ログラスでは初となるテレビCMが、2024年4月に公開されました。

広告代理店の方に、テレビCMとキービジュアル (以下、KV) の制作を行っていただき、そのディレクションと、テレビCMやKVをサービスサイトなどすべてのクリエイティブに反映するところはログラス内のデザイナーで担当しています。

実は、今回のテレビCM制作は通常よりもかなりタイトなスケジュールで進められていました。そんな中で、ログラスという複雑なドメインをいかに代理店の方にわかりやすく共有しながら、事業意図に沿ったクリエイティブをつくるのか? その橋渡しとなる役割を私は担っていました。

今後、事業会社のデザイナーとしてテレビCM制作に携わる方のためにも、当時私が担っていた役割についてまとめてみたいと思います。

新たに公開したキービジュアル (KV)

私は、2024年3月ログラスに入社した直後にCM制作プロジェクトに関わり出し、広告代理店の方と一緒に、テレビCM・KV制作のディレクション、KVの全クリエイティブへの反映を行いました。

今回のテレビCM制作プロジェクトの背景をまとめておきます。

私は2024年3月にログラスに6人目のデザイナーとして入社しました。

プロフィール
ログラス6人目の正社員デザイナーとして2024年3月に入社。これまでに制作畑と事業会社の両方を経験してきている

これまでの経歴としては、新卒で広告制作会社に入り、グラフィックデザイナーとして広告制作を担当。退社してからはフリーランスのアートディレクターとして、グラフィックデザインだけではなく、映像制作のディレクションを経験。

その後、複数のスタートアップの1人目デザイナーとしてブランドデザインを始め、初期プロダクトのデザインやデザイン組織の立ち上げを行ってきました。制作畑も事業畑も両方経験しているデザイナーです。

そのような経験もあって、入社して間もなく、一部のプロジェクトメンバーと広告代理店の方とで議論が動き始めていたテレビCM制作プロジェクトに、途中から関わり出すこととなりました。

前述したように、今回のテレビCM制作プロジェクトは、動き出しからテレビCMを公開 / 全てのクリエイティブにKVを反映していくまで、通常よりもかなりタイトなスケジュールで進行していました。

その中で、撮影〜テレビCM・KVの制作〜全クリエイティブへの反映、を行っていきます。

テレビCM制作の流れ、通常よりもかなりタイトなスケジュールの中で、テレビCM/KVの制作・全クリエイティブへの反映・公開までを行う

通常は、大規模な広告制作の現場では代理店と制作会社からなるクリエイティブチームで、制作から各媒体への反映まで行っていただけることが多いと思います。

しかし、今回はスケジュールがタイトであり、かつログラス内部にもデザイナーがいるため、テレビCMとキービジュアルの制作を代理店の方にお願いし、それ以降の各媒体への反映はログラス側で行うこととしていました。

タイトなスケジュールだったので、ログラス側でCM・キービジュアル制作のディレクションと、キービジュアルを各種クリエイティブに反映することに

ただ、ログラスには私が入る以前は、大規模な広告制作の経験があるデザイナーがおらず、どう進めていけば良いかは手探りの状態でした。さらに、代理店の方からしても、かなりタイトなスケジュールで、かつ普段と違う体制というイレギュラーな進め方でした。

そのような状況で、かつ限られた時間の中で、クリエイティブを左右する重要な意思決定をいくつも行う必要がありました。

そのようなタイミングでプロジェクトに入った私は、過去の経験を活かしながら、事業会社であるログラスと、代理店側の間に立って、制作全体のディレクションを行っていくこととなります。

私が今回のディレクションで意識したのは、ログラスの経営戦略と、広告代理店を「橋渡し」することでした。

まず、ログラス側のデザイナーである高瀬さんやmoekaさんと一緒に、ログラスにおけるテレビCM制作のベンチマークや、レギュレーションをまとめます。例えば以下のような内容を整理し、代理店の方に方向性を伝達していきました。

まず、今回のテレビCMクリエイティブにおけるログラスとしてのレギュレーションをまとめた

撮影が終わり、代理店側から出していただいたKVやテレビCMを仮提案いただきます。そのご提案に対するフィードバックの場面でも、一つ一つのクリエイティブとログラスとしての経営戦略をつなげていくようなコミュニケーションを意識していきました。いくつか具体例をまとめてみます。

例えば、ラストカットに対しても、修正提案を行っています。

テレビCMのラストカットで唐沢さんが「これでいこう!」と話している描写について、修正提案を行っていた

元々ラストカットは、唐沢さんが資料に目を落としているカットをご提案いただいていました。ただ、それだと「経営に自信がつく」というLoglassを使ったポジティブな印象を伝えづらいので、目線を上げるようなカットに修正していただくようにコミュニケーションしました。

ラストカットの、Before / After
目線を上げることで、「経営に自信がつく」というLoglassを使った時のポジティブな印象を伝えられるように

また、KVの背景についても、ご提案いただいたものからLoglassのトーンを踏まえて調整を行いました。

最初にいただいたKVは、レギュレーションの中にまとめていた「スマート」「プロフェッショナル」などの要素を踏まえ、暗めなトーンでまとまっていました。ただ、Loglass的には「スマート/プロフェッショナル = 暗めなトーン」というわけではなく、むしろ、経営の未来が明るくなるような明るめなトーンであるべきだと考えました。

このままでは、レギュレーションの言葉だけが独り歩きしてしまいかねない状況だったので、トーンについてレビューさせていただき、結果的により明るめな背景に落ち着いています。

KVの背景のBefore / After
暗めでシリアスなトーンだったところから、より経営状況が良くなることが伝わるよう、ポジティブで明るめなトーンに調整してもらった

他にも、キャッチコピーのカットも、ご提案いただいたものから調整を行っています。

「予実管理が変われば、経営が変わる。」というキャッチコピーのカットも、細かな調整を行った

最初に提案されたカットは、すべて同じカラーとフォントサイズでまとめられたものでした。

ただ、これまでの展示会での検証などを踏まえて、「予実管理」「経営」というワードを目立たせることが重要だろうとログラス側として思っていたので、その意図を代理店側の方に伝えると「短い秒数で言葉を認識できるようにするには、この形がベストでは?」という回答が返ってきます。

実際に、その2単語のみ背景を変えてもらうよう調整すると、文章を認識できなかったので、であればフォントサイズだけを変えましょうということになり、最終的なカットが誕生しました。

キャッチコピーのカットのBefore / After
お客様にとって刺さるキーワードとして「予実管理」「経営」というワードを強調、かつ動画でも目立つような形に調整している

このように、一つ一つのクリエイティブと、ログラスとしての経営戦略をつなげていくようなコミュニケーションを丁寧に行っていくことで、ログラスが戦略として意識していることを確実に代理店の方に伝えられ、表現に落とし込むことができました。

もう一つ意識していたのは、内部の議論も空中戦にさせず、意思決定まで促していくことでした。

ログラスではこれまでテレビCM制作をしたことはなく、誰もお作法がわかっていない状況でした。なので、代理店の方から出していただいたアウトプットを見て「なんとなく違う気がするけど..」と思っても、そこから発展せず議論で終わってしまうことが度々ありました。

テレビCMやKVの最終的な意思決定をするのは、あくまで事業会社側の自分たちです。オーナーシップを持ってログラス側で「こうしていきたい」と伝えられるように、違和感をそのままにしないことが必要でした。

そこで、いただいた仮案に加える形で、私からラフにパターンを出して、具体のクリエイティブのレベルで内部の議論を行えるようにしていきました。

例えば、テレビCMの冒頭カットの絵についても、私からいくつかパターンを提示しながら決めていっています。

テレビCMの冒頭のカットの修正において、内部で議論を進めやすくするためのパターン出しを行った

今は、冒頭のカットには「社長室」というテロップが入っていますが、初期にいただいた提案では何もテロップは入っていませんでした。

ただ「これで経営管理の話だとパッと伝わるんだっけ?」ということが議題にあがったので、「社長室」というテロップを入れたプロトタイプを、私が簡易につくってみて共有してみました。

当初の提案では何もテロップが入れられていなかったが、内部の議論を進めやすくするために、テロップを入れたパターンを自分でつくってみた

そこで、「テロップを入れた方が、何の場面の話か分かりやすい」ということが分かったので、他にも【ロゴ + 社長 + 経営企画】と順に表示して、より情報量をふやしたプロトタイプも作成して比較してみます。

テロップのパターンを検証。動画でコマ送りにしてみて、文字の可読率が高いかどうかについても検証した

ただ、人ごとにテロップを入れるパターンは、動画でも回してみたところ速すぎて各カットの文字が読めないことが分かったので、結局元の「社長室」というテロップのみの形で代理店の方にも提示しました。

このテロップの案は現在のテレビCMにも採用されています。代理店の方にすべてのクリエイティブを任せたり、言葉だけで議論するよりも、このように内部のデザイナーがサクッとプロトタイプをつくって議論を進めることで、素早く意思決定を促すことができます。

通常よりもかなりタイトなスケジュールだからこその動きでしたが、結果的に短期間でテレビCM制作をFIXさせることにも貢献できました。

最後に意識していたのは、自分たちの方が鮮明なイメージがある場合、「つくりたい絵を、自分たちから持っていく」ことです。

今回、展示会ブースで使うために、60秒版の映像も作成していました。こちらには、テレビCM用の映像に加えて、Loglassの機能を説明するカットも入っています。

展示会用に作成した60秒版の映像。Loglassの機能について説明するカットも含まれている

ただ、そもそも今回は非常にタイトなスケジュールで制作を進めています。Loglassという複雑なドメインのサービスの具体的な機能について、代理店側で正確にキャッチアップするのは、期間的な問題で無理があるかもしれないと予想していました。

むしろ、自分たちが一番Loglassというプロダクトの良さは分かっているはずなので、代理店の方にとってもキャッチアップがしやすくなるように、絵コンテの原案をこちらから持っていくことにしました。 

Loglassの機能について説明するカットの絵コンテを作成
タイトなスケジュールで、より正確にLoglassの機能についてキャッチアップできるように、こちらから絵コンテを提示した

私は、過去に制作会社で大規模な広告の制作を行っていたこともあり、どのようなアウトプットを出せば、早くプロジェクトが前に進むのかを分かっていました。

かつ、前職ではスタートアップで会計ドメインのサービスを提供していたので、それらのバックグラウンドから、「Loglassのここが良い」という部分を代理店の方よりも早くキャッチアップすることができました。

これまで同様に、プロジェクトメンバーにも、この方向で良いかを確認しながら進めていき、内部的には良さそうとなったので、代理店の方に共有しました。

結果的に、無事に期間内に60秒カットもつくることができました。

結果として、2024年4月に、ログラスとして初となるCMが無事公開されました。

同時に、KVをすべてのクリエイティブに反映することもできています。

タイトな制作期間で、CMの公開、KVの全クリエイティブへの反映まで完遂できた

全ての結果を具体的に書くことはまだできないのですが、すでに良い効果が生まれ始めています。例えば、展示会や商談の場面でお客様の食い付きが格段に良くなっていたりと、クリエイティブがちゃんと意図通り届いている実感を持てています。

ログラス社内のメンバーや、代理店の方からも、自分が関わっていたことで円滑にプロジェクトを進めることができたと嬉しい言葉をいただくことができました。

私は、インハウスデザイナーの責任とは “事業的なアウトカムを生むこと” ではないかと思っています。

デザイナーとしてアウトプットに責任を持つのは当たり前。生み出したアウトプットがもたらすアウトカムにこそ責任を持って、仲間と職種を超えて共闘しながらデザインすることが大事だと考えています。

そのためにも、今回のように最終的なアウトプットだけでなく、その前段から整理していくいわば「デザインのデザイン」のような動きを大切にしています。

ログラスのBXデザイナーとして、特に視覚的なところに責任を持っているからこそ、オーナーシップを持って、複雑な論点を素早く視覚化して意思決定を進めていく。さらには、事業の狙いやドメインの解像度を持って、制作の現場に立つ。

そのような動きを通して、アウトカムをより早く生んでいこうとしています。

ログラスに入って1週間でこのような機会を任せてもらえたのは私にとっても大きな経験でした。今後もLoglassのブランドをつくり、より大きなアウトカムに繋げていきます。

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