音声ライブ配信アプリ『Voice Pococha』のイベントチームでクリエイティブオーナーを務める山本です。Voice Pocochaでは、ユーザーが配信を楽しむための「イベント機能」があり、毎月50件前後のイベントを実施しています。

過去に開催したイベントのビジュアル例

これらのイベントはユーザーの皆さんに楽しんでいただくための重要な場であると同時に、その盛り上がりがサービス全体の売上にも影響を及ぼします。

今回は、Voice Pocochaの「イベント」をクリエイティブ面から支えていく中で、意識してきたことや、実際の取り組みについてまとめたいと思います。

Voice Pocochaでは、ユーザーが参加できるイベントを毎週、各ランク帯ごとに複数開催しています。イベントでは、ランキング上位に入賞すると「プライズ(特典)」を受け取ることができます。

プライズには、アプリ内で使用できるデジタルプライズ(画像や動画)や、リアルグッズ(ぬいぐるみやオリジナル食品)など、幅広い種類があります。

ユーザーが「本当に欲しい」と思えるプライズを用意できるかどうかで、イベントの参加人数やアクティブ度合いは大きく変化します(*必ずしもアクティブ度合いが高ければ良いわけではなく、幅広い人にとって参加したいイベントを用意すること・適切な競争環境を設計することを大切にしている)。そのため、プライズをはじめとしたイベントのクリエイティブはとてもこだわって制作してきました。

イベントのクリエイティブは、6名の専任チームで制作しており、企画段階からBizチームと連携するほか、アイテムチームなど他のクリエイティブチームとも協力しながら、一体となってイベントづくりを進めています。

Voice Pococha クリエイティブチームの体制

私は、Voice Pocochaにイベント機能が追加されたタイミングからデザイナーとして携わっており、現在はクリエイティブオーナーとして、ディレクションやデザイン、チームマネジメントを担っています。

初期のVoice Pocochaのイベントチームでは、サービスを盛り上げるイベントをつくるために、「どれだけリッチなクリエイティブをユーザーに届けられるか」を重視してきました。

しかし、2023年下半期からは、より一層売上へのコミットを重視する方針へと転換しました。それ以降は、単にリッチなものをコスト度外視でつくるのではなく、「それが本当に売上につながるのか」という視点を持ったデザインが求められるようになりました。

当初は難しさを感じる場面もありましたが、振り返ってみると、「これはユーザーにとって嬉しいだろう」と考え、リッチさを追求したプライズが、あまり喜ばれなかったケースもありました。

つまり、「リッチであれば良い」というわけではなく、「ユーザーにとって本当に嬉しいものとは何か」を起点に、売上やコストへの意識も踏まえて最適解を探っていくことが重要なのだと、捉え直すようになったのです。

そのために、いくつか取り組んできたことをまとめます。

まず取り組んだのは、イベントの企画〜開催までのフローにおいて、企画メンバーとデザイナーが初期段階から並走することです。

これまでは、企画メンバーがイベント概要やクリエイティブの要件をある程度固めた段階で、デザイナーと連携を始めるフローとなっていました。

しかし、要件や予算、納期が既に定まっている状態でデザイン検討を始めることになるため、どうしても選択肢が狭まったり、想定と異なるアウトプットが生まれてしまうこともありました。

そこで、企画の初期段階から並走していくことで、「ユーザーが本当に求めているものは何か」「そのために最適なクリエイティブはどのようなものか」を、一緒に考えながら実現していけるフローへと見直していきました。

企画メンバーとデザイナーが初期段階から並走する体制へと変化

また、より良いイベント設計に再現性を持たせるため、ユーザーインサイトを定性・定量の両面から収集し、チームの知見として蓄積する取り組みも始めました。

定量面では、過去イベントの参加率や盛り上がり、売上、ROIなどの実績をダッシュボードで可視化し、常に状況を把握できるようにしています。定性面では、ユーザーアンケートやインタビューの機会を増やし、ユーザーの声をより深く拾い上げる工夫を重ねてきました。

ただイベントを量産するのではなく、「何がユーザーにとって良かったのか、あるいは良くなかったのか」を丁寧に検証し、そこから得られた学びをチーム内で積極的に共有する文化を築いていきました。

ユーザーインサイトを定性・定量の両面から収集し、チームの知見として蓄積する

こうした取り組みを進めると同時に、イベントの改善にも継続的に取り組んでいきました。

Voice Pocochaのイベントでは、リアルグッズの発注や印刷が必要となる場合があったり、複数のイベントを同時に進行することも多く、企画から実施までに3〜4ヶ月ほどかかるケースも珍しくありません。

そのため、課題に気づいた時に「次のイベントから改善しましょう」と後回しにしてしまうと、改善の効果がユーザーに届くのは4〜5ヶ月も先になってしまいます。こうしたタイムラグを避けるため、進行中のイベントにも柔軟に修正を加え、ギリギリまでブラッシュアップを重ねる体制をとっていました。

その結果、想定以上のユーザーからの反響を得られるイベントや、売上の向上につながる施策も徐々に増えていきました。

その中でも、特筆して大きな成果を残すことができたイベントが「ボイポコ盾イベント」です。

このイベントは「Voice PocochaのNo.1を決定する年に一度のビッグイベント」と銘打った新企画であり、ビジネスサイドの企画メンバーと初期段階から並走し、クリエイティブチームを巻き込みながら一丸となって推進していきました。

このイベントは、トップライバーたちがしのぎを削る場として、「称号」に価値を置いた新たなコンセプトのイベントをつくれないかという発想からスタートしました。

「No.1という称号」が価値を持つとしたとき、その価値にふさわしく、かつ納得感のあるプライズとはどのようなものか――「何を」「どのように」「何人に」「どんなデザインで」贈るべきかを検討しながら、プライズの選定やデザインに取り組みました。

最終的には、入賞者にトロフィーをはじめとした複数のプライズを贈ることに決定。なかでもトロフィーについては、受け取ったライバーが自宅にそのまま飾りたくなるようなスタイリッシュな佇まいを目指しました。実際にトロフィー業者のギャラリーに足を運び、サンプルを確認しながらまずは形を決定。そのうえでロゴデザインをあしらい、素材にはオーロラ泊を使用することで、高級感のある仕上がりになるようにしました。

また、この新たなコンセプトのイベントに対して、より多くのユーザーに興味を持ってもらえるように、情報出しのデザインやタイミングについても、工夫を凝らしました。

結果として、これまでにない新たなコンセプトと規模で実施されたイベントは、ユーザーからの反響も非常に大きなものとなりました。

「ボイポコで初めて本気の戦いを見ることができて楽しかった」といった声も多く寄せられています。私自身も配信の様子を見ていましたが、それぞれのドラマが本当に感動的で、その熱量に胸を打たれ、思わず涙がこぼれました。

このイベントを通じてサービス全体の売上も大きく伸び、売上目標の達成にも大きく貢献する結果となりました。

ボイポコ盾イベント参加ユーザーのコメント例

上記は、あくまで私たちが取り組んできたことの一部です。その他にも、膨大なクリエイティブ制作を効率化するためのアセット管理、多様な企画のディレクションやデザイン、リサーチなど、必要だと思ったことには迷わずチームで取り組んできました。

そうした積み重ねによって、掲げていた売上目標の達成にも大きく貢献することができました。

また、売上という定量的な成果だけでなく、ユーザー反響などの定性的な面でもポジティブな変化が見られ、これからのVoice Pocochaにとっても大きな変化を起こせたのではないかと感じています。

売上が伸びたことでより多くの予算を確保できるようになり、開催できるイベント数を増やしたり、年に数回はコストをかけた大型イベントに挑戦したりと、イベント自体をさらに強化していける好循環も生まれました。

売上目標に真摯に向き合い、やれることはすべてやりきる姿勢のチームへと成長したと感じています。

ただ、売上はあくまで結果としてついてくるもので、最も大切なのはどうすればユーザーがもっと楽しんでくれるかに対して常に最善を考えることだと実感しました。

むやみにお金をかければ良いわけでも、自分が主観的に良いと思う品質を追求すれば良いわけでもなく、常に「ユーザーは本当に喜んでくれるか」から考えていく。一方で、期待以上の喜びを生むために、プロとして高いクオリティには妥協せずに作り込む。

そういった向き合い方を続けることで自ずと結果がついてくるという実感は、大きな学びとなりました。

これからも、ビジネスとクリエイティブの垣根を超えて、本当にユーザーにとって嬉しい体験をつくることで、Voice Pocochaの成長を支え続けていきたいと思います。

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