MIXIデザイン本部 テクニカルデザイン室の及川です。MIXIで「配信」のエキスパートとして活動しており、社内スタジオの運営リーダーも務めています。
これまで、MIXIが手掛けるさまざまな配信に携わってきました。
事業会社の中で、私のように「配信」を専門としている人はまだ多くなく、社内でも少し珍しいポジションかもしれません。
今回は、自分がどのような役割を担い、日々どんなことを意識して取り組んでいるのか、具体的な業務内容を交えてご紹介できればと思います。
MIXIでは、モンスターストライクやコトダマンなど自社IPに関する収録やLIVE配信はもちろん、決算説明会、入社式、MIXI AWARDといった社内イベントの配信も、ほとんどを内製しています。
配信の手法についても、実写撮影に加え、バーチャルスタジオやVTuberを活用した演出など、さまざまなアプローチを日々検証し、実際の配信に取り入れています。多いときには週に6本、月に25本ほどの配信を行っており、ほぼ毎日、何かしらの配信が行われている状態です。
こうした配信を支えているのが、MIXIのオフィス内に併設された社内スタジオです。2020年、現在のオフィスへの移転にあわせて構築されたこのスタジオは、日々の収録や配信業務だけでなく、新技術の検証などにも活用されています。
このような環境の中で、私はMIXI社内の配信エキスパートとして、主に以下の3つの役割を持って活動しています。
定常的な配信業務の運用 : 各種IPやイベントの配信準備から本番運用までを担当
配信設備の導入・改善 : スタジオ内の機材やソフトウェアの選定・導入・改善を推進
新技術の検証・活用 : バーチャルスタジオや照明手法など、新たな表現手法の模索と実装
私自身、前職では映像配信を専門とする企業で働いていましたが、MIXIがスポーツやライフスタイル、デジタルエンターテインメントといった幅広い事業領域を展開しつつ、映像制作・配信にも本気で取り組んでいる点に魅力を感じ、入社を決めました。
ここからは、日々取り組んでいる配信業務における工夫について、実際の事例を交えながらご紹介します。
「ことば」で闘う新感覚RPG『共闘ことばRPG コトダマン』は、2025年4月にリリース7周年を迎え、これを記念した特別配信「オンラインfun♪パーティー」を実施しました。
この配信では、vMixオペレーターとして、レイアウト設計・スイッチング・テロップ出しまでを一貫して担当しました。
実際に配信に至るまでのプロセスを簡単にまとめたものが以下になります。
企画確認 : 企画の概要(目的・時間・場所・演出プランなど)を共有いただき、認識のすり合わせや、見せ方の提案を行う
機材選定 : どのような画角(引き・寄り・別角度など)が必要かを踏まえ、使用する機材(カメラ・照明・スタジオなど)の台数や種類を選定する。
絵づくり : 配信時には、スタジオ映像に加えて、テロップ・ゲーム画面・バーチャル背景など、さまざまなレイアウトの切り替えが必要になる。それに応じた素材反映やオペレーション準備を行う。
実際の配信 : vMixオペレーターとして、映像の切り替えやテロップ出しなどを担当する。
約7時間(*権利上の都合によりアーカイブは5時間)にわたる今回の配信では、多種多様なコンテンツが用意されており、それに合わせた適切なレイアウトでの配信画面を準備する必要がありました。
実際には、以下のような構成を含む15種類以上のレイアウトを事前に用意し、状況に応じて切り替えを行っていました。
スタジオ映像のみ(背景合成あり)
スタジオ映像+テロップ
スタジオ映像+ゲーム画面(1画面または2画面)
スタジオ映像+3Dオブジェクト
スライド画面+ワイプ(スタジオ映像)
別スタジオでの収録映像
etc...
また、配信はリアルタイムで映像をご覧いただくことになるため、スイッチングなどのオペレーションにおいて「ミスをしないための準備」も重要です。例えば、スライド資料を使用する場合には、映像が別の画面に切り替わるタイミングで自動的にページ送りが行われるよう、スクリプトを組んで一部を自動化するなどの工夫を行っています。
このような準備や工夫により、当日に大きなトラブルが発生することなく、7周年を記念した配信をユーザーの皆さんに大いに楽しんでいただくことができました。
2025年4月、MIXI本社で新入社員の門出を祝う「入社式」が開催されました。この入社式の様子は社内向けに収録・配信され、私はその配信業務を担当していました。
入社式自体は以前から実施していましたが、配信を伴う形式になったのは昨年からです。今回は「新入社員が会社との一体感を感じ、未来に向けてワクワクできる場にする」というテーマのもと、企画・デザイン・会場設営が進められました。
当日は、新入社員の皆さんをはじめ、経営陣や人事、配信スタッフが会場に集い、その様子が社内向けにリアルタイムで配信されました。
入社式は、「開会の言葉・列席者紹介」「社長挨拶」「本部長挨拶」「新入社員挨拶」といったプログラムに沿って進行し、流れにあわせてカメラ映像やスライドを切り替えながら配信を構成しました。
配信映像には、視聴中の社員によるコメントを画面右側にリアルタイムで表示しました。その映像を会場前方のスクリーンにも投影することで、オンラインとオフラインの垣根を越え、新入社員の皆さんが会社全体との一体感を感じられるような雰囲気づくりを心がけました。
ちなみに、画像左上「社長挨拶」でのワイプ表示は、当日に「ワイプ入れた方が良くない?」というレビューをもとに、すぐに反映しました。このスピード感も内製で運用するメリットの1つです。
単に様子を映すだけでなく、その場の空気感やカルチャーを魅力的に切り取り、伝えていく――。配信のケイパビリティを活かし、場や時間の密度を高め、より豊かなコミュニケーションを届けられるよう試行錯誤することも、大きなやりがいのひとつです。
もうひとつの事例として、昨年末に社内で開催した忘年会では、Unreal EngineとTouchDesignerを使って、ビンゴシステムのデザインと実装を行いました。
業務とは直接関係のない番外編のような取り組みではありますが、これまで映像制作や配信で培ってきた知見を、社内の遊びコンテンツにも本気で活かしてみた試みでもあります。
もともと忘年会でビンゴ大会を行うことは決まっていましたが、その中で「Unreal Engineで作ってみたら面白いのでは?」という声がきっかけとなりプロジェクトがスタートしました。
調べてみると、Unreal Engineでビンゴシステムを構築した事例や解説記事も見つかり、それらを参考にしながら、要件定義・デザイン・実装を進めていきました。
具体的には、ビンゴの数字や背景、エフェクト素材などを作成してUnreal Engineに読み込み、Unreal Engine側でビンゴシステムのロジックを実装。さらに、TouchDesignerで効果音などの演出を制御する構成としました。
最終的には、MIXIデザイン本部 動画クリエイティブ室を中心に約40名のメンバーが集まり、盛り上がりました。
番外編ではありますが、こうした社内イベントにおいても、これまで培ってきた技術を活かし、本気で楽しむというメリハリのある文化は、MIXIの大きな魅力のひとつだと感じています。
今回まとめたのは、私の所属するテクニカルデザイン室が取り組んでいる配信業務のあくまで一部にすぎません。MIXIでは日々、さまざまな事業において、ユーザーにサプライズを届けるための新しい企画やチャレンジが進められており、配信もその一端を担っています。
単に映像を届けるだけではなく、より楽しく、より魅力的な表現を追求すること。そのために必要な設備や新技術の検証に取り組み、日々飽きることなく試行錯誤を重ねています。
最近では、実写にとどまらず、バーチャルスタジオやVTuber、さらにはその組み合わせなど、さまざまな表現にも挑戦しています。そういった取り組みをきっかけに、他の事業部から「こんな配信ってできる?」と相談を受けることも増えてきました。
これからも配信という領域から、新しいチャレンジを次々と生み出していきたいと思っています。
社内イベント「Designer’s Meeting」でのV発射の様子
ここまで読んでいただきありがとうございました。もしMIXIでの配信業務やスタジオ環境などに興味を持っていただけたら、ぜひ気軽にお声がけください。
MIXIでの自社スタジオ環境やその活用術についてお話したYouTube動画もありますので、こちらもあわせてご覧ください。