ウエディングパークのデザイナーとして、過去のリサーチ情報を資産として施策立案ができる仕組みづくりに取り組みました。

「過去のリサーチ情報の資産化」と「インサイト起点で施策立案ができるフロー」を立ち上げ

この仕組みのポイントは2つです。

1つは新しくインタビューやリサーチをしなくても、過去に同じようなリサーチをしているならばそこからインサイトを見つけられるように「資産化」したことです。

もう1つは、ユーザー情報をもとに誰でも施策を提案できるようにする「インサイト起点の施策立案」の仕組みまでつくったことです。

このプロジェクトの前段階で、私たちは「もっとユーザーのインサイトを捉えた施策を増やして “カップルに選ばれるサイト” を目指したい」という問題意識から、ユーザー情報をチームで扱えるようにする取り組みを続けていました。

もともとウエディングパークでは、カップルや結婚式場のインサイトに基づく施策が大事にされています。一方で事業数値を高める目的で施策が立ち上がり、ユーザー目線が不十分なまま施策が進んでいく場面も一部見られました。

プロジェクトメンバーの佐藤はもともと大学でUXを専攻していたこともあり、毎回ユーザー課題を意識して施策推進されるように、インタビューなどを取り入れてペルソナやジャーニーをまとめると良いのではと考えていました。

しかし、新規でインタビューなどを提案しても「今やるべきなのか?」という話になり、進められないこともありました。さらに私たちが所属しているSEOのチームメンバーと一緒に、何度かワークショップをしてユーザー認識を揃える取り組みをしてみましたが、うまく施策立案にまで行きつきませんでした。

インタビューを提案してみたり、ユーザー目線で体験を整理するワークショップなどを行ってみたが、うまく施策立案に行きつかなかった

なぜうまく進まなかったのかを上長と相談する中で、私たちの進め方に2つの問題があったことが分かりました。

問題の一つは、事業のスピードに合わないリサーチの進め方を選んでいたことです。

施策が立ち上がってからその都度インタビューをして、体験を整理してというやり方には時間がかかるため、事業の速度に対して遅すぎるのではないかということが分かってきます。

もう一つの問題として、チームメンバーにユーザー情報をもとに施策を動かすことのメリットが伝わり切っていないことがありました。

インタビューをしたとしてもそれが事業に活用されるイメージが湧いておらず、費用対効果も見えづらい。そんな中で事業的な速度にも合わないインタビューを実施するというのはなかなか意思決定しづらいという背景があったことがわかりました。

上長やメンバーと話す中で気づいた、これまでのリサーチの問題点

このような会話をする中で、まずはユーザー情報をもとに施策をつくる実績を生むところから始めないといけなかったのだと気づき、動き方を変えていくことにします。

そこでフォーカスしたのが「過去のリサーチを資産にする」ことと「まずは実績を出す」ということです。

ウエディングパークではこれまでにもたくさんのリサーチが行われていました。特定の機能に関するインタビューだとしても、それら過去のリサーチ情報を集めて整理し直せば、有益な情報になるのではないかと考えました。

さらに、これらの資産を使って企画立案をすることができれば、「ユーザー情報が集まる意味」を感じてもらえるだろうと思い、まずは私たちが主導してインサイトから企画立案をすることにチャレンジしました。

フォーカスの順序を決め直す「1. 過去のリサーチを資産に」「2. 実績を出しにいく」「3. チームに経験を広める」

まずは過去のリサーチを資産にして、それを使って私たちが施策を立案する。チームにユーザー情報の扱い方を広めるのはその後だ、と順序を決めて、仕組みと実績づくりに取り組み始めました。

最初に、これまでにさまざまなプロジェクトで行われていた過去のリサーチ情報 (議事録やレポートスライド) を集めていき、これを今後も資産として使いやすいインサイト集としてまとめていきました。

過去のリサーチ情報から、ユーザーインサイト集をつくる

ユーザー情報のまとめ方は、式場探しの各ステップを初期・中期・後期に分けつつ、実際のユーザーの発言から読み取れる価値を洗い出しています。

ユーザー情報のまとめ方

さらに、価値の共通項を、ユーザータイプと価値タイプにまとめました。

例えばユーザータイプは「こだわりが多いユーザー」「こだわりが少ないユーザー」など全部で8タイプ。価値タイプは「理想のイメージの式場に出会える価値」「参列者がアクセスしやすいかがわかる価値」などいくつかの価値をまとめて洗い出しています。

このように簡略化しているのは、次のステップで施策立案時に引用しやすくするためです。

出した価値は「ユーザータイプ」と「価値タイプ」としてまとめ、今後引用しやすいようにした

続けて、まずは私たちが主導して狙って実績を出しにいきます。事業的には、ユーザー認識を揃えられたら良いというよりも、事業数値やユーザーの価値につながるような施策が立案できることが成果になるだろうと考えました。

なので、資産化したユーザー情報を使って施策を立案できるような “企画フォーマット” を用意しました。

ユーザー起点で企画を考えるための企画フォーマットを作成

各パートでは、実際のユーザー情報を引用しながら企画の根拠や体験の妥当性を説明するような構成にしています。

「実現したいストーリー(体験)」のゴールを統一しておくことで、常に一貫した目的に向けてユーザー課題を踏まえてユーザー体験を作っていけるようにフォーマットを設計しました。

資産化したユーザー情報を、企画フォーマットの各パートで引用する

まずはユーザーの声を起点に刺さる施策が立案できた実績を出すためにも、実際にこの企画フォーマットを使って施策提案をしました。

企画フォーマットを活用して施策を提案

ここで立案した企画は、体験に対しての妥当性が伝わり、まずABテストで数値的な伸びを確認してみた上でリリースへ進めることが意思決定できました。

今回のプロセスがあったことで起こった変化はいくつもあったように感じます。

まずそもそも、リサーチ結果を資産化したことで、定性的なユーザーの声を起点としてアイデアが出せるようになったことは大きな変化でした。これまでは数値的な影響を起点としてアイデアを考えていたので、より施策の幅を広げて考えられるようになりました。

さらに、実在するユーザーの声を踏まえた体験・ストーリーを説明できるようになったので、企画を意思決定する立場の方としても納得感が増したように思います。

今回のプロセスを取り入れたことで起こった変化

私たちが施策立案をうまく進められた段階で、上長から「これでもっと施策をつくってみよう」「他のチームメンバーも巻き込んでみよう」と言ってもらえたので、ここからチームに “インサイト起点で施策をつくる経験を広げる” ことに取り組み始めます。

まずチームメンバーに対して、今回のプロセスを共有していきました。

今回の仕組みとセットで、インサイトをどのタイミングで活用すると良いか、その集め方などを共有

そこから2つのチームに分かれて、他の業務と並行して約1ヶ月の期間で施策をつくってみました。ここまでのプロセスをつくった山本と佐藤で分担して、ユーザー情報の確認方法や、企画のまとめ方をインプットしながらチームで施策をつくります。

チームメンバーと一緒に、今回のフローを使って施策立案を進めてみた

結果として1ヶ月で両チームでうまく企画が立ち上がり、チームメンバーも扱える仕組みになっていることが確認できました。

今回の仕組みのメリットは、一つのプロジェクトだけで使えるものではなく、同じく「式場探しを行うカップル」をターゲットとしている他プロジェクトのメンバーであれば誰でも使えるものになっていることです。

この仕組みを普及するため、私たちが所属するプロジェクト以外でも横断してユーザー情報が活用されるように、色んなプロジェクトに入り込んでいくようなことも行っています。

例えば、ウエクリ11.0のリリース後のプロダクト課題を整理しているタイミングで、「これ使えそうです」と今回集めたユーザー情報をサッとまとめておくようなことをしてみました。

「ウエクリ11.0」という別プロジェクトでプロダクト課題を整理している時にも、今回のユーザー情報を引用

課題に実際のユーザー情報が紐付けられている状態になったことで、スムーズに課題の優先度が決まり、ウエクリ11.0の改善施策がうまく意思決定される結果につながっています。

このような取り組みで、ウエディングパークの中でユーザー情報を使って意思決定を進める場面が増えてきました。

例えば、一緒にユーザー情報をもとに施策を立案する経験を積んだ、私たちのチームメンバーからは以下のように感想をもらっています。

今回の仕組みを体験したチームメンバーからの感想

一方で、まだ仕組みには課題もあります。

一つは、資産のもととなるユーザー情報のサンプル数がまだまだ少ないということです。「ここに来れば欲しい情報がある」と言える状態にするには、もっとサンプルを増やしていく必要があります。

もう一つは、このデータを扱える人が少ないことです。今回資産化を進めていた私たちは「どこに何のデータがあるか」を把握できているのですが、他の人はまだ使えるデータがどこにあるかを認識できてない場合もあります。

「リサーチ結果資産化」の仕組みの、今後アップデートが必要な部分

カップルや結婚式場のインサイトを捉えてものをつくるという考え方は、ウエディングパークではすでに当たり前になっています。

ただ、実際には事業は速く進むので、毎回リサーチに行くようなやり方ではどうしても時間が足りず、できないこともあります。

それでも、私たちウエディングパークは「カップル、式場、社会、私たちの4方良し」のサービス設計を目指しています。そうであれば、どんなプロジェクトでもユーザーから得られた実際のインサイトを起点に施策を考えられるようにしないといけないと思います。

「リサーチ結果資産化」プロジェクトの理想像

今回のような、過去のリサーチ結果も資産に変えて、誰でもインサイトを起点にした施策を考えられるようにする仕組みは、事業の速度に合わせた新しいプロジェクト推進の形なのではないかと思っています。

まだまだ改善できるところは多くあるので、ウエディングパーク全社としてユーザー情報を当たり前に資産にできている状態まで、仕組みをさらに育てていきたいなと思います。

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