デザイナーのおのわたるです。パートナーとして、ときどきalmaに関わらせていただいています。
almaは「DESIGN for ALL / すべての人にとって、デザインがひらかれたものに」をかかげ、Cocodaなどサービス設計に関わる人のためのサービスを作っている会社です。
今回は、almaのCIロゴリニューアルのデザインプロセスについてまとめてみたいと思います。almaのメンバーとは学生時代から繋がりを持っていて、初期のロゴを私が制作したこともあり、自然と今回のロゴリニューアルも僕が担当することとなりました。
こちらが最終的に完成したいまのalmaのコーポレートロゴです。
リニューアルをした理由としては、創業から4年経ち、almaのサービスの方向性や組織が変化し、CIを再構築するタイミングが来ていたからです。
今回のケースでは、CIロゴを作成する中で、デザイナー自身がどの部分にしっくりきていないかが分からず、制作に行き詰まってしまう時に参考にしていただけたらと思います。
創業初期のalmaのサービスのことは知っていたものの、その後のalmaの変化についてはキャッチアップできていませんでした。したがって、5人のメンバー全員へのインタビューから着手しました。
「構造的ソリューションの浸透 / ユーザー第一 / 信念の強さ / よりよくサービスをつくれるように」という要素が出てきました。
ヒアリングした結果について、僕とメンバーの間で認識にずれがないかを知りたかったため、50%くらいの段階で一案目を提出しました。ラフアイディアを出すのにかかった時間は30分くらいです。
こちらが実際に制作した1案目です。
好奇心を連想させる色として、オレンジ系の暖色を採用しました。また、初期のロゴ制作時にも強く持っていた「文化を浸透させる」という想いもあったため、「にじみ」をモチーフにこちらのロゴを制作しました。
ここでもらったフィードバックは
- 輪郭をぐにゃぐにゃさせると芯が弱い感じが出てしまう
- 「何」を浸透させるのかという部分が表現できていない
- 浸透させるという行為だけ表現している状態
- 信念の強さという部分も表現したい
というものでした。このフィードバックをもとに2案目の制作にとりかかります。
2案目のロゴがこちらです。
こちらのロゴを作るときには、almaとはなにかを定義しました。
しかし、ここでも「優しすぎる」というフィードバックや、「2年前のalmaならよかった」という意見が出てきました。
人に優しく寄り添うことが一番要素として大きいと思っていたのですが、それよりも社会の構造を変える「強さ」の方が重要だということに気がつき、コンセプトがズレていることが分かりました。
1案目を提出したタイミングで、方向性はしっくり来ているという所感だったため、「好奇心」や「優しさ」を軸にそのまま制作を進めていました。
しかし、創業初期のイメージやalmaとはこういうものだ、という先入観があったため、その仮説を検証するインタビューをしてしまっていたことにも気がつきました。したがって、一度先入観を捨て、強さを表現する方向でひたすら思いついたものをスケッチしていく作業を行いました。
そこから何案か提案してみた第3案がこちらです。
好奇心という軸は捨て、構造変革をもたらす強さを表現するために、「既存の考えをひっくり返す」というアイディアでした。
しかし、この3案目の提案は、率直にいうとボツ案で、自分自身では全く納得しておりませんでした。そこで、メンバーにフィードバックを求めにいきました。
そうすると、新たなモチーフとして、ガレージ・秘密基地・クラフトマンシップなど、モノづくりへのこだわりのあるキーワードと「理想を語るだけではなく、地に足をつけてモノを作り続ける」という思想が見えてきました。
改めて得られたフィードバックを受け、ガレージをモチーフに作成したロゴがこちらです。
プロダクトをつくり続けて、ガレージが軒を連ねていくという様子を表現しました。
この案が採用され、微修正を行い完成しました。
最終的に完成したロゴがこちらです。
全員にしっかり意見をもらったことで、さらに深い思考や言語化を促し、結果的にメンバーの納得感にもつながりました。
今回のCIロゴ制作を通して、ボツ案を提示して対話を重ねていくのは有用だと実感しました。ボツ案とわかっていても恥ずかしがることなく、まずぶつけてみることで、新たな要素やモチーフを引き出せました。
プライドが邪魔をし、依頼者に意見を求めることが億劫になってしまう瞬間があると思うのですが、自分の頭だけでデザインを作るという考えを捨てたことで、ボツ案をぶつけられ、よいアウトプットが出せたと思います。
ボツ案コミュニケーションという一つの手法が、ロゴなどを制作されている方の参考になれば幸いです。