「働く」を「権利」と定義したChatworkアクセシビリティ方針決定の裏側

Chatwork プロダクト本部 プロダクトデザイン部の守谷です。2013年に入社後しばらくはWebデザイナーとして動いたのち、そもそもの入社動機が「人が使うものを作りたい」というところにあったため、2015年ごろからはUIデザイナーとして活動しています。


Chatworkでは、「働くをもっと楽しく、創造的に」というミッションの達成に向かい、「すべての人に、一歩先の働き方を」実現させることをビジョンに、サービスを開発・提供しています。

そんな中、私たちが掲げるビジョンにある「すべての人」からあらゆる人を排除せず、真にすべての人が使えるサービスを作ることを目指し、2016年からアクセシビリティへの取り組みを進めています。



今回は、アクセシビリティの取り組みを始めるに至った経緯から、どのように方針をまとめていったかをまとめていきます。

アクセシビリティに向き合う意義

Chatworkのアクセシビリティ方針では、「働くこと」を「権利」と定義しています。

私は入社以前より、アクセシビリティへの取り組みに関心を持っていました。元々Webの基本概念である「必要な情報をどんな状態・状況であっても必要な人に届けられる」という世界観に魅力を感じWebの仕事をしてきていました。Webにより実現できるさまざまな「情報伝達手段」に思いを巡らせると、自然とアクセシビリティの考え方に共感していったように思います。

Chatworkはサービス提供開始以来、ずっと「誰もが使えるプロダクト」を名乗ってきています。しかし一度だけアクセシビリティ試験がなされて以降、Chatworkは開発者の善意でしかアクセシビリティ関連の対応がおこなわれていない状態にありました。これは、「明確な方針を持たない以上は、対応者の変化や機能の追加・改修により不意に『誰かが使えなくなる』ことが起きうる」ということを指しています。

Webサイトにおいても同様です。利用前の人(見込み客)が主に閲覧するであろうサービスへの入り口が、「判りづらい」「使いづらい」あるいは「使えない」という場合、最終的にはChatwork自体を使ってもらえず、私たちの目指す「働くをもっと楽しく、創造的に」という世界を実現することは不可能となってしまいます。

筋道を立てて懸念をひとつづつ解決して進める

そうは言っても、やみくもにアクセシビリティの取り組みを始めても大きな工数がかかります。また、一気に人を動かせないのも事実です。そこでまずは、当初私(デザイナー)でもすぐに着手しやすかった「Webサイトへのアクセシビリティ対応をおこなうこと」を目的に、アクセシビリティ方針の設計から取り掛かりました。

組織における重要な指針を独断で決定してしまうことは、リスクをともないます。そこで、当時の制作総責任者であったCTO(現代表取締役CEOの山本)に、アクセシビリティに関する取り組みの説明と構想を打診しながら進めました。考え方にはおおむね共感してくれつつ、全体像の把握がしたい旨の要望、「アクセシビリティ方針を出す」ことで懸念している事態、さらには掲出の仕方へのアドバイスなどを伝えられました。

懸念とは、「方針を出しながら実行できなかったときに、一体どんな批判にさらされるのか」というようなものでした。

実態としては、アクセシビリティ方針はあくまで方針(行動指針)であるため公開自体にデメリットはなく、一般的には「アクセシビリティに前向きに取り組んでいる企業」として見られることで組織の評価も上がる、という説明をおこないました。方針を出すことで、アクセシビリティ観点のフィードバックもえられるようになったり、最終的にはWebサイトやプロダクトの改善も見込めるようになります。

ひととおり説明と合意を取り付け、実際に方針の策定プロセスへ進みました。

方針の軸にスローガンを立て、立ち返りやすくする

冒頭で紹介したとおり、「働くこと」を「権利」と定義してアクセシビリティ方針を策定しました。

「なぜ」「誰に」「何のために」「どのように」を洗い出し整理しながら、最初に取り組んだのはスローガンの創出でした。細かな定義も必要ですが、1本芯の通ったスローガンを立てることで、すべての答えを導き出しやすくなります。

方法としては、Chatworkのミッションのキーワード「働く」というワードを軸に、アクセシビリティではどう貢献できるのか、すべきか、を考えていくルートです。Chatworkが使えない=働けない状態にしてはいけない、ということをメッセージに含んでいます。

最終的に、「働くことは誰もがもっている権利です」という言葉を決め、Chatworkが提供すべきサービスの状態を明文化しました。

私たちのアクセシビリティ方針のポイントは、明確に「社内外で啓蒙していくためのものであると同時に、実践へつなげるためのもの」と定義しているところです。社外への発信のみに留まるのではなく、社内への啓蒙のツールとしても活用していくことを前提に設計しました。

→ アクセシビリティ方針まわりのプロセスについては、「ウェブアクセシビリティ方針策定ガイドライン」などの情報が提供されています。詳しくはそちらをご覧ください。

次に着手したのが、アクセシビリティ周りの取り組みに関するロードマップの洗い出しと、実際に取り組む際のワークフローの整備、さらにアクセシビリティ方針自体の掲出までの調整です。ほかのデザイナーや広報と約5ヶ月かけて企画を進め、2017年4月17日に制定に至りました。

この辺りのプロセスについては、あらためて別の記事でご紹介します。

終わりに

私はインターネットの可能性は、「どんな情報でも誰もがアクセスできる」ことにあると信じています。これを実現するためにアクセシビリティは必須の概念であるため、今後も熱量を持って取り組み続けていきたいと考えています。難しいと言われている各達成基準も、その理由を読み解いていくと特別な考え方ではありません。

超高齢社会と言われる現在の日本において、数十年……早ければ十数年後にはChatworkユーザーも大部分が高齢者になりうるという予測を社内でもしています。そうなった場合、健常者だけが使えるサービスでは未来が見えなくなってしまいます。社会のためにも誰もが使えるサービスを作っていくことが合理的だと考えます。

今回はアクセシビリティの方針策定についてまとめました。方針の社内浸透やWebサイトとプロダクトのアクセシビリティ対応については次回以降出していきたいと思いますので、楽しみにお待ちください!

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