2024年8月2日から9月1日にかけて、モンスターストライク (以下モンスト) と東京・大阪2施設の銭湯がコラボし、モンストをモチーフとしたサウナ体験が楽しめる「モンストサウナ」を開催しました。
私たちは、MIXIデザイン本部プロダクトデザイン室に所属するデザイナーとして、銭湯浴室内の壁絵や、ロゴ・キービジュアルに加え、魅力を存分にお伝えする特設サイトなど、多様なクリエイティブ制作に携わりました。
今までモンスト関連の制作に携わることも多くありましたが、今回はなんと実在する銭湯とコラボした特別企画。サウナ好きとして貴重な経験になると共に、デザインを通じてより良い体験を提供できるようにさまざまな工夫を凝らしました。
プロジェクトを振り返りながら、プロセスや意識していた点をまとめていきたいと思います。
モンストサウナは、若者に人気なサウナとコラボし、モンストの世界観を体感できる空間を提供することで、モンストユーザーに楽しんでもらいたいという目的で企画されました。(モンストサウナの企画担当者は、生粋のサウナーだそうです)
2024年4月頃から、モンストサウナ企画を推進している事業部メンバーと、私たちデザイン本部メンバーが連携し始め、企画目的のすり合わせや、アサインの調整、スケジュール設計などを行っていきました。
モンストサウナのデザインを担っていく中で、意識していたことは次のようなポイントです
モンストサウナの企画目的にもあるように、モンストユーザーやサウナ好きな方が存分に楽しめるような世界観はどのようなものかをしっかりと考え、デザインに落とし込んでいくことが重要でした。
加えて、実在する銭湯とコラボする以上、その銭湯の常連のお客様や、モンストを知らない方も目にすることになります。そういった方々にとっても抵抗感がなく、むしろほっこりできるようなバランス感を探っていくことも意識しました。
また、クリエイティブ制作はデザイナーだけで行うものではありません。企画を推進する事業部メンバーや、監修をしてくださる方など、さまざまな関係者と一丸となって初めてより良いアウトプットに繋がります。そのため、スケジュールやプロセス、監修のタイミングなども初期段階で詳細にすり合わせたうえで進行していきました。
最終的に制作するアイテムは、壁絵やポスター、特設サイトなど多岐に渡りますが、最初に着手するのは、クリエイティブ全体の要(かなめ)となる、ロゴとキービジュアルです。
モンストサウナという企画のイメージや、らしさを象徴的に表したロゴとキービジュアルをつくり、それらのイメージを継承しながら、壁絵や各種アイテムのデザインに展開していく流れとなるので、とても大切なプロセスです。
モンストサウナのロゴは、企画に対する熱量が高かったデザイナー5名が集い、アイデアを検討していきました。
通常、ロゴ制作は1〜2人ほどで担当するので、これほど多くのデザイナーが携わることは珍しいケースです。ただ、その分多様なアイデアが集まって、より良いロゴを作ることができたと思います。
ロゴを作っていく時には、モンストらしさ・トレンド感・サウナらしさなどをキーワードにしつつ、初稿・第二稿・最終稿といった流れで完成度を高めていきました。
その中で、「サウナ湯気のモクモク感を表現したロゴ案」を採用し、アート監修や、知財確認などを経て、ロゴが完成しました。
キービジュアルは、サウナから想起される「熱気や蒸気」「くつろいでいる(整っている)様子」に加えて、モンストとのコラボであることが分かるように「オラゴン」を取り入れる方針で、以下の3つのアイデアを提案しました。
デザインレビューを進める中で、以下の観点からA案が最もモンストサウナらしさを表していると判断しました。
キャラや背景の視認性の高さ (サウナだとすぐ分かる)
色味やオラゴンのポーズ・表情を含め、夏やサウナ室の熱気、そして気持ちよさを感じるビジュアルになっている点
一方で、C案の蒸気でくもっている表現も捨てがたい...という意見もあり、A案をベースに四隅をくもらせる表現を取り入れることで完成しました。
キービジュアルが固まってきたら、銭湯浴室内の壁絵のデザインに着手します。
人生の中で銭湯壁絵をデザインをする機会がどれほどあるだろうか...と思いつつ、難しいポイントはまずその大きさです。
横幅24m × 縦幅3.5mほどの大きさのビジュアルを手元のPCで制作するため、途中で実際の大きさが分からなくなってきます。そのため、定期的に大判印刷してみて、実寸を確認しながらデザインしていきました。
また、銭湯浴室内に大きく飾られるビジュアルなので、実際に見た人がどう感じるかをしっかり設計することが重要です。
例えば、冒頭でお伝えしたような「モンストをあまり知らない銭湯の常連のお客様」も「サウナ好きな若者や、モンストユーザー」も楽しめるバランス感を意識していました。
このバランス感を、ちょうど良く表現したビジュアルテイストを探るために、以下2つを提案。最終的に、2つ目の水彩風景画案が採用されました。
方向性が定まってきたら、ビジュアルの磨き込みや、登場するキャラクターの選定、アート監修など、ディティールを詰めていく段階に移ります。
特に時間をかけたのは、キャラクター選定だったと思います。例えば、どのキャラクターを取り入れると喜んでもらえるのか、モンストの世界観に沿った形で登場させるにはどうしたら良いかなど。
まずは人気なキャラクターや、温泉に入っていて違和感がないキャラクターをリストアップしてみて、キャラクター監修の方に相談。また、実際に描き下ろしを進める中でも、ポージングや仕草などについてレビューをもらいながら、賑やかで、ほっこりできるような空間になるようにしていきました。
その他にも、初回提案時には、モンストの赤をイメージした「紅富士」を取り入れていたのですが、銭湯壁絵では「赤系 (夕日や紅葉など)」が敬遠されることを制作過程で知り、青富士に変更しました。このような細かな調整を重ねることで、最終的なデザインが完成しました。
より多くの方にモンストサウナの魅力を届けるためには、特設サイトなどの媒体を通じて、知ってもらい、行ってみたい!と思ってもらえるようにすることも重要です。
当初、特設サイトの制作はプロジェクトのスコープに入っていなかったのですが、魅力を広く発信するために必要であり、せっかくならとことんやりたい...!という熱量の高いメンバーも多く、特設サイトも制作することにしました。
サイト制作は、まず事業部メンバーが構成案を作成し、プロダクトデザイン室メンバーがワイヤー設計、ビジュアルデザイン、実装を進めていくという流れで進めていきました。
目指したのは、サウナ好きな若者に向けたトレンド感のあるデザインです。チーム内に若者向けのポップなデザインが得意なデザイナーがいたため、その方にデザインをお任せし、私はワイヤーフレームの作成を担当しました。
最終的なサイトデザインは、サウナの熱気をイメージしたオレンジで構成し、ロッカーを模したナビゲーションバーや、サウナ室内の木張りの壁を模した背景など、様々な工夫が凝らされています。
加えて、サウナ好きな方がぐっと来るような、サプライズを届けられる演出をするため、メンバーでアイデアを出していきました。
その中で出てきたアイデアが、「①熱気」「②ロウリュボタン」「③くもったガラス」の3つです。
「①熱気」については、特設サイトを開いた際に、画面中央から外側へと蒸気が広がり、その後も画面端に微かな蒸気を残すことで、サウナの熱気を視覚的に表現しました。
「②ロウリュボタン」と「③くもったガラス」については、アイデアを合体。ページ最下部に配置されたボタンを押すと、画面全体が蒸気でくもり、ユーザーが画面を擦ると、そのくもりを拭き取れるというインタラクティブな演出にしています。
こういった、ユーザーに楽しんでもらえるような工夫を、細部まで考えて作り込んでいく姿勢は、MIXIならではだなと思っています。
銭湯壁絵をはじめとして、初めてチャレンジしたものも多く、実際どんな反響が来るのか…とドキドキしていましたが、実際に来てくださった皆さんからはポジティブな感想も多く、ほっとしました。
元々モンストが好きだった方からは「壁一面にモンストのキャラが描かれていて感動した!」「モンストのコラボイベントは、いつも工夫が凝らされていてワクワク感がある」といった好評が寄せられました。
さらに、モンストをあまり知らなかった方からも「楽しかったなぁ」といったありがたい声もいただくことができました。
また、事業部メンバーからは、プロジェクト進行に対する安心感を持つことができ、予想以上のクオリティを出してくれていて本当に良かったという声をもらっており、まさに部署を超えてチーム一丸となって進められたプロジェクトだったと感じています。
モンストサウナのデザインは、私たちにとっても思い入れ深く、貴重な経験でした。
企画を推進していた事業部メンバーをはじめとして、プロジェクトに関わっていた全員の熱量が高く、「もっとユーザーに喜んでもらうには何ができるだろう?」とアイデアを出し合いながら進められたことが、とても印象的でした。
その結果として、多くの方々に楽しんでいただける企画になったと思います。また、ユーザーサプライズファーストを大切にするMIXIらしいプロセスだったと感じています。
モンストサウナは9月1日で終了しましたが、今後もユーザーの皆さんが楽しめる、驚きのあるコンテンツをお届けしていきますので、どうぞご期待ください。