KARTEを運営するプレイドのデザインチームは 「プロダクト デザイン」「コミュニケーション デザイン」 の大きく2つの役割に分かれて活動しています。

コミュニケーションデザインに関わるデザイナーは、少数精鋭で、複数のサービスのマーケティングを中心にユーザータッチポイントの体験向上につながる活動をデザイン面で支援しています。

プレイドのデザイン組織は、プロダクトデザインとコミュニケーションデザインに分かれている

コミュニケーションデザインに関わるデザイナーは少数精鋭が所属しており、プロダクトのマーケティングに関わるクリエイティブ制作を担っている

さらに、その中で、ブランドデザインユニットというデザイン組織内の部門が立ち上がり、KARTEのブランドのDNAや、Graphic Standardsという制作をする上での基準をつくっています。

プレイドのデザイン組織内にあるブランドデザインユニットと、ブランドデザインユニットがつくるKARTEのDNAや、制作の基準をまとめたGraphic Standards

なぜこれまでブランドの基準づくりに取り組んでいなかったプレイドが、ブランドをメンテナンスする役割を持ち、Graphic Standardsという基準をつくっているのか、その背景やプロセスをまとめていきます。

プレイドでは、大きくプロダクトが成長し、サービス群が増えていく一方で、コミュニケーションデザインに関わるデザイナーは少数精鋭でずっと制作を回してきていました。

そんなプレイドで、ブランドの基準が必要になったのは、主に2つの理由があります。

  1. KARTE関連サービスの拡大

  2. 少数精鋭が故に、言語化をしなくても高いクオリティでデザインできていた「阿吽(あうん)の呼吸」の限界

プレイドは、同じ市場に対して複数のサービスを提供するコンパウンドスタートアップです。

主幹事業であるKARTEブランドの中に、複数の関連プロダクトが増えてきていたことで、それぞれの制作を一貫させることが難しくなってきていました。

サービスサイトより、現在のKARTEの関連プロダクト一覧

それぞれのサービスが独自にブランドを解釈し、デザインしていくので、一貫したブランドとして認識してもらうための基準が必要だと考えていた

制作範囲が増えてきた一方で、コミニュケーションデザインに関わるデザイナーは経験豊富だったため、そこまで制作物の品質にブレは起こっていませんでした。

ただ、逆にいうと、それぞれがよしなに「KARTEっぽいデザイン」を過去の制作物から感じ取って制作するのにとどまってしまうという問題がありました。

一見するとアウトプットの品質は高く、ブレがないように見える一方で、その基準は明文化されておらず、それぞれが過去の制作物を模倣しあっているような状態になっており、品質の基準を更新させることができていませんでした。

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主にこれら2つの観点から、ブランドの定義や、制作の基準をつくる必要があると考え、ブランドデザインユニットの立ち上げと同時に取り組んでいくこととしました。

ちょうどこのタイミングで、過去に他社でブランドデザイン周りに関わった経験がある菅谷も入社したため、ブランドデザインユニットに加入してもらい、3名体制で進めていくこととなります。

ブランドデザインユニットとして、まずはじめに主観事業であるKARTEのブランドの基準をつくっていくこととしました。

ビジュアルやグラフィックの基準をつくる前に、そもそものKARTEというブランドの核となる部分を定義するため、 “ブランドDNA” を整理することとします。

具体的には、以下の4ステップで進めました。

  1. ターゲットとなる顧客像の整理

  2. 競合調査

  3. ブランド属性の整理 (機能的属性, 感情的属性)

  4. ブランドパーソナリティの整理

KARTEのブランド定義のプロセス
まずは、KARTEのブランドDNAを定義するところから始めていった

KARTEではプロダクトの多様化によって、提供価値が広がり、ターゲットも広がっていたため顧客像を整理するところからはじめました。

以下のようなステップを通して、顧客像の理解を進めています。

KARTEのターゲットとなる顧客像の整理の流れ
社内ヒアリングを通して顧客の解像度を高め、市場環境も整理しながら、最新の顧客の変化をキャッチアップした

また、根拠として、競合サービスの訴求がどう変化しているのかについても調査と分析を行いました。

まず前提として、KARTEのビジュアルアイデンティティを開発するにあたって、拠り所となるKARTEのブランドパーソナリティを定義する必要がありました。

ブランドの個性を示すことで振る舞いや考え方などが自ずと定まり、ビジュアルや言語など表現におけるトーンの足並みが揃うためです。

その元となる整理として、KARTEというブランドが持つ実質的な価値と、どう思われたいかという印象を、機能的属性、感情的属性という2つのブランド属性に分類していきました。

感情的属性ブレストの過程。感じて欲しい印象を言葉とイメージから発散、分類していった

ブランド・ストラテジストであるスコット・タルゴは「理性に訴えるブランドは、顧客の行動を手に入れる。 感情に訴えるブランドは、顧客の忠誠を手に入れる。」と語っています。

また人は、自分に似ている人に親近感を、理想の存在に憧れを抱きます。個性がなければ、人に訴えることも、親近感や理想の気持ちを抱いてもらうことも叶いません。

製品やサービスが人の理性に訴えるのは機能性であり、感情に訴えるのは顧客とどのような関係を築きたいか(どのような印象を持って欲しいか)です。

そこで機能的属性と感情的属性をブランド属性として整理しています。

さらに、このブランド属性を基礎にして、ブランドパーソナリティを抽出していきました。アウトプットとして、KARTEという人格をキーワード化してまとめています。

ブランド属性をもとに、ブランドパーソナリティを抽出

さらに、ブランドDNAを制作に反映するために、KARTEの超えるべき品質基準として “Graphic Standards” という形でまとめています。

KARTEの超えるべき品質の方針を表した、Graphic Standards (作成中)

ルールブックという形にすると、表現の自由がなくなり、アウトプットが固定化されてしまいます。それよりも、個々人ができるだけ自由にいられるような、バージョンアップデートが繰り返される文化をつくりたい、と思っていました。

あくまで、それぞれのデザイナーが表現を進化させていくことに目線を向けられるように、最低限の超えるべき品質基準をまとめたのが、Graphic Standards です。

例えば、項目としては以下のようなものがまとめられています。

  • タイポグラフィー

  • グラフィックエレメント

  • 素材・コンポーネントの考え方

  • カラー

  • イラストシステム

  • フォトグラフィー(作成途中)

Grapchic Standardsの項目例

Graphic Standardは、あくまで超えるべき基準であり、守るのではなく、それを超えるクリエイティブを発明することを促すしくみです。

このしくみは、個々人が自由に表現して、発明を繰り返し、基準を進化させていくことを重視しているプレイドだからこそハマると考えています。

プレイドでは組織カルチャーとしても自律性を重んじており、それぞれがプロフェッショナルであることを求めています。コミュニケーションデザインに関わるデザイナーに対しても、それぞれが自由に品質基準を更新していくことを求めています。

そして、そのような組織であるからこそ、各人がパフォーマンスしやすいような土台をつくることが組織づくりにおいては重要だと考えています。

ブランドデザインユニットとして、今後は、KARTE全体にこの基準を浸透していくこと、そして、KARTEを越えたプレイド全体のブランドの基準をつくっていくことに取り組んでいきます。

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