2022年4月29日〜5月7日に、D2Cブランド「GO WITH WHITE.」( ※ 2023年11月よりブランド名を「DOUBLEW」(ダブリュウ)に変更。)のPOP UPストアを、三井不動産が運営・管理するRAYARD MIYASHITA PARKにて開催しました。

私は主にコンセプトやビジュアル設計、店舗ディレクションなどに携わっています。

渋谷区のRAYARD MIYASHITA PARKにて開催されたGO WITH WHITEのPOP UPストア

このストアは、リアル店舗とEC決済による新たな購入体験を提供するOMO( Online Merges with Offline )型の店舗です。

OMOについて : 「オンラインとオフラインの融合」を意味するOnline Merges with Offlineの略 顧客がオフライン(EC)とオンライン(実店舗)の垣根を意識せず、シームレスな顧客体験を提供することを目的とするマーケティング手法のこと。
POP UPストアでの商品購入ステップ。
EC決済を活用することで、レジに並ぶことなく商品が購入可能。自宅に配送もできるので、荷物が増えることを気にせずショッピングが楽しめます。

今回は、このPOP UPストアのデザインの過程を振り返りながら、デジタルとリアルを掛け合わせた体験をつくるために取り組んだことや、面白みについてお伝えできればと思います。

GO WITH WHITE.は、「履けば履くほど劣化が目立っていく白スニーカーならではの悩みを解消し、気兼ねなく毎日履いて欲しい」そんな想いで作られた白スニーカー専門のブランドです。

白スニーカー専門のブランド「GO WITH WHITE.」
https://goww.tokyo/shop

普段はオンラインでのみの販売となっていますが、SUPER STUDIOが提供するecforceのEC決済と、三井不動産のリアル店舗の機能を組み合わせ、お客様の行動に合わせた、新たな購入体験を提供する試みとして、OMO型のPOP UPストアを開催しました。

OMO型店舗をデザインするうえでは、店舗内の導線設計はもちろん、商品をスムーズに購入できるデジタル上の体験、店舗に訪れるまでの流入経路など、さまざま点を考慮する必要があります。

そのため、入店してから商品を購入するまでの流れをユーザーフローとしてまとめ、それに基づいて必要な機能や、つくるものを整理しました。

店舗に訪れた方が商品購入を行うまでのフローを整理した図

例えば、お客様が入店した際には、

  • 商品を探すことができる

  • ブランドを知ることができる

  • 商品の買い方を知ることができる

また、商品を購入する際には、

  • QRで希望の商品を読み込む

  • カートに何の商品が入ったかが一目瞭然な状態にする

  • 店頭受け取りか、後日配送するか選択できる

といった一連の流れを整理し、「ブランドコンセプトが伝わるパネルを入り口付近に設置する」「ECサイト上の商品購入画面を改修する」など、オフライン・オンライン両面から取り組むことを検討しています。

また、店舗に訪れる以前の流入経路についても整理し、ティザーサイトや、広告、プレスリリースなど必要な施策を洗い出していきました。

店舗に訪れるまでの流入経路を整理した図

このような全体感を踏まえながら、コンセプトや、内装・外装などのデザイン・施工、ECサイト上の商品購入ページなど、OMO型の購入体験を支えるさまざまなクリエイティブ・機能をつくっていきます。

ここからは、いくつか具体例を紹介します。

GO WITH WHITE.は普段オンラインでしか購入できないため、POP UPストアは、お客様にリアルで商品を手に取ってもらえる貴重な機会です。

そのため、この機会を通してGO WITH WHITE.の認知拡大・ブランドへの深い共感をつくれるようなコンセプトを検討し、「vs WHITE」というコンセプトを定めました。

GO WITH WHITE.のPOP UPストアにおけるコンセプト案。
外部のクリエイティブディレクターにご協力いただきながら、設計しました。

また、「vs WHITE」というコンセプトを踏まえたキービジュアルも考案し、これらを元にしながら店舗のデザインや、各種広報用のクリエイティブを制作していきました。

GO WITH WHITE.のPOP UPストアにおけるキービジュアル案。
キービジュアルは、後工程で適宜更新しているため、あくまで初期段階のイメージとして御覧ください。

コンセプトが固まった後は、外部の施工会社と協力し、店舗の内装・外装などのデザイン案をご提案いただきながら詳細を詰めていきました。

協力会社に提案いただいた店舗設計のイメージ図

例えば店内の導線は、初期にまとめたユーザーフローを基に、次のような流れで回遊してもらうことを狙った設計としています。

  1. 入り口から入店

  2. コンセプトパネルを見て、GO WITH WHITE.が何かを知る

  3. 商品棚で靴を見て、試着や商品購入

  4. コラボTシャツを見て、試着や商品購入

  5. 決済から商品お渡しまでにかかる時間の心身的ストレスを少しでも軽減するために店内にソファーを設置。ロゴ入りの容器に入った飲み物をお渡しするなどのフローも取り入れることで、リラックスいただきつつ、特別感を持てる購入体験を設計。

お客様の回遊導線のイメージ

靴にはそれぞれQRコードをあしらったデザインのタグを付けており、このQRコードを読み取ることで、シームレスに商品を購入することができます。私はこのタグデザインにも携わり、ビジュアルの統一感や情報の読み取りやすさにこだわって制作しました。

各商品に付けられた、QRコード付きのタグ

実店舗だけでなく、オンラインでの集客や、商品購入の流れをデザインすることも重要です。

例えば、POP UPストアの開催に先立ち、興味・関心を持っていただけるようティザーサイトを公開しました。

POP UPストア開催に先立って公開したティザーサイト。
その他にもWeb広告の配信、プレスリリースなどのメディア掲載のための施策など、様々な施策をかけ合わせながら、露出を増やしていきました。

また、GO WITH WHITE.のECサイト上では、POP UPストアから商品購入される方向けの商品購入ページを分けています。

これは、POP UPストアからのアクセスや購入に関するデータを収集できるようにすることで、利用状況の分析や改善を行いやすくすることが目的となります。

また、UX面では、お客様の負担がないよう最低限の情報入力だけで購入できるようにしたり、店頭受け取り / 後日配送選択ができる項目を追加したりと、OMO型店舗での購入フローに最適化した工夫を取り入れました。

店頭でのQR読み取りから、ECサイト上での購入完了までの流れ

このような流れで準備を進め、渋谷区のRAYARD MIYASHITA PARKにてGO WITH WHITE.のPOP UPストアを開催しました。

GO WITH WHITE.のPOP UPストア店内の様子。
2022年4月29日〜5月7日の9日間で約2000名に来店いただき、売上は目標の2倍を記録しました。

利用者アンケートでは「オンラインでの購入体験の満足度」「スムーズな購入体験であるか」「店頭か後日配送の受け取り選択の満足度」などの項目において高い評価をいただき、OMOソリューションの可能性を感じられる結果となりました。

利用者アンケートでいただいたコメントの一部。
リアルとデジタルを掛け合わせた購入体験の良さと、今後の課題もクリアになっていきました。

私自身も開催期間中にPOP UPストアに行ってみたのですが、お客様が実際に店内で商品を眺めたり、靴を試着してみたり、購入している様子を見られたのはとても新鮮な経験でした。(私もTシャツを購入しました)

今まで私は、デジタルサービスのデザインや、リアル空間のデザインなどの経験はありましたが、今回のようなOMO型店舗のデザインに携わるのは初めてでした。

Web上での認知から、店舗内の導線、商品の購入フロー、協力会社との連携など、考慮すべき点は多くありますが、デジタルとリアルを掛け合わせた一貫した体験をデザインできることは、OMOの面白みだと感じています。

また、今回の取り組みを経て、OMOソリューションを提供するリアル店舗「THE [ ] STORE」が、2023年7月7日からRAYARD MIYASHITA PARKにてオープンしています。

ECブランドが週単位で出店する次世代型ショップ「THE [ ] STORE」
詳細はこちら ( https://www.wantedly.com/companies/super-studio/post_articles/528722https://www.wantedly.com/companies/super-studio/post_articles/528722

今後も「THE [ ] STORE」をはじめとしたさまざまなプロジェクトに携わりながら、ECブランドにおける顧客体験を最大化するデザインに取り組んでいきますので、これからにご期待ください。

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