LINE CREATIVE CENTER(以下、クリエイティブセンター)は、サービスの事業部には属さず独立したデザイン組織としてLINEのサービス全般のプロダクトからブランドのデザインを担っています。
2019年ごろから徐々に組織を強化し、現在は100名程のデザイナーが所属する以下のような体制になっています。
人数比は、プロダクトデザインを担当するメンバーが半数程度在籍していて、次いでBXデザイン、映像デザイン、スペースデザインと続きます。一般的にデザイナーと呼ばれる職種はおおよそ全体の9割、そして、組織自体のデザインを担当するメンバーが全体の約1割といった配分です。
LINEでは、LINE NEWSなどの高頻度かつ大量にクリエイティブの制作を必要とする一部の事業部内にもデザインチームがあり、専属のデザイナーが在籍しています。対してクリエイティブセンターは、あえて独立したデザイン組織として存在しています。
独立したデザイン組織であるからこそ、事業をまたいだ一貫したブランドづくりや、UXの構築ができると考えています。
今回は、クリエイティブセンターの組織づくりを担当している2チーム、クリエイティブ戦略チーム、クリエイティブコミュニケーションに所属するkenny、GO、SHIMIZUの3人で、これまでの変遷と力を入れている取り組み、独立型デザイン組織であるねらいをまとめてみようと思っています。
2018年ごろまでは、 UI Design1・2とBXに分かれており、それらに紐づくチームはナンバリングによって組織化されていました。 現在の映像デザイン室とスペースデザインチームにあたるチームは、BX室の中にありました。
デザイナーの人数としては、80名ほどいましたが、チームごとの役割やクリエイティブセンター全体での方向性などが明確になっておらず、とにかく目の前の業務に集中していたという事情もあり、自チーム以外への関心やチーム同士の交流に対する意識もあまり高くない状況でした。
そういうわけで、組織にまつわる問題(チーム体制やマネジメントなどなど...)への関心も低く、局地的・場当たり的な対応に終始していたように思います。
その他にも、社内でも社外でもクリエイティブセンターの知名度がまだまだ低く、社内でもクリエイティブセンターの存在すら知らない人が多い状態でした。
クリエイティブセンターが組織面で大きく動き出したのが、2019年ごろです。
扱うサービスの領域が多様になり、新たなセンター長も就任したタイミングだったため、デザイン組織としても大きく変化していきました。
コミュニケーションアプリから始まったLINEの事業はその後、エンタメやFintech、コマース、AIなど様々な領域へと広がっていきました。
事業が拡大する中で、映像制作の需要が増えたり、フィンテックのような専門性が必要な領域が増えてきたりと、組織体制にも変化が求められていました。
そして、2019年10月にセンター長として、Googleでデザインリードを務めたKim Sunkwanさん(以下、ソンガンさん)がジョインしたことも、組織が変化するきっかけの1つでした。
ソンガンさんについてはこちらをご覧ください。
就任以降、クリエイティブセンターの目指す方向性や、LINE内での位置付けなどを、ソンガンさんが明確にしていきました。
サービスの数や、事業の領域が増えても、「LINEが出しているサービス」と受け取られることには変わりません。また、月間9,400万人(2022年12月末時点の国内MAU)が使う「LINE」が基盤になるサービスが多いため、常に高品質かつLINEらしさを感じられるように、プロダクトとブランディング双方の質を高める必要があります。
サービスや事業の領域が増えても、より一貫したデザインとUXを提供できるよう、以下のように組織をアップデートしていきました。
領域ごとにより専門性を高めていくために、プロダクトデザイン室は、スポット検索サービス「LINE PLACE」を担当する「Local Product Design」、金融系のサービスを担う「Financial Design 1・2」など、サービスの業態ごとに分かれていきました。
また、デザイン組織自体の問題を解決し、より組織として価値を出せるように、クリエイティブコミュニケーション、クリエイティブ戦略という2チームを新設。
クリエイティブコミュニケーションチームは、デザイン組織運営の中でも、組織内のコミュニケーションや文化醸成を中心とした業務や、他の事業部との連携など、社内にまつわることをメインで扱うチームです。 一方で、クリエイティブ戦略チームは、組織ブランディングや採用を軸とした情報発信や外部メディアと連携したプロモーションなど、対社外の業務をメインで扱っています。
また、クリエイティブコミュニケーションチーム主導で、デザイン組織内の基準を高める活動をスタート。 社外の方を招いたり、デザイナーの成長支援を目的とした社内プログラムを実施したりとコミュニケーションの活性化をにもつながっています。
例えば、CREATIVE CENTER CLASSでは、日本デザインセンターの色部義昭さんにお越しいただき、Osaka MetoroのVIリニューアルなどを事例にデザイン背景や過程を共有していただきました。
外部講師の方に講演していただくことで、インハウスデザイナーとしては普段なかなか得にくいインスピレーションを得ること、そしてそこから学ぶことがCREATIVE CLASSの目的です。
また、CREATIVE CENTER CLUBでは、デザイナーが自主的にデザインに関する知識や情報を共有することで、互いに刺激を与え合いそれぞれが成長することが目的です。
参加するメリットとしては、他チームのデザインプロセスを知れることはもちろん、定期的に開催することでチームを超えた社内コミュニケーションの活性化にもつながっています。
組織の強化のために、クリエイティブ戦略チーム主導で、採用の強化や社外への認知向上にも大きく舵を切りました。
(2019年以前は「LINEって日本にデザイナーいるんですか?」と言われることもあるぐらい、ほとんど社外に対して採用活動や広報活動をしていませんでした...。)
クリエイティブ戦略チームを中心に、自社開催の企画を増やしたり、他社との共催イベントを増やしたりなど積極的に認知拡大を行いました。
クリエイティブセンターが独立型のデザイン組織であることで、以下のような点で良かったと感じています。
事業をまたいでデザインを担当しているため「LINE」というブランドやUXの一貫性を担保しやすい
デザイナーが品質に対して集中できる環境を提供しやすい
LINE Seed(LINE初のオリジナルフォント)のプロジェクトなどは特に、独立型のデザイン組織であることで進められた点も大きいと感じています。
一方で、独立型であるからこそ、事業サイドや開発サイドと良い意味で積極的に干渉しあっていくなど、努力していかないといけない部分もあります。
各事業部や、クリエイティブセンター以外のメンバーに対して、「デザイナーをどのタイミングで巻き込んだ方がいいか」など、社内の認知を高める必要がある
事業的に重要なことや、開発的な制約などを、積極的に汲み取りにいく必要がある
「なぜこのクリエイティブが(事業的にも)良いか」などを、他職種のメンバーやプロジェクトの関係者に、きちんと文脈や背景を説明し、理解してもらう必要性がある
総合的にみて、今のLINEには独立型のデザイン組織が合っていると感じています。
クリエイティブセンターが独立型であるからこそ、現在のサービスの品質はもちろん、所属しているメンバーが品質に対して常に強くこだわる文化ができたからです。
デザイン組織の在り方は、事業や所属するデザイナーの性質によってさまざまだと思いますが、デザインという機能を最大化させるための1つの組織の在り方として、少しでも参考になれば幸いです。