DeNAデザイン本部の眞崎です。サービスデザイン部ではサービスの体験設計やUIデザイナーのマネジメント、デザイン本部の採用・育成・評価/キャリア設計などの組織開発を行っています。

今回は社外のマネージャーやデザイナーの方から質問を受ける、DeNAデザイン本部のアサインの仕組みやアサインの考え方についてまとめてみました。

デザイン組織開発に関わるマネジメントの方々の参考の一例になればと思います。

久々に記事を頑張って書いたら長文になってしまいました>_<

「アサインまでの全体フロー」の画像だけで内容の50%は伝わります。そこだけでも見ていただけますと!

詳細を見たい方はその先まで読み進めていただければと思います!

DeNAデザイン本部では、部長とグループリーダー(GL)を中心にアサインの方向性を決め、デザイナー本人と既存アサイン先&検討アサイン先の事業部と密にコミュニケーションを取り、アサインした直後や継続的なコンディションとパフォーマンスの確認をできる限り丁寧に行っています。

アサインに関する基本的な流れ

期待される役割やスキルが多岐にわたるデザイナーのアサインはなかなか難しく、僕たちもトライ&エラーを繰り返している最中ではありますが、少しでも参考になれば幸いです。

DeNAデザイン本部は、約80人のメンバーが在籍しており、4つの部署で構成されています。

各部は複数のグループに分かれ、GLを中心に3〜10人のデザイナー/ディレクターが所属しており、GLとデザイナーが素早く連携しやすい体制にしています。

2022年上期:DeNAデザイン本部の組織構成

DeNAにはエンタメ領域と社会課題領域で、事業フェーズの異なる複数事業があります。

デザイン本部はアサインという形で各事業部側の開発組織に入る形で、横断的に関わっています。

エンタメ領域〜社会課題領域の事業フェーズの異なる複数事業に横断的に関わる

現在のアサイン方法以前の2016年頃は、対応する事業数や規模が現在よりも小さく、GLも少数であり、「デザイナーの個のチカラで突破する」ことが重視されていた時期でもありました。

その時のアサインフローとしては、マネージャーに自ら手をあげて伝えていくスタイル(GLへのPUSH型)が取られていました。

当時のアサインについて

当時はGLが20人以上のデザイナーのマネジメントを担当する状況で、

  • 1人1人丁寧にコミュニケーションを行う体制を取ることは難しかった
  • デザイナーの立ち回り方もいまのように確立されていなかった
  • 事業の初期段階に入り込むには、腕力と覚悟が必要であった

という理由で、上記の形が最適解であったのではないかと思います。

2016年〜2017年2年をかけて段階的にグループを細分化し、コミュニケーション密度を上げることで組織基盤を強化しました。

定期的なコミュニケーションで、GLはデザイナーを理解していることから、事業での役割を踏まえて、フィットするものを提案するスタイル(GLからのPULL型)にアサイン方法のフローは変化してきました。

デザイン組織の変遷

GLがデザイナーに積極的に働きかける形に変化はしていますが、「デザイナーの強い意志とコミット」を尊重する文化は継承しており、組織や事業状況、デザイナーを取り巻く環境変化に対応していることは、現時点での最適解なのではないかと思います。

アサインを決める時は、

  • デザイン本部リーダー定例でメンバーの状況を共有
  • アサイン定例で候補デザイナーの方向性を定める
  • デザイナー本人と事業部関係者への個別コミュニケーションで時期や内容についての合意形成を行う

の3ステップで進めるようにしています。

デザイン本部内においては、リーダー定例→アサイン定例→1on1という流れで検討を行う

週1回、マネジメントに関わる本部長・部長・グループリーダー全員が参加する定例があり、事業・人材・組織の観点でアジェンダを持ち込み、ディスカッションを行い、ネクストアクションや方針決めを行います。

各グループのメンバーの状況や組織の運営状況を全員がキャッチアップする場として機能しています。

アサインについては、依頼元の事業責任者・PdMとデザイン組織のグループリーダー・部長の間で、DMで相談が始まります。そのため、リーダー定例を通してシェアを行います。

事業部側からデザイン組織のマネージャーにカジュアルに相談が持ち込まれます
デザイン本部リーダー定例アジェンダは各リーダーが持ち寄る運用となっています

隔週で開催しており、各グループリーダーと部長が参加する定例で、デザインリソースの過不足の共有やデザイナーアサインについての相談を行います。

アサイン/デザイナーリソースに関連することのみをアジェンダに相談を行う

前述のリーダー定例でアサインやデザイナーリソース状況については共通認識になっているので、この場では「どのようなデザイナーがフィットするのか?」「スポット案件を対応できるデザイナーはいるか?」などを議論する場になっています。

アサイン定例で決まった方針からデザイナーへ個別でコミュニケーションをとり、意向の確認を進めます。

アサイン変更の背景を話し、本人の意向も踏まえたうえで、アサインするかしないかを決めます。アサインに同意した場合、今の業務状況を聞いたうえで、スケジュールやタスクの調整方法などの詳細を話し合います。

デザイナー本人と合意が取れた場合には、既存のアサイン中の事業部のPdMや事業責任者に相談を行います。

その合意が取れてから、依頼元の事業部に具体的なスケジュールの擦り合わせを行います。

100%工数でのアサイン変更完了までには、引き継ぎを考慮し、1〜3ヶ月程度かけています。

既存のアサイン先の事業部と変更先の事業部と合意形成を行う

事業部側にとって、アサイン変更が非常に難しい場合でも、本人の意向や会社全体としての最適解を同じ目線で考えていただけていることで、アサイン変更の調整が何とか成り立っています。

難しい判断となることも多く、すべてのケースで調整が可能ではありませんが(ときには叱責をいただくこともあります)、外部協力会社の利用や一時的な業務調整をしていただくなど、前向きな対応策を一緒に検討いただいています。

アサイン定例では、アサインの方向性を決める際にパフォーマンスの最大化のために3つの観点を最重要視しています。

アサイン方針を決定する3つの観点

「今後どのような仕事をしたいのか」、「どの方向に伸ばしていきたいのか」のキャリアに関しては、定常的な1on1や半期ごとの目標設定の中で、リーダーとデザイナーの間では常にアップデートされるようになっています。

  • 「スマートシティに関わるデザイナーのオファーがあったら立候補したい」
  • 「次は新規事業のようなゼロイチに関わりたい」
  • 「UIデザイナーではあるが、UXリサーチャーにチャレンジしたい」

などデザイナーのキャリア意向をグループリーダーが把握し、リーダー間でシェアしあうようにしています。

また、具体的なアサインの変更について相談する場合は、slackではなく、1on1で丁寧に説明するようにしています。

  • 普段から聞いているデザイナーの意向とどういう点がフィットすると考えられるのか
  • アサインにより今後どのような成長が見込めるか

などをしっかりと伝えます。

また、デザイナーから事業部側に話を聞いてみたいとなることは多く、その場合はカジュアルな面談を行い、意向がさらに高まることもあります。

事業部とのカジュアルな面談後のデザイナーとのSlack

当然のことですが、意向確認の段階でデザイナーが興味を持てないこともあり、無理にアサインするとパフォーマンスが最大化せず事業のためにならないため、説得はしないようにしています。

アサインについて相談したデザイナーと1on1後のグループリーダからのSlack

(このような場合は、マネジメント側で一方的にネガティブにとらえずに、デザイナーが本当にやりたいことを引き出すために、改めてキャリアに関して1on1を行います。)

リーダーとメンバーで行った目標設定をもとに、俯瞰した立場から「どこを伸ばすと良さそうか」「こういったキャリアの積み方もあるのではないか」という成長への期待値も重要な観点の一つです。

デザイン本部では、社内の等級制度に合わせ、目標設定に活用するためのキャリア設計シート(キャリアラダー)をデザイナーに提示しています。

2020年上期から運用を始めたキャリア設計シート(今年度内に大幅アップデートを検討中)

ハードスキル/ソフトスキル/メタスキルという軸で構成しており、DeNAのデザイナーとして期待されるアクションを可視化しています。

デザイナーとしてできる領域を広げることで、アサインされる上で求められるスキルのフィットを高めることは自身の意向にあったアサインを引き寄せることにも繋がります。

デザイナーが求められているポジションでのスキルがフィットするかは最も重要な観点になります。

事業へのフィットの考え方は2015年からの「アサインの法則」を継承している

デザイナー本人がやりたいものでも、スキルや実績がない場合はどうしてもパフォーマンスが出にくい状況となります。

事業のMUST(求められていること)に対して、本人のCAN(現在自分ができること)とWILL(自分のチャレンジとやりきる意志)の重なりを大きくすることがアサイン(ある意味では指名されるということ)には重要で、それは普段の行動や実績をエビデンスにつくられていくものだと思います。

事業のグロースが最優先であり、デザイナー個人のスキルアップを最優先にしているのではない点は、事業部側の方々も、デザイナーも誤解しないでほしいポイントとなります。

デザイナーが事業に対して興味と関心を持ってやりきる強い意志で向かってこそ、担当事業におけるパフォーマンスを最大化できると考えています。

そのために事業とデザイナーをWin-Winで結ぶことは、DeNAのようなエンタメから社会課題までの幅広い領域を横断するデザイン組織では最も大事にしなければならないと考えています。

DeNAデザイン本部では、デザイナーの成長や離職リスクの観点から定期的なジョブローテーションを意識しています。

複数事業に横断的に関われる環境なので、多様な経験を積むことを期待して入社している方も多く、常にチャレンジする気持ちを持って、楽しくデザインできる環境を維持し続けてほしいと考えています。

1on1では中長期キャリアについても定期的に確認を行う

長期のアサインとなっているデザイナーにはキャリアや現在のチャレンジと成長実感について把握し、その状況に応じてジョブローテーションについての意向を確認するようにしています。

「今いる場所でもっと深めていきたい」と考えるデザイナーもいれば、「そろそろ新たなチャレンジをしていきたい」と考えるデザイナーもいます。その意向をもとに、事業部側と相談しながら、半年〜1年のスケジュールでアサイン変更を行うようにしています。

デザイナーをアサインした後は、そのアサインが事業部にとっても、デザイナーにとっても正解になるように、継続的にパフォーマンスやコンディションの確認をするようにしています。

事業領域・フェーズ・チーム体制・スキルフィットなど何かひとつ掛け違うだけで、Win-Winの関係にならないため、その状態に早く気づくことは、事業にとっても、デザイナーにとっても大事なことと感じています。

デザイン本部内(部長&GL)で連携し、事業部とコミュニケーションを取りにいく

本部としてデザイナーとの1on1でアサイン先の状況をキャッチアップしますし、それをもとに事業部メンバーと直接コミュニケーションを取って、トラブルは一緒に解決をするようにしています。

このようなアサインのフローを取るようになってから数年になりますが、事業部からのすべての依頼に対してスムーズかつ適切に対応できているかというと改善すべき点はまだありますが、デザイナーが事業にコミットできている状態の手応えは得ています。

デザイン組織と事業部側の1on1で相互的にフォローしあう関係性になっている

複数の会議体を組み合わせたり、観点を体系化していたりと、仕組みと呼べるフローとなっていますが、これがワークしている根幹は「事業部とグループリーダーとデザイナーがしっかりとコミュニケーションを取れていること」だと思っています。

デザイナーとは1on1を月に1〜4回行うことと、グループリーダー間で連携することで、すべてのデザイナーの状態や考えていることを濃淡はあれどキャッチアップできているように思います。

また、アサイン中はデザイナーとも事業部とも連携し、相互にフォローし合うことで、気になったことを放置せずに改善に向かう体制となっていることはパフォーマンスを最大化するために必要であると考えています。

このように今後もコミュニケーションをベースにしながら、事業とデザイナーがWin-Winの関係を両立できるアサインをしていきたいです。

直近アサイン変更を行ったデザイナーに「ぶっちゃけアサインについて思うところ」について質問を投げてみました。

優しさのオブラートに包みながらも、しっかりと良し悪しを伝えてくれるので、本当にありがたいです。

よく見ると、アサイン以外の組織的な課題がチラホラ上がってますね。。

篠さんとは新規案件を一緒に担当した関係性でもあり、正直なコメントをしてくれていそう
ちょこさんには今回のサムネのグラフィックをつくってもらいました。ありがとうございます!
新卒の山本さんの伝え方はとてもやさしい。横の繋がりは組織的な課題だったりします。

以上となります。

ここまで読んでいただきありがとうございました!

要望があれば、「1on1」や「目標設計シート」などについても詳しく書きたいと思います。

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