DeNA デザイン本部に所属し、昨年度デザイナー新卒採用チームのリーダーを務めた長谷部です。
さて、DeNA デザイン本部では今年もデザイナーを目指す学生に向けて、サマーインターンシップを開催いたしました。
このようなデザイナー新卒採用の活動における各施策はデザイン本部に所属するデザイナーが主導し、チームで戦略設計、施策実施、運用改善を行っています。
本記事では主務であるデザイン業務を行いつつも、新卒採用の活動にもコミットしている、デザイナー新卒採用チームの活動内容や各施策をご紹介します。
年々デザイナーの活躍の場が広がり、さらに重要になるデザイナー新卒採用に関して、少しでも皆様の参考になれば幸いです。
前述の通り、DeNA デザイン本部では各サービスやプロジェクトで活躍するデザイナーを中心に構成された新卒採用チームが、新卒採用活動の戦略設計、施策実施、運用改善を行っています。
一般的には人事部のメンバーが中心に進めるであろう新卒採用活動を、デザイナーが中心となり行っている理由は以下です。
組織に求められているデザイナーに対する理解度が高い。
デザイナーを目指す学生に対する理解度が高い。
デザイン本部での活動や魅力に対する理解度が高い。
組織の採用活動を行うにあたって、組織の状況と求める人物に対する高い理解は必須であり、理解が低い状態では効果的な活動を行うことはできません。
また、デザイナーを目指す候補者が何を求めているのかを的確に理解し、候補者に対し丁寧なコミュニケーションを介して、単なる「情報」ではなく組織の魅力をメンバーからのリアルな「想い」として伝えることも重要です。
このような理由から、DeNA デザイン本部ではデザイナーが主導し、新卒採用活動を行っています。
約1年間で新卒採用チームが取り組む活動は次のようなものです。
- 新卒採用戦略の立案
- 年間スケジュールの立案
- 各SNSでの情報発信
- 会社説明会やサマーインターンシップなどの施策開発
- 各施策の実施、運用改善
- 採用方針に合わせた選考内容の調整
- 候補者の選考実施
- 内定者のフォロー
このようにデザイナー新卒採用チームでは、多岐に渡る活動を行っています。
取り組む活動が多岐に渡る新卒採用活動において、デザイナーが主導することは前述した利点もありますが、考慮しなくてはならない問題点もあります。
それは、当然ではありますが新卒採用チームのメンバーそれぞれの業務負荷が高くなってしまうことです。
主務であるデザイン業務を行いつつも新卒採用活動へもコミットすることは簡単ではなく、いかに効果的で効率的な活動を行うかは常に考え続けなければなりません。
また、新卒採用活動は1年という長いスパンで行われ、年によっても状況が異なるため活動に対する知見が蓄積されづらく、また知見が引き継がれにくい活動ですが、ドキュメントの整備と各施策の仕組み化を行い、チームやメンバーの交代が発生した際にゼロから考えずとも、今までの各施策や活動が行えるよう新卒採用活動全体を効率化しています。
次の項目では、具体的な新卒採用の5つの仕組み化についてご紹介します。
前述の課題を解決するために、新卒採用チームでは年間施策などを仕組み化することで活動全体を効率化し、また各施策のブラッシュアップも行いやすいよう工夫をしています。
ここからは、具体的な事例を5つ紹介します。
各候補者へ効果的な施策を届けるために、デザイン本部では候補者がDeNA デザイン本部を認知し入社するまでの流れを以下の通り想定しています。
当然ですが、各候補者はそれぞれで求めている情報や置かれている状況が異なるので、候補者の状況に合わせて各施策を実施しています。
各施策は闇雲に記事メディアやSNSなどで発信を行うのではなく、候補者をどういった行動へ繋げたいかを意識し実施することが重要です。
また、選考が後半になるほど個別最適化された施策が必要になるため、候補者とのコミュニケーションを取り柔軟に対応することが重要です。
新卒採用活動は1年という長いスパンで行われ、時期に応じて必要な活動も異なるため、デザイン本部では年間の各施策を以下の通り想定をしています。また、年によっても状況が異なるため内容は年々アップデートしています。
デザイン本部では定期開催されるオンラインでの会社説明会やポートフォリオ講座を施策の軸として、サマーインターンシップの開催や記事メディアでの情報発信を必要なタイミングで行っています。
また、不定期で開催される各大学でのワークショップや複数企業合同イベントへの参加、自社デザインイベントの開催なども必要に応じて行っています。
前述の通り、デザイン本部における新卒採用活動の中心的な施策として、定期的にオンラインでの会社説明会やポートフォリオ講座など、候補者とデザイン本部のデザイナーが直接会話をすることができる施策を開催しています。
各施策は毎回ゼロベースで企画するのではなく、施策内容と実施メンバーをパッケージ化しています。
施策をパッケージ化することで事前準備のコストが低くなり、一度の開催に対して必要なリソースは、ヒューマンリソース本部所属のメンバー1名、デザイン本部所属のデザイナー2名が2時間程度で実施しています。
また、デザイナーが2名参加することで、デザイナー同士の関係性を候補者が感じられる工夫もしています。こちらは参加者からも良かった点として挙げられることが多いです。
以下が実際の会社説明会で使用されるスライドです。
会社説明会では以下の構成で、DeNA デザイン本部の魅力を候補者にお伝えしています。
諸注意、タイムテーブル
登壇メンバーについて
DeNAについて
デザイン本部について
デザイン本部の過去実績
デザイン本部で働くにあたって
デザイン本部からのご案内
デザイナーへの直接質問
続いて以下がポートフォリオ講座で使用されるスライドです。
ポートフォリオ講座では以下の構成で、ポートフォリオ制作に必要な知識や観点についてお伝えしています。
諸注意
登壇メンバーについて
タイムテーブル
そもそもポートフォリオとは?
見せる相手のことを意識する
ポートフォリオのページ構成
DeNA デザイン本部のデザイナーの観点
実際に新卒入社したデザイナーのポートフォリオ説明
デザイナーへの直接質問
デザイン本部からのご案内
また、会社説明会やポートフォリオ講座は必要に応じて適宜内容をアップデートしています。
このように施策内容とメンバーをパッケージ化することで、必要に応じたアップデートも迅速に行うことができます。
冒頭でお伝えした通り、デザイン本部では毎年8月頃にサマーインターンシップを開催しています。
こちらに関しても施策内容をパッケージ化しているので、今年は昨年のプログラムをアップデートし、以下の内容で実施しました。
DeNA デザイン本部のサマーインターンシップでは、参加者がサービスデザイン、ブランディング、マーケティングデザインの3つの領域の講義を受け、デザイン本部所属のデザイナーと共にデザインを制作し、最終日に発表を行います。
昨年と比較し、今年のサマーインターンシップで大きくアップデートされた点として、ビジュアル面の強化が挙げられます。
今年のサマーインターンシップでは、若手のデザイナーを中心とした本年度の新卒採用チームが、ビジュアルコンセプトの設計からコピーライティング、キービジュアルの制作まで一貫して行い、社内外からも大きな評価をいただきました。
大規模な採用施策でも、まずは施策内容を十分に設計し、次にビジュアル面を強化するなど、段階を踏むことで完成度の高い施策を実施することができます。
また、サマーインターンシップ参加者へお渡しするノベルティグッズも新卒採用チームで制作しています。
ノベルティグッズは、参加者のモチベーション向上、SNS上や口コミでの認知拡大を目的として制作しています。 こちらに関しても、まずはキービジュアルの制作を行い、次にコンセプトに沿ったノベルティグッズへ展開することでそれぞれの段階を踏み、効率良く統一された施策を実施しています。
このように、サマーインターンシップには大きなコストが必要になりますが、参加者とデザイン本部所属のデザイナーがお互いを深く知ることで強い関係を築くことができます。
最後に、どれだけ会社説明会やポートフォリオ講座、サマーインターンシップなどの各施策を丁寧に企画したとしても、候補者へ情報が届かなければ意味がありません。
新卒採用チームではデザイナー自身が広報の役割も担い、Xやnoteでの情報発信、大学へのチラシ配布など地道な広報活動を介して候補者へ各施策の情報を届けています。
広報活動は発信する情報の内容も重要ですが、スピードとタイミングも合わせて重要になるので、新卒採用に関わる情報発信に関しては新卒採用チームで担っています。
DeNA デザイン本部では、毎年このような流れで新卒採用活動を行っています。 そして当然ではありますが、活動の結果として新卒採用における定量的なデータの可視化と、定性的な感想を収集し状況を把握しています。
まずはエントリー数の推移です。 エントリーは通年受付しており候補者が比較的気軽に行えるアクションなので、こちらはDeNA デザイン本部の魅力が候補者に対してどれほど広く伝わっているのかの参考になる指標だと考えています。
特徴としては、例年10月頃のエントリー受付開始後ゆっくりとしたペースで推移し、年明け1月頃からエントリーが加速、6月頃まで勢いを保ったまま、7月頃から減速していきます。
2023年入社と2024年入社のエントリー数の推移を比較すると、2024年入社では後半でもエントリーが減速せず、全体としては約24%エントリー数が増加しました。さらに、2025年入社のエントリーでは、2024年入社と比較して現時点で初速が良いことが分かっています。
次にポートフォリオ提出数の推移です。 ポートフォリオの提出は、エントリー後に選考へ進む際の大きなハードルになります。 ポートフォリオを作成し提出することは候補者にとってハードルが高く、DeNAへ入社したいという決意が必要になるので、DeNA デザイン本部の魅力が候補者に対してどれほど深く伝わっているかの参考になる指標だと考えています。
特徴としては、エントリーのみを行いポートフォリオは提出せず、選考から離脱してしまうケースが多いです。 対策として、前述の通り定期的にポートフォリオ制作に関するノウハウと制作に対するモチベーションを高める施策を開催し、候補者がポートフォリオ制作を進める後押しをしています。
各施策の実施後にアンケートで様々な定性的な感想を収集していますが、特徴的な項目として会社説明会への参加前と参加後の「DeNA デザイン本部に対する印象の変化」の項目が挙げられます。
定性的な感想を元に、組織の実態と対外的なイメージのギャップに気づき、正しく魅力的な組織の発信ができると良いと考えています。
また、対外的にはプロフェッショナルな集団に見えるが、実際のメンバーと接すると気さくでフレンドリーな人が多いなど、双方の印象のギャップを利用することも時には効果的であろうと考えています。
しかし、ここまでの取り組みをしても組織が候補者に求めるハードルの高さや、そもそもデザイナーを目指す候補者の母数の少なさなど、様々な問題により簡単には採用者を増やすことはできません。
コストがかかる以上、早急な結果を求められることは当然ではありますが、採用活動に対しては常に運用改善を行い、少しずつ地道な努力を積み重ねることで結果が生まれると身に沁みています。
また、採用活動はデザイナーの採用以外にも組織内外への発信の中で副次的な効果も大きいため、どの程度採用活動にコストを掛けると副次的な効果も含め結果が最大化されるのかを冷静に判断する必要があると考えています。
効果的で効率的な活動を続ける為には、それぞれの年での活動も重要ですが後任者への引き継ぎがとても重要です。
まずはベースとなる知識を後任者へインプットし、積極的に後任者へ任せ、難しそうなタスクは前任者自身がフォローを行い活動を続けています。
多くの場合、自身が一度経験していることを後任者へ引き継ぐ際には「資料を残すのが大変」「自分がやった方が早い」「自分のやり方の方が良い」という考えが浮かんでしまうと思います。
そこで経験があるからといって自身が前へ出過ぎず、後任者へ任せることを前提にしつつも、丸投げにはならないようサポートに徹するという姿勢で「昨年の参考資料はここにあるよ」「そのタスクに関してはこう進めると良さそうだよ」「本当に難しい場合は自分がサポートするよ」と手は出さずとも少し後から見守ることが大切であり、難しいことだと感じています。
また、デザイナー新卒採用の活動はDeNAだけのためではなく、社会をより良くすることができるデザイナーが1人でも増えて欲しいという想いを新卒採用チームの各メンバーが持ち、様々な関係者全員で取り組んでいます。 そして、その想いが今後も続くことを願い次の世代へ託します。