justInCaseTechnologiesでCPOをしている渡辺です。
今回は、当社で取り組んだtoB向け新サービス開発を例に、プロダクトの導入前からステークホルダー全員に共感してもらうための顧客コミュニケーション事例についてまとめていきたいと思います。
プロダクトの開発に取り組む中で、お客様にプロダクトの機能を伝えるための方法に悩む方はぜひ読んでみてください。
当社はレガシーな保険業界向けのDXを進めるプロダクトを提供しているtoB SaaS企業です。
保険業界ではプロダクトの導入に関わるステークホルダーが多いため、継続的にサービスをご利用いただくためには、実際にサービスを使う担当者だけでなく、各ステークホルダーから共感を得ることが大切です。
プロダクトの利用中だけでなく、各ステークホルダーに利用前から共感してもらわないとそもそも導入すら進まないこともあります。
そのため、今回の新サービスの立ち上げのタイミングでも、プロダクトを導入していただくための説明に大きく工数をかける必要がありました。
新サービス利用前からプロダクトへの共感を得るために、最初は各ステークホルダーに対してプロトタイプや営業資料をつくって渡そうと考えていました。
ただ、直接やりとりを行うご担当者の方にはプロトタイプを触って頂くことができますが、ステークホルダーの方全員に触って頂けるケースは少なく、利用開始前にご担当者以外の方々の共感を得づらいのが課題でした。
また、営業資料にはプロダクトの詳細な仕様を書くことは難しく、ステークホルダーがプロダクトを実際に触った時にどういう使い心地なのか、セキュリティがどうなっているのか、など導入する上での懸念は残ってしまいます。
そのため、ご担当者だけでなく、ステークホルダー全員の共感を得られるよう、直接やり取りをしていなくてもプロダクトの利用イメージを利用開始前に伝える必要がありました。
そこで解決策として、新サービスのプロダクト利用フローをNotionにまとめて、お客様にご共有できる「プロダクト導入資料」をつくりました。
導入前に懸念が多く生まれやすい部分を中心に「これさえ読めばプロダクトの使い方や使用感をご理解頂ける」という基準で、ドキュメントの内容を整えています。
ドキュメントの前半には、各ユーザーができることと、プロダクトを実際に利用する時のフローをまとめています。
プロダクトの利用フローをまとめた部分では、プロダクトの全体像、それぞれの機能ごとにプロトタイプの画面と利用イメージが浮かぶ説明文を載せています。
プロトタイプの画面は綺麗なものでなくても良いので、使い手目線でこのサービスを使うと自分の業務が楽になると思ってもらえるように、実際の利用時の流れを意識しながら使い方をまとめていきます。
また、導入の懸念は利用フローだけでなく、ITセキュリティの面でも生じていました。安全に使えるシステムであることを示すため、セキュリティ面の概要もドキュメントにまとめて情報システム部の方の共感も得られるようにしています。
プロダクトの仕様はつくる中で変更されることが多いため、「プロダクト導入資料」も更新前提でつくる必要がありました。
例えば、WordやPDFで資料を作成した場合、お客様に一度回答をお送りした後は内容は変えられません。また、各お客様向けに資料を用意することも必要になります。
そのため、プロダクトの仕様が変わる度にお客様ごとにコミュニケーションをとらなければならない状況になってしまいます。
しかしNotionならば、一つのドキュメントをすべてのお客様に共有することができます。
さらに、プロダクト仕様の更新が起こった時にも、一つのドキュメントを更新するだけで簡単にお客様にお知らせができるので、導入前のコミュニケーションコストを大幅に減らすことができました。
結果として、弊社のプロダクトマネージャーもセールスも、お客様単位で質問に対応する必要がなくなり、説明コストをかけずに利用前からステークホルダー全体から共感が得られるようになりました。
冒頭でもお伝えしたように、当社がプロダクトを提供する保険業界はレガシーな産業です。プロダクトの導入に関わるステークホルダーも多く、説明コストが大幅にかかるケースがよく見られます。
例えばお客様のシステム部からエクセルのQAリストが届き、導入前に回答する必要があるなど、市場特性としてアジャイルな開発が進めづらい状況にあります。
当社では、プロダクトの開発プロセスにお客さんを巻き込みながら、保険業界全体をアジャイルに開発することがスタンダードな状態に変えていこうとしています。
今回のようなドキュメント一つとっても、無駄を無くしていくように仕組み化しながら、お客さんにアジャイルな開発プロセスを少しずつ浸透させたいと思っています。
今後も保険業界のDXを進める保険テックのリードカンパニーとして業界の開発スタンダードをつくっていきたいと思います。