NEWPEACEは、ミツカングループが立ち上げたD2CブランドZENB(ゼンブ) のブランディング及びコミュニケーション戦略を提案。さらに提案に基づく様々な施策を行い、継続的なブランディング支援を行っています。

「ZENB」は、植物を可能な限り丸ごと使った食で、おいしくてカラダにいい、人と社会と地球の健康に貢献する、未来に向けたウェルビーイングな食生活を提案するブランド。 「ZENBヌードル」は、今注目のスーパーフード「黄えんどう豆」100%の豆ヌードル。ほのかな旨みともちっとした食感が特徴で、パスタやラーメン、焼きそばなど、どんな料理にも自由に使え、美味しく食べ続けられる新しい主食。発売3年で1000万食を突破するなど急成長している。 ZENB公式サイト(https://zenb.jp/)より

かつては高齢者向け健康食品としての色合いが強かったブランドは、いかにして若者を中心にしたライフスタイルブランドに変化していったのか。そのブランディングのプロセスを紹介します。

ZENBのブランドの可視化、ライフスタイルを訴求するコミュニケーション戦略を提案した

ZENBは、ミツカンの独自技術によって栄養素が高いにもかかわらず廃棄されてしまう植物の種や皮といった部分まで加工することで、野菜をまるごとおいしく食べることのできる新しいアプローチの商品です。

ブランド立ち上げの背景には、ミツカンの前オーナーがグローバルマーケットを見る中で感じた「これからは地球環境に優しいモノづくりを行っていこう」という強い思いがありました。ZENBはサステナビリティや食材ロス問題に対する思想を持ったブランドなのです。

ヌードルやミール、スープなど豆や野菜の素材を余すことなく使用したさまざまな品目を展開し、新しい食生活を提案する

しかし、NEWPEACEが問い合わせを受けた当時は、ZENBブランドの販売数は伸びているものの、訴求したい世界観をうまく伝えられていませんでした。また、ユーザーもミツカングループ側の理想とズレているという問題意識がありました。

ZENBは素材や製造プロセスにこだわっているからこそ、どうしても販売価格が高くなってしまいます。例えば「ゼンブヌードル」であれば一食あたり198円。一般的なスーパーなどで売られるパスタが一食あたり40〜80円であることを考えると決して安いとは言えません。

手に取ってもらおうとすると、おのずと「所得に余裕のある高齢者にとっての健康食品」になってしまい、ユーザーとのコミュニケーションも、実態はただの健康食品としての方向性で行われていました。

当時のZENBの広告は、高価なサービスを購入できる高齢者向けの健康食品という訴求になっており、ZENBを届けたいターゲットに届いていなかった

しかし、ZENBブランドの持つサステナビリティへの問題意識や、栄養価の高い食材をまるごとおいしく食べれるという価値を理解し、共感してくれる層は当時から確実にいるはずでした。そこで、ZENBに共感を持ってくれるユーザー像や、彼らが何を求め、どのような世界観を好み、コミュニケーションを求めているのかを考えていきました。

ZENBブランドの商品をもとに新しい世界観を打ち立て、ユーザーとのコミュニケーションすらもつくり変えることを提案した

ZENBはすでに確固としたVisual Identityを持っていました。課題は、ブランドの世界観とユーザーとのコミュニケーションのあり方が一致していなかったことです。

NEWPEACEはコミュニケーションの構造から整理し、新たな市場・文化を広げていく「ブランドコミュニケーション」と、目の前の人に商品を買ってもらう「セールスプロモーション」に分けて行うことを提案しました。

ブランドに共感してくれるコアユーザーに情報を届けていく「ブランドコミュニケーション」と、目の前の人に商品を買ってもらう施策を打つ「セールスプロモーション」を分けることを図化した資料

2つの手法は、どちらかが正しくて、どちらかが間違っているというものではありません。両方の考え方を理解し、役割分担して取り扱うことが重要です。

セールスプロモーションとブランドコミュニケーションの考え方の違いを図化した資料

ZENBのようにブランドの世界観を明確にし、広げていくようなことが求められている場合は、コアユーザーを定義した上で、彼らを介してブランドを発信していくことが求められます。 そこでNEWPEACEは、ブランドのスタンスを明確にしつつ、コアユーザーを定義し、彼らにどのようにメッセージを伝えていくのかを組み立て施策を打ち出していきました。

NEWPEACEはブランドとユーザーのコミュニケーションの実践として、まずはコアユーザーを巻き込んだライフスタイルの発信から始めました。

コアユーザーの人物像に対する解像度を高めるために、実在する人を何人も例に挙げながらペルソナのイメージを可視化し、認識を統一していきました。

ブランドの世界観から「こういう人に使って欲しい」と思える実在の人を挙げ、ZENBのコアターゲットのペルソナとして資料にまとめた

ペルソナの一人となったシェフの森枝幹氏は、その後、NEWPEACEからコンタクトを取ってZENBの商品をお送りし、思想やプロダクトに共感していただいています。

これまでのZENBのSNS運用や広告では、商品の機能訴求についての内容がほぼ100%で、誰が商品を愛用しているのか、どんなライフスタイルを支えているブランドなのかを、ユーザーからは見えない状況になっていました。 しかし、それではZENBが作りたい世界観がコアユーザーに伝わらず、共感の輪は広がりません。

この状況に対して、NEWPEACEは実際に積極的にZENBを生活に取り入れているコアユーザーのライフスタイルを、景色として伝えていくことが重要なのではないかと考えました。

ブランドコミュニケーションの方向性をまとめた資料
商品単体ではなく、ZENBの思想を体現したライフスタイルや人々を理想のイメージを発信することを目指す

一つの施策として、ペルソナに設定し、その後直接コミュニケーションを取っていた森枝氏の家を訪問。インタビューを実施しました。

その後も森枝氏にはインスタグラムで生活や料理の様子を掲載したり、ZENBとのレシピコラボを行うなど、コアユーザーとしてさまざまな施策に関わっていただいています。このようにZENBというブランドの持つ思想に共感するコアユーザーと共に、ZENBを取り入れたリアルなライフスタイルを発信しています。

商品単体ではなく、商品を使うコアユーザーの生活の様子を伝えることで、ユーザーにライフスタイルを訴求する発信を行う
ユーザーを巻き込んだコミュニケーション施策として、コアユーザーである森枝さんが考案したレシピを紹介

大企業ではユーザーとの接点が少なく、特にZENBのような実店舗での販売のないブランドでは、実際のコアユーザー(または予備軍)の声を製品開発担当者やマーケティング担当者が直接聴く機会は多くはありません。

そこで、ZENBがブランドとして大事にしてるキーワード「ウェルビーイング」「サステナビリティ」などに高い興味関心があり、生活の中で実践しているユーザーを招き、実際に商品を体験したり直接対話できるミートアップを高頻度で開催しました。

コアユーザーになりうるユーザーを招いた定期開催のミートアップの様子

さらに、ミートアップでZENBの思想に共感してくれたコアユーザーの家を訪問して、ライフスタイルのインタビューを実施。ユーザーの力を借りてブランドが理想とするライフスタイルを発信していきました。

ミートアップをきっかけにコアユーザーのライフスタイルを取材・撮影し、インスタグラムから発信
購入者に送付する冊子やWebサイトにもまとめた (https://zenb.jp/blogs/lifestyle)

またコアユーザーとの接点である街(当時は表参道)で、ZENBに通じる世界観を持つ同じエリアのレストランシェフとコラボし、ZENBを使ったメニューを提供。ZENBの食体験をアップデートしながら、ユーザーとの接点を作っていくなど、コミュニケーションをより立体的なものにしていきました。

表参道エリアの外食店12店と共同でZENBを使ったメニューを開発して体験を提供するイベントを開催 (https://zenb.jp/blogs/pressrelease/2022021001)

さらにミートアップやイベントを通したコアユーザーとの接点から発見したインサイトを抽出し、ZENB発でライフスタイルを提案するキャンペーンも展開しています。 例えば、リモートワークが普及したこともあり、打ち合わせ続きで時間がなく、健康的なランチができていない人のためのランチセットを提案。キャンペーンを実施しました。

「BRAND NEW LUNCH」というコンセプトで、リモートワーク下で健康的なランチができていない方のためのランチキットを展開

また、夜食をテーマにドラマ仕立てでZENBのある生活を伝えるムービーを制作。コアユーザーのライフスタイルが浮かび上がるようなブランド訴求の機会を増やしていきました。

夕飯を食べるタイミングを逃して夜遅くに帰宅した様々な人が、ZENBを使って健康的に自分を満たすというストーリーを1本のムービーにまとめた

ZENBのコアユーザーやそのライフスタイルが可視化され、モデルや食の専門家などの中で支持されるようになり、インスタグラムを中心にSNS上でクチコミが広がっていきました。

商品としての機能以上にブランドとしての世界観を打ち出し、こだわりがある人が選ぶブランドとしてイメージが普及することで、価格というハードルも超えて購入する人がますます増えています。

NEWPEACEによるブランディングによって、ZENBを届けたいユーザーが商品を知り、購入する導線を作ることができた

さらに、ZENBを運営する社員も、どういう人がZENBのコアユーザーで、どんなライフスタイルを送っているのかなど、ユーザーに対する解像度が格段に上がっています。 今では、ZENBの社員がミートアップやSNS企画・運用を自ら行っており、ブランドとして理想的な状態を作ることができています。

NEWPEACEはブランドコミュニケーションを組み立てるときに「誰のためのブランドなのか?」という問いを最も意識しています。 言い換えれば、それはコアユーザーがどういう人で、どんなライフスタイルを送り、どう在りたいと思っているのか。そしてその状況に対して、ブランドはどのようなエンパワーメントをできるのかを明確にすることでもあります。

スマホとSNSが完全に浸透し、ブランドよりも個人の情報発信力の方が高まっている今だからこそ、いかにブランドを語ってほしい人に語ってもらえるか、その設計と企画表現が重要になってきていると感じています。

今後もNEWPEACEは、ブランドを浸透させるための一貫したコミュニケーションに、全力で取り組んでいきます。

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