Gaudyのデザイン組織は、2023年からプロダクトデザインとコミュニケーションデザインに分けられています。

コミュニケーションデザイン組織(以下、コムデ) に所属するのは、今は7名。フルタイムが2名、パートナーが5名という体制で成り立っています。

Gaudiyデザイン組織の全体像

例えば、昨年もコーポレートブランドリニューアルを行い、大きな反響をいただきました。もしかしたら印象に残っている方も多いかもしれません。

2023年10月、コーポレートブランドのリニューアルを行った

ただ、ブランドリニューアルはGaudiyのコムデで行ったことの、ほんの一部でしかありません。

「ファン国家」というビジョンを掲げるGaudiyにおけるコーポレートブランド表現の模索や、集英社やサンリオなどの世界を代表するIPを持つクライアントさまと一緒にファンコミュニティを立ち上げる中でクリエイティブ制作を推進するなど、非常に幅広い役割を担っています。

IP… Intellectual Property(インテレクチュアル プロパティ)の頭文字からとった略称で、日本語では「知的財産」と訳されることが多い概念 たとえば映画や音楽、マンガやアニメのキャラクター、ロゴマークやアイデアなどがIPにあたる (参照: https://c.kodansha.net/news/detail/39895/)

事業として実現したいことや、Gaudiyの思想を、どのようにコムデから形にし、事業成長につなげていくのか。Gaudiyのコミュニケーションデザインの役割や試行錯誤をまとめてみます。

Gaudiyのコミュニケーションデザイン組織には7名が所属しています。フルタイムが2名、パートナーが5名という体制で成り立っています。

Gaudiyコムデの体制と、動き方

主な動き方としては、サービス側、コーポレートブランド側、体制づくりの3つに分解されます。

サービスとしては、ファンコミュニティを立ち上げるプラットフォーム「Gaudiy Fanlink」を開発・提供しています。

現在、世界的なIPを持つクライアントさまと一緒に運営しており、コムデはその中でのNFT、企画やイベントバナー、デジタルトレカなど多岐にわたるクリエイティブ制作を推進する役割を担っています。

サービス側では、ファンプラットフォーム「Gaudiy Fanlink」でのコミュニティ内クリエイティブの制作に取り組む

コーポレートブランド側では、Gaudiyという存在をいかに世の中に届け、認知や行動に影響を与えていくのかを考え、ブランド定義や、コーポレートPRなどのクリエイティブ制作を通して浸透することを担います。

コーポレートブランド側の、Gaudiyコムデのアウトプット

また、これらの役割を担うための体制づくりを一貫して行います。例えば、依頼フローの整備やタスク管理DBの改善、採用やパートナー巻き込み、育成など、多岐にわたるops活動をチームで行います。

各クライアントさまのIPを預かり、ファンコミュニティを共同開発するGaudiyにおいて、コムデの必要性は3つの側面から整理することができます。

Gaudiyにおけるコムデの必要性

1. IPの世界観を守り、サクセスにつなげる (サービス側)
2. ビジネスモデルを検証/拡張する (サービス側)
3. コーポレートブランドの表現の模索 (ブランド側)

サービス側においてのコムデの必要性は「IPの世界観を守り、サクセスにつなげる」「ビジネスモデルを検証/拡張する」という2つから整理できます。

また、コーポレートブランドのリニューアルを行った上で、今後も重要になるのが「コーポレートブランドの表現の模索」です。

これらの役割について、より具体的な動き方も含めてまとめてみようと思います。

まずサービス側でのコムデの動き方についてです。

前述した通り、GaudiyはIP独自のファンコミュニティを立ち上げるプラットフォーム「Gaudiy Fanlink」を開発・提供しており、コムデでは各コミュニティ内のクリエイティブ制作を推進する役割を担っています。

Gaudiy Fanlink (https://site.gaudiy.com/product/fanlink )

具体的にはコミュニケーションデザイナーは、IPを持つクライアントさま、Gaudiy側でクライアントさまとのやり取りを担当するディレクターと連携しながら、コミュニティ内のクリエイティブ制作を担っています。

コムデのワークフローのイメージ
「Gaudiy Fanlink」のコミュニティでのクリエイティブ

このように、クライアントや、IP、ファンの方々を意識しながら制作に取り組む上で、コムデでは以下の2つの点を意識しています。

Gaudiyコムデにおけるサービス側の動き「IPの世界観を守りサクセスにつなげる」「ビジネスモデルを検証/拡張する」

「Gaudiy Fanlink」では、各クライアントさまのIPを預かり、ファンコミュニティの開発によってその熱量を最大化していくことを価値として提供しています。

ここで意識すべきなのは、もしGaudiy側がIPの世界観を壊してしまうと、そのIPのファンの方々や、クライアントさまの信頼を失ってしまうということです。

各IPには、クライアントさまやファンの方々によってつくられてきたIPごとの世界観がすでに存在しています。それらのIPを預かってファンコミュニティをつくるGaudiyでは、世界観を正確にキャッチアップしながら新たな表現を試みていくような動き方が求められています。

なのでコムデでは、IPの世界観や、クリエイティブのトンマナを把握・解釈していくために、IPごとのブランドガイドラインを整備するようにしています。

IPごとの世界観やトンマナを把握・解釈していくために、IPごとのブランドガイドラインをGaudiyとして用意

結果として、各IPのファンコミュニティでつくっているクリエイティブは、クライアントさまやファンの方々からも非常に好評で、信頼を掴むことができています。

コムデがつくるクリエイティブを通して、クライアントさまやファンの方の熱量が高まっている

この動きは、Gaudiyがつくりたい世界観や、ビジネス面から見ても非常に重要です。例えば、クライアントの方からの信頼が生まれればチャーンを防ぐことや、さらなる取り組みの拡張にもつなげていくことができます。

プロダクトの根幹である「ファンの熱量を高める」ことにも、コムデがつくるクリエイティブが大きく寄与できるため、プロダクトの優位性をつくるためにもこのような動きが必須だと考えています。

(と書いてはいますが、各IPの世界観をキャッチアップしていくことは面白くもあり、難易度の高いことでもあります。表層的な表現のスキルだけではなく、ファンに喜んでもらえる文脈まで捉えていかなければいけません。コムデではこのようなキャッチアップ難度を下げる仕組みも開発していこうとしています。)

IPの世界観を解釈し、クリエイティブに落とし込む動きの先に、コミュニティディレクターとコムデで「Gaudiy Fanlink」のビジネスモデルを検証・拡張していく動きにも取り組んでいます。

ファンコミュニティというモデルは、まだまだ世の中的にも前例は多くはありません。

なので、どうすればIPの世界観を維持しながら、ファンにもクライアントにも良い形でIPにさらにお金を巡らせ、Gaudiyのビジネスまで成立するエコシステムにしていくための検証を行う必要があります。

そしてコムデでは「クリエイティブ」がそのエコシステムの鍵になれるのではないかと考えています。


「VEELLAGE」での事例

例えば、Sony Musicさまのバーチャルタレントプロジェクト「VEE」の公式ファンコミュニティ「VEELLAGE」はその一つの事例です。

「VEE」の活性化に、コミュニティ内で制作した報酬アイテムが寄与することができた

具体的には、所属バーチャルタレントに今週起きたハプニング・珍事件の情報を、ファンから「タレコミ」としてコミュニティ上に投稿してもらい、VEE本体で行っているYouTube番組『渡辺タスクアワー「VEE Station!」』上のコーナーで紹介する企画を立ち上げました。

ラジオやテレビのハガキ職人のように、タレコミが採用されたファンには、その採用回数ごとに、称号と報酬アイテムが付与されます。

コミュニティでの企画と報酬アイテムを起点に、ファンは複数のチャネルでコンテンツを楽しむことができるようになり、クライアントとしては投稿機能を利用して、複数のチャネルでコンテンツを提供することができました。

ファン/IP本体/コミュニティ、三方を循環する形で盛り上がりをつくりながら、コミュニティだけに閉じない事業価値を検証できる機会となりました。


デジタルトレカ開発の事例

もう一つの事例として、あるファンコミュニティでは、コミュニティに入るインセンティブとして、IPの世界観を反映した、オリジナルのデジタルトレカを開発・リリースを予定しています。

このオリジナルトレカはNFTとなっており、所有し続けることで他のファン体験が受けられるメリットがあるため、コミュニティへの参加者も増えます。より熱狂してコミュニティでの活動や関わり続けてくれるファンも増えることで、クライアントさまにとっても意義が生まれます。

さらに、現在その取り組みをさらに発展させ、コミュニティ限定で発売するオリジナルのリアルトレカもコムデで制作しています。(近日中にリリースを予定しております)

この取り組みを通じて検証したい仮説は、ここでしか手に入れられない「限定感」によって、ファンの方がコミュニティに参加・活動する熱量をさらに強め、健全で持続的な課金につながるかというところを検証していきます。リアルやデジタルを横断し、ファンの期待や熱量を高め、コミュニティの体験とクリエイティブがつくりだす価値をつなげて行くことが重要なポイントです。


「Gaudiy Fanlink」というプロダクトの根幹である、ファンの熱量を高め、クライアントが持続的にファンコミュニティに投資し続ける行動をクリエイティブから促すことができれば、いわば「クリエイティブ=Gaudiyの競争優位」という構造をつくることができます。

ファンコミュニティ産業を成立させるための重要な要素をつくれるかもしれないと考えて、ただ制作するだけでなくビジネスモデルを拡張するようなクリエイティブを生み出せるようコムデでは検証を繰り返しています。

(そのためにも、前述したIPの世界観の解釈はもちろん、事業理解や、ディレクターのように振る舞い検証項目を提案していく動きが求められます。)

もう一つのコムデの役割である、コーポレートブランド側の動き方についても具体例をまとめます。

Gaudiyコムデにおけるブランド側の動き「コーポレートブランドの表現の模索」

Gaudiyのコーポレートブランドは解釈の余地が大きく、制作においても良い意味でも悪い意味でも幅が非常に広いのが特徴です。「ファン国家」の実現を本気で目指すGaudiyのコーポレートブランドをどう表すのかをどう表すのか、そこにはまだ正解はないと思っています。

なので、注力しているのは、Gaudiyの思想をどう表現するかを考え、クリエイティブの余白を残しながら、新たな表現に挑戦していくことです。

そのために、適切な余白を残しながら共通認識を保つ試行錯誤を行っています。例えば、Gaudiyのコーポレートブランドの解釈を、ムードボードのような形ではなく、テキストベースで行うワークをコムデで行いました。

Gaudiyのコーポレートブランドの表現の特徴を文言で洗い出し、余白を残しながらもブランド表現のブレが起こりづらいように

結果として、コーポレートPRのクリエイティブ制作においても、挑戦的な表現を繰り返すことができています。

現在のコーポレートPRのアウトプット

ただ、この解釈の幅が広すぎると、関われるデザイナーが少なくなってしまうことが問題になります。

なので、コムデチームの運営としては絶妙なバランス感覚が必要です。グローバル展開もはじまり、これから制作の数もどんどん増えていきます。人員も拡大する必要があるため、よりGaudiyらしいブランドを、解釈の余地を残した状態で定義していく必要があると考えています。

これらのサービス側の動きと、コーポレートブランド側の動きを支えるために、Gaudiyのコムデではデザイン組織及びコミュニケーションデザイン体制づくりにも注力する必要があります。

デザイン組織をより効果的に機能させるため、元々PdMやUXデザイナーとして動いていたTsuboに組織づくりに関わってもらいながら、コムデの体制構築やプロセス改善などを一緒に進めています。

サービス側とコーポレートブランド側の動きを支えるために、コミュニケーションデザイン体制づくりにも注力する必要がある

Gaudiyコムデの組織づくりにおいて今後も大きなテーマになるのは「どのようなケイパビリティを、いかにチームとして獲得するか」ということです。

今はいかにコムデからビジネスモデルの優位性をつくることができるかを検証している段階ですが、その検証を進めるためにも、チームとしての専門性を高めることが必要です。

例えば、「ディレクターに対してコムデから課題解決の打ち手を提案できる」「課金検証のために印刷やイベント開催など新たな専門性を身に付ける」といったことを高速で行い、検証を早く終わらせにいく動きが求められます。

そのため、チームとして新たなケイパビリティを獲得していくことには優先度をあげて取り組むようにしています。

コムデとして獲得すべきケイパビリティを整理

ただ、すぐに専門性を身につけられるわけでもないため、専門性を持った人を新たに採用する動きや、パートナーを巻き込む動きなど、まだ検証が終わってない中でどのように少しずつコムデの影響範囲を広げていけるか模索しながら動いています。

このように、Gaudiyのコムデでは、IPの世界観を解釈してファンの熱量を高めるクリエイティブをつくり、さらにはビジネスモデルの拡張・コーポレートブランドの表現の模索など、Gaudiyの核になるような存在となることを目指しています。

自社のみでの制作であったり、何をつくるべきか決まっているドメイン・事業のフェーズであれば、このような役割にチャレンジすることもできません。クライアントのIPを預かり、かつビジネスとしての余白はとても大きいGaudiyだからこそ、コムデから事業をつくることができる余地がとても大きいのだと思います。

とはいえ、Gaudiyコムデは、まだまだチームも立ち上げ段階です。コムデの動きから事業成長が起こることをスピーディーに進めていく必要がありますし、同時に、影響範囲を広げられるように多くの人を巻き込んでいく必要があります。

その一歩として、先日改めて、Gaudiyコムデチームとして大切にするスタンスを整理してみました。

Gaudiyコムデチームとして大切にするスタンス

ファンに憑依し、IPの世界観をそのままに表現するクリエイティブをつくること。同時に世の中を驚かせる表現方法を追求すること。クライアントさま・Gaudiy両者の事業推進にまで繋げること。これらを両立させるのがGaudiyのコムデにおける面白さでもあり、難しさでもあります。

ファンの熱量を高めるクリエイティブが、Gaudiyという会社や事業の核となれるよう、コムデでさらに検証を繰り返していきます。

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