2021年6月頃から「家族アルバム みてね」(以下、みてね)の海外に向けた広告制作を、MIXIデザイン本部として担当してきました。
元々は、みてね事業部のメンバーが主に外注しながら制作していた海外向け広告でしたが、クリエイティブに強みを持つデザイン本部が、みてね事業部と協力しながら制作・効果検証を進めるなかで、少しずつ効果の高い広告制作や、その知見の蓄積ができるようになってきました。
その背景や具体的な取り組みをまとめていきます。
みてねは、2017年の英語対応を皮切りに、中国語、韓国語、フランス語など7言語に対応しており、日本はもちろん、アメリカやイギリス、フランス、ドイツ、韓国など、世界150カ国以上でサービスを展開しています。
日本と海外では、言語はもちろん、文化や習慣も異なる場合が多く、その国や地域に合わせた広告制作を行う必要があります。
海外に向けたマーケティングを強めていくなかでは、SNSを中心としたさまざまな媒体で広告運用を行っていました。
一方、当時の広告クリエイティブは、マーケティング担当者が主に社外パートナー様や事業部内のクリエイティブチームとともに制作・運用しており、以下のような課題が生まれていました。
日本と文化・習慣が異なる海外に向けた広告制作は、社内でも知見が少なく、筋の良い広告を素早く出していくことが難しい状況にありました。
そこで、広告クリエイティブの内製化を進めていくために、デザイン本部としてみてね事業部と協力しながら広告運用を行う方針を取りました。
ただ、当初はデザイン本部メンバーは制作だけを担うのか、それとも効果検証も含めてしっかりコミットするのか、どんな体制で進めるのかなどが擦り合っておらず、探り探りな状況でした。
そこで、事業部メンバーと議論をしながら、デザイン本部メンバーの立ち位置として以下の方針を立てました。
事業部の目標達成 = デザイン本部としての目標も達成できる状態にする
広告制作に関する知見を蓄積し、チームの強みにする
SNS広告の指標であるCTRやインストール率など、事業部担当者が立てた目標をもとにデザイン本部としての目標を設定することにより、効果検証まで一緒に入りながら、意図的に目標を超える広告を増やしていく、というスタンスを明確にしました。
また、そのために取り組むこととして以下を設定し、広告制作を進めていくことに。
まずは、アイデアとしてはあったものの試せていなかった広告や、今まで効果が高かった広告を引き継ぎながら制作し、少しずつ新しいチャレンジを取り入れていくような流れで進めていきました。
そのチャレンジの1つが、オーガニック風動画と呼んでいる広告です。 みてねの使用感がより伝わる広告として試してみるのはどうかという事業部メンバーのアイデアを元に運用を始めました。
具体的には、海外の動画クリエイターの方にみてねの使用風景を撮影いただき、デザイン本部としてディレクションや、編集等を行っています。 当初、動画のクオリティーに差が生まれており、一定以上のクオリティーを維持するために、もともとマーケティング担当者が作成していた「ディレクションガイド」を事業部とデザイン本部で意見を出し合いアップデートしていきました。また、そもそもどのクリエイターに発注するかの精査も事業部と意見をすり合わせながら進めていきました。
これらの施策を通して、海外クリエイターとの連携を強化し、効果検証を進めていきました。
効果検証を進めていくなかでは、
ファーストビューでは明るい雰囲気の親子と携帯が映っているとよく見ていただける
画角を引きすぎたり、寄りすぎると効果が薄くなってしまう
BGMの有り無しだと、意外と無しの方が反応が良い
など、いくつかの学びを得ながら改善していくことで、実際の数値も伸びてくるようになりました。
また、みてねアプリの純粋な使いやすさを訴求する「How to 動画」の制作を、新たなチャレンジとして取り組んでいきました。
制作コストは比較的低いものですが、こういったライトな広告もすぐに試して検証を行えることが内製ならではのメリットだと感じています。 この動画ではAIで作成したナレーションと、人によるナレーションを作る新たな試みに挑戦しており、結果を踏まえて今後の改善を進めています。
さらに、その地域の文化や季節のイベントに合わせた訴求を検証してみるという取り組みも行っています。 その第1弾として「イースター動画」と呼んでいる広告を制作しました。
「子どもが生まれてうれしい、写真を家族で共有したい」といった思いは世界共通ですが、その国や地域ごとに写真が多くアップされるイベントは異なります。 例えば日本であれば、お正月や、ひなまつり、クリスマスの季節が代表的だと言えます。
海外ではハロウィンや、サンクスギビング、イースターなどが盛り上がるイベントとして挙げられ、まずはその1つとしてイースターを取り上げてみました。
シーズナブルな動画に対する反応や今後に活かせるポイントが見えてきてたので、次回以降も積極的に取り入れていきたいと考えています。
みてねの海外広告制作には、マーケター、ディレクター、グラフィックデザイナー、サウンドクリエイター、CGデザイナー、PMなど多くのメンバーが携わっています。
そのなかで、制作・運用を通して得られた知見を元に、より良いクリエイティブを効率的に作れるよう、制作環境自体も変えていくことを意識していました。
みてねの海外広告に携わるメンバーが集まり、前月に出稿したクリエイティブの振り返りを行う場を毎月設けています。
闇雲に数多くのクリエイティブを作るのではなく、目的や仮説を明確にし、振り返りを充実させることで、クオリティの向上や、数値向上に繋がっていきました。
また、数多くの制作ラインがあり、事業部の垣根を超えてメンバーが携わるなかで、効率的に制作を進められるよう、管理体制も強化しています。
また、会議体の見直しと、職能を超えてオープンなコミュニケーションを取れる環境の整備も進めていきました。
さらに、誰でも簡単にアイデアを書き込めるシートを作ることで、クイックに0→1のアイデアを試せるフローを作っています。
デザイナー、サウンドクリエイター 、PMなど職能を超えて複数のメンバーが携わるので、動画の企画や構成に対して、職能関係なくオープンに意見を出し合える環境をつくることが重要だと考えていました。
他にも、事業部のメンバーからみてね海外広告を一部担当してくれている代理店担当者による勉強会に呼んでいただいたり、提案資料の共有をしていただいたりと、実制作以外の面でもクオリティを上げていくための施策やコミュニケーションを取れるようにしていました。
このような取り組みの結果として、広告を通したユーザーの獲得数や、コストパフォーマンスが向上してきています。
また、半期で60件以上の広告クリエイティブの制作ができるようになったり、メンバー間での知見の蓄積がなされる体制づくりも少しずつできてきました。
広告制作を一緒に進めていた事業部メンバーからも「大きく貢献してくれている」「新しい表現の挑戦を楽しみにしている」といった声をいただき、ありがたい限りです。
現段階では、既にアイデアとしてはあったものの、試せていなかった施策を中心に制作・検証をリードするような形で取り組んでいました。
今後は、今までターゲットとされていなかった層や、反応が薄かった層へ新しい切り口でアプローチしながら、別の柱となるような勝ち筋を作っていきたいと考えています。
クリエイティブの制作だけでなく、数値結果を元にした検証や制作フローの更新などは、デザイン本部としてもチャレンジングでまだ手探りな部分も多いですが、切り拓いていけると良いなと思っています。