ビザスクのプロダクトデザイナー市村です。
ビザスクは、ビジネス領域に特化した、190カ国52万人超の知見をマッチングするプラットフォームを運営しています。
サービスとしては、有識者に直接インタビューを行えるビザスクinterview、24時間有識者とQ&Aができるビザスクnow、オンラインアンケートのビザスクexpert survey、業務委託をマッチングするビザスクpartnerなど、さまざまなプロダクトを通じ、知見のマッチングを行なっています。
ビザスクの法人向けのサービスは、クライアントポータルというクライアント向けのwebサイトで提供されており、現在このクライアントポータルのリニューアルのプロジェクトを行なっています。(公開予定日:2023年上旬)
今回、クライアントポータルのリニューアルのタイミングで、お客様の業務や課題に対する認識を開発メンバーで揃えるため、PMとデザイナーの2人で、ビザスクの事業構造に合わせたジャーニーマップとペルソナが置かれている関係図をつくりました。
この後の制作方針を決める段階だけでなく、ジャーニーマップを制作する時にプロダクトとユーザーの関係性や、ユーザーの背景理解とメンバー間での認識共有が深くなり、「具体的な議論がしやすくなる」「ユーザーとスタッフの操作と影響の関連性を考えやすい」などの効果もありました。
特にtoB向けサービスにおける、ステークホルダーの業務の全体像や課題をリサーチしてまとめる時の参考にしていただければ嬉しいです。
ビザスクは元々1時間のインタビューサービスからスタートし、その後サービスラインナップが増えマルチプロダクト化した背景があります。
クライアントポータルを開発した当時は、単一プロダクトの提供しか想定していなかったため、そこにつぎはぎで他のサービスの動線をつけていましたが、いよいよそれには限界が出てきました。
そこで、今回は、マルチプロダクトを使いやすい設計にクライアントポータルを大幅にリニューアルすることになりました。
今回のリニューアルの対象となるクライアントポータルは、それを利用するクライアントと、サービスを提供するビザスクのスタッフを含めたステークホルダーが多く、業務フローも長いため、ユーザーがどこに課題を持っているのかが分かりづらくなっていました。
ビザスクのサービスは、プロダクトだけで完結するものではなく、ビザスクのメンバーがスポットコンサルの日程を調整するなど、サポートもシステム上だけで完結するものでなく、電話やメールなどアナログも含めたユーザー体験になっています。
ビザスクの開発メンバーとしても業務やユーザー課題の全体像を捉えづらく、プロダクトをどこから改善するかを意思決定しづらい状態になっていました。そこで、認識を揃えるためのリサーチに取り組むことにしました。
リサーチを踏まえ、クライアントポータルを利用するお客様がどのような業務をしていて、どのような課題感を抱えているのかを解像度高く理解するために、PMとデザイナーの2人で以下の3つを行っていきました。
- ビザスク用ジャーニーマップの作成
- お客様の周辺環境の図解
- 課題エピソードをジャーニーマップ上に図示
スポットコンサル業務の全体像を整理するため、ジャーニーマップを作成することにしました。
ジャーニーマップ作成のために行ったリサーチプロセスにおいて意識していたのは「最初から正解を引き当てる」のではなく、徐々に聞く範囲を広げながら、「間違いを修正していくように作成する」ことです。
作成の流れは以下の通りです。
- 各種資料をもとに、ジャーニーマップとペルソナの叩きをデザイナーが作成
- サービス理解度の高いプロダクトマネージャーと認識のズレを確認・すり合わせ
- 現場の最新運用方法、お客様のイメージのズレを営業メンバーに確認
- 不明点、確認したい点などを書き出し、Q&Aリストとしてまとめて、お客様にインタビュー
このようなリサーチを通して、「お客様が同僚に対して行っている、ビザスク利用のためのサポート業務の内容」「他社サービスと組み合わせて使うタイミングや背景」「ビザスクスタッフから共有された中で、サービスの利用上特に参考になった資料」などの、プロダクト利用外の動きや考えまで具体的にイメージできるようになりました。
上記のようなリサーチを経て、ユーザーがスポットコンサルを実施するまでに行うタスクの全体像を、ビザスクの事業構造に合わせてアレンジしたジャーニーマップの形にまとめました。
このジャーニーマップの特徴は、サービスを使っているお客様の業務や課題だけでなく、その裏で関わる人とのやり取りや、ビザスク側で行っているスポットコンサルの日程調整などのサポート業務や課題も一緒にまとめたことです。
先述したように、ビザスクのサービスはプロダクトだけで完結するものではなく、ビザスクスタッフが行うスポットコンサルの日程調整などのサポート業務を組み合わせて体験が提供されています。そのため、ビザスクスタッフ側の業務内容や課題も一緒に整理しなければ、プロダクト全体の課題が見えてきません。
また、お客様がビザスクのサービスを使っている時間以外で行っていた、依頼内容を考える・インタビュアーを選定するなど、サービス利用に必要な作業についてもまとめるようにしていました。
ビザスクのサービスを利用するお客様には、サービスを使って達成したい目的があります。その目的を踏まえて、彼らがプロダクトを使う時間以外でどのような業務をして誰と関わっているか、どういった影響を相互に与え合っているかを把握することで、より正しく課題を捉えられ、クリティカルなアプローチが可能であると考えています。
ジャーニーマップだけでなく、ペルソナを深く理解するために、ペルソナと周りのステークホルダーとの関係性まで図解するようにしていました。
ペルソナを詳細にまとめるだけでは、なぜその人がこういう業務をしているのか、という背景を理解するのは難しいと思います。また、単にジャーニーマップをまとめるだけでは、他の人からの影響を見逃し、思わぬ失敗を招いてしまうと思います。
ペルソナと周囲の関係性を知ることで、サービス利用に協力していただけるフォロアーを発見し、ペルソナにアプローチするのではなく、フォロアーにアプローチするといった方法や、利用の障害となりえる方がどのようにすれば協力的になっていただけるのかを考えることができます。
さらに、営業メンバーとお客様双方からヒアリングした課題エピソードを図示してジャーニーマップに並べていきました。リサーチ結果はテキストだけだと理解しづらいので、より関係性がイメージしやすいように簡単に図示し、流れで理解できるようにジャーニーマップとセットでまとめています。
ジャーニーマップをつくった段階では、課題を理解できているつもりになっても開発メンバー内で認識が揃っていなかったり、似ているけれど異なる課題について整理できていないことで、今後取り組む課題の優先度がつけづらい問題が残っていました。
そういった点を図示することで、各課題をイメージで理解しやすくなったり、さらに深ぼる点が明確になり、課題の優先度が考えやすくなりました。
また、ジャーニーマップ全体を再度読み直さなくても、図示された課題だけ見れば具体度高くユーザーの業務における課題を理解できるため、振り返りやキャッチアップも行いやすくなっています。
リサーチ結果を、ジャーニーマップやペルソナと周りの人の関係図にまとめたことで、スタッフやお客様の業務や課題に対する認識が開発メンバーの中で揃うようになりました。
自分自身も入社直後ということもあり、複雑な業務を分かりやすく整理できたことで理解が深まり、クライアントポータルの理想像を想像しながらプロトタイプをつくれるようになりました。
今回の取り組みで一番のポイントは、スタッフやお客様が置かれている環境や関係性まで整理することで、プロダクトに関わる方々の関係性やそれぞれの持つ課題への共通認識をプロジェクトメンバー内で持てたことでした。
プロダクトの理解度が異なるメンバー間でも、このリサーチで作り上げられた共通認識をもって、プロダクトの改善点や優先順についての議論が出来たり、プロジェクトを円滑に進められるようになりました。
大規模なリニューアルにおいて、改善点や優先度付けはとても難しい作業ですが、お客様がプロダクトを使っている時だけでなく、その裏側での業務や周りにいる人との関係性まで把握していくと、本当にお客様がプロダクトで何をしたいのかが見えてくるように思います。
クライアントポータルのリニューアル自体は、今も引き続き進めています。プロダクト的な理想と事業ロードマップとの兼ね合いをどのように付ければいいのか、など課題に取り組みながら進めているので、続編としてまた発信できればと思います!