GO株式会社(以下GO)のコミュニケーションデザイナー、五十川です。元々はクライアントワークを中心に活動してきた私ですが、2022年9月よりGOに入社し、自社のブランディング、サービスや事業のマーケティングにおけるクリエイティブなど様々な領域に携わっています。

2023年4月1日に発表された社名変更に関わるプロジェクトを通して、コミュニケーション設計からビジュアルアウトプットまで一気通貫のクリエイティブ、また、GOならでは!と言えるビジュアルアイデンティティを構築しました。

GOへの社名変更を社内外に伝えていくにあたり、戦略の設計から、外部パートナーと連携したクリエイティブ開発などを担当。

株式会社Mobility Technologies(以下MoT)からGOへ生まれ変わった企業のブランドを社内外へ伝えていった過程を振り返りながら、インハウスのデザイナーとしてどのように適切なブランドコミュニケーションを図ったかをお伝えしたいと思います。

2020年4月に当時タクシーアプリのパイオニア的存在だった『JapanTaxi』とタクシーアプリ『MOV』を提供していたDeNAのオートモーティブ事業が事業統合する形で生まれたのがMoTでした。

そのわずか半年後の2020年9月にリリースしたタクシーアプリ『GO』ですが、タクシーアプリ『GO』のブランド認知度は一気に高まっていきました。

その一方で、Mobility Technologiesという社名は、あまり知られておらず、取引先などの方と挨拶をする際にも「あ、タクシーアプリ『GO』の会社です」と補足して、「ああー!」となる、そういった感じでした。

MoTが生まれて3年、より企業としてのブランドを強め、サービスをより拡大・進化させていこうという考えのもと、2023年4月1日、GO株式会社へと社名を変更しました。

2023年4月1日から、GO株式会社に社名が変更。

タクシーアプリ『GO』で培ってきたモビリティ産業のDXを軸に、「脱炭素化」「交通事故削減」「地域貢献」など多様な事業を展開させ、そこから交通課題の解決、さらには社会課題への取り組みへと拡大していく。社会全体をより良い方向へと推し進めていく。そのような想いがGOという社名に込められています。

一方、世の中の大半の人にとって、一企業の社名変更は”自分に関係のないニュース”だと感じられ、印象や記憶にも残りづらい可能性があります。

これをどうコミュニケーションで解決するか、社内の複数部署や社外のクリエイティブチームも含めたプロジェクトメンバーで議論を重ねました。

社名変更を機に本当に伝えるべきことは、社名変更の事実だけではなく、取引先や社員、生活者などステークホルダーのマインドをさらにポジティブにしていくような「未来の変化・広がりへの期待感」ではないか。

このような結論に至り、社名が変わったことを機にGOという会社がどんな世界を目指しているのかを改めて発信し、 会社のことを知ってもらうきっかけとすることを指針としました。

社名変更で、避けたい伝え方と、狙いたい伝え方。
生まれ変わるGOの意思を伝えることで、ステークホルダーに「未来の変化・広がりへの期待感」を持ってもらうことを目標としました。

以上を踏まえ、GOが今後目指す未来を宣言することで、関わる方々に期待感を強く持ってもらう機会とすることを指針とし、また、そのコンセプトとして次の3つをポイントとしました。

社名変更を社内外へ伝える上でのポイント。

これらを軸に、あらゆるステークホルダーの気持ちを巻き込み、GOが描くポジティブな未来への同乗者になってもらえるよう、社名変更におけるメッセージを「スローガン + ステートメント」として発表しました。

後にコーポレートサイトのトップに掲載したスローガン・ステートメントは次のようなものです。

社名変更におけるスローガン・ステートメント

GOでは、これまでタクシーアプリ『GO』を中心に展開していき、タクシーをはじめとしたモビリティ産業をアップデートしてきました。 モビリティ事業を軸にしながらも、より広い領域へと取り組みを広げていくGOの在り方を「つぎの未来へGOします。」というスローガンに込めています。

また、ステートメントでは、起こしたい未来への進化を「GOします」という動詞で表現しつつロゴを繰り返し用いることで、GOの取り組みが社会的なムーブメントのきっかけとなることを意図しています。

さらに、「つぎの未来へGOします。」というメッセージをより効果的に伝えていくため、以下のような設計で社内外へコミュニケーションしていきました。

具体的には、「ティザー」「本告知」「ブランド浸透」という3段階のフェーズを設定し、段階的に情報深度を深めながら期待感を高めることで、新社名のブランド浸透を目指しました。

社名変更のコミュニケーション設計。
本告知の前後の流れを設計することで、より「つぎの未来へGOします。」というメッセージが広く深く届くことを目指しました。

本告知に向け、期待感を高めていくための事前告知として、情報を絞ったメッセージを発信しました。

具体的には、「つぎの未来へGOします。」というスローガン + 社名変更の告知のみをコーポレートサイトやプレスリリースで発信し、多くの方に知ってもらいつつ、期待感を抱かせることを狙っています。

3月1日時点のコーポレートサイト。
他にもプレスリリースや、SNSでの発信も行い、4月1日の本告知に向けてあらゆるステークホルダーの期待感を高めていきました。

4月1日には、正式な社名変更とともに、GOの未来への宣言をスローガン・ステートメントを軸として社内外へ発信しました。

コーポレートサイトでは、トップ画面にステートメント・ステートメントを据え、スクロールしていくとGOがこれから取り組んでいく事業や目指している世界の広さが伝わるような構成としています。

4月1日時点のコーポレートサイト。

5月1日以降は、GOとしてのブランドを定着させていく期間として、GOがすでに展開しつつある多様な事業の広がりが伝わるようにしていきました。

コーポレートサイトでは、様々な事業の広がりを見せるキービジュアルをメインに据え、社名変更に関する情報は優先度を下げて配置しています。

8月7日現在のコーポレートサイト。
https://goinc.jp/

また、併せてGOのコーポレートブランディング、特にVI(ビジュアルアイデンティティ)の設計についても検討していきました。

タクシーアプリ『GO』と名称を統合し、GOのブランドを広げていくにあたり、以下のような課題に対処しながら、新しいVIを構築しました。

先述の通り、GOではモビリティ事業を軸に、多岐に渡る事業を展開しています。 一方、会社としてのGOとタクシーアプリ『GO』のVIが全く同じとなると、「あれ、タクシーアプリ1本の会社?」といった、実態とは異なる認知が先行してしまう懸念がありました。

モビリティを軸に様々な事業を展開するGOの在り方を、VIを通しても適切に伝えていく必要がありました。

また、同一の画面上で会社としてのGOとタクシーアプリ『GO』のVIを掲載する場合、同じ見た目だと「どちらがアプリで、どちらが株式会社なのか」が非常に分かりづらくなってしまいます。

タクシーアプリ『GO』のブランド力を継承しつつも、VIとしては適切に棲み分けられる状態を目指したい。このような背景を踏まえて、GOのVIを検討していきました。

タクシーアプリ『GO』サービスサイトの右下にはMoTロゴが配置されていましたが、社名ロゴを同じにしてしまうと、こういった同一面表示の際に深刻な問題となります。

そもそもタクシーアプリ『GO』と同じロゴを使うべきか、ということも含めて議論がありましたが、先にお話しした社名変更の目的を達成すべく、最終的にはGOのロゴに「移動で人を幸せに。」という弊社のミッションをタグラインとして添える案を採用しました。

派手な変更は加えていないものの、タクシーアプリ『GO』と棲み分けながら、適切に会社としてのメッセージを伝えられるオリジナルなVIにできたのではないかと感じています。

タクシーアプリ『GO』のVIと、新しく設計されたGO株式会社のVI。

また、同一画面で2つのVIを表示する場合は、大きさや、バリエーションを変えて差をつけることによって、区別がつきやすくなるようにしています。

あらゆる媒体でVIを棲み分けができるよう、カラースケール毎の扱い方を定義。

これらの工夫を行いながら、会社としてのGOとタクシーアプリ『GO』のVIを棲み分け、名刺や封筒、コーポレートサイトでの表示など各種媒体に反映することで、新たなコーポレートブランドを伝えていきました。

VI刷新と同時に制作した、名刺・封筒など各種アイテム。

以上がGOへの社名変更に関するコミュニケーションデザインの全体像となります。

結果としては、社内外から「つぎの未来へGOします、という言葉は心に響いた。新しいフェーズに入ったと実感した」「改めて、移動で人を幸せにというメッセージと真摯に向き合うきっかけとなり、GOの一員であることに誇りを感じることができた」「シンプルに名刺交換がしやすくなった 笑」などといった声をいただき、しっかりとGOが目指す先を伝え、期待感を持っていただけたのではないかと思います。

社名を変更するという機会は少ないかもしれませんが、事業会社で働いていると、サービスの成長や、拡大、あるいは撤退など様々な変化が訪れます。

GOも今までに、サービスのリニューアルや、事業統合、新たな領域への展開など、多くの変化を経験してきました。

そのなかで、事業の文脈にどっぷりと浸かりながら、達成したい目的に対する戦略や、クリエイティブまで、一気通貫で設計し届けていくことがインハウスで携わる面白みであり、その結果として醸成されていくものがブランドだと考えています

GOとして宣言した未来に対しては、まだまだやるべき事が沢山あります。 コーポレートだけでなく事業におけるブランディングやコミュニケーションデザインなど、より具体的な取り組みにご興味がある方は、ぜひ気軽にお話しましょう。

このデザイン組織をもっと知る

GO Inc.