結婚準備クチコミ情報サイト「Wedding Park」で2025年9月に生成AIを導入した新機能「AIアシスタント」をリリース。そこから約5ヶ月の間に立て続けに新機能を公開してきました。
これらの機能は自由で多様になっていく社会で、カップルが「自分たちらしい結婚式」を選択するための “こだわり (基準) ” を育むことをサポートする機能です。
今回の機能をつくる上では「ユーザーにとって役立つものになっているか?」という視点を常に持つ必要がありました。一方で、初めてに近い生成AI機能の導入ということもあり、開発当初は技術検証に重きを置いてプロジェクトが進んでいました。
私は開発手前のフェーズでデザイナーとしてアサインされてから、ユーザーのインサイトをもとにチームの判断をつくることに注力しました。最終的な結果として、AIアシスタント機能を使ってくれた方から1.5倍以上のコンバージョンがすでに生まれています。
プロダクト開発においては「誰が」「どの段階で」「どう使って」「どう行動してもらいたいのか」というユーザー視点の判断基準をチーム全員が持つことが大切です。それはAIを活用した機能開発であっても同じだと実感できたプロジェクトでした。
Wedding Parkは20年もの間、長くクチコミサイトを運営してきた経験から、時代に沿ったサイトのアップデートを大事にしてきました。これまでもおおむね2年に1回のペースで機能全体の見直しをしており、今回のAIアシスタント機能開発もその一貫です。
9度目となる今回のバージョンアップ全体のコンセプトは、価値観が多様化していく時代でもカップルと式場それぞれが“自分たちらしさ”を実現していけるようにという想いを込めて「らしさの巡り逢い」というテーマが掲げられています。このコンセプトもたくさんのユーザーインタビューを経て、現代のカップルや結婚式場のインサイトに沿って決められたものです。
私がデザイナーとしてこのプロジェクトに入った時には、すでに数ヶ月の探索期間を経て技術検証やユーザーの要望は分かっており、4つのAIアシスタント機能の概要や機能も決まっていました。
ここからリリースに向けて具体的に仕様やスケジュールを確定させていくタイミングで、私は「もう一度、これらの機能がどうユーザーに使われるのかをまとめ直しませんか?」ということを提案しました。
はじめに違和感を持ったのは、私が各機能の体験や画面をデザインしていくためにプロジェクトに参加した最初のmtgです。
私は事前に「何をやるかは決まっていて、あとはデザインに落とす段階」という話を受けていましたが、実際は技術起点でやりたいことが話されていて「誰にどういう狙いで届けるか」ということは決まりきっていないように感じました。
このように技術起点、やれそうなこと起点で会話がされていたのは、技術検証を経てチームとしても「あれもできる」「これもできる」と期待が膨らんでいき、無意識のうちにユーザーの視点が薄くなってしまっていたからだったと思います。
技術的に革新的なことができるようになったとしても、結局その機能をカップルが使ってくれて、価値を感じてくれなければ意味がなくなってしまいます。
開発手前の詰めのタイミングだからこそ改めて「技術の先に、ユーザーは見えているか」ということを強くチームで問い直して、ブレない体験をつくらないといけないだろうと考えていました。
Wedding Parkというサービスは、カップル (ユーザー) の方々がいるからこそ、結婚式場 (クライアント) の情報も集まるプラットフォームです。
私たちはどんな時でも、カップルと式場の双方の価値になる機能をつくることで成長し続けることができます。もっと言うと、どちらかのインサイトが考慮されていないならストップをかけても良いとも思います。
今回のAIアシスタントは、特にユーザーへの価値提供を前提とした機能なので、徹底的にユーザーファーストにこだわるべきだと考えていました。
検討時点で新しい技術を積極的に検証することにはもちろん価値があります。むしろできることが沢山あるからこそ、より濃度高い収束が可能になります。
一方で、リリースに向けて収束させるタイミングではユーザー目線に立ち返って判断できるようにすべきで、そのためにも “ユーザーファーストな基準” をチームで共有しておく必要があると考えています。
今回のプロジェクトでは、3つのタイミングでユーザーインサイトを軸にした基準をつくり、それを使ってチームで意思決定を進めていきました。ユーザー視点で判断した「仕様決定」「デザイン決定」「リリース後の改善案決定」のプロセスをそれぞれまとめます。
技術検証の段階で、チームではすでに何度もユーザーインタビューを行っていました。なので私は、集めたユーザーの声をチームで扱える判断基準としてまとめ直していきました。
まず、過去のユーザーインタビューやアンケートのデータを見返しつつ私の整理も兼ねて「カップルの方が結婚式場を決めるまでのジャーニー」を簡易なステップでまとめました。
この簡易なジャーニーを見せながら「今はまだジャーニーに沿って機能を考えられていないのでは?」「このままだと、もし良い機能ができたとしても離脱されてしまうかも」ということを伝えて課題感に対して共感を得ていきました。
そこから、より詳細なペルソナやジャーニーマップをPM、ディレクター、デザイナーでのワークショップで整理しました。各人にペルソナとジャーニーを事前に考えてきてもらい、mtgですり合わせています。
このタイミングで基準を固めておかなければ、後に手戻りが起こってしまうリスクもあります。なので、リリースが迫っている中でも時間を取ってPMやディレクターとすり合わせをしっかり行うようにしました。
すり合わせの結果として、今回のAIアシスタント機能群は「まだこだわりを持ち切れていないカップル = “こだわり迷子層”」に向けて届けようと決めることができました。
こだわり迷子層の特徴は以下のようなものがあります。
本当は自分たちらしい結婚式を挙げたい
情報があふれすぎて何を基準に探せばいいかわからず、とりあえずフェアに行く
なんとなくしっくり来ないけど、その理由がわからない…
このような方たちが、AIアシスタントによって自分たちのこだわりに気付き、式場を探す判断基準が生まれていくと式場を決めるスピードや納得感も増していくはずです。結婚式場側としても、こだわりを言語化できているカップルがフェアなどに来てくれるので、より良い提案もしやすくなります。
これはAIアシスタントだからこそできる価値提供と考えて、このターゲットにフォーカスすることにしました。
その後、4つのAIアシスタント機能の体験やデザインを考えていきます。
まず今回つくる4つの機能がジャーニーのどこに対応するのかを並べて整理しました。機能から考えるのではなく、「式場探し」という体験のあるべき流れをジャーニーで考え、その中で各機能の役割を考えるような思考の流れを取っています。
結論として4つのAIアシスタント機能はそれぞれ、式場を探し始めたカップルの検討初期、中期、後期、で必要とされるタイミングが違うことが分かりました。これらの位置付けを踏まえて各機能の体験を設計します。
それぞれの機能ごとにリリース日は違っていたのですが、すべての機能のデザインは同時につくりました。これは、4つの機能がユーザーフェーズごとに順番に使われる想定だったので、全体の体験から情報量・粒度・内容を調整したかったからです。
4つの機能が順番に使われてこそ価値発揮ができるように。また、フェーズごとにユーザーが欲しいと思っているちょうど良い粒度の情報を伝えて、次のフェーズに導けるように。ということを意識していました。
例えば「フォト検索」の体験は以下のような流れになっています。
ジャーニーとしては検討初期フェーズに対応する機能なので、こだわりがまだ育っていなくても雰囲気で選べるように、情報はあまり出さずにパッと見で分かるような写真中心にコミュニケーションしています。
逆に検討後期フェーズに対応する「会場比較」や「クチコミ要約」の体験は、「フォト検索」と比べて情報量を多くしています。
この機能を使う頃には、すでに良さそうな式場候補を見つけていてこだわりの軸もある程度育ってきているはずなので、比較検討をしっかり行えるようにする方が価値になると考えています。
2025年9月に初回の「会場比較」機能が公開され、その後「予算マッチ」「クチコミ要約」「フォト探索」のAIアシスタント機能が立て続けにリリースされていきました。
一通りの機能リリースを終えたタイミングで間を空けずに、これからの改善施策の優先度の目線を合わせるための合宿を開催しました。
リリース後も、ユーザーの反応を回収する中で「できそうなこと」や「やれば数値が伸ばせそうなこと」がたくさん見えてきます。一方で、改善施策を打てる数にも限りがある中で、本来はチーム全員がプロジェクトの目標につながる施策だけやっている状態であるべきだと考えていました。
なので、改善案を考える時にもチーム全員が「こだわりを育てる」という当初のコンセプトに向けて動けるように、あらかじめユーザー目線で基準をつくっておくようなアプローチをしています。
まず、合宿前に事前に課題整理をしておきます。
リリース前につくったジャーニーに沿って、今のAIアシスタントの体験の課題点を並べます。合わせて、過去のユーザーの発言から蓄積していたインサイトを根拠として紐付けておきました。
さらに各機能の狙いを改めて言語化します。利用データをもとに各機能で起こすべき行動を決め直し、その狙いに合わせて改善策を絞りました。
例えば「クチコミ要約」は、リリース当初は検討後期に使われるものだと考えていたのですが、実は初期の検討時点でもクチコミを見ている方は多いことが分かったので、2つの目的で訴求していくことを決めています。
ここまでで定性/定量の面から課題や施策案を絞れている状態になります。あとはその優先度を決めるために、各機能ごとに「導線」「中身」「機能回遊」のどこに課題があるかを洗い出しました。
基本的には、そもそも流入がなければ改善もしづらいため、まずは利用率を課題にし、そこが解決したら中身・機能回遊…と順に改善していくこととして、改善の優先度が決まりました。 (合宿の後にAIアシスタントを使った人のCV率は使ってない場合の1.5倍という良い数値が出たので、あとはたくさん流入してもらうのが大事だと考えてこの優先度に確信を持っています。)
2025年9月から2026年1月までに、「ウエクリ11.0」のバージョンアップの一環として、4つのAIアシスタント機能が無事にリリースされました。
これらの機能群はまだリリース直後でありつつ、すでに大きな効果が出始めています。
4つのAIアシスタント機能がリリースされたタイミングで、これらを活用した場合と活用しなかった場合のCV率 (Wedding Parkから式場サイトへの訪問率) を測定すると、1.5倍の効果が生まれていました。
これからAIアシスタントへの流入を高める改善を進めることで、カップル、式場の両方の「らしさ」が重なるスピードをどんどん加速していけるだろうと思っています。
また、リリース前後で徹底してチームの基準を揃えることにこだわったことで、プロジェクトメンバーの目線がかなり揃ってきています。
その後行った「ウエクリ11.0」の未来を考えるワークショップでは、どのメンバーもほとんど同じような未来像を書き込んでくれていて、強く共通認識を持てていることを実感しました👏
今、結婚や結婚式というあり方が見直されています。私たちウエディングパークはこの時代だからこその新しい提案をしていくことが求められています。
今回の機能も「トレンドだからAIを使おう」「技術的にやれそうだからやろう」という姿勢でつくられたものではありません。変化の多い時代だからこそ「自分らしい結婚式を挙げたい」というカップルの声に応えるためには、こだわりを育むためのサポートが必要で、それを叶えられるのがAIアシスタント機能だと捉えています。
このようなユーザー目線の設計思想をずっと維持するために、常にユーザー視点に立ち返ることができる “基準” をチームに強く浸透させないといけないのだと思っています。
デザイナーは、チームで一番ユーザーの体験や行動に目を向けやすいポジションだと思います。今回のようにユーザーインサイトをもとに意思決定を進めるプロジェクトの進め方を、ウエディングパークのデザイナーとして続けていきます。