ビザスクデザインチームのhigashineです。 普段はUIをメインにしつつユーザー向けのコミュニケーションデザインにも取り組んでいます。
今回は2月に開催するユーザー向けオンラインカンファレンス「ビザスク Innovation Day2022」のクリエイティブづくりを例に、事業会社で取り組むイベントの際のデザインについてまとめます。
事業会社の中で、カンファレンスのようなイベントのクリエイティブをつくる時にどのようにコンセプトを固めれば良いのか、どうすれば制作が早く進められるのか、というポイントをまとめてみたので、ぜひ参考にしていただければ嬉しいです。
「ビザスク Innovation Day」は、毎年ユーザー向けに開催しているカンファレンスです。今年はオンラインで開催することが決まっています。
私は企画の開催が決まったばかりの、まだコンセプトが固まっていない段階でメンバーの1人として関わり出し、マーケティング担当とデザイナー1人体制でLPや広告バナー、オープニング映像、当日のzoom背景などをトータルでアートディレクションとデザインをすることになりました。
クリエイティブをつくるために動き始めた段階で、最初に伝えてもらったイメージは「イノベーション、先進的な」というものだけでした。
このまま制作を進めると、後から方向性がひっくり返されることになるのは目に見えていたので、まずはキービジュアルを固めることでチームのイメージを揃えようとしました。
最初に「イノベーション、先進的な」というイメージから連想されるキーワードをたくさん出していきます。
これらのキーワードをモチーフにして、キービジュアルのパターンを作っていきます。
ここで大事にしているのはコンセプトとなる文章も一緒にキービジュアル案を出すことです。
視覚的なイメージに変換して伝えるのが大事な一方で、この段階でグラフィックの完成度は高くないので、グラフィックだけで良し悪しを判断させないようにする必要があります。
例えば、「イノベーション」とは「見えない知見を探求すること」だと捉え、氷山の一角をモチーフにしたパターンは以下のようにまとめています。
「実際にサイトのトップにするとこんな感じ」という視覚的なイメージとセットで「このグラフィックには意味としてはこういう要素が含まれている」という意味まで伝えると、グラフィックの完成度が高くなくても良し悪しを判断しやすくなります。
最終的にはここまで深めたパターンが12案できました。
この段階で、社内でキービジュアルとコンセプトを意思決定するためのミーティングをセットしました。
企画に関わるプロジェクトメンバーと社長を集め、一緒に決めていきます。
この時、デザイナー側から良し悪しの判断基準をコントロールしないと、好き嫌いと言った感覚任せの決め方になってしまうので、判断するための「デザインの観点」を明示した上で、そこから決めてもらうことを大事にしています。
そのためにまず、「このキービジュアルを見たユーザーに何が伝わって欲しいのか?」を示しました。
その上で、つくってきた12のパターンを見せ、上記の「ユーザーに伝えたいこと」が伝わりそうなデザインパターンを、優先度をつけながら全員で絞り込んでいきます。
「ユーザーに伝えたいことが伝えられているか?」という観点で絞った後は、「他社と被っていないか?」「見た人にネガティブな印象を与えないか?」といった現実的な観点からも絞り込んでいきます。
この時点で、「ファーストペンギン」をモチーフにしたものと、「オイルアート」をモチーフにしたものの2案に絞り込まれました。
ここから、さらに実際のイベントで活用されている様子を想像できるビジュアルに落として、Slack上でメンバーに共有します。
最後に意思決定するにあたって「キービジュアルをもとにその他クリエイティブに展開がしやすいか」という観点を示しました。
例えば、オイルアートをモチーフにしたパターンは、今回のイベントのテーマをよく表せていたのですが、似たような素材が少ないため動画には展開しにくそう、ということでNGとなりました。
最終的に「イノベーション、先進的な」というイメージを最も表しており、見た人にネガティブな印象を与えづらく、素材の数も豊富な点から、キービジュアルは「ファーストペンギン」に決定しました。
デザインの良し悪しを決める観点をデザイナーから率先して示すことで、関わる全員がどのデザインが良いかを感覚に任せず議論して、納得して決めることができます。
キービジュアルが決まった後は、企画LPなど各種クリエイティブに展開していきます。
一連のプロジェクトはほぼリモートワークで進めていたこともあり、この時大事にしていたのは、自分の中だけで決めずに「これでもか」というくらいにプロジェクトメンバーのレビューをもらい続けて進めていくことです。
この時、コンセプトに早く納得をつくれていたことで、チームメンバーのレビューが多く生まれることにも繋がりました。
例えば、広告バナーについてのやり取りでは、最初はキービジュアルをそのまま広告バナーに落としたものをつくろうとしていました。
作ったデザインを、すぐに企画をつくっているマーケティング担当のメンバーに見せてみました。
過去の傾向から、オンラインカンファレンスの広告バナーでは、登壇者を強調することが大事そう、というお話だったので、その方向でさらにパターンを出していきました。
キービジュアルよりもペンギンの主張を弱め、登壇者の画像に囲いをつけて主張を強めていきます。ここでも都度レビューをもらいながら少しずつ前に進めていきます。
これらのレビューを踏まえて、最初はキービジュアルから始まりつつ、ビジュアルだけ見ると全く違うものにブラッシュアップされました。
自分だけで進めようとするのではなく、少しずつ改善する様子を見せつつ、頻繁にレビューをもらいながら進めることで、早くデザインを良いものに近づけることができます。
今回は、2つのポイントを大切にしてプロジェクトを進めました。
1つは何よりも先にコンセプトをしっかり固めること、2つ目はレビューと改善のサイクルを高速で回すこと。
コンセプトが固まらないままプロジェクトが進行してしまうと、あとから「なんでこのデザインなんだっけ?」と迷子になってしまったり、プロジェクトが進めにくくなってしまうことも多々あります。途中で「そのデザインじゃない!」という議論が再燃しないように、全員が積極的にコンセプト作りと意思決定に関われる進め方を意識しました。
このような進め方の理由には「デザイナーだけで進めても良いクリエイティブはつくれない」という私の考えもあります。
デザイナーが思う理想を形にするのではなく、あくまでみんなの中にある「こうあったらいいな」という理想のイメージを具現化して、それを少し超えた案を出す、ということを意識して動くことが、デザイナーの重要な役割だと思っています。
このようなプロセスを経てクリエイティブが少しずつ完成し完成していき、いよいよ「ビザスク Innovation Day2022」の開催も目前に迫ってきました。
ビザスクの、チーム全員で進めるコミュニケーションデザインの取り組みを、今後も発信していきたいと思います。最後まで読んでくださりありがとうございました。