NEWPEACEは卓球ブランド「VICTAS」のブランドパートナーとして、ブランドリニューアルからリニューアル後のコミュニケーション戦略に至るまでを提案・伴走する一気通貫のブランディング支援を行いました。

「I AM NEXT.」というブランドコンセプトでVIを刷新。日本を代表する新世代のトップ選手をビジュアルに起用することで、明日の勝者になる(「I AM NEXT.」)というVICTASの姿勢を伝える

老舗卓球メーカーによる新ブランドを数ある競合の中で確固たる存在にすべく、NEWPEACEは6年に渡りブランドパートナーとしてVICTASの戦略や商品開発、広告などほぼ全ての領域において支援し、ブランドを育ててきました。NEWPEACEが行なった支援の主な特徴は以下の3つです。

  1. ブランドに物語を宿す

  2. ブランド独自の世界観を作り込む

  3. 商品開発から顧客とのコミュニケーションまでワンストップでブランドを育成する

VICTASは1959年設立の卓球用品の製造・販売を行う老舗メーカー、ヤマト卓球株式会社(現VICTAS株式会社)の卓球ブランドです。ブランドリニューアルを行った2017年時点では、まだ立ち上がったばかりの新規ブランドでした。

なかなか他の卓球ブランドと差別化を図れず悩んでいた当時、VICTASは2021年までの卓球男子日本代表の公式サプライヤーに採用されます。これまでのイメージからの一新を求められていた時に、NEWPEACEがVICTASのブランドパートナーとして支援を始めました。

NEWPEACEはまず、業界や企業の現状の課題やポジショニングなどを整理した上で、ブランドの価値観を言語化し、アイデンティティを明確に定め、ブランドの持つ背景を再考するところから始めます。

NEWPEACEが新しく提案したVICTASのブランドコンセプトは「今日の勝者を破り、明日の勝者になる」というもの。VICTASという名前の由来が「VICTORY+明日」であることから、VICTAS=新世代の卓球選手のためのブランドと位置付け、新しいブランドとしてのストーリーを描いていきました。

掲げたブランドスローガンは「I AM NEXT.」。ロゴは勝者(Victor)の「V」を切り裂く逆三角形のデザインを起用し、描き直したブランドのストーリーをシンプルな言葉とビジュアル表現に込めました。

ビジュアルは僕が同世代で尊敬する同世代で尊敬するアートディレクター、今井祐介氏(電通)に依頼し、以降パートナーとして共にブランド開発を進めています。

VICTASの由来である「VICTORY+明日」から挑戦者を主人公にしたストーリーに設定し直し、ブランドスローガンを明日の勝者(Victor+明日)になるという意味を込めて「I AM NEXT.」とした
新しく提案したロゴのデザインコンセプト

Victor(勝者)のVを切り裂く逆三角形のロゴで世界の予想を裏切って今日の勝者を破り、明日の勝者になるというブランドとしてのストーリーを表現する

ブランドとしてのコンセプトやスローガン、ロゴを通して確固としたストーリーを作り上げ、広告やクリエイティブに落とし込み、NEWPEACEはVICTASというブランドとしての独自の世界観を作り込んでいきました。

ブランド固有の世界観を様々な媒体で徹底的にトンマナを揃えて表現し、VICTASを他のメーカーとは一線を画した卓球ブランドとして打ち出しています。

VICTASのコンセプトを一冊の本にまとめたブランドブックを制作
ブランドスローガン「I AM NEXT.」を全面に打ち出したキービジュアルや動画を展開
世界の予想を「裏切る」挑戦者を表す斜め線が印象的な広告キャンペーンの実施

NEWPEACEはブランド開発を進める中で、VICTASというブランドのストーリーをさらに広めるために、卓球というスポーツの印象をも変えていくアプローチが必要だと考えていました。

そこで、ブランドの世界観を踏まえた商品開発をはじめ、コミュニケーション戦略なども含むあらゆる領域において支援することで、一気通貫の強力なブランド育成を実現しています。

VICTASのブランドリニューアル当時、卓球用品は選手のニーズを重視するあまり、周囲から見られることを意識して開発されていない傾向がありました。

例えば、卓球のユニフォームはどのブランドもほぼ横並びのデザインで、試合が連続しても履き替えずに済むよう黒パンツに、地味か派手な極端なデザインのシャツを組み合わせるラインナップがほとんどでした。

そこでVICTASはこれまでの卓球のユニフォームにはなかった上下ともにデザインされたセットアップのユニフォームを開発。さらにギアやトレーニングウェア、タオルなどトータルでデザインしました。さらにこれらの商品を卓球の日本代表の選手に使用してもらうことで、卓球用品市場に卓球というスポーツの従来のイメージ自体を塗り替えるような新世代の卓球のあり方を提起していきました。

商品こそがブランドを体現するという考えのもとに、NEWPEACEと開発チームが何度も打ち合わせを重ねて商品を作り込んだ

開発した商品を市場に広げるために、NEWPEACEはコミュニケーションにおいてもブランドの世界観を反映した戦略的な伝え方を徹底しています。

商品パッケージではロゴと同じ斜め線を用いてVICTASの世界観が伝わるデザインを採用し、広告訴求においても一貫して「I AM NEXT.」というスローガンを使い続けました。

今後の商品開発やキャンペーン展開においても統一した世界観が伝わるようにVICTASのデザインガイドラインを整備

さらに日本代表を中心に若手トップ選手がVICTASの商品を使用し、遂に東京2020オリンピック卓球混合ダブルス決勝では、水谷隼・伊藤美誠ペアがVICTASのユニフォームを着用して金メダルを獲得しました。日本の選手が卓球で世界最強国である中国を打ち破ったストーリーは、まさに「I AM NEXT.」(明日の勝者になる)というVICTASのスローガンを実現したと言えます。

このような日本代表選手の偉業もあり、VICTASはブランドリニューアル後、世の中に受け入れられているブランドに進化しました。現在は卓球用品では珍しく、ECサイトで直接VICTASのアイテムを購入する指名買いが増えており、またインターハイにおけるVICTASの使用率も3割以上となっています。

VICATSの人気は日本国内に留まりません。世界有数の強豪チームである日本代表が広告塔になることで、韓国やイングランドの代表選手にもVICTASのウェアが採用されるなど、国際的な広がりを見せています。

イギリスの卓球選手・リアム・ピッチフォードを起用した広告

ブランドを作り、育てることは一筋縄ではいきません。よく見られる打ち上げ花火のような「ブランドアイデンティティを刷新したら終わり」というプロジェクトではなく、継続してブランドの世界観を体現した商品を開発し、世の中に向けて発信していく目線が必要です。(現在は6年の伴走期間を経てVICTAS社社内運用に切り替わっています)

NEWPEACEがブランドにとって重要だと常々考えていることは、「誰のためのブランドか?」を決めること。ブランドにとってのコアユーザーを定義し、コアユーザーとともにブランドを育てていく。VICTASの場合は「I AM NEXT.」がその合言葉でした。

NEWPEACEは、ブランドの位置付けから見直し、定義し、その世界観を浸透させていくコミュニケーションまでを伴走する支援プロセスを、今後より一層体系化することで、強力なブランディング育成を実現していきます。

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