エイチームコマーステックでObremoというペットフードブランドを運営している加藤です。普段は、広告運用や、Obremoの機能設計など、マーケティングを中心に広く担当しています。
Obremoは「ペットを家族のように大切に思う人々に対し、個々に寄り添った商品と情報の提案を通じて、家族の絆を深める健やかで楽しい日々を提供する」ことをコンセプトにしたペットフードブランドです。
Obremoでは「獣医師監修フード診断」を通じてペットフードを販売しています。
今回は、マーケティング目線も含めながら「類似サービスもやっていない、新しい機能をどう考えていくか」について、私なりの考えをまとめていきます。
ペットを飼っていると病気やアレルギー、体調など、気がかりなことが非常に多い中、Obremoでは「ペットの状態を入力すれば、おすすめのペットフードを教えてもらえる」フード診断機能を提供しています。
診断結果は、専門家である獣医の先生監修の元表示を行っています。
ペットの状態に合わせたフードを提案し、「どんな栄養が必要なのか」「なぜ必要なのか」を丁寧にお伝えしています。
チーム内でも、特にデザイナーとよくコミュニケーションを取ることが多いのですが、サービス全体のトーンも「獣医さんに診断を受けてもらっているような感じ」と、よく話しており、丁寧なコミュニケーションを心がけています。
しかし、ペットフードブランドはObremoの他にもさまざまある中で、当時このような診断機能を持っているサービスはごく僅かでした。
そんな中、獣医さんとの連携、開発コスト、診断ロジックの設計、UIデザインのコスト、それらも含めて「診断機能をつくろう」と踏み切った背景についてお話していきます。
まず、Obremoのターゲットは、広く言うならばペットの飼い主です。
しかし先ほどもお伝えしたように既にペットフードブランドはいくつもあり、後発ブランドであることは分かっていました。
そこで「どの層からObremoのファンになってもらうか」から考え始めました。
社内でワンちゃんを飼っている飼い主の方々にヒアリングもしていきました。
その中で見えてきたのは、ペットショップでよく交わされる会話の一つに、「ペットフード、色々あって何が良いか分からない」という会話があることでした。
そこで、Obremoでは、いくつかの議論を経て「どんなフードがいいのか分からないが、ワンちゃんの健康状態を蔑ろにしたくない飼い主」というターゲットを設定。
そして、事業構造的に、納得感の低い1度きりのお客さまを増やすよりも、いわゆるD2Cがそうであるように、継続的に購入してもらう必要がありました。
そのため、きちんとした情報提供・納得感のある購入などを通して、信頼されるサービス運営を行う必要がありました。
そこで出てきたアイデアの一つが、診断機能でした。
とはいえ、診断機能は他サービスもほとんどやっていないことで、しかもリソースが少ない中で、コストがかかることも目に見えていました。
それでも、Obremoのブランドコンセプトである「個々に寄り添った商品と情報の提案を通じて、家族の絆を深める健やかで楽しい日々を提供する」ことを実現するベストな方法を決める上で、まずはざっくりと、やるべき理由・やらない理由をテキストにまとめてみました。
診断機能をやるべき理由としては、以下が挙げられます。
- Obremoの理想の体験としては、動物病院のような体験であること
- 最初にターゲットとなるお客さまは、ペットフードに関する知識が豊富なわけではないので、補足知識とペットフードを合わせて購入ができた方がよい
一方でやらない場合の理由はこちら。
- もともとWebもアプリもあったため、開発コスト的に初期から実装するのか
- 広告集客において、ページ遷移は少ないことが鉄板だが、診断で遷移が増えるのは良いのか
- 診断には専門性と責任が求められるが、十分な診断結果を出せるのか
お客さまが得られる体験としても、やった方が良いことは間違いなかったので、やらない理由が解消可能なことを確認し、一つ一つ解消していきました。
こうして、デザイナーやエンジニアに対してパスをつなげることができました。
結果的に診断機能はうまくいったと考えています。
Obremoは立ち上げからすでに10万食(※)売れており、好調に伸びています。 ※2021/8/30~2022/3/29の販売累計量(1日3食換算)
振り返って、重要だったと思う点が「ペルソナの具体度」です。
Obremoでは、年齢や居住地などはもちろん、日常的に使う決済手段や、好きなブランド、コアニーズまでを記載しています。
他サービスがやっていない新しい企画や機能は特に、細かいペルソナや抱えているジョブを設定しないと、広告も効果が出にくいですし、一緒に仕事をするデザイナーも制作を進めづらいためです。
また、事業が進むごとに学びが積み重なり、その都度ペルソナを更新をしていくという運用をしています。
もう一つ、常に念頭にあるのが「リアルな店舗ならどうするか」という点です。Obremoではオンラインでの購買体験を提供しているのですが、オフラインのペットショップや動物病院でどんな接客がされているのかは、常に参考にしています。
先程の話とも関連しますが、ペットショップや動物病院でもお客様の状況によって接客を分けているように、Obremoでもペルソナを細かく設定し、場面にあった体験を提供する必要があると考えています。
結果として、Obremoの診断機能は売上はもちろん、実際にフードを購入していただいた方からの喜びの声から、設定したペルソナが正しかったことも証明してくれました。
もちろんフードだけの影響ではないことはもちろんですが、実際に健康を維持できているというありがたいお声をいただいています。
世の中には「これ一つで健康に!」などといった謳い文句でサービスを提供しているところもあります。
しかし、お客様と長期的な関係性をつくっていくためには、今回の診断機能のように「楽な売り方をしない」ということが、自分自身も学んだ一つのポイントです。
今後も、お客さまのココロが動くような体験を届けられるようにしていきます。
最後までお読みいただきありがとうございました。