美容医療の口コミ予約・アプリ「トリビュー」のプロダクト組織では、2026年9月に組織体制のアップデートを決め、2026年10月より新体制の運用を開始することとしています。
最も大きな変化は、「必ずインサイト (一次情報から得られたトリビューならではの気付き) をもとに意思決定を進められるようにする」というインサイト駆動の思想を組み込んだことです。
この考えのもと、チームの体制や、組織としての仕組み、巻き込むパートナーなど各所を変更しています。
今回は、このトリビューでの組織体制の意思決定の裏側を、背景とともにまとめてみました。
「顧客に向き合いたい」とは思いつつ、プロダクトがグロースするにつれてだんだん齟齬が生まれてきている状況にあった私たちのようなチームの方は、ぜひ参考にしてもらえると嬉しいです。
「トリビュー」は、美容クリニックの検索・予約サービスです。数十万件以上の口コミや症例から自分に合った施術やクリニックを見つけることができます。
実は美容医療市場は5年で1.5倍 (*1) と急速に拡大しており、今後も継続的に拡大が予想されています。メディアで取り上げられる機会も増え、2.5人に1人 (*2) が美容医療を検討するなど、徐々に身近になってきています。
トリビューは2017年からサービスを開始し、ユーザーやクリニックの方々に支えられながら、今ではアプリの累計ダウンロード数は230万 (*3) に達しています。
このようにトリビューが事業成長してきた背景の一つには、徹底的な顧客理解の姿勢がありました。
美容医療というサービスは、ユーザーの悩みやコンプレックスと深く結びついています。
大きく見ると「綺麗になりたい」「美しく・かわいくなりたい」という気持ちがあるとしても、その目的は一人ひとりによって変わってきます。悩みを抱える背景も違えば、悩みの大きさも違うので、必要な施術はそれぞれで変わってきます。 (もっと言うと、必ずしも施術を受けることがベストではないこともあります。)
さらに、必ずしもユーザー自身が悩みを言語化できているわけでもありません。なので、各人の異なる悩みを深く咀嚼し、サービスに落とし込んでいけるかどうかが、トリビューを成長させるために必要不可欠でした。
そのような状況を、トリビューのメンバーは「顧客に向き合い、一次情報を得ていくこと」で乗り越えてきました。
例えば、サービスを立ち上げた2017年当初には、X (当時はTwitter) で美容医療に関心をお持ちの方にひたすらDMをして「どんな悩みを持っているか」ということを毎日聞き続けたり、ユーザーとの座談会を何度も開催して悩みをキャッチアップすることを徹底してきました。
また、プロダクト責任者である自分もクリニックとの商談に参加したり、美容医療の施術を受けてみたりとさまざまな方法で悩みの理解を進めてきています。
このような泥臭いアクションからユーザーの悩みを詳しく理解し、それをプロダクトに反映し続けてきたからこそ、数ある美容医療プラットフォームの中でもトリビューを選んでいただくことができているのだと思っています。
このように悩みに寄り添い続けてきたトリビューですが、事業がグロースするにつれ、プロダクトのアップデートが「刺さりきっていない」ことがだんだん増えてきていました。
理由は、以下のようなところにあると考えています。
トリビューはこの10年弱の間に、ユーザーの悩みに向き合って何度もアップデートや機能拡張を繰り返してきました。
そのためプロダクトの中には、当初から提供してきた口コミだけでなく、さまざまな課題に対応する機能が提供されています。
そのため、今のトリビューのプロダクトマネジメントの難易度は立ち上げ時よりも格段に高まっています。
どの機能がどの課題に対応しているものか
一つひとつの機能が、どこまで課題を満たせているのか
ということをチームで共通認識として扱えるようにならなければ、ユーザーに必要な機能をつくることも難しくなります。
何か一つの施策を打てばうまくいくというわけでもなく、感覚で施策を打っても刺さらないため、これまでよりも細かくユーザーのインサイトを捉えていかなければいけない状況になってきています。
プロダクトの機能が少ない立ち上げ時には、一次情報を深く理解している誰かが意思決定をリードする形でも良い時もありました。
しかし、これからさらにプロダクトが拡張していくと、誰か1人の頭で良し悪しを判断するのも限界が出てきます。
グロースに伴って組織も拡大しており、並行で動く施策も増えてきています。スピード感を保ちつつ、多岐にわたる課題を同時に解決していくためには、チーム全員がインサイトを扱えるようにする仕組みや体制が必要になってきているのだと思っています。
さらに、以前と比べて、日本国内に美容医療の選択肢は大きく普及してきています。
芸能人やテレビタレントの方も施術を受けたことを公表していたりと、「もはや、美容医療は隠すものではない」という風潮も広まってきています。
その影響で、気軽にライトな施術を受ける方も増えてきて、今までよりもユーザーのニーズは多様化しているのが実情です。
そのためこれからのトリビューでは、より一層多様になっていくユーザーニーズを捉え直していく必要も出てきています。
創業メンバーが持っている一次情報が古くなっている可能性もあります。今の美容医療に関わるユーザーやクリニックの一次情報を、改めて集め直すことも求められています。
トリビューは、美容医療という悩み深い領域で、ユーザーの一次情報を深く理解し続けてきたからこそこれまで成長してきました。
一方で、事業や市場の変化が起こっている今のタイミングで、チームとして一次情報への向き合い方を変えなければグロースを続けることもできなくなってしまうという危機感がありました。
そこで、組織体制から抜本的に見直そうと決めたのが今回のプロダクト組織体制アップデートの背景です。
このような課題を解決するために、トリビューのプロダクト組織を「インサイト駆動」な体制にアップデートすることを意思決定しました。
この構想は、インサイトをチームで扱うための基盤をつくることと、そのインサイトをもとにディスカバリーを行う最小単位のチーム構成、という「基盤」と「体制」の2つの変更がベースとなっています。
これまでトリビューでは、創業メンバーが属人的に一次情報の視点から良し悪しを判断する、いわば「ドメインエキスパート駆動」な開発体制を取っていました。
そこから、蓄積された一次情報をもとにチーム全員が判断する「インサイト駆動」に変更するのがこの構想の大きなポイントです。
守るべきは、 インサイト (一次情報から得られたトリビューならではの気付き) を、チームにとってのSingle Sorce of Truth (信頼できる唯一の情報源) として扱うことです。
「誰かの頭の中にだけある」「議事録にインタビュー情報が散らばっている」という状態では、チームで同じインサイトを扱うことができません。
「いつもここを見に来れば、使える一次情報が見つかる」という状況をつくるために、一つの場所にあらゆるインサイトを貯め、活用していけるような基盤をつくり始めています。
この基盤は、単に貯めるだけではなく、インサイトを使って判断がしやすくなることを目的としています。
そのためには、個別のインサイトが散らばっている状態ではなく、各インサイトの大きさや重要度を比較して考えられるようにする必要があります。それを実現しやすいツールとして、インサイトマネジメントツール「Centou」を導入しました。
Centouの中には、美容医療に関するインサイトがすでにいくつも集められており、ここから取り組む課題の選定・施策の根拠づけを行うフローを検証中です。
インサイトが貯め続けられる場所ができたとしても、うまくそのインサイトを使って探索を進められるかどうかは別の問題です。
あえて言い切るなら、私たちは「インサイトを貯める場所があるだけでは、組織は変わらないだろう」と考えています。
そこでこのタイミングで、多様化するユーザーニーズに向き合えるような開発体制の変更までセットで行いました。
一つの工夫は、PdM / デザイナー / エンジニアの3名で構成された最小単位のディスカバリーチームを「ポッド」と名付け、そのポッドを複数設置していくように体制を変えたことです。
トリビューでは、1つのプロダクトの中で、多様なユーザーのニーズを満たしていくことが求められます。
各ポッドはこれらのユーザーニーズのどれかに絞って探索を強めながら、刺さる機能を企画・設計することの責任を持っています。
ポッドの3つの役割の中で、特に今のトリビューにおいて必要となるのが、体験視点からの意思決定をリードするデザイナーの存在です。
理想は、デザイナーは解決策をUIに落とし込むだけでなく、ユーザーインサイトを集めて体験設計をリードしつつ、インサイト基盤をアップデートしていくことまで責任を持ってもらおうとしています。
また、この体制変更のタイミングで、プロダクト・マーケティング・コンテンツなどの各機能を一つの組織に統合しています。これは、各ポッドの打ち手をプロダクト内の改善だけに留めず、マーケティング施策などもセットで考えながら動かしていくことができるようにするためです。
美容医療の意思決定は、プロダクト内のコミュニケーションだけで起こるわけではありません。
プロダクトに触れる前から少しずつ悩みが顕在化していく
その上でトリビューを信頼してもらい、アプリを開いてもらう
プロダクトの中でも迷わず行動ができ、意思決定ができる
というように、すべてのファネルを改善していくことで、やっとユーザーの意思決定が起こるのがトリビューというサービスの構造です。インサイトを起点に横断的に施策を打てるようにするため、このタイミングで組織を統合しました。
これが現在のトリビューのプロダクト組織の構想です。2026年9月頭にチームに対して構想を打ち出し、10月からの本格運用に向けて基盤づくりと、体制の試験運用を始めています。
現在は、最速でこの体制変更を成功させるためにチーム一丸となり、各メンバーが手探りで良い動き方を模索してくれているところです。
チームとしての動きを最大化するために、これまでインサイトマネジメントの支援を数十社に対して続けてこられたCentouの加藤さんをパートナーとして巻き込み、意思決定フローの変化の成功例を一緒につくることにも取り組んでいます。
目下で不足していることは、以下の2つです。
1. インサイト駆動の開発の成功例を最速でつくる
まずは、構想を最速で成り立たせていくための実績が必要です。以下のようにステップを切って、いち早くインサイト起点での施策が決められた成功事例をつくるための検証を開始しました。
具体的には、ある一つのプロジェクトで試験的にディスカバリーの進め方を変えてみながら、トリビューにフィットする探索プロセスを検証してみるような動きを進めています。
こちらの進捗はまた事例として公開しようと思います。
2. インサイトマネジメントを推進できるデザイナーの拡充
この構想を成功させるためには、インサイトが貯められた基盤を使い、ポッドの意思決定を体験視点でリードできるデザイナーが必要不可欠となります。
社内のデザイナーがここを担うのはもちろん、インサイトマネージャーとして活躍できるデザイナーを採用することも並行で進めるようにしています。
トリビューが扱う美容医療の領域は、ユーザーの悩みもさまざまで意思決定も難しく、だからこそインサイトを深く理解していくことが競争優位になります。
一方でグロースのタイミングでは、事業も高速に進み、組織の人数も増え、気を抜くと誰もインサイトを理解できていない状態になってしまいます。
プロダクトも市場環境も変わってきています。創業から10年が経った今、一時的な苦しみを伴ったとしてもこのタイミングで組織としてインサイトに向き合えるように変革しなければいけないと強く思っています。
今回の組織アップデートがうまく機能していけば、インサイトが貯められた基盤を使って、誰もが顧客を向いて施策を動かせるようになるはずです。そういう状態になれば、ユーザーに価値を届けられるのはもちろん、トリビューという組織に所属するメンバーも「刺さる機能をつくれている」と自信がついていくのではないかと考えています。
インサイトが社内の意思決定を支え、そこから生まれる施策が多くのユーザーの課題を解決していく。インサイトこそがトリビューの競争優位と捉えて、チームで意思決定を進めていける新しい組織体制を成立させていきます。
これから継続的に、トリビューでのインサイト駆動のプロダクト組織づくりについての事例を発信していくので、ぜひ今後も参考にしてもらえると嬉しいです。