ゆめみのデザイン組織(以下、デザインギルド)には、現在44名のデザイナーが所属しています。

デザインギルド... ゆめみでは職能別に分かれた組織のことを「ギルド」と呼んでおり、デザイン組織は「デザインギルド」と呼ばれています。
2023年5月時点で44名が所属する、ゆめみデザインギルドの体制

所属するデザイナーは、プロジェクトを推進する「職能チーム」と、組織運営を推進する「デザイン委員会」をそれぞれ兼任。マネージャーを置かずに、メンバー主導で組織運用が行われる

拡大するデザイン組織の中では、組織の課題(ex. 採用、育成、ワークフロー改善...)に対して取り組む必要が出てきます。

そのような課題に対して、ゆめみのデザインギルドではマネージャーを置くのではなく、メンバーから自律的に組織改善が起こるような体制を取ることで解決しています。

今回は、自律的な動きを促すための3つのしくみについてまとめていきます。

  • 組織体制:マネージャーを極力置かない「委員会制度」

  • 意思決定のしくみ:「プロリク」

  • 評価のしくみ:「職位ガイドライン」

前述したように、ゆめみのデザインギルドには44名のデザイナーが所属しています。2019年時点では15名ほどだった人数規模が、現在までに3倍近く増加していることになります。

ゆめみデザインギルドの人数規模の変遷について
2019年には15名だったところから、2023年には44名となり、約3倍の規模に組織は拡大している

デザイン組織の人数が拡大してくると、通常のデザイン業務以外に、組織設計のために必要なことが増えてきます。

例えば...

  • メンバーの成長

  • ワークフローの運用・改善

  • アサイン

  • 評価体制づくり

通常そのような組織面の課題は「マネージャー」をおくことで解決される場合が多いと思いますが、ゆめみでは全社のスタンスとして、組織にマネージャーを極力置かない意思決定をしています。

理由としては以下の3点があります。

  • メンバーの自律的な文化を維持するため

  • 人数に対するパフォーマンスを最大化するため

  • (特にデザイナーは)マネジメントの採用が難しいため

そのため、拡大によって出てくる組織設計の課題に対して、マネジメントを置かずに取り組むためにどうすれば良いか考える必要がありました。

ゆめみのデザイン組織づくりの特徴は、マネジメントの役職を置かずに、メンバーが「自律・自学・自責」をキーワードに、自分から組織運用に対して動ける組織づくりをしていることです。

マネジメントを置かずとも、メンバーの成長や、ワークフローの改善など運用が自律的に起こるように、3つのポイントで工夫しています。

  1. 組織体制のしくみ:マネジメントを極力減らす「委員会制度」

  2. 意思決定のしくみ:「プロリク制度」

  3. 評価設計のしくみ:「職位ガイドライン」

ゆめみデザインギルドで、マネージャーを置かずに自律的に組織を運用するための3つの工夫
組織体制のしくみ、意思決定のしくみ、評価設計のしくみの3つから、自律的な動きを促す制度を運用している

以下詳細にまとめていきます。

ゆめみには、ワークフローの改善や、評価体制のアップデートなどの組織設計に関するトピックを、メンバー主導で運用する「委員会」という制度があります。

ゆめみの組織設計をメンバー主導で運用する委員会制度
デザイン委員会、サーバーサイド委員会、フロントエンド委員会など、それぞれの職能に合わせた委員会が設置

中でも、デザインギルドのメンバーが多く所属するデザイン委員会には、6つのワーキンググループが置かれています。

ワーキンググループ...委員会内の活動単位のこと
2023年5月現在の、デザイン委員会のワーキンググループ

業務改善、ブランディング、学習環境設計、技術開発、インターンシップ運営、新入社員受け入れの6つのワーキンググループが現在運営されており、それぞれにメンバーが所属している

ワーキンググループで取り組むタスクは、各職能チームが日々取り組む業務の中で生まれた課題をチケット化することで生まれます。

ワーキンググループで行うことが決まるまでの流れ

1. CDO室(デザインギルド全体の業務推進を担う部署)でチケット化し、ワーキンググループに割り振る
2. 各ワーキングループの中でチケット化

の2つのパターンでタスクが生まれ、流動的に組織課題に取り組む

委員会にはメンバーの希望があれば所属できるようになっており、2023年現在では、ゆめみデザインギルドの約半数のメンバーが、デザイン委員会に所属しています。

この制度によって、本来マネージャーを置かないと対応できないような組織課題が、日々メンバー主導で解決されるようになっています。

ゆめみでは、評価や委員会立ち上げなどの組織上の論点を、レビューを受けることでメンバー主導で意思決定することができる「プロリク」という制度を運用しています。

プロリクのしくみ
レビューを受ければ、どんな提案でも、メンバーが自分で意思決定できる制度

「プロリク」とは、プロポーザル・レビューリクエスト(Proposal Review Request)の略称で、誰でもレビューを受けた上で、自分で意思決定して前に進めることができる制度です。

例えば、以下のような項目の、あらゆる意思決定(採用有無の決定など、一部例外を除く)を自分で意思決定可能としています。

  • デザインサービスの立案

  • デザインカンファレンスのスポンサードや登壇

  • 新卒デザイナーの採用人数の決定、インターンの実施

  • 社内制度・ルールの立案・変更

  • 研究開発の実施

具体例として、以下のようなプロリクやレビューが行われています。

デザイン委員会に関するプロリク

デザイナーの学習環境を整える組織に関するプロリク

デザイナー採用に関するプロリク

デザイナー採用プロリクへのレビュー例

また、積極的なプロリクを推奨するために、社内外に対してオープン・ハンドブックという形でプロリクのプロセスを公開しています。

ゆめみにおけるプロリクを含む意思決定プロセスを、オープン・ハンドブックという形で公開

https://notion.yumemi.co.jp/cxo/ceo

評価においては、デザインギルドに所属するメンバーが、自分で評価や給与を決定し、キャリアの伸びる先を決めることができるように「職位ガイドライン」を導入しています。

デザイナーの評価基準を定めた職位ガイドライン
デザインギルドに所属するメンバーは、ガイドラインを活用して、自分で評価や給与を決定し、キャリアの伸びる先を決める

職位に応じた年収レンジも公開
上司がいない組織なので、自分で給与を決める「自己給与決定制度」をもとに、ガイドラインを参考に給与を決定する

自律を重んじるゆめみでは、元々自分の評価や給与は、自分で決定する制度が敷かれていました。

一方で、デザインギルドでは、職位の基準が設定されておらず、何を足場に自分を評価すればいいか分からない状態でした。

細かくデザイナーの職位をまとめたガイドラインが置かれたことで、次のステップに進むための相談もしやすくなり、適正に給与が上がるようになっています。

職能ごとに必要なスキルも細かく定義

こちらの職位ガイドラインも、オープンハンドブックとして、社外にも公開しています。

委員会やプロリクの制度を通じて、組織の拡大がメンバー主導で起こるようになっています。

例えば、新卒採用を行うこともメンバー主導で意思決定され、インターン設計や、新卒採用ページも自発的に生まれています。

ゆめみの新卒メンバーが自発的に、プロリクをもとに立ち上げ企画・制作した新卒採用ページ
https://designrecruit.yumemi.co.jp/

自律的に学習や意思決定が行われる体制によって、マネージャーを置かずにメンバーの成長が生まれています。

例えばこちらの記事のように、新卒入社から1年間で、プロジェクト推進や、組織運営に関わるメンバーも生まれています。

https://yumeminonaka.yumemi.co.jp/column/p_ku1axY

ゆめみで働くことは、「泳ぐ」と例えられます。新入社員が入ってきた時にも「自分なりの泳ぎ方を見つけるお手伝いさせてください」という会話が起こります。

泳ぐことは、基本的には単独で、かつ自力で行うものです。しかも、水の中に入ってしまうので、周りが気になっても、自分だけ水からでて、空に飛び上がって周りを俯瞰して観察することはできません。俯瞰的な立ち位置から、あれこれ指示を出すことが、ゆめみの中で経験的にも違うと感じているのでしょう。

なので、ゆめみの活動は、一人一人がまずアクションしてみるというところから始まります。自分で泳ぎ進めてみてから、ちょっと違うと思えば、進む方向を変えても良いし、隣で泳いでいる人と協力したり、時には休むことも自律した決定で行われます。

そのためには、今回まとめたように、デザイナーが自由に活躍し、自分自身で決めて問題意識から動けるような組織デザインが必要でした。ゆめみはマネージャーがいない代わりに、組織デザインすらも一人一人のメンバーができるのです。

プロリクや委員会制度などは、そうした自由に活躍できるフィールドとしての、ゆめみという企業の根幹の機能です。特にデザインギルドでは「よしなにやってしまう力」や、やってしまった上で「こんな感じで進んでいるんですが、問題あったら教えてください」というような、アクションファーストな行動力を重視しています。

デザインギルドの行動力が、事業や組織全体に影響していくように、今後も自律的なデザイン組織づくりにメンバー主導で取り組んでいきます。