ウエディングパークでは2024年から新規事業として、カップルが式場見学前に自ら結婚式の費用をシミュレーションできる『mieruupark (ミエルーパーク)』というサービスを運営しています。
私はmieruuparkのデザイナーとして、事業の初期フェーズを推進してきました。今回は結婚式場のウエディングプランナー向けに用意している「管理画面」のデザインプロセスについてまとめます。
mieruuparkは、カップルが式場見学前に自ら結婚式の費用をシミュレーションすることで、初めて結婚式場のウエディングプランナーと会話する時から安心した状態で会話を始められる体験を提供しています。
実は挙式をしたカップルの中には「結婚式には満足しているが、費用の納得度が低い」という方がいることが分かっています。
式場としてはもちろん、式場契約前の打ち合わせでも費用の詳細な説明をしているのですが、カップルは初回打ち合わせの時点では費用について確認すべきことが分からないため後から不満が生まれてしまうというのが構造的な課題となっています。
mieruuparkは、式場に初めて訪れる時点で費用について知識がある状態で会話が始められるようにすることで、カップルとウエディングプランナーの相互理解をつくり、カップルが安心して挙式ができる社会をつくることを目指しています。
mieruuparkの体験の一つが「費用カルテ」という機能です。相互理解を深めるため、カップルがシミュレーションした結果や予算懸念などを事前に式場に送ることができます。
また式場側もカップルへの理解を進められるように、式場側の画面からカップルの費用シミュレーションの結果をわかりやすく見ることができます。
私がプロジェクトに入った時は、この費用カルテを一つの式場と試験的に検証して価値がありそうなことがわかり、他の式場にも展開していこうとしていたタイミングでした。
一方で、いくつかの式場に費用カルテのことを伝えてみると「コンセプトには共感するけど、使い方が分からない」という声が多くあがっていました。
このような声から、mieruuparkが提案している体験は多くの式場にとって新しい業務フローであり、「カップルの費用シミュレーションを事前に知れるのはありがたいけど、どうデータを読み取れば良いかイメージが湧かない」という式場が多いのだと気付きます。
ここから私は、画面のビジュアルを磨くというよりも、そもそも式場はデータを見て何がしたいのか?という「観点」を把握すべきだと考えました。
費用カルテでは、ただデータを並べるだけではなく、それがどう使えるのかを実際のウエディングプランナーの業務に合うようにUIから示唆していくようなことが必要だったのです。
この観点を読み解きながらUIに落とし込むために、3段階のプロトタイプテストを行いました。
テスト段階の「費用カルテ」には、実施検証を一緒に進めていて、すでに業務で使いこなしてくれているウエディングプランナーの方が1人だけいました。
なので、まずはこの業務で使いこなせている方 (= エクストリームユーザー) へのヒアリングを行いました。
ここで知りたかったのは、プロダクトの使い方というよりも、データを見て何を考えてどう活用しているのかという「目的」や「考え方」です。
今の時点でも使いこなせているということは、UIが不十分でも何らかの情報を読み取って業務に活用してくれているということなので、「なぜここでこのデータを見ているんですか?」「どう考えて、何に使おうとしているんですか?」という質問を重ねて、ウエディングプランナーの方の頭の中を覗き込むようなことを試みています。
このヒアリングを通して、この方は「見積もりの迷いを知りたい」「正確な最終見積もりの想定を知りたい」「カップルが抱える費用不安が知りたい」という3つの観点でデータを見てくれていることが分かりました。
この観点をもとにプロトタイプを用意して、コンセプトには共感しているけど使い方のイメージが湧かないと教えてくれたいくつかの式場の方に対してプロトタイプテストをしていきました。
ここでは、エクストリームユーザーから学んだ3つの観点の中で、どれが最もイメージが湧く使い方なのかをテストしています。
具体的には、観点ごとに情報項目を入れ替えたプロトタイプを3つつくっています。
この段階ではあくまで「どんな情報項目であれば、業務に取り入れるイメージが湧くか」を知りたかったので、ビジュアライズには力を入れていません。情報の流れを簡易に並べるのみに留めています。
ご協力いただけた式場の方に、プロトタイプを見せながらヒアリングを進めます。
「こういうデータが表示されると使えそうですか?」とまず一つ目の案を見せると、「うーん、どうだろう、、?」と言われるので、そこで「実はもう何個か案があって、、」と他のプロトタイプも見せていきます。
そうして会話を重ねていくと「この使い方なら、確かにイメージが湧くかも」「であればこういう情報もあると良いかも」と、観点を引き出していくことができました。
結果として、事前に用意していた3つの観点の中でも特に「カップルの正確な見積もりの想定が知りたい」という目的にはどの式場からも共感があることが分かり、この目的の優先度を上げてUIを詰めていくことを決めることができました。
また、このようなテストを通してしっかりプロダクトの理解を進めてもらったことで、後に費用カルテを導入していただくことにも繋がりました。お客さまにも「一緒にプロダクトをつくっている」ような感覚を持ってもらうことができたのは良い進め方だったのだと感じています。
ここまでで得られた検証結果をもとに、情報の見せ方を詰めていきました。
この時点ですでに、それぞれの観点に対してどのような優先度で見せればいいか分かっていたので、後はそれぞれの情報項目に対して具体的な見せ方を調整するだけでした。
デザインを詰めていき、細かいところで表現方法が揺れるところだけパターンを出しておきます。
デザインが固まった段階で、ここまでの検証内容とセットでチームメンバーに共有しました。
デザインの意図をここまで回収してきたインサイトを踏まえて伝えたことで、チームメンバーから観点や情報項目への疑問はほぼあがらず、細かな表現方法のところだけディスカッションしながら調整していき、スムーズにデザインをFIXすることができました。
このような検証プロセスを通して、費用カルテが正式にリリースされました。
反響も大きく生まれ、mieruuparkを使って式場見学の体験を変えていこうとしてくれている結婚式場も増えていっています。
例えば、これまで「業務に組み込むイメージが湧かない」ということで導入を見送っていた式場の方からも、「費用カルテの画面を見て、業務のイメージがつきました!」という声を引き出すことができました。
mieruuparkを導入いただいた結婚式場には、mieruuparkのセールスメンバーが業務設計をオンボーディングをしていくようにしているのですが、そのコストをUIによって少しでも削減できたのではないかと感じています。
また、今回のテストを経てかなりコミットを高めてくれ、mieruuparkを本格的に業務に組み込むようにしてくれている結婚式場も生まれています。
ウエディングパークでは一つひとつの結婚式場との深い結びつきを大切にすることで、より良いプロダクトづくりを目指してきました。今回の機能検証の過程を通じて、より式場との関係性を強められたのは非常に意義ある進め方でした。
今回のプロセスで私が強く意識していたのは、「つくる」ことに目を向ける前に、必ず「どう使われるか」を確かめておくべきということです。
今回も、もし画面からつくり始めようとしていたら、リリースしても使われない機能をつくることになっていたと思います。
特に価値検証段階では、使いやすさの手前にそもそもどういう目的で使いたいのか?ということを足を使ってミニマムに検証し、そこからデザインを進めていくのが大切なのだと学びました。
このような検証は、すぐに快くテストにご協力いただける結婚式場の方たちとの信頼関係があってこそできることです。逆に言うと、そのように結婚式場との深い信頼関係をつくってきたウエディングパークだからこそ、踏み込んだ価値検証を積極的にしていくべきだと思います。
mieruuparkの価値検証は続いています。強く期待してくれている式場が増えてきたからこそ、今は「どうすればカップル側が見学前に費用シミュレーションをしたくなるのか」という、より手前の体験の検証に注力しています。
対象が変わっても、価値検証においてやることは変わりません。mieruuparkが結婚式費用周りの問題を根本的に解決して、安心して挙式を迎えられる方が1人でも増えるように。これからも泥臭く検証を続けていきます。