LINE Fukuokaクリエイティブ室の伊藤です。
LINE Fukuokaクリエイティブ室で、数値分析やリサーチを担当しています。 私は2020年に入社し、日々試行錯誤しながらクリエイティブの価値を数値で見える化することに取り組んでいます。
今回はデザイナーとしてのキャリアがない中で、デザインチームの中に所属する私の役割について、LINE LIVEのバナー改善に取り組んだ話を例にまとめてみます。
LINE LIVEのトップバナーは、アプリを開いた時に最初にタップされる部分で、デザイナーに対し、テイストを変えたいという要望が頻繁にあがってきていました。
ただ、このようなクリエイティブは運営目線だと頻繁に変えたくなるのですが、実際は「クリエイティブを本当に変えるべきかどうか?」というところをユーザー目線で判断しなければ効果のある改善に繋がらないかもしれません。
また、この箇所に掲載しているバナーはユーザーからしっかり反応をいただけていて、その後の行動にしっかり繋げられているのかを知る必要があります。
そのため、バナーの効果を数値で測ることが必要でした。
この時意識したのは、私だけで追う指標を決めないことです。メンバーが自発的に改善を繰り返すことができるように、デザイナーとタッグでどの数値を追うのか、どうすれば数値が上がるのか、を決めました。
同時に事業マネージャーに対しても、この数値を追う、という合意を取りました。売上と指標の相関関係を示したりして、デザインを改善する合理性を示しました。
注力指標は決めたものの、そもそも数値を見れる環境がなかったため、数値を見れる体制づくりにも着手しました。
ここで意識したのは、デザイナーが自分で数値を見て改善案を出せるようにワークフローを整えたことです。
まず、デザイナーと一緒に、週次で数値を見れるようなボードを作りました。
ボードを見たデザイナーから毎週「ここ数値がおかしいんですが、なんでですかね?」という疑問が届き、そこに対して、ユーザー視点で一緒に解釈をして改善する動き方をしています。
例えば以前デザイナーから「XXXのバナーが想定よりCTRが低かったが、なぜなのか?」という相談を受けました。
LINE LIVEのトップバナーはカルーセルで表示しているため、通常1つ目のバナーの方が2つ目のバナーよりもCTRが高くなるはずなのですが、どちらも数値が変わらなかったことに対して出てきていた疑問でした。
この時、クリエイティブの問題として1つ目のバナーを作り直すのではなく、私が入り込んでユーザーの体験を再現しながら調査を行います。
調査の結果、実際にアプリを起動する際にはポップアップが表示されており、それを閉じるまでの間にカルーセルが流れ、2つ目のバナーが表示されてしまっていることがわかりました。
そのためクリエイティブを改善するのではなく、カルーセルが流れる秒数を調整し、ポップアップを閉じたあとも1つ目のバナーが表示されるように改修をおこないました。このようにクリエイティブ起因なのか、UX起因なのかの問題の切り分けも大事にしています。
また、トップに表示するバナーの掲載枚数を絞って掲載順にも優先度(もちろん1枚目が優先度高)をつけるよう選択と集中を行い、クリエイティブのビジュアル面だけでなく運用のやり方でCTRを底上げすることができました。
カルーセルバナーの特性上、掲載順によってCTRが変わることを踏まえ、各掲載順で目標値を設定してクリエイティブの効果を見えやすくしたこともポイントです。
クリエイティブの改修に着手する前に原因を調査することで、デザイナーが手を加えるべきか否かの判断ができ、必要となればその部分に集中して取り組むことが可能になります。
このような体制づくりによって、デザイナー側から自発的に数値改善のための仮説が出る文化が出来てきました。
また、デザイナーから出てくる数値改善のための仮説の精度を高めるために、デザインチームに向けて数値に関する勉強会も5ヶ月ほど隔週で行っていました。
CTR一つとっても、分母と分子を何に置くのかによって見方が変わってきます。
注力指標を置く、数値改善をする、という動きを自発的に行える文化をつくるために勉強会を開きました。
勉強会では、CTRの置き方などを講義形式でわかりやすく伝えることを心がけており、隔週でインプットを繰り返す中で、メンバーが自分で数値を見れる文化の一歩をつくることができました。
数値を見れるようにするだけで、流しっぱなしにしてしまって改善されない、というのはよくある課題です。
デザイナーだけでは数値から改善を回し続けることは思考的に難しくなりがちですが、クリエイティブの価値を数値から解釈する私のようなメンバーが入ることで、デザインチームが数字を追いかけられるようになり、つくったデザインの結果をみてデザイナーが自分で改善を行えるようになりました。
クリエイティブの価値を数値で測ることは、事業の成長に対してはもちろん、デザイナーが迷いなくつくるための自信を生むことにも繋がります。
多くの方々にご利用いただいているLINEサービスにて数値をしっかり追ってデザインするインパクトは大きく、今後もクリエイティブ室の数値担当者(肩書きは募集中)として、デザインがさらに事業の成長に寄与していける体制づくりに取り組んでいきたいと思います。