バクラクではいくつかのマーケティングチャネルを領域として分けてコミュニケーションデザイナーをアサインし、それぞれの領域で最適なコミュニケーションを検証しています。

LayerX バクラクのコミュニケーションデザイン組織の体制

私は2024年に入社してから展示会領域のチャネルを担当しているデザイナーのyamachanです。マーケティングメンバー5名とデザイナー1名 (+施工管理パートナー) のチームで、年間で30回以上の展示会に出展しています。

バクラク事業部では、年間30回以上の展示会に出展

今回は私の担当する展示会領域での動き方を例に、バクラクでのコミュニケーションデザインの役割についてまとめます。

まず展示会に限らず、私が思うバクラクのコミュニケーションデザインのやりがい ( ≒ 難しさとも言う) についてまとめておきます。

前提として、私はLayerXに入る前は広告代理店でグラフィックデザインを仕事にしていました。事業会社の中でコミュニケーションデザインに取り組むこと自体が初めてだったのですが、バクラクという事業だからこそ意識しないといけないことがいくつかあるなと感じていました。

広告代理店から事業会社であるLayerXに転職、主にバクラク展示会チャネルのコミュニケーションデザインを担当

バクラクは急成長しているプロダクトです。9つのバックオフィス業務に対応するシリーズを展開し、シリーズ累計の導入社数は15,000社を超えています。

「バックオフィス業務 (請求書受取・発行、経費精算、勤怠管理など)」という事業領域では、ターゲットとなる企業やユーザー層はかなり幅広く、新機能もすごいスピードで開発されていきます。

そのためにマーケティング施策のデザインにおいては「変数の多さ」をどうコントロールするかがポイントになります。

事業の急速成長を続けるためには「アウトプット量」「幅広いターゲット/機能別の訴求整理」「新規マーケティングチャネル開発」などいくつもの論点を同時に扱うことが必要になります。

バクラクのマーケティングデザインのポイント「変数の多さのコントロール」

バクラクの事業的な強みは「圧倒的に使いやすいプロダクト」です。これを顧客獲得の面で言い換えるなら 触ってもらうことで一番魅力が伝わる ということだと理解しています。

バクラクは丁寧にクリエイティブで説明するよりも、一度デモを触ってもらう方が魅力が伝わるプロダクトです。もっと言うと、価値を最大限伝えるためには、デモの前段階 (ex. 展示会のクリエイティブ) ではプロダクトの画面を見せない方が良いとも言えます。

バクラクのマーケティングデザインのポイント「プロダクトを見せずに魅力を伝える」

なのでバクラクのデザイナーは、クリエイティブだけを考えていると上手くパフォーマンスできないかもしれません。 「いかにプロダクトを見せずに、適切な期待を持ってデモに来てもらうか」といった顧客ファネル全体の流れを設計する必要がある のがバクラクのコミュニケーションデザインだと考えています。

そんなバクラクならではのコミュニケーションデザインのポイントを踏まえて、私が約2年間担当してきた展示会チャネルでの取り組みをまとめます。

展示会も他のチャネルと同じで、以下のようなバクラクの事業特性ゆえに生まれる論点を解決していく必要がありました。

  • 年間30回以上の展示会を、少数のメンバー (デザイナーは1名) で回すためには

  • 展示会ごとにユーザー層が異なる中で、どう訴求を固めていくのか

  • 複数のプロダクト、新機能のどこを訴求すれば良いか

  • いかに理想的な流れでデモに来てもらい、プロダクトの価値を伝えていくか

このような課題を踏まえ、専任のデザイナーとしてチャネルを育てるために以下のような工夫をしています。

  1. デモ中心のフローづくり

  2. クリエイティブは「タグ🏷️」で出し分け

  3. 回を重ねるごとに顧客情報が貯まる仕組み

  4. 刺さり度は現場で確認

専任のコミュニケーションデザイナーとして、展示会チャネルを育てるための4つの工夫

バクラクのプロダクトの良さは、触ってもらうことで1番伝わります。展示会の体験づくりにおいても、いかに自然とデモに来てもらってプロダクトに感動してもらうかを考える必要があります。

なので、壁面やチラシなどの制作だけではなくて、マーケメンバーと一緒に「無数のブースの中でバクラクのブースに興味を持ってもらい、デモまで辿り着いてもらう」ためのフロー全体を考えるようにしています。

例えば壁面のクリエイティブでは、プロダクトのイメージはほとんど使わずコミュニケーションします。

「サービス名」「導入企業ロゴ」「サービスカテゴリー」「導入効果」「キャッチコピー」などの要素を、展示会ごとに異なる来場者の業種や役職に合わせて出し分けて、興味が高まった状態でデモにつなげることを意識しています。

デモの効果を最大化させるため、壁面のクリエイティブではプロダクトのイメージは使わないように

また、自然と興味を持ってもらえるフローを検証するために、企画から設計することもあります。

2025年末の展示会では「バクラクバックオフィスカフェ」という企画を通常のブースに加えて実施してみました。

これは、展示会参加者の方々は朝早くからたくさんのブースに足を運ぶことになるため、昼過ぎに休憩がてらコーヒーを飲みに来て疲れを取ってもらえればと思いつくったものです。

展示会における自然でライトなコミュニケーションを意識して実験的に開催しましたが、結果としてバクラクに興味を持ってくれている方も多く訪れてもらえて、デモにもつながる成功例になりました。

企画から設計・デザインまで担当した「バクラクバックオフィスカフェ」

このように、展示会当日はもちろん、事前の体験までも考えて、いかに自然と興味を持ってもらいデモに辿り着いてもらえるかを検証し続けています。

具体的なクリエイティブ設計においては、無数のバクラクの機能やプロダクトのどこを押し出すのかを考える必要があります。

バクラクには9つのプロダクトがあって、どれも訴求したいことは違っています。新機能ができた時にはその優先度が上がりますし、それらをすべて押し出そうとすると壁面やチラシのスペースも足りません。

そこで私はクリエイティブの優先度を、それぞれのクリエイティブにタグを付けて出し分けるように考えています。

例えば、バクラクの訴求方法にはいくつものパターンが考えられます。

これらの訴求をつくる要素をタグのように考えて、優先度の高い要素 (選抜メンバー的なもの) と、そうでない要素を頭の中で整理しています。

優先度が高いのは「シリーズ全体のコピー (バックオフィス業務をAIでラクに) 」「導入企業ロゴ」「導入の効果」「各プロダクトの対象業務 (ex. 請求書受取, 法人カード, 勤怠...)」など。

逆に「具体的な機能の説明」「詳細な画面」などは、デモで伝えた方が良いのであまり優先度を上げなくても良いと考えています。

タグ的に考えて、押し出す情報の優先度を決める

この優先度をベースにしつつ

  • 展示会ごとの参加者特性

  • 過去のクリエイティブの刺さり度合い

  • 今回の展示会で押したい機能やメッセージ

を加味して、壁面の情報を出し分けします。

一例を挙げると、2025年のブース設計では「AI」というキーワードに馴染みがあるかどうかでメッセージを変えていました。これは世の中のAIに対するポジティブイメージの度合いが人によって違っていると捉えていたからです。(現在はAIの普及が進んだので、特に使い分けはしていません。)

来場者の属性に応じてメッセージを出し分け

他にも、バクラクバックオフィスカフェをやってみた時には、展示会参加メンバーから「マップが好評だった」「xx社さんの事例は、例として話しやすかった」と振り返りをもらっていました。

なので、カフェの企画自体は毎回繰り返さないとしても、同じようなターゲットが参加する展示会では、「マップ表現」「刺さった事例」を繰り返し使うなど、クリエイティブもタグ的に考えて出し分けするようにしています。

一つの企画の中でも、どのクリエイティブの要素が刺さるのかを細かく確認

バクラクの魅力を伝える主役はやはりプロダクトのデモなので、展示会ブースにおける壁面デザインは、あくまでお客さまの気を引くための役割だと思っています。

例えるなら、居酒屋の提灯やラーメン屋の看板のように、課題を感じている人が遠くから見ても「あそこに行けば何かあるかも」と思えるようになっているかを常に意識しています。

どんな人には、どんな要素を見せると気を引けるのかを、できるだけ細かく考えて出し分けるようにします。

このような考え方で毎回の展示会を設計しています。これを年間30回以上やっているのがバクラクの展示会チームです。

冒頭にも書いたように、チームはマーケター5名とコミュニケーションデザイナー1名 (+施工管理パートナー) という少数体制なので、いかに質を高めつつ効率化していくか?ということも同時に考えないといけません。

そこで、毎回の展示会で使いやすいように、マーケメンバーと相談しながら企画や振り返りのフォーマットを整えていきました。

毎回展示会準備が始まるタイミングで、マーケターにはこのフォーマットを使って、今回の狙いや企画概要・特に押し出したいメッセージなどをまとめてもらうようにしています。

年間30回もの展示会で、毎回丁寧にヒアリングしてからデザインを設計しようとすると運用が回らないので、ある程度フォーマットを絞ってコミュニケーションのコストを下げています。

マーケターが企画開始時点でフォーマットを記入してくれるため、デザイナーからの毎回のヒアリングが不要に

この企画フォーマットと合わせた項目で振り返りも行います。毎回展示会が終わったら、スタッフとして参加してくれた社内メンバーみんなに振り返りを記入してもらい、それを見ながら、展示会チームで振り返り会を行い「今回はここが良かった」「次はこれをやろう」というのを話し合うようにしています。

企画を考える時も、過去の振り返りでの情報を活用します。このような振り返りを何度も繰り返すと、だんだん「この展示会はこういう方が来るから、こんな訴求が良さそう」と、展示会ごとに刺さる企画・クリエイティブが見えてきます。

完全にゼロイチで展示会を設計していくのではなくて、展示会をやればやるほど顧客情報がチームの資産として貯まっていくように仕組みをつくっています。

ここまで狙いを持って展示会に臨んでも、やはり現場で刺さるかどうかは状況によるところが大きいです。バックオフィス業務を取り巻く世の中の環境や情勢がどう変わっているか、来場者の層が想定通りか、などによっても結果は変わります。

なので私は、現場での課題感や肌感を知り、自分の認識もアップデートしていくことが一番大事なのだと思っています。

そのためにも、コミュニケーションデザイナー兼マーケティング部の一員として、展示会では毎回現場で接客に立つようにしています。

デザイナーとして展示会の接客に立つと、お客さまの課題感も直接聞くことができますし、「これ私がデザインしたんですけど...」としれっとデザインの印象なども聞くことができます。

この肌感を持った上で、他メンバーの振り返りも見ながら、改めて今後のデザインの優先度を考えていくようにしています。

クリエイティブをつくる担当というよりも、展示会の成果に責任を持って、マーケティングチームの一員としてチャネルを進化させる役割を持とうとしています。

この2年間でバクラク展示会チャネルは大きく成長し、バクラクのマーケティングを支える屋台骨のような存在になってきています。(もちろんこれは私だけでなくチームや、展示会スタッフとして参加してくれたすべてのLayerX社員の力によるものです💪)

展示会の度に丁寧に振り返りを残していったことで顧客理解が進んでいき、タグ的な考え方でクリエイティブも検証し続けたことで、刺さる企画やブース設計が見えてきました。

一緒に展示会を進めてきたマーケティングチームのメンバーからも、以下のようにコメントをもらっています。コミュニケーションデザインからマーケティングの検証を進める貢献ができたことがとても嬉しいですし、もっとより良い体験をつくっていきたいです👏

今回まとめたように急成長中のプロダクトでは、コミュニケーションデザインの難易度がとても高いです。スピードも量も維持しながら、毎回結果を出しつつ、チャネル自体の検証も進めないといけません。

このような場面では、チャネルを運用しながら「育てていく」発想が大事になるだろうと思っています。

扱うチャネルによってゴールは異なります。例えば展示会であれば「商談の獲得」や「新機能の認知獲得」など。HPでは「インバウンドの商談獲得」や「ウェビナー集客数」など。

さらにチャネルごとに出会えるお客さまの層も異なります。なので適切な訴求やコミュニケーションも、チャネル別に検証する必要があります。

ここで私たちコミュニケーションデザイナーは 「チャネルをクリエイティブ起点で育てていく」 ことに役割を置くと良いのではないかと思っています。一つの領域に長く関わり、施策ごとの成果を出しつつ、同時にそのチャネルの顧客層、刺さる訴求、コミュニケーションの流れをだんだん明らかにしていくことを目指して動くようにしています。

 一つひとつの施策の成果と、チャネル全体の検証を両立させる

最後に、私自身が感じている変化をまとめて締めくくります。

前職の代理店時代は、一つひとつのクリエイティブの品質や企画の成功が主な関心でした。今は、それだけでなく事業としての検証を進めることも役割になっています。自分がどこまで役割を広げられるかで事業が前に進む、そこにやりがいを感じています。

急成長中のプロダクトでは、スピードも量も維持しながら毎回成果を出すことが求められます。そのために私は、チャネルに長く関わり続け「何が効いて、何が効かないか」をデザイナー自身が一番把握している状態をつくることを意識してきました。

施策ごとに成果を出しながら、同時に顧客層・刺さる訴求・コミュニケーションの流れを少しずつ明らかにしていく。その積み上げが、チームで再現性のある設計につながっていきます。

責任感も、マーケティングチームとの連携も、どれもが自分にとっては刺激的でとても面白いです。少しでもそのやりがいや、急成長するプロダクトでのコミュニケーションデザインの面白さが伝わっていれば良いなと思います。次の事例もお楽しみに。

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