MIXI_ANIME発となるオリジナルIPコンテンツ第一弾として公開された「城郭合体オシロボッツ」のロゴ・キービジュアルなどのアートディレクションを担当しました。
IPコンテンツにおけるロゴは、ストーリーや背景設定などの世界観を凝縮し、見る人にそのコンテンツらしさを伝える大事な要素です。
今回は、お城×ロボットというコンセプトであるIPコンテンツのロゴ制作の流れを振り返りながら、どのように「らしさをロゴに落とし込んだか」をまとめたいと思います。
日本全国に存在する個性豊かで魅力的なお城を、“もしも実際のお城が巨大ロボットに変形&合体したら”という今までに無い新しい切り口で描くMIXI_ANIMEのオリジナルコンテンツです。
日本のお城文化を盛り上げていくため、第一弾として「熊本城」「高松城」「会津若松城」の 3 城のオシロボットと、3 城が登場する大張正己監督によるショートアニメを公開しました。
オシロボッツのロゴ制作は、プロデューサーがコンセプト・背景設定などを企画書としてまとめあげている段階からスタートしました。
約100ページに渡る企画書にお城や、ロボット、コンテンツにかける想いが凝縮されており、そこからアートディレクターとしてコンテンツの世界観を凝縮したロゴを制作することに。
IPコンテンツのロゴであること、お城×ロボットというコンセプトであることを踏まえて、特に重要視したことは下記の2点です。
コンテンツ自体がお城ファンに向けたものであり、ロボット造形の「実際のお城に可能な限り忠実に再現する」というところから始まり、設定や細部の並々ならぬこだわりがあります。
ロゴを介したコミュニケーションでも、その説得力を損なわず、印象として伝えていくことが大事だと考えました。
IPコンテンツとしての特性として、現実世界にはないような世界観や、ストーリーにおけるキャラクターの感情の機微などをコンテンツの「らしさ」として表現することも大切です。 そのため、サービスロゴや、コーポレートロゴなどとは少し違い、見る人がどう感じるかという感覚的な部分の割合を大きくロゴデザインの表情に落とし込むことになります。 今回はお城とロボットに共通する「迫力のあるスケール感」がコンテンツの魅力を端的に表現できるポイントだと考え、その表現方法を探りました。
お城ファンに楽しんでもらえるIPのロゴにするためには、知識はもちろん、「熱量の高いファンでも共感できるポイントはどこか」を見つけることが大事なポイントです。
ですが実は...そもそもキックオフの段階ではお城についてほとんど知らない状態で、何が魅力なのかもまだよく分かっていませんでした。
自分自身がその魅力に共感できていることが重要だと思い、まずは書籍などで基本的な知識をつけつつ、実際にお城EXPOというイベントに参加してみたり、お城を巡ってみながら自分の肌でそのスケール感や良さを探りにいきました。
お城EXPOでは入場と同時に福山城の担当の方にいきなり話しかけられ、その魅力について熱く語っていただきました。福山城の北側の壁面だけに黒い鉄板が張り付けられた「北側鉄板張り」は、戦の観点だけでなく、壁面の白と黒のコントラストの美しさも魅力的でしたが、何よりそれを伝える熱量に触れられたことが良かったです。
そんな熱量を浴びたかと思えば、イベントのトークショーでは「お堀」一点張りのテーマで熱いトークが繰り広げられたり、小学生の自由研究発表では大人顔負けな深さの研究内容だったり。聞けば聞くほど、思い思いのお城の魅力があり、改めて「お城」というコンテンツの深さと広さを目の当たりにしました。
また、実際に江戸城本丸跡に足を運んでみて、石垣のスケール感と高く抜ける⻘空を眺めながら、"実際に天守があったら"を想像してワクワクする感覚がありました。
ここで、自分のなかで"高さの迫力"に強い魅力があることに気付きます。
キックオフ時点でもそこが魅力の1つだという話は聞いてはいたものの、実際に目の前で見たときの「本当にそこにある存在感」は凄まじく、この感覚は共感につながるポイントだと実感しました。
リサーチを踏まえて、ロゴの制作を進めていきます。ここでは、お城やロボットのコアなファンでさえも共感できるような「らしさ」を探っていきました。
お城やロボットらしさと言っても様々な要素があり、その表現方法も様々です。
今回は以下のような方向性を検討しました。
お城やロボットに共通する「迫力あるスケール感」を訴求した案
いわゆる歴史モノとしての世界観を出すための筆文字案
幾何学的なフォルムと筆のタッチの組み合わせでロボット×お城を表現した案
どの要素を特に押し出すべきか方向性を探る意味も込めて、ラフ案を作成し方向性を定めていきます。
提案として、自分の体験の中でも共感した「迫力のあるスケール感」のB案を推していたのですが、プロデューサーにも共感してもらい、この案をベースにディティールを調整していくことに。
次に、より説得力をもたせるための要素を、ロゴとしての強度とのバランスを保ちながら散りばめていきました。
プロデューサー自身がとてもお城ファンであり、相談を重ねながらコアなファン目線で伝わるアイディアを表現として組み込んでいきました。
確かな知識を元に遊び心を持って細部を作り込むことで、パッと見の印象だけでなく、よくよく見た時に、潜んでいるお城らしさに気付けるような演出にしています。
この段階でロゴの具体的な使用イメージを確かめるためのビジュアルデザインを作成しました。
ポスターなど今後つくられるであろうクリエイティブに当てはめることで、ロゴ単体だけでなく全体のビジュアルトーンを検討しやすくなることを目的としています。
このタイミングで「コアなファンが楽しめる世界観」は高い解像度で作り込んでいました。
ただ、オシロボッツは子供もメインターゲットとなるため、この表現ではそこを取りこぼしてしまうかもしれないということを指摘してもらいました。色々なコンテンツに触れるうちに、自分の中でも偏りが生まれていたのかもしれません。
そのため、ターゲットとなる子供でも違和感なく楽しめるようなトーンに調整していきます。
暗めな雰囲気は抑えつつ、子供向けの王道作品をいくつかリサーチしながら白・黒・赤・金を基調としたカラーにまとめて、縁を加えるような表現でポップさとインパクトを出しています。
また、それぞれのカラーに対して、お城に馴染み深いテクスチャを選定し加工しています。
白 : 城壁の漆喰
黒 : 墨
赤 : 御城印などで使われる朱色
金 : 金箔
ぱっと見では気づかれにくい部分もありますが、お城ファンにも共感してもらえるような雰囲気を表情に残しておきたかったのです。子供へ向けた調整の中でも、広いターゲットへバランス良く訴求できる姿を目指しました。
こうして完成したロゴデザインですが、制作の過程で調べたことや体験・検討したことが、オシロボッツにおけるその後の様々なディレクションの軸となっています。
今回、ロゴデザインに加えてキービジュアルも担当させてもらったのですが、ロゴ制作段階で魅力的だなと感じていたところから再検討し、それぞれの訴求軸ではどんな表現になるかを検証しました。
お城の貫禄ある存在感
実際の人の目線での没入感
ロボットらしいダイナミックさの迫力
最終的には、オシロボット熊本城の貫禄ある仁王立ちのキービジュアルを、細部の調整を行いながら作り込んでいきました。
あまり露出は多くありませんが、世界観の訴求にフォーカスしたビジュアルも事前に作成しています。
こちらは”実際の目線の没入感”に振り切った方向性で再現。ロボットを足元から見たスケール感を大事にし、実際にお城と対峙した時の迫力を伝えられるようなビジュアルになるように作り込みました。
また、お城EXPO2022における『城郭合体オシロボッツ』ブースのアートディレクションも担当させていただきました。
2mの段ボール製・オシロボット熊本城のトーンに合わせて、古文書の設計図風な背景で世界観を演出。
ビジュアルデザイン提案時にコア向けすぎると言われたデザインですが、お城EXPOのコアな層に向けて起用してみました。オシロボッツの設定とも相性が良く、情報の出し方を使い分けるため等のサブトーンとして定着していきました。
ブース前で写真を撮ってくれる方も多く、オシロボッツの世界観をうまく伝えられたのではないでしょうか。
お城についてほとんど知らない状態からのスタートでしたが、プロデューサーやファンの方から熱量を感じたり、お城やロボットに触れる機会を増やすことで、自分もどんどんのめり込みながらデザインしていけたと感じています。
オシロボッツは、2023年3月に新たなオシロボット「姫路城」が参城するなど、少しずつ進化を重ねています。
また、MIXIではオシロボッツだけでなくプロメア、パンドラとアクビ など様々なIPコンテンツが企画・製作されています。
これからも様々なコンテンツに携わらせていただくなかで、作り手としての視点だけでなく、ユーザーと同じ視点に立ちながら、共感が生まれるデザインを作っていきたいと思います。