日本最大級の結婚準備クチコミ情報サイト「Wedding Park」で、結婚式場やスタッフの想いを知ることができる「想い・メッセージページ」のリニューアルを行いました。
これはユーザー調査から得られた「式場の中の人の想いを知ることで好感や共感が生まれる」という定性的なインサイトからつくったページでしたが、リリース当初はCVRの変化は生まれていたもののまだまだ数値向上の余地が残っている状況でした。
このページの指標改善を任された私たちプロジェクトメンバーは
ありたい姿ワーク
ユーザーの気持ち予測ワーク
定性状態をもとに定量目標の再設定
理想のプロトタイピング
コンテンツの調整/リニューアル
といった、チーム全体で「そもそも何をつくるか」をすり合わせるプロセスを取り入れました。
結果として指標としていたエンゲージメント時間は1.2倍に、想い・メッセージページ経由でのコンバージョン(以下CV) は1.1倍になり、カップルや式場の方に多く活用されるページへとアップデートすることができました。
プロダクトや機能がどこまで検証されているのか?を見極め、必要であれば施策・ソリューションの手前の前提から揃えていくディレクションの進め方についてまとめます。
「想い・メッセージページ」は、結婚式場が「スタッフ一人ひとりの想い」や「式場の持つ思い出のストーリー」などを掲載できるページです。
これは式場を探しているカップルの方にインタビューを行う中で「どのような想いで運営しているかを知ることができると好感が持てる」というインサイトを発見したことがきっかけで、式場の "ハード情報" だけでなく中で働く人のいわば "ハート情報" を伝えるために2024年に新設された機能です。
ただこのページはリリースから半年近く経った時点でもまだ数値的に伸ばす余地が大きくありました。そこで2024年7月にディレクター・デザイナー・エンジニアの3名 (全員が2024年4月に入社したばかり) がアサインされて、想い・メッセージページの改善に取り組み始めました。
プロジェクトが始まってから最初の2ヶ月は、もともと指標となっていた閲覧数を高める目的でいくつか施策を打っていました。この時点では閲覧数が増えさえすれば想い・メッセージページ経由でのCVや行動が起こると思っていたためです。
しかし閲覧数が増えてもその後のCV向上であったり「式場の想いが決め手になった」というカップルの声はあまり増えず、プロジェクトメンバーで次の施策について話しても「本当にうまくいくのか?」とアイデアに詰まってしまう状態になっていました。
ここで初めて「たとえ閲覧されたとしても、今ユーザーに使われていないのに、このページで果たして共感と好感が生まれるのか?」という疑問が生まれました。
そこで、「見られるように改善する=閲覧数を上げる」という考えを見直し、「読まれるページ=共感と好感を生むページ」にシフトするためにプロジェクト全体の進め方から見直し始めます。
ここで発想を転換して「想いが伝わると共感と好感が生まれ、式場への信頼につながる」というインサイトがあったとしても、プロダクトに落とし込むとなると他にも未検証な部分が多くあり、それらを固めなければユーザーの行動は生まれないというスタンスを取るようにしました。
例えば
想いが伝わったらユーザーはどういう行動を取るのか?
どうすれば好感・共感は生まれるのか?
どういう情報をどういう優先度で並べるべきか?
などの前提からチームの認識が揃っていないことに気付き、これを固めるためのワークショップをいくつか行い「想い・メッセージページ」のあるべき姿を固めていきました。
まずはじめに「想い」が伝わった先にどのような理想につながるのかをプロジェクトメンバーで言語化する「ありたい姿ワーク」を行いました。
このワークを行ったのは、閲覧数改善という目標に向けて動いていたもののそれが何に繋がっているのかがチーム内で不透明になっていたからです。
理想像がないまま動いていると「数値がどうなっているか?」というところでしか会話が生まれず、数値が伸びなければ次第にネガティブな雰囲気が生まれてしまいます。
逆にプロジェクトメンバーで理想状態が強く共有されていれば、一つの施策がうまくいかなくても「次はこうしよう」というアイデアが自然と生まれます。まずはこの理想の共有から取り組むべきだと考えました。
ありたい姿ワークでは、ウエディングパーク社としてのビジョンから逆算して「想いが伝わるとどういう喜びが生まれるか?」という中期的な理想をいくつかの質問から言語化していきました。
想い・メッセージページというページはあくまで想いを伝えるための一つの方法なので、より範囲を広げてウエディングパークという組織が目指す状態から言語化をすることでよりブレない理想となります。
ここで「式場の想いがカップルの背中を押す社会に」という目指す場所が言語化され、これを事業責任者に共有したところ「この方向で進めてみよう」と合意でき、ここからのリニューアルの指針として進めていきました。
ありたい姿ワークで目指す方向が固まってくると、チームから自然と「どうすればこのような理想に到達するだろう?」「本当に今の想い・メッセージページは良い体験になっているのか?」という会話が生まれるようになってきました。
そこで「想いが伝わると共感と好感が生まれ、式場への信頼につながる」というインサイトを行動ベースで掘り下げていくために「ユーザーの気持ち予測ワーク」をチームで行いました。
これは式場を探すユーザーがどのような行動・心理の流れで想いに触れ、共感し、問い合わせを行うのかをジャーニー形式でまとめていくワークショップです。
ここで主に論点になったのは「共感・好感とは何か?」「どのような順序で感じるものなのか?」ということでした。
例えば「式場のハード情報や写真などで直感的に好きと感じた後にスタッフ一人ひとりのQ&Aを見るとさらに深い好感や信頼につながる」などユースケースをもとに議論する中で
入り口 (ハードや写真): 直感的に好感を持つ、なんとなく好きと感じる
中盤 (式場全体の想い): 自分たちの価値基準と近い、深く共感する
終盤 (スタッフの人柄と想い): 式場をつくりあげている中の人にまで共感、信頼が生まれる
という順序で式場への信頼は高まるのではないかという仮説が立ちました。
このように理想像を固めた後に、定性的な理想像をもとに想い・メッセージページで伸ばす定量指標を決め直しました。
最終的には問い合わせや式場の成約率が高まることがゴールになりますが、そのための指標として「閲覧数」よりも「エンゲージメント時間 (読み込む時間)」を追いかけることとしています。
本当に想いに共感・好感を持ったかどうかを確かめるためには、ただ想い・メッセージページに流入するだけでなくてじっくりコンテンツを読み込んでもらえるかを検証しなければいけないと考えたためです。
ここで当初の閲覧数から指標を変えられたことで、ここからのリニューアルでは導線改善ではなくコンテンツ自体の改修をメインに取り組むことが意思決定できました。
ここまでに固めた設計や指標をもとに現在の想い・メッセージページのコンテンツの何が問題なのかを確かめていきます。
当時の想い・メッセージページは「スタッフ一人ひとりの想いが伝わる質問」がメインとなっていて、入り口や中盤の共感を生むコンテンツが不足しているように感じられました。
そこで、もっと共感を生むためにはどういうコンテンツを入れるべきか?を決めるためにディレクター・デザイナー・エンジニアそれぞれの観点を持ち寄って理想のページのプロトタイピングをしました。
ここではデザイナーだけで画面案を持ってくるのではなく、チーム全員でスクショでも良いのでFigma上に具体的なアイデアを持ち寄るようにしています。
1人だけが画面案をつくるのではチームでものづくりをしている感覚が薄れてしまいます。あくまで全員で理想に対して具体的なアイデアを出し合うプロセスを徹底することでこの後の認識も揃うように意識しました。
理想のプロトタイプをチーム全員で発散したあとにデザイナーが持ち帰り、開発視点(fromエンジニア)・クライアント視点(fromディレクター)・ユーザー視点(fromデザイナー) の3つの視点を統合してすべての理想が叶うポイントを見極めて画面の精緻化をしました。
具体的には入り口で式場全体に共感が高まり、最終的にスタッフ一人ひとりに対しての深い信頼が起こっていくように、序盤に「式場の写真やストーリー」を載せ、徐々に「スタッフ一人ひとりの想い」「スタッフへの質問」と信頼が増していく設計にしています。
ここで意識したのは「式場の負担を下げるために、新規の情報は入れない」ことです。Wedding Parkの場合はコンテンツを式場から回収する必要があるので、新規の情報を集めるとなると営業メンバーや式場の方の負荷がかかってしまいます。
なので今回はすでに過去に式場からいただいている情報を整理して、コンテンツの見せ方や並べ方を工夫しながら想い・メッセージページの構成を組み立て直しました。
このようなクライアント目線での視点も取り入れられたのは、最初からディレクターも含むチーム全員で複数の視点が抜け漏れないようにプロジェクトを進めてこれたからこそだと思います。
このようなプロセスで想い・メッセージページのリニューアルが完了。約3ヶ月にわたって徐々にリリースを行いました。
リリース後はこれまでと比較して意図通りエンゲージメント時間の高まりが観測できています。さらにその後の想い・メッセージページ経由でのCVRについても向上していてリニューアルの成果が数値的にも生まれました。
ユーザーの行動が生まれるようになったことやあるべき姿を言語化したことで、クライアントである結婚式場の協力も引き出しやすくなりました。
今回定めたコンセプトを基準として式場とコミュニケーションを取り続けた結果として、想い・メッセージページのコンテンツ更新を積極的に行う式場も生まれています。
チームとしても大きな変化があったのが今回のリニューアルプロセスでした。
あるべき姿の認識を揃えながら進められたことで、プロセス全体としてもこれまでのリニューアルの工程と比べて1/2の工数に削減できました。
また今回つくった「想いを伝える」というコンセプトは今も活用されていて、その後のリニューアルでも変わらず指針となっています。
例えば、今回定めたありたい姿 (定性状態) をさらに具体化して達成していくために、想い・メッセージページの範囲を超えてチームで理想状態までのロードマップを策定し、継続的な改善の指針にするような活用がされています。
今回のプロセスで学んだことは「何をつくるか」という前提を揃える重要性でした。
目先の数値改善ばかりに目が向いているチームでは「数値が高まった」「下がった」という話が中心になり、その先に何につながるのかが見えない暗中模索な状態になってしまいます。
これでは施策をいくら打ってもユーザーの行動につながるかは不確かですし、何より関わっているメンバー自身が楽しく働けません。
今やっている施策が何につながるのか?ということは、事業責任者に決めてもらわなくても自分たちで決めていくべきことだと思います。施策を超えてプロダクトやその先の理想にまで目を向けること。本当にユーザーに行動してもらうために徹底的に掘り下げること。基本的なことですが、これらを意識して毎回プロジェクトを進めればブレない強いチームができるはずです。
ウエディングパークのメンバーが理想を持ってものづくりに取り組めるようなディレクションの進め方を、これからも全社に浸透していければと思います。