MIXI デザイン本部 プロダクトデザイン室 プロダクト推進グループは、UI/UXのスペシャリスト集団として、MIXIが展開する様々なプロダクトの立ち上げ・運用を一気通貫で支援しています。
MIXIとWOWOWが共同開発し、2024年2月9日にリリースした予想バトルで熱狂するスポーツSNS「FANUP」では、プロダクト推進グループを中心に、サービスとして目指す像の設計から、ロゴ・UI/UXをデザインすると共に、プロダクトデザイン室の他チームに協力してもらい、サービスサイト・広告媒体の制作を行いました。
今回はFANUPを題材として、どのようにインハウスのデザイン組織として事業部と連携し、プロダクトの立ち上げを支援していったかをまとめたいと思います。
FANUPは友達と一緒にスポーツ勝敗予想を楽しむことができるスポーツSNSです。これまで主に個人で楽しんでいた「UEFAチャンピオンズリーグ」「UEFAヨーロッパリーグ」において、観戦しているファン同士を「FANUP」でつなげることで、仲間とより深く熱く情報・感情の共有ができる場を提供し、サッカー観戦の新しい楽しみ方を提案するサービスとして誕生しました。
FANUPはMIXIのソーシャルベッティング事業本部が中心となって企画しており、プロダクトの構想や機能実装が先行して進んでいる段階で、デザイン本部に支援依頼をもらいました。
スポーツファン同士での新しい予想体験や、コミュニティの実現を検証するという目的は明確になっている一方、プロダクトの体験設計や、そのために必要なプロセス・アウトプットの設計などはこれからというタイミングであり、UI/UXの知見を活かして現場をリードしてほしいという期待がありました。
また、実装期間を踏まえるとデザインの制作にかけられる期間も限られていた(約3ヶ月程)ため、サービスとしてあるべき姿の設定、そのために必要な成果物や体制の構築、UIからプロモーションに至るまでの制作を、事業部と密接に連携しながら短期集中で進める必要がありました。
ここからは実際にFANUPの立ち上げを支援するにあたって、具体的に行ったことや意識していた点をまとめていきます。
まずはじめに、FANUPについて理解を深めるためにヒアリングや資料でのインプットを行い、プロダクト推進グループとして担う役割や、体制をすり合わせていきました。
具体的なチーム体制については、単にメンバーのリソース状況を見て決めるのではなく、FANUPというサービスの特性や、メンバーの強み・意思、スピード感を意図した最適な体制になるよう心がけました。
プロダクト推進グループの中でも、グラフィックが得意な人、UIが得意な人、ディレクションが得意な人などの専門性の違いがありますし、デザイン本部全体で見るとさらに多様な人材が揃っています。そのため、FANUPとして目指すことを実現するために最適なアサイン・役割は何かと考えていった結果、このような体制がベストだと判断しました。
さらに、リリースまでのグランドスケジュールを設計し、事業部メンバーと共有することで連携を強め、スピーディーに進められるようにしました。
初期段階でこのような最適な体制やプロセスを描いていくことで、私達がFANUPの一員としてデザインをリードする人達だという認識を持ってもらい、安心して任せて良いんだと感じられるようにしたいという思いもありました。
体制や大まかなプロセスが定まった後は、コンセプトの設定からブランディング、UI/UX、サイトや広告媒体の制作までを行っていきました。
具体的に取り組んだことについて、ピックアップしながらまとめていきます。
制作に着手する前に、FANUPというサービスとしてのあるべき姿を探っていきました。
ミッションや提供価値、ブランドパーソナリティなどの指針を、職能関係なく意見を出し合って固めていくことで、チーム全体の目線を揃え、その後の過程での判断基準になることを目的としています。
最終的に「熱狂が、共鳴する。」というコンセプトに落とし込み、これをベースに次のフェーズへと進んでいきました。
視覚的にサービスのコンセプトや特徴を伝え、ブランドの認知とイメージ形成に貢献する要素として、ブランディング・ロゴを設計していきました。
特に意識していた点は、ロゴの役割や機能、判断軸まで含めてチームに共有し、共通認識をつくることです。これによって「単にビジュアルが良いか」だけでなく「FANUPが目指す像に対して良いか」といったように、意思決定の確度を高められるようにしました。
制作段階では、FANUPというネーミングや、予想体験というサービスの性質、熱狂が共鳴していくというコンセプトなど、さまざまな切り口から世界観を可視化していきました。
結果的に、応援の旗と伝播するエネルギー、Fanの気持ちや熱量がアップする様を浮き上がるFとして表現したロゴに意思決定し、各種クリエイティブへ展開していきました。
ブランディング・ロゴと同時並行で、ワイヤーフレームからサービス体験を可視化していきました。まだチーム全員が見えていないであろうサービスの全体像を素早く可視化することで、プロダクト開発の初速を高めることに貢献しています。
また、FANUPは友達と一緒にリアルタイムでスポーツ勝敗予想を楽しめるという新感覚のサービスであるため、新しい体験を自然と受け入れてもらうための情報設計やインタラクションもチームで磨き上げていきました。
さらに、Figmaを活用しながらデザインシステムも構築することで、開発速度の向上や、コラボレーションのしやすさにも繋げていきました。
また、プロダクトデザイン室が培ってきたプロモーション領域のサイト制作のノウハウを活かし、FANUPの魅力を伝え、サービス利用へつながるためのサイトの情報設計から実装までを行いました。
依頼をいただいた時点では「プロモーション用のサイトも必要だろう」という粒度でしたが、目的の整理から伴走し、サイト制作の専門性が高いメンバーにも柔軟に協力してもらいながら制作しています。
さらに、マーケティング活動に必要な各種バナーやポスターなども、ターゲットや訴求の設計から一括して制作しました。
また、ターゲットユーザーに対する訴求力を視覚的に高めるため、各チームの選手写真と大胆なキャッチコピーを組み合わせたメインビジュアルも作成しています。
このようなプロセスを経て、2024年2月9日にFANUPをリリースしました。友達と一緒にスポーツ勝敗予想を楽しむという新体験のサービスではありますが、実際の試合に合わせてファン同士で試合展開などで盛り上がる行動が生まれており、新しい形のエンターテインメントを提供できていると感じています。
UEFAチャンピオンズリーグのシーズンが終了する6月までの期間も、データを集めていきながらより楽しく盛り上がってもらえるように改善を進めていきたいと思っています。
また、今回のプロダクト立ち上げ支援を通じて、事業部や開発メンバーから以下のような声もいただいています。
私達はデザインという専門性に軸足を置いていますが、根本的に求められる振る舞いは、事業の成長やビジネスチャンスを最大化するために、その専門性を活かすことにあると考えています。
そのためには受発注の関係ではなく、事業部と密接に連携して同じ目線で事業にコミットし、デザイン組織としてのアセットをフルに活かしていくことが重要です。
改めて、FANUPの立ち上げに対して私達がフルに活かせたアセットは次の3点だと考えています。
事業成果を最大化することを起点に、幅広く深いクリエイティブの専門性や、最適なワークフローを通して、企画からリリース・運用まで一気通貫で支援できることは、横断型のデザイン組織ならではの携わり方ですし、より早い段階から事業開発プロセスに組み込まれるほどその効果が高まると思います。
これからも、MIXIが提供するさまざまなプロダクトを、デザインを通してリードしていけるように取り組んでいきたいと思います。