、リニューアル後の月の売上は過去最大のものが生まれていたようです。
シロクの方からも、CULUMUが関わってから「ユーザーリサーチがより社内で活用できるようになった」と感想をいただいています。
最近では商品開発時のN1リサーチについても、手法を体系的に可視化していくプロジェクトにも取り組んでいたりと、シロクにとって「N1理解」が、さらに企業としての競争優位になっています。
CULUMUでは、このように顧客に寄り添ったサービスづくりを重視して、体制改善にまで取り組んでいく支援を行っています。
自分たちが考える思想を世に出してみる「プロダクトアウト」な手法と対比して、市場のニーズからサービスをつくる「マーケットイン」という概念があります。
CULUMUではマーケットイン以上に、徹底的なN1理解からサービスを育てる「ユーザーインなサービスづくり」を支援していくことが重要だと考えています。
内製のデザイン組織・リサーチ組織があっても、専門性や工数の関係で、調査の対象を広げきれなかったり、うまく改善に繋げられないこともあるはず。CULUMUでは、リサーチの専門性に特化したメンバーを抱えており、今回のように伴走しながらリサーチを活用した改善が行える体制づくりを支援しています。
ステークホルダー参加型でデザインを推し進め、企業課題解決と、社会課題解決の両方を追求していく。そんなCULUMUのデザイン支援に関心がある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。