ログラスでは、展示会に継続的にブースを出展しており、ここ半年間は、ほぼ毎月展示会に参加しています。2023年7月には2ブース同時出展や2地域(東京・名古屋)同時出展にも挑戦しました。
私は、BX(ブランドエクスペリエンス)デザイナーとして展示会のブース設計や制作ディレクションに関わり、出展のたびに毎回アップデートをおこなってきました。
試行錯誤を重ねてきた目線から、ログラスならではの展示会ブースの設計や、アップデートの考え方についてまとめます。
私たちが展示会に参加しているのは、経営管理SaaSという市場の認知をつくり、そして「Loglass 経営管理(以下Loglass)」というサービスとお客様を結びつけるためです。
経営管理SaaSというドメインや、Loglassというサービスは、まだまだポピュラーとは言えませんが、必ず世の中に必要なものだと確信しています。それを直接伝える場として、展示会というチャネルを活用しています。
具体的には、ターゲットになりづらい職種の方にも名刺やノベルティを配ってとにかく接点を増やすようなことはせず、ターゲットである方に深くLoglassについて理解してもらい、質の高い商談につなげることを重視しています。
その上で、展示会のブース設計においては、以下の2つの課題を解決する必要がありました。
Loglassは、経営管理の領域にサービスを提供する、SaaSプロダクトです。
経営管理にはお客様によって無数のやり方があり、ただ「経営管理ができるSaaSです」と伝えても何ができるかは伝わりません。
なので、展示会の設計では、一目でLoglassの世界観を表現しつつ、Loglassでできることをわかりやすく伝えることが必要でした。
それらを叶えるべく試行錯誤を繰り返しています。
ログラスのBXデザイン領域では、展示会以外にも無数の制作物を扱っています。
そのため、展示会だけに力をかけ続けることは難しく、より費用対効果高く運用していくためにも、何が展示会ブースの設計にとって重要なのかを明らかにしていく必要がありました。
まず手探りながら、外部業者の力を借りつつ、展示会に参加してみました。当時のプロセスやアウトプットをまとめたnoteはこちらです。
そこからも、毎月のように展示会に参加し、その上で、以下のような点を試行錯誤しながら力のかけどころを検証していきました。
展示会は、会場全体のコマ割りが事前に確定しています。小間位置、会場の出入り口からメイン動線はどこになるのかを想像して、どのような面に対して、どんな情報を配置すべきか?を考えていきます。
例えば、人の流れが多い箇所には、アイキャッチとなるロゴ、メインのタグラインを配置。さらにスタッフが直接話してブース内に引き込めるような壁面の役割を持たせます。
逆に、人の流れが少ないところには、スタッフを減らして壁面に読み込める情報量を盛り込んだり、パンフレットを並べておいたり、バックスペースの出入り口とするなど、情報の強弱をつけていきました。
質の高い商談につなげる、という目的から考えてブース内の空間の使い方も検証しています。
目的から落とすと、名刺交換をして終わりではなく、しっかりお客様の課題を探り、サービスの価値を伝えて「使いたい」と思ってもらうところまで設計すべきだと考えました。
そのため、ブースの「外」には関心を強める情報を並べる、「中」では無駄のないシンプルな空間でデモに集中していただく、という方向で、試行錯誤を行っていきました。
ブース壁面のグラフィックについても、各展示会の企画テーマに合わせ、毎回少しずつ訴求を変えて設計しています。
例えば、ある展示会では、経営企画職にどのような単語が刺さるのかを把握するため、社内のドメインエキスパートの協力をあおぎ、目を引く、聞こえたら足を止めてしまいそうな(自分がターゲットだと気づいてもらうための)単語を並べました。
呼び込みメンバーやデモ担当者が「さっきのお客様はこの単語にピンときて立ち寄ってくださったみたいです!」と知らせてくれたりします。そういった振り返りをもとに訴求ポイントを探り、単語を差し替えたりコピーライトの作成に役立てたりしています。
また、ブースで使う色についても、ログラスのコーポレートカラー(青色)を全面に押し出すのが良いか、もしくは変える方が良いか、というところも実験してみました。
このような取り組みを繰り返すことで、少しずつログラスらしさが言語化されていきました。
ログラスの展示会はさまざまな職種の社員が集まり、ワンチームで創り上げているため、参加するメンバーにとって使いやすいブースになっているかどうか?という点も大切にしています。
例えば、パンフレットの使いやすさ、ブースにある情報での話しやすさ、などブースの使いやすさを、展示会最中にメンバーにその場で聞くようにしています。
せっかく参加したなら、他のブースの設計も自分で体験できる機会になるので、休憩時間にリサーチを兼ねて回ってみるようにしています。
また余談ですが、ブースの運営を本気でしている時ほど、写真を忘れがちですが、人がいない時のブース(前日の設営準備時や会場前など)と、開場後の人の出入りがある時ともに必ず撮るようにしたほうが良いです。(後日の確認と検証をするときのため)
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これは、ログラスのブランディングデザイン全般で意識していることですが、やってみないと分からないところも多くあるため、仮説と検証を繰り返しています。
その上で、検証結果を踏まえながら、力をかけるところと、力を抜くべきところを判断するようにしています。
冒頭にも書いたように、ここ半年で毎月展示会にブースを出展していく中での試行錯誤を経て、徐々にログラスとしての展示会ブースの設計の考えがまとまってきました。
前述したように、ログラスの展示会の目的は「経営管理SaaSという市場への認知をつくる」「Loglass 経営管理というサービスと、お客さまを結びつける」という2つです。
そこから落としこんで、まず目の前の目標として達成すべきことを以下のように設定しています。
良質なリードが集まり、質の高い商談につながること
(普段お客様との直接の接点が少ない人も含め) 参加したメンバーが、直接お客様の声を聞けること
リードとなる企業の方にも、参加したログラスのメンバーにも、Loglassというサービスの価値が深く伝わるような空間づくりを意識しています。
ここからは、より細かく、ログラスの展示会ブース設計において、意識しているポイントをまとめてみます。
ログラス特有のブース設計では「確度の高いリードが生まれ、商談につながる」ということを意識しています。
なので「はじめまして」の状態から「明日には商談したい!」というところまでの流れをどう展示会ブースの空間の中でつくるかがポイントです。そのために行っていることをいくつか紹介します。
検証の過程でも説明したように、ブースの外には関心を強める情報を並べ、中ではデモを行う、という設計としています。
具体的には、壁面にはサービス説明動画を流したり、自由に手に取れるパンフレット、ソリューションを簡単に表した図解など、スタッフがLoglassについて話しやすいような情報を散りばめています。
また、ブースの外からでも、デモをしている中の様子が見えるようにしています。ブース外の呼び込みメンバーも「今中に入れてもいいか?」が分かるので、誘導するタイミングが分かりやすくなります。
Loglassはエンタープライズ企業を中心に導入いただいており、データ量も莫大で、かつ機密情報を扱っているため、信頼感が伝わるようなクリエイティブを意識しています。
例えば、ブースの設計は白基調、持ち帰るものは青基調と設定しており、ぱっと見の信頼感と、来場後に見返した時のログラスのブランドの両方が伝わるようにしています。
また、信頼感を得てもらうため、導入いただいているお客様のロゴを壁面に並べています。
どんどん導入いただいている業界が広がっているため、セールスメンバーの方と連携して、毎回最新の情報を集めるようにしています。
もう一つのポイントは、当日スタッフとしての参加は職種を限定せず、社員全員で行っていることです。
例えば、普段お客様と直接触れることの少ないエンジニアにも、ブース外の呼び込みや、ブース内でのデモを担当してもらうこともあります。
こうすることで、展示会が「お客様の声を直接聞ける機会」としても機能します。
もちろん、ただ話してください、というのでは負担が大きいので、無茶振りにならないように、話しやすくする場づくりを意識しています。
例えば、トークスクリプトはセールスメンバーがトークをまとめたドキュメントを共有してくれたり、マーケの責任者は展示会の説明動画を予め録画して全体に共有してくれたりしています。
また、参加するメンバー全員に、今回のブースはなぜこういう空間設計なのか、という意図を図解して伝えるようにしていました。
今は参加するメンバーも慣れてきて、このような図解は用意しなくても動けるようになってきていますが、初めて展示会に参加するメンバーにとっては有意義なものになっていたので、良い施策でした。
展示会に参加してくれたメンバーから「また行きたい!」という声が生まれる、お客様と触れられる一種のお祭りのような雰囲気になってきました。
そんなモメンタム作りを徹底しているマーケ担当者のおかげで、展示会に対する全社の熱量も高まっています。
(参考に、マーケ担当者の方目線での、展示会やオフラインイベントなどの考え方をまとめた記事を貼っておきます。)
今回お伝えしたように、展示会にはかなり多くの文脈を載せることができます。
例えばログラスの場合は、以下のような文脈が展示会に乗っていると思っています。
どのように良質な商談を生むか (商談獲得)
メンバーが直接お客様の声を聞ける (ユーザー理解)
訴求やクリエイティブを検証する (検証機会)
このような目的に対して、「世界観と、情報量の両立」という難しい問いに向き合い、事業の最大化に貢献していくことができます。それが事業会社の中でデザイナーとして関わる意義だと思います。
そして、一定投資したら、力をかけるべきポイントと抜くべきポイントが分かります。そこで、こういうやり方というのを固めて、また別のクリエイティブに投資する判断をしています。
今後は展示会においては、ブースだけでなく長期的な接点につながるノベルティの活用や、どうコストを削減していくか、という方向での工夫が求められます。その辺りも、また事例を出していきます。