DeNAデザイナーの松岡です。DeNAには2017年に新卒入社しました。

今回は2019年入社の藤本とともに進めた、2021年入社の新卒デザイナー育成プロジェクトについてまとめます。新卒デザイナー育成の仕組みや体制づくりで悩まれているデザイナーの方々の力になれると幸いです。

DeNAが本格的にデザイナーの新卒採用を始めたのは、2015年だったそうです。それまではビジネス職の新卒社員が年に1人程度ジョブチェンジという形でデザイン本部にジョインしていました。

2016年に新卒デザイナーを4人受け入れましたが、採用以降の育成の仕組みは“デザイン基礎研修後にOJT”と、個々のデザイナーのキャリアでプランニングしきれておらず、成長しながら働き続けてもらうこと自体がとても難しく感じている状況だったそうです。

そして、2017年に私を含めた3名が新卒デザイナーとして入社しました。育成計画が作られ、1人の新卒メンバーに対して1人のチューターがつき、日頃のサポート役として私たち新卒メンバーを支えてくださいました。

ところがその翌年の2018年は、1人も新卒デザイナーを採用することができませんでした。年度途中に第2新卒メンバーを2人採用し、彼らにもチューターをつけ、前年と同じように育成を進めたようですが、なかなか長期にわたって定着できる環境と育成プログラムを作ることはできていませんでした。

このように、正直つい数年前までデザイン本部の新卒採用・育成体制に決まった形式はなく、担当となったリーダー・メンター・チューター社員それぞれのやり方に委ねられている部分が多くありました。

毎年のように課題が出てきて、それを解決しては次の課題が出てくる。新卒育成の柱としてチューター制度が数年続いたものの、チューターを務める先輩社員からは「日頃の業務に加えて、1人の新卒メンバーに付きっきりで指導したりマインドのケアまでするのは大変」という声が挙がっていたようです。

取り組みたいことやこれまでの課題を落とし込んだ「ざっくりスケジュール」

2019年度、藤本が新卒メンバーとして入社した時期から、今までの反省や学びを活かして、本部として新卒育成に注力してきたように思います。良いと思った施策をトライアル的に試してみて、次年度に引き継ぐ形が始まりました。

そして2020年度から専任チームを置き、新卒育成に特化したプロジェクトが始まりました。その翌年、私がプロジェクトリーダーとしてアサインされたのです。

新卒メンバーの気持ちがわかる「新卒出身者」として、プロジェクトのリーダーにアサイン

前年度の10月、その年の新卒デザイナーのメンターを担当していたメンバーにまずはヒアリングを行いました(メンターの役割について、この後説明します)。新卒デザイナーと一番近くで接していたメンターと直接対話することで、最新の「デザイン本部における新卒育成のリアル」をキャッチアップしたかったのです。

前年度メンターへのヒアリングを通じて、最新の新卒育成状況をキャッチアップ

そして、前年度新卒育成リーダーの藤永から1年間のプロジェクトの良かった点 / 改善したい点を引き継ぎ、2021年度の育成スケジュールを作りました。

1年の育成を通じて、DeNAデザイン本部の次世代エース創出を目指す

新卒メンバーは入社後2週間は職種共通の全体研修を受けます。その後、早速マーケティングデザイン部で案件を進めてもらうことにしました。10月からはサービスデザイン部に配属され、1年を通してDeNAデザイン本部の様々な領域に触れてもらいます。「次世代エースの創出」を育成チームの方針として定めました。

マーケの案件は1,2週間から長くても数ヶ月の期間のものがほとんどで、打席に多く立ち、経験をたくさんしてもらうことを意図してこの順番にしていました。

また、当時はリモートワークでの業務を前提としていたため、オリジナルのZoom背景を作ったり、新卒メンバーの自宅にオススメ本やメッセージカードを送付したり、離れていても「DeNAのデザイン本部の仲間である」と感じてもらえるような工夫をしました。

遊び心を感じる包装で、リモートでもデザイン本部の雰囲気を感じられるように
箱の中には、プレゼントの書籍を数冊入れました
メッセージカードで、新卒メンバーを迎え入れる
入社前にウェルカムスケジュールを配布し、新卒デザイナーが不安なくスタートできるよう工夫しました
初めての顔合わせ会の様子。お揃いのZoom背景も作りました

1年間の新卒育成で軸になったのは「メンター/チューター制度」でした。これは2017年度までの育成で発生した「チューターに負担が偏りすぎる」という課題から生まれたもので、2020年度に制度化されました(2020年から実験的にサポート役を増やしていたそう)。

メンターとチューターの役割の定義

メンターがマインドケアやDeNAで働く上での様々なサポートを行うのに対し、チューターは一緒に業務を進め、スキル向上をサポートします。数年前までは、この役割の両方を1人のチューターが担当していました。

メンターは常に新卒メンバーの味方として、マインド面などをサポートする「親子関係」で、チューターは実務スキルを教えつつ、業務にも責任を持つ「師弟関係」。新卒デザイナーは1年で様々な業務を行い、その業務単位ごとにチューターが変わります。

私たち育成プロジェクトメンバーは、常にメンター/チューターと連携をして、新卒メンバーの最新の状態を把握したうえで、適切なサポートを個人単位で行います。

メンター/チューターは日頃から新卒メンバーと接していて、私たち育成プロジェクトメンバーは定期的に行っている1on1やチェックインで新卒メンバーと直接コミュニケーションを取っていました。

メンターやチューターと連携して、新卒メンバーをサポートするための会議体制

日頃のメンタルケアやサポートに加え、私たち育成チームには「新卒メンバーのスキルアップのために適切な業務にアサインする」役割があります。

4月から9月まではマーケティングデザイン部、10月からサービスデザイン部への配属というのは決めていましたが、その中でどのような業務機会を設置するかは随時決めていました。

チューターや部長陣を巻き込んで、新卒メンバーのアサインを決める。画像は初期のアサイン検討ラフ

日頃の1on1で新卒メンバーがやりたいことや将来歩んでいきたいキャリアを回収し、チューターとの振り返り定例でメンバーの得意な点/成長を期待する点を把握。そのうえで「次はこういうことにチャレンジしてもらおう」ということを1人ひとり決めていました。

アサインを考える際に意識していたことは、「本人のやりたいこと/歩みたいキャリアを尊重すること」です。ただ、それ以前の「いちデザイナーとして最低限必要なスキル」を得てもらうことを重要視していました。

「最低限必要なスキルが習得できる」「本人がやりたいこと/将来歩みたいキャリア」を観点に、最適なアサインを考える

デザイナーの働き方はどんどん幅広くなっていますが(プロダクトマネージャー寄りのデザイナー/エンジニアよりのデザイナー など)、「デザイナー」という肩書である以上「デザイン」ができないと意味がないというか、誰にも話を聞いてもらえなくなってしまうと思います。

キャリアも広がらなくなってしまうと思うので、そうならないためにまずはデザイナーの最低限のスキルを付けてもらうことを一番に考えていました。

「最低限必要なスキルが経験できそうな案件」にアサインするためにまずは育成チームで「1年間で教えること」を洗い出してリスト化しました。スキル面は前年度リーダーの藤永がほぼ洗い出してくれていたのでそれにプラスする形で21年度育成チームメンバーで「マインド面」の項目も追加しました。

身につけてもらいたいスキルのリストは前年度を踏襲
新たに、DeNAのデザイナーとして必要なマインドをリスト化

最初に洗い出しをしていたのでアサイン検討時に「どんな案件をやって欲しいのか」部長陣に具体的にお願いしたり議論をスムーズに行えたように思います。

2021年度の終盤に、2022年度の育成チームが発足します。次年度は同じチームで一緒に活動した藤本がリーダーを務めることになりました。私が受けたのと同様、引き継ぎ、そしてプロジェクトをアップデートしていくために振り返りを行います。

まずは、育成チーム内での振り返り。

育成チーム内の振り返り

次に、振り返りアンケートにて新卒メンバーから育成プロジェクトのフィードバックをいただきました。

振り返りアンケートにて、新卒メンバーから育成プロジェクトのフィードバックを回収

振り返りとフィードバックを終え、私のほうでKeep(次年度も取り組んだほうがよさそうなこと)、Problem(今年度の取り組みの問題点)をまとめて、次年度のリーダーに託しました。

Try(学びを踏まえて次年度挑戦すること)はあえて残さず、次年度のリーダーに任せています。毎年入社するメンバーは皆経歴も性格も違うので、その時のメンバーに合わせた施策にアレンジしてほしいと考えているためです。

次年度のリーダーに聞くと、

  • 日々思ったことを発信しやすくするために、Slackの日報チャンネルの参加者をデザイン本部全員からメンターチューターメンバーのみに変更
  • メンター側で目標設定の雛形を作成し、目標設定のサポートを手厚くする

など、私たちの取り組みをもとに施策がチューニングされているそうです。

私が育成リーダーを務めたのは、新卒育成プロジェクトが正式に発足して2年目のことでした。それまでトライアル的にやっていた育成施策を前年度リーダーの藤永が体制として確立させてくれていたので、プロジェクトは進めやすかったです。

2年目になると「これはやってよかった」「これは注意が必要」というのがある程度見えてきます。そのうち、今後毎年行うようなアクションは私のほうでフレームワーク化しました。

毎年行うことが決まっているアクションはフレームワーク化してやりやすく。画像は4月最初のデザイン本部オンボーディングで使用した資料

毎年決まったアクションをまとめることで工数削減になる。そうすることで生まれた時間を使って、次年度以降のプロジェクトメンバーが、他の創造的な新しい施策にチャレンジしやすくなります。元々、「整理されていないものは整理したい」という気質が私自身強かったこともありますが、いい形で次に引き継げたのではないかと思います。

ちなみにですが、私は新卒育成プロジェクトのリーダーでありつつ、サービスデザイン部デザイナーとしての業務も兼務で行っていました。

工数割合は、8.5割サービスデザイン部、1.5割新卒育成プロジェクトでした。会議体を確立したり、全体の仕組みをうまく整えられたことで、両立することができました。

また、私が2021年度の新卒育成プロジェクトをやり遂げられたのは、これまでデザイン本部の先輩方が取り組んだ、新卒育成の様々なチャレンジがあったおかげでした。トライアンドエラーで多くの施策を試し、その結果多くの学びが溜まっています。

毎年更新する前提で、育成プロジェクトをアップデートしていくスタイルは個人的にとてもいいなと思っていて、デザイン本部全員で未来を作っている感覚を持つことができます。

また、2021年度新卒メンバーも今や2年目。数年後には私と同じように、新たに迎え入れる新卒メンバーを育成していきます。一旦私は新卒育成プロジェクトからは離れましたが、これからもこの流れは続いていってほしいと思います。

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