ログラスは現在社員3人、パートナー4人の計7名体制のデザインチームとして活動しています。

私は、2021年10月に1人目のデザイナー社員として入社しました。そこから1年間で、現在のデザインチームの体制になるまでの組織づくりに取り組んできました。

ログラスデザインチームの変遷。
1人目の社員として高瀬が入社後、1年間でデザインチームは7名規模に拡大。

立ち上げ期のデザイナーは、プロダクト、マーケティング、採用、組織づくりなどやることが多岐に渡り、時間をどう使えばいいか迷ってしまいがちだと思います。

今回は、ログラスでの1人→7人への組織拡大の中で、投資したものと、逆に捨てたものをまとめることで、同じように立ち上げ期のデザイナーの方がデザイン組織により多くの投資を行うための参考になればと思います。

ログラスでデザイン組織を立ち上げた背景には、「急成長中のSaaSなので、プロダクト/マーケティングの両面でつくるものが幅広い」「使いやすさや体験が競合優位になっていた」という2つの理由がありました。

ログラスは、2019年に創業した、経営管理SaaSを扱う会社です。SaaSとしての理想的な成長曲線であるT2D3といわれる成長を辿っており、組織規模も2021年に私が入社した時は社員10名程度でしたが、現在は50名を超える社員が在籍しています。

そんな急成長をしているSaaS企業だからこそ、プロダクト面でもマーケティング面でも、つくるものは数も非常に多く、種類も幅広くなります。

急成長しているログラスでは、バナーやLP、展示会のクリエイティブなどのマーケティング面での制作物や、プロダクトの新機能や改善など、無数に行わなければならないことがあります。

それに加えて、ログラスでは、デザインに対する投資が初期から重要とされていました。理由としては、今まで経営管理という領域にはデザインが入ってこなかった点にあります。

お客様は、古くて使いにくい、レガシーな画面で苦労しながら操作していました。ログラスは「全ての企業に最高の経営管理体験を。」というプロダクトビジョンの元に、デザインに投資することで顧客と一緒にプロダクト価値を作ってきました。そのためログラスの導入理由に「ユーザビリティ」「体験」などデザインに関する要素が入っていることが多くあげられます。

ログラスの、お客さまからの導入理由。体験やユーザビリティが導入における優位性になっていた。

それら2つの理由を踏まえて本格的にデザインに投資していく必要があると意思決定され、私が1人目のデザイナー社員として入社したタイミングからデザイン組織立ち上げが始まりました。

私が入社した2021年10月のタイミングでは、事業が急成長フェーズに入ったため、プロダクト・マーケティングに関するデザイン業務が山積みになっていました。

一方、今後のことを見据えると採用や組織づくりにも早期に取り組む必要があることは見えていたため、目先の業務だけでなく組織面の動きも増やしていく必要があり、広い役割ゆえのバランスの取り方を考える必要がありました。

立ち上げ期のデザイン組織には、プロダクト面でもマーケティング面でも、無数にやることがある

1人目のデザイナー社員として入社してから「組織づくり」に投資してきました。主なポイントは以下の4つです。

  1. 採用を最優先の目標にして大きく時間を使う(クオーターの1/3は丸々採用に投資)

  2. 将来から逆算したデザイン組織体制の可視化

  3. デザインカルチャーのマイルストーンを可視化

  4. 1人の段階からデザインチームとしての動きを社内に共有

1人目デザイナーとして入社してすぐに採用に取り組み始めました。デザイン業務よりも優先度を高く設定した結果、クオーターの1/3に当たる時間を丸々採用に投資していました。

プロダクトや、マーケティングなどの日々の業務よりも、採用に対して大きく時間を投資していた。

立ち上げフェーズ(シリーズA前後)の企業はまだまだ知名度がなく弱小ベンチャーです。

採用しようとしても認知度がないので、選考を受けてくれる人すらいない状態になってしまいます。求人を出してもデザイナーから応募されるのは稀です。

そこで認知を作りに行くためには、他の業務がある中でも、意識的に採用に時間を掛けていく必要があると考えています。

具体的な採用活動のアクションとしては、以下のようなことに取り組んでいきました。

  • 自分からスカウトを打つ

  • リファラルで紹介してもらう

  • カジュアル面談の数をこなし母集団を形成する

  • デザイナーにとって自分の組織が魅力的であるポイントを整理、磨き込み

デザイン組織に人数が少ない段階の頃から、デザイン組織の将来を見据えて、今どのポジションが足りなくて、どういう役割の人をさらに増やしていく必要があるのかを、ユーザージャーニーや、関わる部署との関係性から整理しています。

デザイン組織にどのようなポジションが必要なのかを、先を見据えて体制として整理。
なぜ必要になるのかを示すため、ユーザージャーニーや、他部署との関わりをもとにまとめている。

デザイン組織の形態としては、事業に紐づく縦型、横断的な機能を持つ横型、両方をかけ合わせたマトリックス型があります。最終的な理想はマトリックス型だと思っていますが、立ち上げてすぐ、いきなり理想を目指せるわけではありません。

ログラスのデザイン組織は、今から2年後〜3年後には20〜40名規模の組織になるように想定しています。 現段階では、事業に紐付く縦型組織にするパターンでも良かったのですが、今後拡大するデザイナーにとって職能のグラデーションが起こりやすく魅力的で、かつプロダクトの数が増えても対応できる組織にするため、あえて社員1名の段階から横串のデザイン組織をつくっていきました。

どういう項目を満たせばログラスのデザイン組織は良いと言えるのかを整理して、ロードマップとしてまとめ、それらの項目を埋めるように動いていました。

デザイン組織として目指す状態と、どういう項目を満たせば良いのかを整理したロードマップ

一言で、デザインカルチャーが強い組織といっても、どうなっていれば良い状態なのかを判断するのは難しいと思います。またGoogleのように新しい概念を生み出す強いデザイン組織(Lv5)に、いきなり成ることは不可能です。そこで、客観的にみて自分たちのデザインカルチャーがどういう状態なのか、次のLvにはどうすれば成長できるのかを測れる方法が必要だと感じていました。

その方法として、自分が良いなと思う企業やサービスがやっているデザイン活動をリストアップしていき、5つのレベルに分けて整理してみました。

最初は「デザイナーが組織にいる」という項目1つしかチェックがつかない悲しい状況でした。この表を使いながら「次はこういう機会を作っていくべきだな」という指針を持つことができ、組織づくりに大きく活用できています。

また、クオーターごとに振り返ることで、自分たちのデザインカルチャーが成長しどこに向かっていこうとしてるのかを感じる事ができ、メンバーが入ったタイミングや組織が大きくなったタイミングで項目自体もアップデートすることでチームの目線をあわせることにも活用していきたいと考えています。

デザインチームに私1人しかいない状態の時から、プロダクトチームの一員としてではなく、デザインチームとして成果を発表するようにしていました。

毎週の成果発表会のドキュメント。エンジニアメンバーと一緒に発表する形式だったところから、デザイナー1人でも”デザインチーム”として名乗って成果を共有するようにした。

私が1人の頃から、あえてデザインチームとして成果を発表するようにしていたのは、ログラスの中でデザイナーに対する賞賛が起こりやすい文化をつくっておき、将来入ってくるデザイナーが働きやすい環境を作っておきたかったからです。

立ち上げ期のデザイナー採用に取り組む上で一番重要なのは、デザイナーが気持ちよく働ける組織であることだと思っています。デザイナーが他職種とどういったコラボレーションや関係値を築けるかは、組織がデザインを「制作工程の一つ」と捉えているのか「重要な資源」と捉えているのかに直結してくるからです。

実際、この共有を始めてから、ログラスの中でデザイナーに対して期待が集まりやすくなったり、新しく入社したデザイナーも気持ちよく働きやすくなっているように思います。

例えば以下のような効果が生まれています。

  • 採用でのポジティブな効果(非デザイナー社員がデザイナーをアトラクトできる)

  • 入社後のオンボーディング速度が向上

  • 組織、チームへの定着速度が向上

入社した当初は「自分の得意領域でもあるプロダクトデザインで事業を牽引していくぞっ」という気持ちでいました。しかし、組織の規模が急速に拡大し、やることが無限に湧いて出てくる現状を目の当たりにして、自分1人では追いつけないことに気付かされました。

ログラスにとって一番いい状態は「スケールしながらも顧客に素早く価値提供できる状態」をつくることで、私がやるべきことはプロダクトのデザインをつくることではなく、魅力的なプロダクトを創出するデザイン組織をつくることだと認識しました。

そこで「自分がデザインする時間を極力捨てる」ことを決めました。

組織づくりに時間を投資するためにも、初期からパートナーを巻き込み、プロダクトやマーケティングのデザインについては自分が手を動かさないように心がけていました。

マーケティング、プロダクトなど、日々の制作業務はパートナーを巻き込むように。

副業や業務委託・外部ベンダーをフルで巻き込み、自分はデザインのディレクションだけに注力するようにしました。それ以外の空いた時間はすべて採用に回したことで、早期にデザイン組織を立ち上げることに成功しました。

一方で、自身がプロダクトデザインにしっかりと参入できなかった代償があると感じています。本来であれば開発チームにデザイナーとして参入することで、プロジェクトの推進力をあげたり、プロダクトのクオリティをより向上できるところが後手に回っている点です。

これに関しては、新たにデザイナーが増えたことで目下注力しております。

これらの組織への投資の結果、1年間で、デザイナー社員1名だったところから、社員とパートナー含め7名の体制まで拡大することができました。

実際に入社された方や、パートナーの方からは、以下のようなコメントをいただいています。ようやく、1年間でデザイナーとして働きやすい環境が用意できてきたため、ここからもさらに拡大に向けて動いていきます。

働く社員やパートナーからのチームに対する声

デザイナーとして1人目に入社した身として一番意識していたのは、未来の結果に投資することでした。

デザイナーを採用したいと思った時、まず採用に動くのではなく、デザイナーにとって働きやすい環境をつくるべきだと思います。そうしなければ、認知もされていないような立ち上げ期の組織で働きたい、と感じる人は少ないのではないでしょうか。

言うなれば、デザイン組織は、デザイナーが集まってからつくるものじゃなくて、デザイナーが集まる前からつくるものだと思っています。

また、前述したように、デザイン組織の立ち上げについては、横串から始めていくのがいいんじゃないかと思っていました。

理由としては以下の2点があります。

  • 縦型から進めると、事業の推進力は出てくるけど、長期的な課題(カルチャー崩壊や、組織崩壊が起こりやすい)

  • 最初から拡大を見越した横串で始めると、プロジェクトの駆動性は落ちるけど、採用もカルチャーもプロダクトも好循環のサイクルをつくっていける

これらの判断が正解だったかどうかは、まだ分からない部分ではありますが、このような意識で動いた結果、1年間で順調に組織を拡大することができました。

ログラスには、「LTV first」というバリューがあります。短期的な利益を追い求めるのではなく、長期的な投資を重視する考えです。

デザイン組織の立ち上げにおいても、自分のやっている業務が、作業なのか、未来に向けた投資なのか、ということを常に意識しています。

ログラスのデザイン組織はこれから拡大に向けて動いていきますが、まだまだ課題が山積みです。

今後も、デザイナーが魅力的に思える、働きやすい環境に投資していきます。

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