B.LEAGUEに所属するプロバスケットボールチーム「千葉ジェッツ」では、2021年6月7日にリブランディングを発表しました。
ロゴや、スローガン、コンセプトムービー、フォント、カラーなどブランドに関わる様々なクリエイティブを刷新しており、私達は社内のデザイナーとしてこのプロジェクトに携わってきました。
新しく掲げたスローガンは「PAINT IT JETS」であり、「千葉ジェッツに関わるすべての人の、すべての時間をジェッツ色に染めていく」という思いが込められています。
2018年頃からリブランディングに取り組み始め、2021年に発表。2023年現在では、徐々に新たな千葉ジェッツのブランドが浸透してきているように感じてはいますが、まだまだ道半ばです。
この記事では、千葉ジェッツのリブランディングにおける取り組みを振り返りつつ、その現在地と今後の展望をまとめたいと思います。
千葉ジェッツは2011年に創設以降、「千葉県をバスケットボール王国にする」というビジョンのもと、多くのブースター(ファン)や、パートナーに支えられながら活動してきました。
私達は、2018年頃から千葉ジェッツにデザイナーとして関わり始めたのですが、ブランドという観点から見ると、様々な課題が生まれている状況でした。そのため、前任のデザイナーや社内のステークホルダーと議論のうえ、リブランディングを進めることになりました。
当時感じていた課題をまとめると、次のようなものがありました。
千葉ジェッツのようなスポーツチームでは、ロゴやカラーなどはもちろん、ユニフォームや、会場、グッズ、各種広報物など様々なクリエイティブが展開されます。
一方、以前はロゴや、カラー、フォントにおいて、場面によって使い方にばらつきがありました。
ロゴが扱いづらく、あまり使われていない
ロゴとは別のマークが作られ、そのマークの方が使われている
会場内でも様々な「赤」が目に付き、統一感がない
千葉ジェッツらしい印象はなにか、認識が揃っていない
具体的にはこのような状況であり、よりバスケットボールを心地よく見てもらうために、デザイン面での統一感にも改善の余地があると考えていました。
また、社内でのクリエイティブ制作のプロセスについても課題がありました。
例えば、グッズなどロゴを中心に作った方が良いものも、ロゴの扱いづらさや、フォント等のルールが定まっていないため、案件ごとに0から構成を考える必要があり、制作コストが高くなることがありました。
また、社内でも千葉ジェッツらしい印象に対する認識にばらつきがあり、前任のデザイナーにクリエイティブはお任せという状況であったため、制作の負担もかなり大きくなっていました。
たとえロゴなどの見た目の整理を行ったとしても、ものづくりのフローが良くないことで、統一感が出なければ意味がありません。そのため、社内の共通認識づくりやルール決めも併せて取り組む必要があると考えていました。
このような課題感をもとにリブランディングに動き出し、まずは社員や選手などにヒアリングをしながら、千葉ジェッツが目指すところや千葉ジェッツらしさを整理していきました。
また、並行してこのリブランディングを通して制作すべきものを洗い出していきました。
ロゴはもちろん、会場、会場外、オンライン、発表時に必要なものなど、あらゆるタッチポイントから整理し、このマップを埋めるような意識で取り組んでいました。
ロゴ
コンセプトムービー
フォント
ガイドライン
ホームページ
アプリ
SNS
YouTube
バナー
営業資料
オフィスグッズ
会場装飾
音・演出
ユニフォーム
ノベルティ
etc...
これらは初期にまとめたものであり、他にも制作したものもありますし、逆にまだ取り組むことができていないものも多くあります。
かなり制作する対象が多く見えるかも知れませんが、新しい千葉ジェッツを伝えていくためには、昔のものは残さず、すべてのタッチポイントを対象に取り組む必要があると考えていました。
今回の取り組みを、ロゴリニューアルに留めず、リブランディングとしているのも、このような背景からです。
2018年から少しずつ準備を進め、途中コロナがあり1年ほど公開の時期を調整したうえで、2021年6月にリブランディングを公開しました。
過程では、ヒアリングから、外部のクリエイティブディレクターと協力したコミュニケーションプランニング、実制作を行い、ロゴ、オリジナルフォント、ガイドライン、コンセプトムービーなど様々なクリエイティブを制作しています。
ロゴやブランドカラーなどの意図や、その背景については同日に公開したブランドサイトに詳しく記載されているのでそちらも併せて御覧ください。
ここからは、当初想定していた課題に対して特に意識していた取り組みをいくつかまとめます。
制作過程での納得感はもちろん、その後の発表や運用フェーズでも、誰もが千葉ジェッツが目指す方向や、デザインの意図を理解できるよう努めました。
具体的には、社内向けにブランドアイデンティティをまとめた46ページに渡る資料を制作しています。
一般的なガイドラインに見られるロゴやカラーの指定、レギュレーションだけでなく「MISSION・VISION・VALUE」「千葉ジェッツふなばしの価値」「ファン/ブースターの象徴となる人物像」「コミュニケーションのコンセプト」など、見た目の裏側にある意図に重きを置いてまとめていることが特徴です。
また、社内に向けた共通認識やルール作りに加え、制作面でもどんな場面でも使いやすく、機能性のあるデザインツールになることを目指しました。
例えば、ロゴやカラーのガイドラインだけでなく、オリジナルフォントを作成したことも、属人性の高さや制作コストを下げながら、千葉ジェッツらしい統一感を実現することを狙ったものです。
リブランディングの公開時には、B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2020-21にて千葉ジェッツが悲願の初優勝を果たしたこともあり、ポジティブな反響を多くいただきました。
リブランディングを発表してから約2年ほど経ち、千葉ジェッツとしての統一感や、制作プロセスなどより良くなっている部分もありますし、新しく取り組めるようになったことも多くあります。
例えば、新しいロゴやカラーを用いたオリジナルグッズのラインナップも拡充され、ブースターからも好反響をいただいています。
ただ、まだ取り組めていないことも多く残っています。
例えば、会場付近の地域で昔から使われている掲示物も一部残っていたり、会場装飾やフード周りなどまだ取り組めていない点があります。
ロゴやキービジュアル、動画など、オンラインで広く見てもらう場面でのクオリティは徐々に高められていますが、会場に近づくにつれてより良くしたい点が見えてきます。
2024年春には、千葉ジェッツのホームアリーナとなる収容人数1万人規模のアリーナ施設が開業予定ですので、この機会に合わせてより千葉ジェッツやバスケットボールを楽しんでもらえる環境にできるよう取り組んでいきたいと思います。
リブランディングを進めることになった当初から、発表はゴールではなくスタート地点だと何度もチーム内で話してきました。現状が良くなっておめでとう、良いものができたね、で終わらせず、運用をしながらブランドを育てていくことが重要だと考えています。
たとえどれだけ良いスタートが切れても、見えていなかった問題や、取り組むべきことが出てきます。私たちも、日々の制作をしながら、ガイドラインの改訂や、社内でのコミュニケーションの改善などを適宜行ってきています。
千葉ジェッツに関わるすべての人の、すべての時間をジェッツ色に染めていくには、まだ道半ば。これからもクリエイティブの力で、千葉ジェッツやバスケットボールをより盛り上げていきますので、今後にご期待ください。