SUPER STUDIOでは、2023年9月頃からecforceのマーケティング領域を担当するデザインチームにおいて「スクラム運用」を取り入れたワークフローを実践しています。
当時、マーケティング領域の制作においてワークフローの課題がありました。
ちょうどその頃に私は入社したのですが、前職でスクラム運用を取り入れたワークフローを実践していたこともあり、当時抱えていた課題を解決できる打ち手になるのではないかと考え、取り組み始めました。
SUPER STUDIOのマーケティング領域では、デザインチームとマーケティングチームが連携しながら様々な施策を実施しています。 具体的には広告やLP、ブランドサイト、各種資料、オフラインの展示会など多岐に渡り、制作の案件数も右肩上がりに増えている状態でした。
当時マーケティング領域を担っていたデザイナーは7名。グラフィックに強い人やディレクションに強い人、モーショングラフィックスに強い人など、それぞれ専門領域を持ったメンバーが集まった魅力的なチームだと感じる一方、ワークフローの面ではいくつかの課題を抱えていました。
より具体的な状況を把握するため、チームメンバーへのヒアリングを行ったところ、次のような課題が挙がりました。
「サイトの改善はこの人に依頼」「モーションはこの人に依頼」というように、タスクが属人化してしまい、人によってはリソースが逼迫していた
リモートワークの環境も相まって、デザイナー間での情報共有が不足したり、リソースの把握が難しくなっていた
本来統一すべきサービスの訴求内容などがうまく共有されず、部分最適での改善が多くなってしまっていた
メンバーにヒアリングをするなかで、「〇〇さんはそういう状況だったんですね」「私はこういう状況でした」といったようにお互いの状況を初めて知る場面もあり、情報が閉鎖的になっていると感じました。
このようにチーム状況の不透明さやリソースの逼迫に対し、稼働を安定させながら、事業推進に集中できる環境をつくるために実践したのが今回のスクラム運用です。
具体的には以下のような流れで進めていき、少しずつ自分たちに合った形に変えていきました。
スクラム運用への理解を深める
チーム状況に合わせて柔軟にアレンジ
リソースの可視化とアサインの適正化
相互の学習機会を増やす
スクラム運用に馴染みがないメンバーもおり、いきなりワークフローを大きく変えてしまうと混乱を招く可能性があったため、まずはチーム内でのスクラム運用に対する理解を深めることに務めました。また、現状の課題をどのように解決するのか、お互いの認識を合わせられるように進めていきました。
例えば、Atlassian社が提供するアジャイル開発のガイドブックなどの輪読会を実施し、クイズを交えながら参加型で理解を深められる機会を作っていきました。
また、スクラム運用の経験者・未経験者双方の意見を聞きながら、導入することで得られるメリットや想定されるデメリットの認識を合わせ、チームに合う形を目指してスクラム運用に取り組んでいきました。
実際にスクラム運用を開始してからも定期的に振り返りを行い、柔軟にアレンジしながら運用方法を変えていきました。
例えば、当初はスプリントプランニングの際に全てのタスクに対して全員で見積もりを設定していたため、想定以上に時間がかかりすぎていました。そのため、予め各領域の担当者が見積もりを設定し、プランニングの際に全体へ共有・調整する形に変更しました。
他にも、本来は毎朝実施するデイリースクラムを水曜日のみの実施とし、日々のコミュニケーションの過程で進捗の把握や問題の早期発見ができるよう工夫しました。
このような実践と振り返りを経て、冒頭で示したようなサイクルでの運用に落ち着きました。今後もチームによりフィットした形で取り組んでいきたいと思っています。
今まで属人的にアサインされていたタスクも、スプリントプランニングの際にメンバー全員でタスクの棚卸をし、見積もりの設定やアサイン分配を行うようにしました。
例えば、以下のような観点でアサインをしています。
制作物が多く、短納期になりやすい展示会などのオフラインイベントは、リソースを分配することで、個々の負担を下げつつスピードアップできるようにする
制作ニーズが高い動画領域については、レトロスペクティブで得た知見を活かし、他メンバーが動画領域を担当することで、モーションを得意とするメンバーのリソースの逼迫を解消する
リソース状況を全員が把握できるようになったおかげで、相互に声を掛け合って調整ができたり、各メンバーの専門性をさらに活かせる領域にアサインできるようになりました。
プロジェクト進行やスクラム運用について隔週で振り返りを行うレトロスペクティブに加え、月に一度各メンバーが学んだことを共有するナレッジ共有会も実施しています。
例えば、KPIへの貢献度が高かった訴求やビジュアルを成功事例として共有したり、3Dなど新しくチャレンジした表現の紹介などを行っています。
各メンバーが取り組んでいる領域も幅広く、それぞれが強みとする専門性が異なっているため、純粋に学びになるトピックが多いですし、なによりチーム内のコミュニケーションが活発になり、お互いに学び合う文化ができていることを嬉しく思っています。
スクラム運用に半年ほど取り組んできた結果、当初の課題であったチーム状況の不透明さやリソースの逼迫が解消されてきています。
メンバーからも、スクラム運用を開始してからチームの組織力がすごく上がったという声もあがっており、取り入れてみて良かったと感じています。
さらに、具体的に良かった点や今後改善していきたい点をまとめると以下となります。
全員で計画や振り返りを実施することで、チーム内の認識が合い、連携しやすくなった
タスクの優先度に対する認識も合い、「今本当にやるべきこと」に集中しやすくなった
特定の誰かのリソースが逼迫することがほとんどなくなった
施策の成功事例やナレッジが積極的に共有され、相互学習がしやすくなっている
他メンバーが取り組んでいる領域に興味を持ち、自分のケイパビリティを広げるメンバーが増えている
現在はデザイナーを中心とした運用となっているが、今後はマーケティングやセールス、カスタマーサクセスなど他部署との連携をより強化していきたい
デザインレビューをスクラムイベントに組み込むなど、自然と品質担保ができる状態をつくりたい
スクラム運用に取り組み始めた頃は、スクラムに不慣れなメンバーも多く、本当に意味があるのか不安に感じるメンバーもいました。私も入社したばかりだったので、一緒に改善を積み重ねてくれるチームの皆さんに感謝しかありません。
厳密には本来のスクラム運用と異なる点やアレンジしている点もあるのですが、最初から完璧な運用を目指してフレームワークに振り回されてしまうより、目の前の課題に向き合い、実践を通してスピーディに改善していける方が健全だと考え、柔軟さを大事にしています。
スクラム運用を取り入れたことで、個々の努力に頼りすぎることなく、チームとしての成果を最大化していく土台が整ったと思います。
今後も実践から得られる学習を大事にしながら、事業に対してより大きなインパクトを発揮できるチームであり続けられるように取り組んでいきます。