本事例は、2023年度の展示会の取り組みの振り返りとしてまとめたものです。2024年度以降ではさらにアップデートした取り組みを行っていますが、本事例についてはアーカイブされた情報としてご覧いただければ幸いです。

ビザスクのコミュニケーションデザインチームでは、ブランド浸透を目的とした幅広いプロジェクトに関わっています。

ビザスクは、2023年には月1-2程のペースで展示会に出展しました。コミュニケーションデザインチームからは私が展示会担当として運営チームに入り、全体のデザインを担当しています。

2023年は、月1のペースで展示会に出展してきた

最終的には、年間9回の展示会に出展することができ、目的としていたリード獲得についても、一出展あたり前年比 124%成長を実現することができました。

1年間の展示会での成果

このような大規模な展示会ブースの設計をするのは、私としても初めてのことでした。ブランド浸透を担うコミュニケーションデザインチームの一員として、どのように「リード獲得」と「ブランド浸透」の2つの目的を達成しようとしたのか。

この1年間取り組んだ試行錯誤の過程を残して、同じような業務に取り組む方の参考になればと思います。

展示会開催の目的は「ビザスクの価値を正しく理解してくれる方を増やし、リード獲得につなげる」ことでした。

ビザスクは、まだまだサービス自体の存在や活用方法が市場で知られていないことも多かったため、ビザスクの価値を正しく理解していただいている方を増やし、顧客の情報を回収することは事業として重要なアクションです。

ビザスクにおける展示会開催の目的

実はビザスクで展示会に本格的に注力し始めたのは、2023年からで、当時は組織全体としてもまだまだ未検証のチャネルでした。

2022年は半年に1度の出展ペース。2023年から注力を始めた

そんな中で、デザイナーとしては「まずビザスクメンバーが使いやすいものをつくる」ということを意識しました。

今回のリード獲得の目的を踏まえると、ただ名刺や配布物をひたすらに配れば良いというわけではありません。ビザスクの価値を正しく理解してくれる人を増やすためには、メンバーが正しくビザスクのことを説明できることが必要です。

そして、そのためにはビザスクメンバーが、サービス説明にあたり「使いやすいものをつくる」ことが大事だろうと整理していました。

デザイナーとして意識したこと

展示会において「使いやすさ」を高めることが大事だと考え、毎回の展示会での制作を行う中で、具体的に取り組んでいたことは「目的をとらえる」ことでした。

展示会には、いくつかの粒度でとらえるべき目的があります。

ここでは、3つの粒度の目的に対して、どのように「使いやすさ」を高めていったのかを具体的にまとめてみます。

「使いやすさ」を高めるために行ったこと

1. 「出展の目的」から、制作物の位置付けの整理
2. 「使用者の目的」に合わせて、内容を調整
3. 「各制作物の目的」を、結果と比較して何度もアップデート

まず、リード獲得という「出展の目的」に対して、それぞれの制作物がどのような目的を達成すれば良いのかをクリエイティブブリーフを使って、事業部メンバーにヒアリングしながら項目を埋めていきます。

クリエイティブブリーフ

さらに、クリエイティブブリーフでのヒアリングを通して、制作物ごとの役割を整理します。

例えば、展示会ブースは印象を残して人が集まるための「看板」として。対しパンフレットは、集まった人に展示会に立つビザスクのスタッフがサービス説明をするための「台本」として、それぞれ制作しています。

制作物ごとの役割

展示会ブースの役割は、人を集める「看板」です。情報量は詰めすぎず、あくまで「お、なんだあれ?」と気になって人が集まってくるようなデザインとなるように意識しています。

そのため、サービス説明などは入れ込みすぎず、信頼感を高めるための情報を中心にシンプルにまとめています。

「看板」としての展示会ブース

対してパンフレットの役割は、スタッフが説明するときに使える「台本」です。

正しくビザスクを理解してもらうという出展の目的に沿って、パンフレットは人を介する使い方を指定しました。必ずスタッフが説明をする、その時に説明しやすいようにパンフレットを使う、話し終わったらパンフレットを渡す...というフローをとってもらっています。

「台本」としてのパンフレット
必ず人が介在するように

他社ではパンフレットは自由に持っていけるような場合もあると思いますが、ビザスクの場合は勝手に持っていけるものにはしませんでした。もしブースに置くとしても、あくまでブースの印象を良くするための賑やかしとして少量だけ配置するようにしています。

展示会ブースに立つスタッフは、フロント営業以外のメンバーや、新卒の方が対応するケースもあり、使う人の対象が幅広い。なので、誰が使っても話しやすいように網羅した項目をパンフレットには載せるようにしました。

ind事業部向けパンフレット、誰もが話しやすい作りを目指し網羅的な項目を詰め込んだ「台本」

一方で、使い手の対象が変わった時には、パンフレットの内容も調整する必要があります。

例えば、partner事業部(現在は組織編成によりindと統合)が、事業部単位で展示会に出展する機会では、彼らの営業活動に適したパンフレットの内容でデザインを制作しています。

彼らはサービスを知ってもらうだけでなく、「その場での商談も実施可能なくらいサービスの解像度を高めてもらえるパンフレット」を理想としていました。そのため、網羅的な内容でビザスクのことを正しく知ってもらう「台本」よりも少し役割を絞って、「打ち合わせ資料」のような役割の資料を用意します。

partner事業部向けのパンフレット

このように、目的や使う人の理解度に応じて内容を絞っていくことが必要でした。

展示会実施後には、アンケートをスタッフに取り、各制作物の目的が意図した通りに達成されているかを回収しにいきます。

参加スタッフにアンケートを回収

ただ、アンケートではポジティブなご意見が多く大変喜ばしい結果となった一方、コミュニケーションデザイナーとして、次はどこをアップデートして行けば良いかがうまく判断できないこともあります。

そこで、マーケティング部と協働し追加のヒアリングを実施しました。GOODポイントは活かしつつ、常にベストを探り続けることが大切です。厳しい意見をくれそうな人や、リードを一番獲得できていた人にヒアリングをし、制作物の使い勝手を確認していきます。

ヒアリング

こうして回収した細かなレビュー点をまとめておき、入稿できるタイミングに合わせてパンフレットをアップデートします。

アンケートやヒアリングをもとに、より「台本」の位置付けに合うようにパンフレットをアップデート

このように目的をとらえた制作を進めると同時に、コミュニケーションデザインチームの一員として意識しているのは、ブランドを浸透するための「守り手」にもなることです。

「使いやすいもの」をつくる、という意識と同時に、ブランド構築も担うポジションにいるコミュニケーションデザイナーの私は「ブランドを守る・浸透する」ということを意識することが必要です。

例えば、パンフレットをお渡しする紙袋には、マットな質感と強度の高い素材選定を行いました。光沢があると派手な印象を与えるのに対し、マットは静かで洗練された雰囲気を演出します。洗練された印象は、VIのリブランディング前に実施したエグゼクティブインタビューにおいてもビザスクのもたれたいイメージとして抽出されたキーワードだったため細部に渡ってその印象が保たれる工夫を意識しました。

紙袋のデザイン
裏面

また、お声かけ時に配布するノベルティに対しても、ビザスクらしさを損なわない印象が受け取られる配布物の選定についてマーケティングチームとディスカッションをしました。

配布するお菓子の選択も、ビザスクらしさを表せるように

このような一つ一つの積み重ねで、正しくビザスクのブランドが一貫性を持って伝わり、結果にもつながっていくと信じています。

1年間で9回の展示会出展を経て、前年よりも一展示あたりのリード獲得率は124%向上しています。

この成果を受けて、2024年にはさらに展示会に注力をすることが意思決定され、月2回のペース、さらに多様な人がスタッフとして立つような状況になっています。

2023年のハイライトと、今後の展望

そのため、展示会を担当するコミュニケーションデザイナーとしては、さらに「使い勝手」を高めつつ、関わる人が増えても「ブランド」が守られるように両面を意識していく必要があります。

ビジネスチームのメンバー目線でまとめられた記事も公開されているので、ぜひ参考にご覧ください。

今回の取り組みを通して最も意識していたことは、主役であるのはブースに立ってサービスを訴求してくれる事業部チームのメンバー=「人」だということです。

制作物はあくまでツールにすぎず、それをどう扱ってもらえるか、使いやすくしているのか、という視点が大事です。

事業部メンバーが勇者だとしたら、コミュニケーションデザイナーである私は、まるで武器職人のように、制作物をつくり、戦う皆に渡していく。そのように考えて制作に取り組んでいました。

また、制作物ごとにも特色があります。展示ブースには「看板」の役割を、パンフレットには「台本」のような役割を持ってもらおう、とそれぞれにちゃんと意味を持たせるように考えていました。

ビザスクのサービス内容や価値は、市場にさらに広く伝えられる余地があると考えています。コミュニケーションデザイナーとして、今回のように丁寧にその場その場の位置付けをとらえ、よりビザスクというブランドを浸透させていきます。

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ビザスクデザインチーム

ビザスクデザインチーム

成田奈穂Kanako HigashineYuki InabaSatomiHikaru Ichimura

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