MIXIデザイン本部 ブランドデザイン室では、2023年6月頃から、MIXIの企業理念であるPMWV(パーパス、ミッション、ミクシィ・ウェイ、バリュー)のさらなる社内浸透に向け、「PMWV浸透プロジェクト」を推進しています。
企業理念の浸透は、企業によってその目的や位置づけ、適切なアプローチが異なるため、どのように進めると良いのか悩む場面も多いのではないでしょうか。
今回は、クリエイティブに強みを持つ私たちが、企業理念の浸透に向けて取り組んできたことや、現時点での考えをまとめたいと思います。
まだまだ試行錯誤の過程ではありますが、少しでも参考になる点があれば嬉しいです。
MIXIは1999年に設立。20年以上にわたってコミュニケーションを軸とした事業展開を行ってきたMIXIでは、これまで掲げてきた企業理念をアップデートし、MIXIの存在意義やミッション、意思決定の軸を表現した新たな企業理念としてPMWVを制定しました。
制定後しばらく経ち、社内の各種媒体でPMWVに関する露出も増えていっていた一方で、社内により強く根付いていくための道筋はあまり見えていませんでした。
そこで、ただ単にPMWVという概念を情報として発信していくだけでなく、より効果的なアプローチはないか検討していった結果、クリエイティブにその解を求めていくこととなり、デザイン本部 ブランドデザイン室としてPMWV浸透の役割を担うことに。
ブランドデザイン室が旗振り役となり、デザイン本部内の動画クリエイティブ室と実働面で連携しながら進めていくことにしましたが、PMWVが浸透していった先の理想状態やその測り方など、不透明な部分も多い状態でした。
ただ、ここで机上の空論を並べ立てるより、私たちができるアプローチを選択しながら、実践を通して道筋を明らかにしていく方が良いだろうと考えました。 そのなかで、PMWVがより効果的に浸透していくための1つの岐路として、「文字による訴求」と「グラフィックによる訴求」それぞれの役割や、適した場面・タイミングはどうあるべきかを考えました。
プロジェクトメンバーで色々と議論を重ねた結果、デザイン職である私たちの強みを最も活かしやすく、今までのアプローチと異なる効果を生める可能性が高い、グラフィックでの空気感訴求を強めていくことが、その時点での浸透施策フェーズにおいて取り組むべき課題だという結論に至りました。
この方針を基に、実際にPMWV浸透プロジェクトを進めるにあたって、意識していたことは以下のような点です。
PMWV浸透に向け、MIXIらしいと感じられる場面をデザインを通して増やす
単にブランド表現を押し付けるのではなく、コンテンツにあった価値と表現を考えていく
全社の活動を俯瞰し、人の流れが集中する場面から変化を生んでいく
活動内容や意義を積極的に発信し、協力してくれる人を増やしていく
アウトプットのタイミングは一度に大量に出しその後に空白期間を生むよりも、時期を決めてアウトプットが継続的・恒常的に出ることで、活動自体にリマインダーや浸透の役割を持たせる
ここからは、具体的に取り組んだ施策をまとめていきます。
まず始めに取り組んだのが、MIXIで毎週月曜朝に開催している全体朝会のデザインリニューアルです。
ライブ配信で視聴できるMIXI全体の情報発信の場であり、毎週多くの社員が目にするため、ここにMIXIらしい表現が入ることにも納得感があり、インパクトも大きいだろうと考えました。
リニューアルにあたって、まずは今までの朝会の構成やアジェンダを整理し、大枠を継承しながらも、MIXIらしさやPMWVの空気感を感じられるようなアレンジを加えていきました。
例えば、今までは特に待機画面やオープニングなどはありませんでしたが、退屈さを感じさせず、週の始まりを活き活きとした印象で迎えられるように、オープニング動画を制作し、PMWVをモチーフとしたアニメーションを取り入れています。
リニューアル後の朝会の待機画面(0:00〜) & オープニング動画(2:00〜)
さらに、全体の雰囲気が同じ印象となるように、配信用素材や、朝会時に表示するポータルサイトのデザインなどもアップデートしました。
次に、MIXIのオフィシャルスライドテンプレート (PowerPoint、Google スライド)のデザインを刷新しました。
MIXIの全社員が利用するものであり、当時は下記のような課題感も社員から寄せられていたため、使い勝手の面での改善を実施しつつ、MIXIらしい雰囲気を纏えるテンプレートにリデザインするというスタンスで実施しました。
登壇時、スライドを元にページ案内したいのにページ表記が小さく視認性が悪い
硬いデザインパターンしかない (少し賑やかしたい時もある)
もう少し読みやすいフォントが良い
など
あくまで利用者にとって使いやすく、様々なシチュエーションに対応しながらも複雑になりすぎない塩梅となるよう、プロトタイプと実利用でのテストを繰り返していきました。
リリース後も早速様々な部署の方から反応・要望があり、今後もより使いやすく、よりMIXIらしいコミュニケーションツールとなるために、段階的に改良していきたいと考えています。
ここまではデジタル媒体でのリニューアルがメインとなっていましたが、オフラインでもMIXIらしさに触れられる機会の創出を目指し、出社した大半の人が訪れる社食のポップのリニューアルに着手しました。
社食の運営には社内外で多くの方が関わっているため、プロジェクトの目的やその後の運用方法も含めてお伝えし、各部署の協力により実現できました。
まずリニューアルにあたってどのようなポップが置かれているのか、状態の確認と整理をしました。
社食を運用するにあたり、必要になったタイミングでポップを追加していったことにより、様々なデザイン、様々なサイズのものが置かれていることが分かりました。
これらの設置場所や役割を改めて確認しながら、以下の2点を踏まえたデザインを検討していきました。
MIXIらしい空気感の醸成
社食をより快適に利用できるようになる
特に、これらのポップはあくまで社食の利用者が適切に利用できるようにするためのアイテムなので、MIXIらしい表現にこだわりすぎると逆に情報が分かりづらくなる可能性もあります。
そのため、メニュー関連(14種)・注意喚起系(15種)・その他案内系(15種)の分類を行い、それぞれにデザインを割り当てる方法で展開していきました。
このような工夫を取り入れながらポップのデザインを作成し、裁断やラミネート加工を施したうえで、社食の各所に設置していきました。
他にも、全社単位で人の流れが集中し、目に触れるような機会を中心に、MIXIらしさを感じられる場面を増やしていっています。
例えば、オフィスで使用する紙コップのデザインを刷新することで、持ち運ばれたり、各々のデスクに置かれた時に自然とMIXIらしい表現が目に入るようにしています。また、MIXIのブランドアセットに関わる情報や、社内申請フローを集約したポータルサイトなども新しく制作しています。
2023年9月頃からこのような施策を実施してきたことで、「久しぶりに出社したらクリエイティブが進化してました!!とってもかわいくて嬉しかったです (社食)」「ロゴ入り紙コップいいね! 執務エリアにMIXIがあふれてていいですね!(紙コップ)」「ここも変えてほしいです!」など、各施策に対する感想やフィードバック、改善要望などの声が、顔見知りの社員以外からも寄せられています。
まだ試行錯誤の過程であり、今後変わっていく可能性も大いにありますが、クリエイティブに強みを持つ私たちなりの企業理念の浸透に対する考え方も、少しずつ言語化を進めています。
例えば、企業理念が社内に浸透し、企業理念が反映された商品・活動を通して社会貢献ができていくという状態に対して、どのようなアプローチがあるのか。
認知・理解・共感・行動という順に浸透していく道程において、「内容理解促進 (Understanding)」と「雰囲気醸成 (Atmosphere)」の両輪で推進することが重要だと考えています。
内容理解推進とは、文字や言葉を通して企業理念を伝えていくアプローチです。例えば、人の目に触れやすい場所に、企業理念を記載するといったものです。情報として理解してもらうことはできますが、それだけだと、どうしても押し付けがましく感じたり、共感しづらい可能性もあります。
そのため、併せて重要なのが雰囲気醸成だと考えています。文字だけでなく、グラフィックを通して内容理解や共感が起こりやすい環境・雰囲気を醸成し、見た時に自然と理念が想起される、スイッチ・リマインダーとして機能することを目指しています。
会話に例えるならば、言葉だけでなく、表情や声の抑揚、その場の空気感などの周辺情報も合わさることで印象的に伝わったり、共感しやすくなります。この周辺情報を補っていくことが重要であり、まさにクリエイティブが得意とするところでもあります。
すべての企業で当てはまる考え方ではないかも知れませんし、教科書的な決まったやり方があるわけではないと思います。ただ、相対しているのは「人」であり、単に押し付けるような方法では上手くいかないことは確かなことだと考えています。
企業理念浸透に取り組んでいますが、一方で終わりがない概念でもあります。
もちろんマイルストーンとして効果測定をしたり、プロジェクトとして一区切りをつけることはあります。ただ、コミュニケーションを軸に多様なサービス・事業を展開し、1000人以上の従業員を抱えるMIXIだからこそ、存在意義としてのPMWVを体現した活動を常に追い求めていく必要があります。
PMWV浸透の先にある目標としては「パーパス経営の実践に向けて、クリエイティブの力で社内外に対するMIXIらしさの浸透に貢献する」というものがあり、ブランドアンケートやサーベイを通じて定量面での効果を計っています。質問項目にも「認知・理解・共感・行動」各フェーズに対するものがあるなど、進捗を鑑みつつ施策のフェーズも考えていこうと思っています。
今後も、MIXIのメンバーの1人としてPMWVを体現していくと共に、PMWVがMIXIの組織・事業を強く支えている状態を作れるように取り組んでいきます。