LINE Fukuoka クリエイティブ室 デザイナーの相川です。
動画やアニメーションを作ってみたものの、各所の確認の結果、大幅な内容変更が発生したり、そもそもアニメーションが効果的な枠ではなかった…などと無駄にコストがかかってしまったことは多いのではないでしょうか?
そこで、様々なLINEサービスのアニメーション制作に関わる中で試行錯誤しながらつくった、LINE Fukuokaでの周りを巻き込みながらアニメーションに合意をつくるプロセスと仕組みをまとめていきたいと思います。
どのように制作過程を共有すれば良いのか、動画にすべきか否かを判断するのが難しいと悩んでいるみなさんの参考になれば嬉しいです。
私はLINE Fukuokaクリエイティブ室に、アニメーションやモーショングラフィックスを強みとするデザイナーとして所属しています。20以上のサービスに横断的に関わり、場面によってさまざまなアニメーションや動画をつくっています。
LINEトラベルのサービス紹介動画
LINEで応募のサービスイメージ動画
左から:LINE LIVEのランクシステムインタラクション、応援アイテム、LINEギフトのアニメーションメッセージカード
他にも、以下のようなアニメーションづくりに関わっています。
- LINEのファミリーサービスの紹介動画
- LINE LIVEのライブ配信における応援アイテムや公式番組のOP動画からUIのインタラクション
- LINE GAMEのキャラクターやイベント紹介動画
- LINEギフトのアニメーションメッセージカード
- LINE占いの運勢動画
- LIVE BUYのティザー動画
- 社内表彰式のOP動画
- などなど
そんな中で、アニメーションは動きを付けたほぼ完成系でないとイメージを共有しづらいという問題に直面することが多くなっていました。
完成系の動画をつくってパターンとして見せて、やっとレビューをもらえる
アニメーションは、動く前の状態だと説明が難しく、見る側も動いた状態でないとイメージが湧きづらくレビューが難しい問題があります。
しかし、アニメーションをある程度付けてからレビューに出してしまうと、逆に以下のような問題が生まれてしまい、コストがかかってしまっていました。
- 「イメージと違った」「やっぱり内容はこれに変更で」といった大枠からの作り直しが生まれてしまう
- カットの追加・入れ替えといった修正が多くなる
- 結果的に、「やっぱりここはアニメーションではない方が良かったかも」と、折角作ったアニメーションが無駄になることも
そのような背景から、LINE Fukuokaでは周りを巻き込んで段階的にアニメーションに合意をつくりやすくなる仕組みをつくっています。
例えば
- 制作過程でレビューをもらう絵コンテコミュニケーション
- そもそも動画をつくるかを決めるために、訴求をすり合わせる
などがあります。
具体例を交えてまとめていきます。
アニメーションの制作過程でレビューをもらう際、テキスト・画像の要素に分解した絵コンテで見せるようにしてみました。
いきなり動画で見せるのではなく、ナレーションやカット内容、画像・イラストに要素を分けてレビューをもらうことで、イメージとズレがある部分を細かくヒアリングすることができます。
他の動画メンバーも事業部と絵コンテを元にコミュニケーションを取りやすくする為に「絵コンテテンプレート」というフォーマットをFigmaでつくっています。
絵コンテをつくる前段階で、"動画であるべきか否か、どこを動かすのか・動かさないのか"という部分を、アニメーションをつくる前にすり合わせるための、チームを巻き込んで訴求をまとめるフローを設けています。
背景として、絵コンテでコミュニケーションをとるようになり、動画内容の大きな修正が発生することは減ったものの「動画としての在り方は正解だったのか」という疑問は残っていました。
例えば、LINE LIVEのようなサービスでは、新機能だからといって激しく動かして目立たせようとしても、ライバーとリスナーのやりとりがメインのサービスなので、配信の邪魔になるアニメーションは却ってユーザーのストレスにも繋がってしまいます。
本来目を向けて欲しいものが目立たなくなるだけでなく、ユーザーストレスに繋がることも。
そのため、"動画であるべきか否か、どこを動かすのか・動かさないのか"という部分を、アニメーションをつくる前にチームですり合わせるため、企画自体のヒアリングやディスカッションを行うフローを追加しています。
訴求をまとめる・絵コンテでコミュニケーションする流れを、LINE STAFF STARTのサービス紹介動画を例にしてまとめてみます。
動画制作の初回相談では、企画側でもどのような動画にすべきか固まっていないことが多いです。
そこで、言語化が難しい以下のようなポイントはヒアリングしながら一緒にシートを埋めるようにしています。
- サービスや新機能の強み
- タグライン
- ターゲットや利用目的、掲載枠
- ユーザーメリット
- ユーザーゴール
企画段階から関わることで、「そもそも動画ではない方が効果的なのでは?」「その掲載枠ならこういった見せ方の方がいいのでは?」といったディスカッションもできるようになりました。
そこから、強みやタグラインをもとに、まずは企画者にテキストのみで構成をつくった「字コンテ」を見せてみて、アニメーションの内容や流れに合意をつくります。
その後は、イラストや尺感を追加し絵コンテを段階的に具体化させつつ、企画者にレビューをもらいながら完成系に近づけていきます。
絵を入れ始める段階で、イラストのテイストやカラーなどのイメージを、イラストレーター含めてすり合わせます。
絵コンテで方向性を詰めたあと、実際にアニメーションに落とし込む段階では、チーム内で「LINEらしいアニメーションとは何か?」をすり合わせるためのレビューを常に行っています。
アニメーションの詳細な動きについては企画やグラフィックのメンバーらからの意見が挙がってくることは少なく、アニメーションを専門とする自分たちで判断やクオリティを担保する必要があります。
例えば
- 見て飽きないように構成にメリハリ・動きに緩急をつける
- 頭に残して欲しい所にインパクト
- 音声なしでも内容が頭に残るように
といった観点から、過去のアニメーションや画像を見せながらレビューするようにしています。
今回のような仕組みをつくっている背景として、依頼を受けてアニメーションをつくるのではなく、あくまでサービスの中に入り込み、アニメーション・動画・モーションをつくるべきタイミングを提案する関わり方を目指していることがあります。
そのため、LINE Fukuokaには動画専門のチームはなく、デザインチームの中にモーショングラフィックスデザイナーを置く構造を取っています。
そもそもどのようなタイミングでアニメーションを使うべきか?という定義ができていないのであれば、アニメーションに専門性を持った人がコミュニケーションを取りながら「そこは動画でやりましょう」「そこは動かさない方が良いのでは」という会話をしていくことが必要です。
今回紹介したような仕組みを構築しながら、メンバーを巻き込んでアニメーションをつくることで、チームの全員にアニメーションの使い所・一緒にアニメーションをつくる過程のインストールを続けていきたいです。
最後に。少し前のものですが、これまでにつくってきた動画まとめです